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2019年10月14日 (月)

ウルヴィ・エルグネルのアル・スール盤

ゼアミdeワールド182回目の放送、日曜夜にありました。16日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画は今回Gazi Giray Hanのマーフールのペシュレヴのみにしました。やはりウルヴィ・エルグネルでは見当たらないので、比較的似た演奏で上げておきました。

今回からトルコの伝統音楽を聞いて行きたいと思います。トルコの伝統音楽は、大きく分けて、ペルシア・アラブの優れた伝統を受け継いだオスマン朝時代の古典音楽と、これまで聞いてきました中央アジアのテュルク(トルコ)系諸民族とも繋がるアシュク(吟遊詩人)のサズ弾き語りなどの民俗音楽、スーフィー(イスラーム神秘主義)の音楽では旋回舞踏で有名なメヴレヴィー教団の音楽などがあります。

トルコの音楽と言えば、おそらく向田邦子原作のTVドラマ「阿修羅のごとく」に使われたオスマンの軍楽や、江利チエミが1954年に日本語で歌ったイスタンブール民謡のウスクダラが最も有名かと思いますが、その前に、まずは個人的に一番好きなトルコ古典音楽の盤で、1992年にフランスのAl Surからリリースされたネイ奏者ウルヴィ・エルグネル・アンサンブルによるオスマン宮廷音楽のEnderunという盤からご紹介したいと思います。ネイとは、葦で出来た長い縦笛で、ペルシアの大詩人ジャラールッディン・ルーミーが神秘主義詩の中で読み、メヴレヴィー教団を興して以来、スーフィーの音楽で最も重要な楽器とされています。アル・スールのメーカー自体活動停止してしまいましたので、現在はおそらく入手不可で、アップルミュージックなどストリーミングでも聞けないようです。

ウルヴィ・エルグネルは、メヴレヴィー音楽やオスマン古典音楽の現代最高のネイ奏者の一人であるクドゥシ・エルグネルの父で、この演奏には有名なネイ奏者アカ・ギュンデュズ・クトバイやタンブール奏者のネジデト・ヤシャルも参加しています。ウルヴィ・エルグネルは、1924年生まれ1974年没ですから、録音は晩年でしょうか。若き日の息子クドゥシ・エルグネルもメンバーにいるのではと思います。この盤の解説はクドゥシ・エルグネルです。アルバムタイトルになっているエンデルンとは、オスマン宮廷の中に作られた学校で、そこではスルタンお抱えの楽師や詩人、神学者、歴史家、書家などが活躍していたそうです。

「パクス・ロマーナ」(ローマの平和)にちなんだ「パクス・オトマニカ」 (Pax Ottomanica)を連想させる、太平のオスマン時代を思わせる大らかなマカーム・マーフールのペシュレヴ(器楽合奏の前奏曲)からおかけします。

<1 Makam Mahur: I. Pesrev 3分6秒>

Mahur Peşrev- Gazi Giray Han


この曲は、現在はロシア領のクリミア半島出身で、チンギス・ハーンの末裔と言われるGazi Giray Han(ガズィ・ギレイ・ハーン)の作曲です。クリミア・ハン国は16世紀頃はオスマン帝国の属国で、彼はクリミアの12代目ハーンでしたが、勇敢な戦士であるだけでなく偉大な作曲家としても知られ、色々な楽器を演奏し、アラビア語、ペルシア語、オスマン語など多言語で詩も残しています。Mutlu Torunのウード教本にも入っているこのマーフール旋法の明るく親しみやすいペシュレヴは、作曲されたのが16世紀ということでオスマン音楽の中でもかなり古い曲ですが、長らく口承で伝えられ、ウルヴィ・エルグネルが記譜したとのことです。

この盤にはマーフール、ペンジガー、ラストという3つのマカームの演奏が合計19曲で入っていますが、6曲のマカーム・マーフールを続けて聞いて行きます。2曲目には更に古い14、15世紀のアブドゥルカディル・メーラギが書いたとされるMakam Mahur: II. Karが続きます。男性のコーラスと、ネイ、タンブール、ウード、カーヌーンなどの器楽合奏は穏やかな表情を持った音楽で、トルコ帽と白く長い衣装に身を包んで旋回舞踏する、メヴレヴィーのセマーの儀礼を髣髴とさせる感じもあります。

<2 Makam Mahur: II. Kar 6分32秒>

マーフール旋法の6曲で大体24分ですので、続きの4曲を聞きながら今回はお別れです。続けて聞くことで、オスマン音楽の大らかで洗練された深い表情が味わえると思います。III. Agir Semai(作者不詳)、IV. Ney Taksim(アカ・ギュンデュズ・クトバイによるネイのタクシーム=即興)、V. Yuruk Semai(エブベキル・アア作)、VI. Saz Semaisi(再びガズィ・ギレイ・ハーン作)と続きます。多分6曲目の途中までになると思いますが。それぞれの用語については、また追々解説を入れたいと思いますが、サズ・セマーイだけ説明しておきますと、弦楽器のサズとは関係なく、3+2+2+3の10拍子の楽曲形式です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<3 Makam Mahur: III. Agir Semai 3分>

<4 Makam Mahur: IV. Ney Taksim 53秒>

<5 Makam Mahur: V. Yuruk Semai 5分5秒>

<6 Makam Mahur: VI. Saz Semaisi 5分23秒>

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