« 2019年11月 | トップページ | 2020年1月 »

2019年12月

2019年12月30日 (月)

年末にRast Kar-i Natik

ゼアミdeワールド193回目の放送、日曜夜にありました。放送されるのが29日で、1日の再放送枠は無しですので、1年の締めくくりの音楽として、これまで3回の年末のようにベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲にしようかとも思いましたが、トルコ音楽巡りの途中ですので、今年はトルコの音楽にしたいと思います。動画はRast Kar-i Natikとルバーイーのみにしておきます。番組関連のブログアップですが、次回は8日の放送後の9日になると思います。

188回目の放送でフェードアウトしてしまったオスマン・トルコ古典音楽の大作曲家イスマイル・デデ・エフェンディの、Rast Kar-i Natik(ラスト・キャール・ナトゥク)の音源からおかけします。

この曲は、どんどん旋法が移り変わる歌唱の内に、それぞれの旋法の名前を詠み込んでいく異色の大作です。旋法はRast, Rehavi, Nikriz, Pencugah, Mahur, Neva, Ussak, Bayati, Nisabur, Nihavend, Nuhuft, Saba, Cargah, Dugah, Huyseyni, Hisar, Muhayyer, Buselik, Hicaz, Sehnaz, Rahatul-Ervah, Bestenigar, Irak, EVCと続きます。作曲、演奏共に高度な技術の必要な曲と思われますが、漠然と聞いているだけでも、実にオスマン音楽らしい高雅で大らかな魅力のある曲です。時折はっきりと分かる微分音が出てきますので、是非注意して聞いてみて下さい。

音源は、往年の名歌手ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクの4枚組「ウスタード」の3枚目です。巨匠晩年の悠揚迫らぬ名唱を聞けます。

<3-1 Rast Kar-i Natik (Rest Getirup Fend Ile Seyretti Numayi) 15分59秒>

Münir Nurettin Selçuk-Rast Kar-ı Natık


この大作は1年の締めくくりに相応しいと思いまして、おかけしました。まだ時間がありますので、同じウスタードからセルチュクの自作曲を何曲かおかけします。この頃の彼の録音には、タンブールの名手ネジデト・ヤシャルの名が見えます。

1枚目3曲目のウッシャーク旋法のルバーイー「ビル・メルハレデン・ギュネシュレ・デリア・ギョリュニュル」は、その名の通り四行詩の歌で、シャルクという扱いではないセルチュク自作の中でも異色の一曲のように思います。

<1-3 Bir Merhaleden Gunesle Derya Gorunur 2分33秒>

Münir Nurettin Selçuk Bir merhaleden güneşle derya görünür


1枚目6曲目のセガー旋法のイラーヒ「ショル・ジェンネティン・ユルマクラル」は、ユヌス・エムレの詩につけられたセルチュクの自作曲です。

<1-6 Sol Cennetin Irmaklari 5分26秒>

1枚目14曲目のニハーヴェント旋法のシャルク「ヤル・センデン・カルンジャ・アイル」もセルチュクの自作曲で、ウスクダラと同じニハーヴェントらしい哀感があります。この曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。

それではまた来年。 皆様、よいお年をお迎えください。

<1-14 Yar Senden Kalinca Ayri 4分13秒>

| | コメント (0)

2019年12月27日 (金)

Ladino Music: Voice Of The Turtle

セファルディー音楽のグループ、Voice of the Turtleのハヌカー・コンサートのCDを聞いたのは、もう30年ほど前になります。メンバーはもうかなりいい歳になっていることでしょう。この30分ほどの動画も6年前ですから、今では更に経っていますし。このグループ名の邦訳は、確か「山鳩の声」でした。最初に聞いたセファルディー音楽で、とても強く印象に残っています。CDはアメリカのTitanicから確か5枚出ていて、トルコ、モロッコ、ブルガリアとユーゴ編などがありました。いずれも旧オスマン帝国内です。このシリーズは、おそらく現在は入手不可です。セファルディーの言葉、ラディノ語(ユダヤ・スペイン語)は、本当にスペイン語にそっくり。時折ヘブライ語の語彙が入ってきて、ユダヤの言葉と分かります。2本目が放送でかけたハヌカーです。

Ladino Music: Voice Of The Turtle

Hanuka (Live)

| | コメント (0)

2019年12月26日 (木)

Maftirim Judeo-Sufi Connection トルコのセファルディー音楽

マフティリームは、そのまま上がっていました。Hag Amakabimは、一番最後の曲です。マフティリームで検索して出てきた他の盤で、I Maftirîm e le opere degli ebrei sefarditi nella musica classica ottomana (The Maftirîm and the Works of Sephardic Jews in Ottoman Classical Music)というイタリア盤にはクドゥシ・エルグネルが参加していて、大変に素晴らしい内容でした。また来年に放送でかける予定です。ユダヤとスーフィー(イスラム神秘主義)という組み合わせは、最初意外に思いましたが、歌舞音曲を表向き忌避するイスラムの中でも、音楽によって神に近づくスーフィーの世界は、元から音楽に溢れたユダヤの宗教音楽とよく合うのかも知れません。中でもカバラーの影響のあるセファルディーの音楽や、東欧系になりますがハシディズムなどのユダヤ神秘主義系統なら尚更でしょう。トルコでの場合は、何よりもトルコ古典音楽が両者に共通しているので、強力な繋ぎになると思います。(以下放送原稿を再度上げておきます)

Kalan Muzik Yapimから2001年に出ているMaftirim Judeo-Sufi Connectionという盤は、トルコ音楽のスタイルでユダヤ教神秘主義詩を聞かせる内容です。演奏はHazan Aaron Kohen Yasakとマフティリーム合唱団で、器楽伴奏はネイとタンブールを中心に打楽器のベンディール、クデュムという編成です。トルコには15世紀のスペインからの離散のグループとは別に、古代パレスティナから古くは紀元前4世紀頃から流入した古い集団もあるようです。この盤の演奏者がどちらになるのかは不明ですが、ハヌカーの曲を演奏しているということは、セファルディーだろうと思います。では、そのHag Amakabimという曲をどうぞ。

<19 Maftirim Judeo-Sufi Connection ~Hag Amakabim 5分14秒>

Maftirim Judeo-Sufi Connectionには、ユダヤ教の安息日(シャバト)の歌が多数入っていますので、3曲目のイスマー・アル・ツィヨンと言う曲を、時間まで聞きながら今回はお別れです。キリスト教の安息日は日曜ですが、ユダヤ教では土曜になります。

<3 Maftirim Judeo-Sufi Connection ~Yismah Ar Tsiyon 2分36秒>

Maftirim: Unutulan Yahudi-Sufi Geleneği

| | コメント (0)

2019年12月25日 (水)

Seraphim Bit-Kharibi アトス山

一昨日アップしましたアラム語で歌っていたSeraphim Bit-Kharibiは、グルジアのグループ(個人?)のようです。おそらくグルジア(ジョージア)のアッシリア教会に属している人なのでしょう。先日の動画の最初のナレーションがロシア語だったのは、正教世界への発信を意識してのことではと思います。実はドイツ・グラモフォンの「聖地のクリスマス」で聞いたような、古シリア教会のアラム語の古風で素朴な歌があればと思っているのですが、Seraphim Bit-Kharibiのように割と聞きやすく美しい、現代的な歌唱が多いようです。
2本目はギリシア北東部に位置するギリシア正教の聖地アトス山での映像です。アトスも、昔ドイツ・グラモフォンからイースターのLP音源がありました。確かCDにはならなかったように思います。アトスは女人禁制の聖域で、「聖山の修道院による自治国家」として大幅な自治が認められていて、ユネスコ世界遺産に登録されています。

Psalm 16 in Aramaic

Mount Athos • The Holy Mountain

| | コメント (0)

2019年12月23日 (月)

アッシリア教会のアラム語聖歌とウィーン少年合唱団の「きよしこの夜」

ゼアミdeワールド192回目の放送、日曜夜にありました。25日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。「聖地のクリスマス音楽」と同じ音源はないと思いますので、アラム語のサンプルとしてアッシリア教会のアラム語聖歌と、ウィーン少年合唱団の「きよしこの夜」を貼っておきました。ハヌカー関連は、木金に上げる予定です。

トルコの伝統音楽の11回目ですが、放送されるのが22日と25日ということで、今回はクリスマス特集に致します。その次の29日は1日の再放送枠が無しですので、締めくくりの音楽、新年の最初は8日の再放送枠のみありますから、正月関連の特番に致します。

これまで3回かけましたが、まずはドイツ・グラモフォンから出ていた「聖地のクリスマス音楽」から、「ベツレヘム生誕教会の鐘」をおかけします。キリスト生誕の地とされるベツレヘムのギリシア正教会での録音で、東方的な渋みや深みを感じさせる音です。冒頭と最後に入っていますので、続けておかけします。

<1 聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘 43秒>

<22 聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘 1分15秒>

2~4曲目はローマ・カトリック教会の聖歌で、女声によって歌われるグレゴリオ聖歌の一種でラテン語で歌われています。この盤の中では唯一の西方教会の音楽で、異色の音源になっていると思います。その中から夜中のミサ:アレルヤ唱をどうぞ。

<3 聖地のクリスマス音楽 ~ ローマ・カトリック教会の聖歌 夜中のミサ:アレルヤ唱 2分>

この盤からもう一曲、古シリア教会の聖歌ですが、最も早くからキリスト教化された地方ですから、ユダヤ教の流れも汲む古い典礼のスタイルが残っているようです。言葉はイエス・キリスト自身が話したと伝えられる古いシリア語の一種のアラム語が現在も主に使われています。

<18 聖地のクリスマス音楽 ~古シリア教会の聖歌 アレルヤ、アレルヤ 2分20秒>

Father Serafim Chants Psalm 50 In Aramaic


このアルバムに収録されているのは、イスラエルのエルサレムやベツレヘムでの東方諸教会の音源で、この地で2000年前にキリスト教が生まれた頃に近い響きを持っていると思われる音楽が中心です。3年前には、この盤からキリスト教の東方的ルーツを訪ねた、ギリシア正教会、エチオピア教会、エジプトのコプト教会、シリア教会、アルメニア教会、レバノンのマロン派の音源を中心にご紹介しました。今回は一般にもよく知られているクリスマス・キャロルもおかけして、その後でユダヤで同じ時期に祝われるハヌカー関連の音源もご紹介します。

よく知られるクリスマス・ソング2曲をウィーン少年合唱団の歌唱でどうぞ。最初がドイツ民謡「もみの木」で、2曲目は1818年にフランツ・グルーバーが作曲した「きよしこの夜」です。

<22 ウィーン少年合唱団ベスト もみの木 1分38秒>

<23 ウィーン少年合唱団ベスト きよしこの夜 2分40秒>

Vienna Boys Choir - Stille Nacht (Silent Night)


次にユダヤのハヌカーですが、ユダヤの世界にはキリストの生誕を祝うクリスマスという行事は無いのですが、まるで対抗するかのようにほぼ同時期にハヌカーという祭りがあります。ハヌカーはユダヤ教の年中行事の一つで、紀元前168年~紀元前141年のマカバイ戦争時のエルサレム神殿の奪還を記念する「宮清めの祭り」です。今年は東欧系のアシュケナジームの音楽は外して、セファルディーの方だけでご紹介します。

15世紀のレコンキスタでスペインから追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散したスペイン系ユダヤ人はセファルディーと呼ばれますが、彼らの民謡を演奏するグループVoice of the Turtleは「ハヌカー・コンサート」という盤が最初に出ました。その中からハヌカーという曲をどうぞ。

<10 Voice of the Turtle / Circle of Fire ~Hanuka 3分10秒>

Voice of the Turtleのハヌカーの歌は去年と一緒ですが、この後はトルコのユダヤ教徒の音楽から、ハヌカーの曲をおかけしたいと思います。Kalan Muzik Yapimから2001年に出ているMaftirim Judeo-Sufi Connectionという盤は、トルコ音楽のスタイルでユダヤ教神秘主義詩を聞かせる内容です。演奏はHazan Aaron Kohen Yasakとマフティリーム合唱団で、器楽伴奏はネイとタンブールを中心に打楽器のベンディール、クデュムという編成です。トルコには15世紀のスペインからの離散のグループとは別に、古代パレスティナから古くは紀元前4世紀頃から流入した古い集団もあるようです。この盤の演奏者がどちらになるのかは不明ですが、ハヌカーの曲を演奏しているということは、セファルディーだろうと思います。では、そのHag Amakabimという曲をどうぞ。

<19 Maftirim Judeo-Sufi Connection ~Hag Amakabim 5分14秒>

Maftirim Judeo-Sufi Connectionには、ユダヤ教の安息日(シャバト)の歌が多数入っていますので、3曲目のイスマー・アル・ツィヨンと言う曲を、時間まで聞きながら今回はお別れです。キリスト教の安息日は日曜ですが、ユダヤ教では土曜になります。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<3 Maftirim Judeo-Sufi Connection ~Yismah Ar Tsiyon 2分36秒>

| | コメント (0)

2019年12月20日 (金)

カンテミルオールの伝記映画、文字譜、トルコ古典楽器演奏

カンテミルオールについて、大変に興味深い映像が見つかりました。1本目は彼のおそらく後半生を描いた伝記映画のようで、このような映画が1973年にモルドヴァ(ルーマニア東北部のモルドヴァ地方ではなく、その東に接する旧ソ連のモルダヴィア共和国のことだと思います)で作られていたということに、まず驚きました。2本目は彼が考案した文字譜と思われるアラビア文字のバックで、彼が書いたと思しきペシュレヴをイランの音楽家が演奏しています。3本目は、トルコの古典楽器の演奏で見た中では、カンテミルオールの曲の最もいい演奏だと思いました。
以下はウィキペディアのカンテミルオールの記事からです。「1688年から22年間をイスタンブールで過ごした。イスタンブールではスルタン・アフメト2世に才能を愛され、東洋の諸言語と文化、音楽を学んだ。1710年、兄アンティオフの跡を継いでモルダヴィア公に任命されイスタンブールを離れるが、翌1711年に始まったロシアとオスマン帝国の戦争においてオスマン帝国を裏切り、ロシアのピョートル1世に降伏した。しかし、この戦争はピョートルの大敗に終わり(プルート川の戦い)、モルダヴィアを含めた占領地はオスマン帝国に奪還されてしまったため、カンテミールはロシアに亡命生活を余儀なくされた。カンテミールはロシア貴族の待遇を受けて(公爵・宮廷顧問官)余生を送り、1723年にハリコフで亡くなった。」

" Dimitrie Cantemir " 1973 (Moldova Film)

Cantemir: pishrow (peşrev) in maqâm Bozorg

Sekiz Tanbur - Murat Aydemir - Rast Pesrevi (Kantemiroglu)

| | コメント (0)

2019年12月18日 (水)

ジョルディ・サヴァールとカンテミルオール

ジョルディ・サヴァールとカンテミルオールと聞いて、最初は意外な気がしましたが、「オリエント~オクシデント」は、カンテミルオールの曲で始まり、カンテミルオールの曲で終わっています。広く地中海の古楽を見て行く上で、いかに重要視しているかの表れのようにも思いました。動画にはニクリーズはなかったので、代わりに最後を飾っているMakam 'Uzäl Sakil "Turna" を上げておきました。3本目の生映像にある、El libro de la ciencia de la músicaとは、例の『文字による音楽の知識の書』のことでしょうか? 直訳すれば「音楽の科学の書」だと思いますが。スペイン語(あるいはカタロニア語?)はよく分かりませんが、冒頭のインタビューでジョルディ・サヴァールはカンテミルオールについて熱く語っているようにも思いました。(以下放送原稿を再度上げておきました)

検索で出てきたのは3枚ありまして、2枚目にご紹介しますのは、スペイン古楽界の大御所ジョルディ・サヴァールとエスペリオン21の演奏で、アルバムタイトルはオリエント~オクシデントです。聖母マリアのカンティガから、イタリアのトレチェント(14世紀)の音楽、サラエボのセファルディー音楽、アフガニスタンやペルシアの音楽などに混じって、21曲中にカンテミルオールの曲が4曲入っています。この中から、冒頭を飾っている明るいマカーム・ラストと、対照的にエキゾチックな短調の旋律が印象的な13曲目のマカーム・ニクリーズの2曲を続けておかけします。

<1 Makam Rast "Murass'a" Usul Duyek (Turquie, Mss. de Kantemiroglu) 4分40秒>

Makam Rast "Murass'a" Usul Düyek (Turquie, Mss. De Kantemiroglu)


<13 Makam Nikriz Usul Berevsan (Turquie, Mss. de Kantemiroglu) 3分34秒>

Makam 'Uzäl Sakil "Turna" (Turquie, Mss. De Kantemiroglu)


ESTAMBUL. Dimitrie Cantemir: "El libro de la ciencia de la música" - Concierto de Jordi Savall

| | コメント (0)

2019年12月16日 (月)

カンテミルオール(Kantemiroglu)

ゼアミdeワールド191回目の放送、日曜夜にありました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。youtubeは色々ありますが、今日の動画はCantemir: Music in Istanbul and Ottoman Europe Around 1700の方だけにしておきます。このジャケットは割とコーカソイドっぽく書かれていますが、彼の肖像画には色々なタイプが存在するようです。カンテミルオールの末尾のogluのgは、例の楔型が上にある方ですので、Gの音は発音せずに前の母音を伸ばすのみになります。

トルコの伝統音楽の10回目です。今回トルコの音楽を特集するに当たって、個人的に一番調べてみたかったのが、カンテミルオールの音楽です。私が彼の名前を初めて知ったのは、ジェム・ベハールの「トルコ音楽にみる伝統と近代」という著作で、トルコ作曲家リストの中に彼の名前がありました。モルダヴィア貴族のカンテミル家は、クリミア・ハーン国から移住してきたタタール系で、チンギス・ハーンの血を引くと言われています。トルコ語、アラビア語、ペルシア語、ルーマニア語、スロヴェニア語、ロシア語、ギリシア語、ラテン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ハンガリー語を完全に習得していたというポリグロット(マルチリンガル)だった点と、トルコ音楽、オスマン帝国史、故国モルダヴィア・ルーマニアに関する歴史書、哲学書など多様な著作があるという点にも、非常に惹かれました。

しかし、有名なのに反して、彼の曲が入った音源は何故かトルコ盤にもなかなか見当たらず、今回アップルミュージックで調べてみて、ヨーロッパの古楽の枠で出ている盤に多く収録されていることが分かりました。それらのジャケットの何枚かにカンテミルオールの肖像画が出ていますが、確かに日本人とも見間違えるようなアジア的な顔立ちに描かれています。モルダヴィアに近いクリミア・ハーン国のガズィ・ギライ・ハーンも、キプチャク系だから当然と言えば当然ですが、チンギス・ハーンの血を引いていたのを思い出します。

カンテミルオールはルーマニアの東に位置するモルダヴィアの人で、当時モルダヴィアはオスマン帝国領でした。総督であるコンスタンティン・カンテミルの子で、コンスタンティンの父の時代にイスラムからキリスト教に改宗しています。「カンテミルオール」とは、モルダヴィア公ディミトリエ・カンテミールのトルコ名で、公子としてイスタンブールに22年滞在中に数々の曲を作曲し、独自の楽譜を考案、自作曲を書き残しています。生没年は1673年~1723年ですから、バッハより少し前の時期になります。

カンテミルオールの曲を取り上げている中で、トルコ人の音楽家はケメンチェ奏者のイフサン・オズゲンがいました。2,3枚確認した中では、オスマン古典として聞ける曲、モルダヴィアの民族音楽色が濃い曲など、幾つかのタイプに分かれるように思いました。

まずは、イフサン・オズゲンが参加した「Cantemir: Music in Istanbul and Ottoman Europe Around 1700」という盤に、異色とも思えるモルダヴィアの舞踊曲シルバが2バージョン入っていますので、続けておかけします。東欧系ユダヤのクレズマーにも似た哀感に満ちた曲調です。

<1 Syrba - Moldavian Dance 1分34秒>

Syrba - Moldavian Dance


<2 Syrba - Moldavian Dance 1分19秒>

Syrba - Moldavian Dance


ウィキペディアには音楽家としてのカンテミルオールについて、以下のように解説がありました。

「オスマン古典音楽の作曲者としても知られ、40曲ほどの作品がある。アラビア文字を利用した独特の文字楽譜によって約40の自作曲を含む、350余りの器楽曲を採譜した『文字による音楽の知識の書』をトルコ語(オスマン語)で著してスルタンに献呈した。彼の考案した文字譜は画期的なものだったがトルコにおいて広まることはなかった。」

このように僅か40曲なので、聞く機会もこれまでなかったのかなと思いました。そのオスマン古典曲も同じ盤に入っておりますので、ヒュセイニ旋法のペシュレヴを同じ盤からおかけしますが、ペシュレヴと思えないくらい古楽的な演奏です。演奏はIhsan Ozgen, Linda Burman-Hall & Lux Musicaということで、おそらくトルコ人はイフサン・オズゲンだけでしょうか。

<28 Huseyni Pesrev 3分33秒>

Hüseynî Pesrev


もう一曲この「Cantemir: Music in Istanbul and Ottoman Europe Around 1700」という盤から、カンテミルオールを讃えた曲と思われるIn Honor of Prince Kantemirという曲がなかなか秀逸ですので、おかけしておきます。

<14 In Honor of Prince Kantemir 3分43秒>

In Honor of Prince Kantemir


検索で出てきたのは3枚ありまして、2枚目にご紹介しますのは、スペイン古楽界の大御所ジョルディ・サヴァールとエスペリオン21の演奏で、アルバムタイトルはオリエント~オクシデントです。聖母マリアのカンティガから、イタリアのトレチェント(14世紀)の音楽、サラエボのセファルディー音楽、アフガニスタンやペルシアの音楽などに混じって、カンテミルオールの曲が4曲入っています。この中から、冒頭を飾っている明るいマカーム・ラストと、対照的にエキゾチックな短調の旋律が印象的な13曲目のマカーム・ニクリーズの2曲を続けておかけします。

<1 Makam Rast "Murass'a" Usul Duyek (Turquie, Mss. de Kantemiroglu) 4分40秒>

<13 Makam Nikriz Usul Berevsan (Turquie, Mss. de Kantemiroglu) 3分34秒>

もう一枚はGolden Horn Ensembleというグループの演奏で、このDimitrie Cantemir (Kantemiroglu)という盤のジャケットは、本当に日本人と見紛う感じです。この中からHuseyni - Fahteと言う曲を時間まで聞きながら、今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Huseyni - Fahte 10分19秒>

| | コメント (0)

2019年12月13日 (金)

Simon Shaheenのウードとヴァイオリン

Simon Shaheen のTurathは、音源が上がっていました。CMPの盤は、おそらく現在は入手不可です。92年に出た頃はジャケットが違っていて、ウードを構えたシモン・シャヘーンでした。彼はウードだけでなく、ヴァイオリンの名手でもあり、タクシームがとにかく凄いです。それぞれを3,4本目に入れました。(以下放送原稿を再度載せておきます)

185回目にクドゥシ・エルグネルのメヴレヴィー的な演奏でかけたイスマイル・ハック・ベイのフェラフェザのペシュレヴもアラブ音楽でよく演奏されています。パレスティナのウード名手シモン・シャヘーンの演奏が、92年にドイツのCMPから出ておりました。そちらでおかけします。ペシュレヴは、ここではアラビア語のバシュラフになっております。なおシャヘーンは、シモンという名前の通り、パレスティナのキリスト教徒だと思われます。

<1 Simon Shaheen / Turath - Masterworks of the Middle East Bashraf Farahfaza 5分45秒>

Simon Shaheen - Bashraf Farahfaza (Turath)


では最後に、同じくシモン・シャヘーンの演奏で、タンブーリ・ジェミル・ベイの息子のメスード・ジェミルが書いたSama'i Nahawandを時間まで聞きながら、今回はお別れです。今回は途中までになると思いますが、ウードなどアラブの楽器でもよく演奏される名曲ですから、またちゃんとかける予定です。

<6 Simon Shaheen / Turath - Masterworks of the Middle East Sama'i Nahawand 8分16秒>

Simon Shaheen - Sama'i Nahawand (Turath)


taqsim arabic oud music


Excerpts From Arboresque with Improvisations from Simon Shaheen and Bassam Saba


| | コメント (0)

2019年12月12日 (木)

チェチェン・クズ

チェチェン・クズは、ウード奏者の常味さんなど何人かのアラブ音楽家の演奏で聞いたことがありますが、日本でもよく弾かれているようです。アンコール・ピースのような扱いでしょうか。ムトゥル・トルンのウード教本にも楽譜がありましたが、大体色々な編成やアレンジで演奏されています。タンブーリ・ジェミル・ベイの曲は、サズ・セマーイのような変拍子の曲が多いので、チェチェン・クズのような親しみやすい小品の方がよく知られているようにも思います。1本目がタンブーリ・ジェミル・ベイのオリジナルのケメンチェ独奏です。(以下放送原稿を再度上げておきます)

エトハム・エフェンディと同じオスマン朝末期の音楽家のタンブーリ・ジェミル・ベイは、トルコ音楽史上最高のタンブール奏者と言われています。彼の作曲した中で、アラブ音楽でもよく演奏される「チェチェン・クズ」を今回おかけします。「チェチェンの娘」と訳せるこのヒュセイニー旋法の曲は、ロシアでの迫害から逃れてオスマン帝国に移住してきたチェチェンやチェルケスなど北コーカサス系の愛らしい美少女を描写した曲かと思います。タンブーリ・ジェミル・ベイはタンブールだけでなく、ケメンチェの名手でもあったので、ここではケメンチェを弾いています。アメリカTraditional Crossroadsの盤は、1910~14年にブルーメンタル・レコードとトーキング・マシーン・カンパニーによって行われたアコースティック録音からのCD復刻ですから、100年余り前の録音です。

<1-2 Tanburi Cemil Bey Vol.2-3 Cecen Kizi 3分9秒>

Tanburi Cemil Bey - Çeçen Kızı - Kemençe – Tanbur [ Külliyat © 2016 Kalan Müzik ]

Çeçen Kızı (Tanburi Cemil Bey)

| | コメント (0)

2019年12月11日 (水)

サフィイェ・アイラの生映像

何と、往年のトルコの女性歌手サフィイェ・アイラの生映像がありました。1907年生まれ1998年没で、オスマン朝末期から活躍した名歌手です。日本で言えば、淡谷のり子さんと同世代。父であるエジプトのヒジャージザデ・ハフズ・アブドラ・ベイは、彼女の出生前に亡くなり、宮廷の召使であった彼女の母親は、彼女がわずか3歳で亡くなったので、孤児院に送られ、そこで初等教育を修了、ブルサの教師大学で教育を受けました。ピアノの学生として音楽教育を始め、ムスタファ・スナルに師事し、当時の最も重要なカジノのいくつかでソリストとして歌い始めました。
幼い頃孤児だったことと、ケマル・アタチュルクのお気に入りの歌手の一人だったというのは、有名なエピソードです。トルコ現代歌謡(サナート)の元祖的な歌手の一人で、その可憐な歌声と対照的にも思える妖艶な歌唱の雰囲気がこの映像からも分かります。沢山有りすぎて選べない程ですが、最初の2本はアルバムタイトルにもなっていた曲です。3本目は何と71歳! これは先日のミュニール・ヌーレッティン・セルチュクの映像と同じ頃のようです。

Çile Bülbülüm - SAFİYE AYLA

Safiye Ayla - Yanık Ömer

Safiye Ayla - Menekşelendi Sular

| | コメント (0)

2019年12月 9日 (月)

女子十二楽坊とウスクダラ 他

ゼアミdeワールド190回目の放送、日曜夜にありました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画は、女子十二楽坊とウスクダラだけにしておきます。

トルコの伝統音楽の9回目です。トルコの音楽は手元の資料の数ではペルシア音楽やアラブ音楽に次いで多いので、オスマン古典音楽だけでも後数回は予定していますが、この辺でおそらく多くの人に耳馴染みではという曲から始めたいと思います。

サントゥーリー・エトハム・エフェンディのロンガ・シャーナズですが、中国の女子十二楽坊が「自由」というタイトルで演奏したことで知られています。2001年頃盛んにテレビCMでも流れたので、おそらく誰でも聞いたことのあるオスマン音楽と言えるでしょう。エトハム・エフェンディは、1855生まれ1926年没ですから、オスマン末期の音楽家です。サントゥーリーの敬称がある通り、サントゥールの名手でした。女子十二楽坊は二胡が中心ですが、琵琶、中阮、笛、揚琴、古筝、独弦琴もバックにいて、この内揚琴(ヤンチン)はサントゥールと同属の楽器です。ロンガは速い2拍子で演奏される軽快な楽曲形式で、コンサートの最後を飾ることも多いです。では2007年リリースの女子十二楽坊のアルバム「上海」から、「自由」のライブバージョンをどうぞ。

<12 女子十二楽坊 Freedom (Live) 4分12秒>

女子十二楽坊 自由


もう一曲のウスクダラはトルコの古典音楽ではなくイスタンブールの民謡になりますが、1954年に江利チエミが日本語で歌ったので、古い世代の方はご存知かと思います。オスマン音楽シリーズが一通り終わったらトルコ民謡の方でも取り上げますが、今回は往年の古典音楽の女性歌手サフィイェ・アイラの古い録音でおかけします。この曲の別名キャティビームが曲名になっています。音源は、アメリカRounderから出ていたSP復刻の「トルコ音楽の巨匠 Vol.2」の1曲目です。

<1 Safiye Ayla / Katibim 3分18秒>

Safiye Ayla-Uskudara gideriken aldida bir yagmur


エトハム・エフェンディと同じオスマン朝末期の音楽家のタンブーリ・ジェミル・ベイは、トルコ音楽史上最高のタンブール奏者と言われています。彼の作曲した中で、アラブ音楽でもよく演奏される「チェチェン・クズ」を今回おかけします。「チェチェンの娘」と訳せるこのヒュセイニー旋法の曲は、ロシアでの迫害から逃れてオスマン帝国に移住してきたチェチェンやチェルケスなど北コーカサス系の愛らしい美少女を描写した曲かと思います。ジェミル・ベイはタンブールだけでなく、ケメンチェの名手でもあったので、ここではケメンチェを弾いています。アメリカTraditional Crossroadsの盤は、1910~14年にブルーメンタル・レコードとトーキング・マシーン・カンパニーによって行われたアコースティック録音からのCD復刻ですから、100年余り前の録音です。

<1-2 Tanburi Cemil Bey Vol.2-3 Cecen Kizi 3分9秒>

同じチェチェン・クズを、クドゥシ・エルグネルのアンサンブルが演奏した録音がドイツのCMPから91年に出ていましたので、そちらでもおかけしておきます。

<11 Peshrev & Semai of Tanburi Djemil Bey / Cecen Kizi 3分42秒>

185回目にクドゥシ・エルグネルのメヴレヴィー的な演奏でかけたイスマイル・ハック・ベイのフェラフェザのペシュレヴもアラブ音楽でよく演奏されています。パレスティナのウード名手シモン・シャヘーンの演奏が、92年にドイツのCMPから出ておりました。そちらでおかけします。ペシュレヴは、ここではアラビア語のバシュラフになっております。なおシャヘーンは、シモンという名前の通り、パレスティナのキリスト教徒だと思われます。

<1 Simon Shaheen / Turath - Masterworks of the Middle East Bashraf Farahfaza 5分45秒>

では最後に、同じくシモン・シャヘーンの演奏で、タンブーリ・ジェミル・ベイの息子のメスード・ジェミルが書いたSama'i Nahawandを時間まで聞きながら、今回はお別れです。今回は途中までになると思いますが、ウードなどアラブの楽器でもよく演奏される名曲ですから、またちゃんとかける予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Simon Shaheen / Turath - Masterworks of the Middle East Sama'i Nahawand 8分16秒>

| | コメント (0)

2019年12月 6日 (金)

デヴレト・コロスのカラー映像

デヴレト・コロスの正式名称は、イスタンブール国立トルコ古典音楽合唱団(Istanbul Devlet Klasik Turk Muzigi Korosu(Chorus))で、彼らの映像は、カラーでもいくつもありました。ファースト・ヴァイオリンのトップが、ジョルジュ・バタイユに似た老紳士で気になりましたので、今日はこちらで上げておきます。ファースト・ヴァイオリンのトップは、トルコでもコンサートマスターと言うのか、同じ役割を果たすのかどうかは分かりません。このグループは、Kalan Muzik Yapimから1996年に出ていた「デデ・エフェンディ没後150周年記念(2CD)」の演奏団体でもありました。やはり売り切れで手元にないので、忘れておりました。その中からスズナーク旋法のベステを2本目に上げておきました。スズナークは、好きなマカームの一つです。

İstanbul Devlet Klasik Türk Musikisi Korosu 3. Dvd 1. Bölüm

Sûznâk Beste

| | コメント (0)

2019年12月 4日 (水)

Devlet Korosu Prof. Dr. Nevzat ATLIĞ

デヴレト・コロスの貴重なモノクロ映像がありました。これは紛れもないオスマン古典音楽ですが、途中で出てくる女性の独唱はMarie Keyrouzに似ていますし、コメント欄にも「Is this Byzantine music? Sounds like it.」というのがありました。そう思うのは、私だけではないようです。マリー・ケイルーズがビザンツ教会歌の盤で歌っていたのも、トルコ語はなくても、ギリシア語やアラビア語のシリア正教会などの歌でした。近東一帯は、19世紀まで全てオスマン帝国の版図でしたから、似ているのは当然かも知れませんが、トルコ人がアナトリアに入ってくる前のビザンツ帝国以来の要素もあるのかどうかが気になる点です。
ネヴザード・アトリーと表記することについてですが、トルコ語では上に楔型のあるGは、前の母音を伸ばしますので、アトリグではなくアトリーになります。序に言えば、Cはジャ行の音になります。

Devlet Korosu Prof. Dr. Nevzat ATLIĞ (Siyah Beyaz TRT Konseri 1.bölüm)

| | コメント (0)

2019年12月 2日 (月)

イスタンブル・デヴレト・コロスとネヴザード・アトリー

ゼアミdeワールド189回目の放送、日曜夜にありました。4日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

トルコの伝統音楽の8回目です。オスマン古典音楽名曲選の6回目としまして、トルコKentで演奏していたNevzad Atlig(ネヴザード・アトリー)指揮トルコ古典音楽国立合唱団の演奏が、フランスのUnescoからも出ておりますので、今回はそのTurkish Classical Music - Tribute to Yunus Emreから抜粋しておかけします。ケントの方は10枚の作曲家別の合唱付きオスマン古典音楽のシリーズで、その内の第5集のデデ・エフェンディの盤から数曲のみご紹介しました。このシリーズは20年以上前のリリースで、手元にはデデ・エフェンディのみ残っている状況ですので、他にどういうタイトルが出ていたか、また現在も手に入るかどうかは不明になってしまいました。ユネスコの方は、リリースが91年と言うことで同じ頃の演奏ですから、ケントの10枚シリーズのダイジェストのように聞けると思います。Tribute to Yunus Emreの副題がある通り、ペルシアの詩人ジャラール・ウッディーン・ルーミーの影響を強く受けた神秘主義詩を多く書いた13、4世紀トルコの詩人ユヌス・エムレ賛となっております。この国民的な詩人の生誕750周年だったようです。

まずは1曲目にアブドゥルカディル・メーラギのラストのキャールが入っておりますので、そちらからおかけします。ファスルの中では、このトルコのシリーズの3回目にかけました同じ作曲家のラストのベステ、Rast Nakis Besteの前の曲になりまして、クドゥシ・エルグネルのオスマン軍楽の1曲目にも一部出てきたと思います。14、15世紀と非常に古い時期から残るこの名曲が最初になっております。途中転調の妙も聞けます。

<1 Rast Kar-i Muhtesem - Ah Ki Kuned Kavm-I Beyakiyn 8分10秒>

İstanbul Devlet Klasik Türk Müziği Korosu - Rast Kâr-ı Muhteşem


トルコシリーズの初回にかけましたガズィ・ギレイ・ハーンのマーフールのペシュレヴが3曲目に入っておりますので、そちらをおかけします。ガズィ・ギレイ・ハーンは、現在はロシア領のクリミア半島出身で、チンギス・ハーンの末裔と言われるクリミア・ハーン国の12代目ハーンでしたが、勇敢な戦士であるだけでなく偉大な作曲家としても知られ、色々な楽器を演奏し、アラビア語、ペルシア語、オスマン語など多言語で詩も残しています。Mutlu Torunのウード教本にも入っているこのマーフール旋法の明るく親しみやすいペシュレヴは、作曲されたのが16世紀ということで、オスマン音楽の中でもかなり古い曲ですが、長らく口承で伝えられ、ウルヴィ・エルグネルが記譜した云々という話を前にもしました。

<3 Mahur Pesrev 3分6秒>

İstanbul Devlet Klasik Türk Müziği Korosu - Mahur Peşrev [ © 2002 Kalan Müzik ]


この盤の5曲目には17、8世紀の作曲家ウトリーの大作Neva Kar(ネヴァー・キャール)も入っております。ウトリーはイスタンブルに生まれ、最初の音楽教育をイスタンブルのメヴレヴィー教団の修道場で受け、オスマン帝国第19代皇帝メフメト4世(在位:1648-1687)の時代の宮廷音楽家にして、詩人で書家でもあったという人です。古典的な様式に誠実である多くの作曲家が、大なり小なり彼の影響を示しているとのことです。ウトリーの綴りはItriですが、トルコ語では上に点のないIと上に点のあるIを区別し、点のない方はイの口でウと言う発音、点のある方はイの音ですので、ウトリーの最初の音は前者になるため、表記上はウとしていますが、ユに近いかも知れません。
この曲は13分を越えますので、途中で終わるかも知れませんが、もし時間が余りましたら、8曲目のEvc Ara Saz Semaisiをおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Neva Kar 13分12秒>

İstanbul Devlet Klasik Türk Müziği Korosu - Neva Kâr [ © 2002 Kalan Müzik ]

| | コメント (0)

« 2019年11月 | トップページ | 2020年1月 »