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2019年12月16日 (月)

カンテミルオール(Kantemiroglu)

ゼアミdeワールド191回目の放送、日曜夜にありました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。youtubeは色々ありますが、今日の動画はCantemir: Music in Istanbul and Ottoman Europe Around 1700の方だけにしておきます。このジャケットは割とコーカソイドっぽく書かれていますが、彼の肖像画には色々なタイプが存在するようです。カンテミルオールの末尾のogluのgは、例の楔型が上にある方ですので、Gの音は発音せずに前の母音を伸ばすのみになります。

トルコの伝統音楽の10回目です。今回トルコの音楽を特集するに当たって、個人的に一番調べてみたかったのが、カンテミルオールの音楽です。私が彼の名前を初めて知ったのは、ジェム・ベハールの「トルコ音楽にみる伝統と近代」という著作で、トルコ作曲家リストの中に彼の名前がありました。モルダヴィア貴族のカンテミル家は、クリミア・ハーン国から移住してきたタタール系で、チンギス・ハーンの血を引くと言われています。トルコ語、アラビア語、ペルシア語、ルーマニア語、スロヴェニア語、ロシア語、ギリシア語、ラテン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ハンガリー語を完全に習得していたというポリグロット(マルチリンガル)だった点と、トルコ音楽、オスマン帝国史、故国モルダヴィア・ルーマニアに関する歴史書、哲学書など多様な著作があるという点にも、非常に惹かれました。

しかし、有名なのに反して、彼の曲が入った音源は何故かトルコ盤にもなかなか見当たらず、今回アップルミュージックで調べてみて、ヨーロッパの古楽の枠で出ている盤に多く収録されていることが分かりました。それらのジャケットの何枚かにカンテミルオールの肖像画が出ていますが、確かに日本人とも見間違えるようなアジア的な顔立ちに描かれています。モルダヴィアに近いクリミア・ハーン国のガズィ・ギライ・ハーンも、キプチャク系だから当然と言えば当然ですが、チンギス・ハーンの血を引いていたのを思い出します。

カンテミルオールはルーマニアの東に位置するモルダヴィアの人で、当時モルダヴィアはオスマン帝国領でした。総督であるコンスタンティン・カンテミルの子で、コンスタンティンの父の時代にイスラムからキリスト教に改宗しています。「カンテミルオール」とは、モルダヴィア公ディミトリエ・カンテミールのトルコ名で、公子としてイスタンブールに22年滞在中に数々の曲を作曲し、独自の楽譜を考案、自作曲を書き残しています。生没年は1673年~1723年ですから、バッハより少し前の時期になります。

カンテミルオールの曲を取り上げている中で、トルコ人の音楽家はケメンチェ奏者のイフサン・オズゲンがいました。2,3枚確認した中では、オスマン古典として聞ける曲、モルダヴィアの民族音楽色が濃い曲など、幾つかのタイプに分かれるように思いました。

まずは、イフサン・オズゲンが参加した「Cantemir: Music in Istanbul and Ottoman Europe Around 1700」という盤に、異色とも思えるモルダヴィアの舞踊曲シルバが2バージョン入っていますので、続けておかけします。東欧系ユダヤのクレズマーにも似た哀感に満ちた曲調です。

<1 Syrba - Moldavian Dance 1分34秒>

Syrba - Moldavian Dance


<2 Syrba - Moldavian Dance 1分19秒>

Syrba - Moldavian Dance


ウィキペディアには音楽家としてのカンテミルオールについて、以下のように解説がありました。

「オスマン古典音楽の作曲者としても知られ、40曲ほどの作品がある。アラビア文字を利用した独特の文字楽譜によって約40の自作曲を含む、350余りの器楽曲を採譜した『文字による音楽の知識の書』をトルコ語(オスマン語)で著してスルタンに献呈した。彼の考案した文字譜は画期的なものだったがトルコにおいて広まることはなかった。」

このように僅か40曲なので、聞く機会もこれまでなかったのかなと思いました。そのオスマン古典曲も同じ盤に入っておりますので、ヒュセイニ旋法のペシュレヴを同じ盤からおかけしますが、ペシュレヴと思えないくらい古楽的な演奏です。演奏はIhsan Ozgen, Linda Burman-Hall & Lux Musicaということで、おそらくトルコ人はイフサン・オズゲンだけでしょうか。

<28 Huseyni Pesrev 3分33秒>

Hüseynî Pesrev


もう一曲この「Cantemir: Music in Istanbul and Ottoman Europe Around 1700」という盤から、カンテミルオールを讃えた曲と思われるIn Honor of Prince Kantemirという曲がなかなか秀逸ですので、おかけしておきます。

<14 In Honor of Prince Kantemir 3分43秒>

In Honor of Prince Kantemir


検索で出てきたのは3枚ありまして、2枚目にご紹介しますのは、スペイン古楽界の大御所ジョルディ・サヴァールとエスペリオン21の演奏で、アルバムタイトルはオリエント~オクシデントです。聖母マリアのカンティガから、イタリアのトレチェント(14世紀)の音楽、サラエボのセファルディー音楽、アフガニスタンやペルシアの音楽などに混じって、カンテミルオールの曲が4曲入っています。この中から、冒頭を飾っている明るいマカーム・ラストと、対照的にエキゾチックな短調の旋律が印象的な13曲目のマカーム・ニクリーズの2曲を続けておかけします。

<1 Makam Rast "Murass'a" Usul Duyek (Turquie, Mss. de Kantemiroglu) 4分40秒>

<13 Makam Nikriz Usul Berevsan (Turquie, Mss. de Kantemiroglu) 3分34秒>

もう一枚はGolden Horn Ensembleというグループの演奏で、このDimitrie Cantemir (Kantemiroglu)という盤のジャケットは、本当に日本人と見紛う感じです。この中からHuseyni - Fahteと言う曲を時間まで聞きながら、今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Huseyni - Fahte 10分19秒>

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