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2019年11月25日 (月)

24のマカームが移り行くRast Kar-i Natik

ゼアミdeワールド188回目の放送、日曜夜にありました。27日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。放送ではミュニール・ヌーレッティン・セルチュクの方が途中までになりましたので、今日はそちらだけ上げておきます。セルチュクの自作曲の多いこの4枚組の中でも、白眉だったと思います。

トルコの伝統音楽の7回目です。オスマン古典音楽名曲選の5回目としまして、今回もオスマン・トルコ古典音楽の大作曲家イスマイル・デデ・エフェンディの、前回予告していた曲をおかけします。Rast Kar-i Natik(ラスト・キャール・ナトゥク)は、どんどん旋法が移り変わる歌唱の内に、それぞれの旋法の名前を詠み込んでいく異色の大作です。旋法はRast, Rehavi, Nikriz, Pencugah, Mahur, Neva, Ussak, Bayati, Nisabur, Nihavend, Nuhuft, Saba, Cargah, Dugah, Huyseyni, Hisar, Muhayyer, Buselik, Hicaz, Sehnaz, Rahatul-Ervah, Bestenigar, Irak, EVCと続きます。名前を見ると、Pencugah, Mahur, Neva, Cargah, Dugahのように、ウイグルなどとも共通するペルシア系の名前が目立ちます。ヒジャーズやニハーヴェントのように、アラブやペルシアの古い地名の付いたものもあります。

声楽でどんどん旋法が移り変わる曲と言えば、南インド古典音楽のメーララーガマーリカーを思い出します。カルナティック音楽の大歌手M.S.スブラクシュミの名唱で有名な曲で、前に放送で少しかけたように思います。この曲も猫の目のようにラーガが移り変わる中で、ラーガ名を歌詞の中に織り込んでいましたが、おそらくどちらも歌詞自体の中に旋法名がうまく嵌め込まれ、意味のある流れになっているものと思われます。作曲、演奏共に高度な技術の必要な曲と思われますが、漠然と聞いているだけでも、実にオスマン音楽らしい高雅で大らかな魅力のある曲です。時折はっきりと分かる微分音が出てきますので、是非注意して聞いてみて下さい。

この曲は、私の知っている限りでは音源が2種類ありまして、一枚は前回にビザンツ風な混声合唱として取り上げましたトルコKentの「トルコ古典音楽 5~デデ・エフェンディ」で、もう一枚は往年の名歌手ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクの4枚組「ウスタード」の3枚目です。演奏時間はケントの方が12分余り、セルチュクの方は16分近くありますので、解説は最小限にして出来るだけ長くかけたいと思います。まずは前者のビザンティン音楽にも似た柔らかく幽玄な音の動きの演奏の方からどうぞ。

<1 Rast Getirip Fend ile Seyretti Humayi 12分26秒>

続きまして、ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクの4枚組「ウスタード」の3枚目の方をおかけしますが、途中までになりますので、時間まで聞きながら今回はお別れです。最初にも言いましたが、オスマンスタイルの合唱を伴い、24のマカームをたおやかに渡り行く15分余りの大作で、歌詞の中にマカーム名を嵌め込んでそこで転調していくという、巨匠ならではの技巧を凝らした曲です。最初のラスト旋法の、オスマン音楽らしい明るく大らかな調子が曲の全体を象徴しているようにも思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<3-1 Rast Kar-i Natik (Rest Getirup Fend Ile Seyretti Numayi) 15分59秒>

RAST KÂR-I NÂTIK (Rast Getirip Fend İle) -- Münir Nûrettin Selçuk

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