都山流尺八の「春の海」
ゼアミdeワールド194回目の放送、水曜夜にありました。宮城道雄の自作自演の動画は何度も上げていますので、これまでに上げたことのなかった山本邦山の音源のみにしておきます。虚無僧尺八のカラーが強い古風な琴古流に対し、都山流は明治以降確立された関西ベースの新しい流派なので、早くから新日本音楽と提携し、新様式を積極的に開拓して演目を広げて来ました。「春の海」も、新日本音楽に入るでしょうから、都山流尺八はぴったりなのでは。山本邦山さんは、80年代にジャズやインド音楽との共演などもされていたように記憶しています。
明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。
8日の再放送枠のみありますので、正月関連の特番に致します。これまで3回「春の海 大響演」という2枚組からご紹介していましたが、今年は3年前の最もオーソドックスな音源に戻ってご紹介します。
お正月と言えば、宮城道雄の「春の海」を思い出す方が多いのではと思います。正月中はどこに行っても耳にする曲ですが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組が出ておりますので、こちらからご紹介して行きます。
まずは、宮城道雄の自作自演で、尺八は初演を勤めた吉田晴風です。
<1 春の海(オリジナル) 6分30秒>
宮城道雄の父の出身地である広島県鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれていますが、吉田晴風との1930年の初演の評判は芳しくなかったそうです。
この曲が一躍有名になったのは、1932年に演奏旅行で来日していたフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと共演してからと言われています。日本音楽に触れるために宮城道雄を訪ねた彼女が一番感動したのが、この「春の海」で、早速尺八パートをヴァイオリン用に編曲して宮城道雄とコンサートで演奏したら、大喝采を受けたそうです。会場で聞いていた小説家の川端康成が、その感動の光景を小説「化粧と口笛」に記しています。その宮城道雄とルネ・シュメーの演奏を次にどうぞ。
<2 春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分13秒>
次にフルートのガッゼローニと三代目宗家の宮城数江の1972年録音をかけてみましょう。1956年の宮城道雄の没後では、最初のこの曲の録音です。ガッゼローニと言えば、ジャズの鬼才エリック・ドルフィーのフルートの師匠としても知られ、ドルフィーのアルバムOut to LunchにGazzelloniと言うオマージュ曲が入っていました。
<7 春の海(箏とフルートによる) 7分1秒>
では、最後に宮城道雄にも師事した作曲家でもある唯是震一と都山流尺八の山本邦山の録音でおかけします。去年の正月に予告していた音源です。琴古流と都山流の尺八の芸風の違いが感じられて興味深いものがあります。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<8 春の海 唯是震一と山本邦山 6分39秒>
『春の海』
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