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2020年2月24日 (月)

オコラのArchives de la musique turqueから

ゼアミdeワールド201回目の放送、日曜夜にありました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。Ocora盤そのものの音源は見つからず、Gulistan Hanimのみ該当曲がありました。

トルコの18回目になります。今回は何枚かのトルコの古い録音から抜粋しておかけしますが、音源は仏OcoraからのSP復刻の「トルコ音楽の記録」の2枚、米Rounderからの「トルコ音楽の巨匠たち」の2枚、米Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」辺りです。割と最近にHONEST JON'S RECORDSから出た「To Scratch Your Heart  Early Recordings From Istanbul」の2枚組は現物が手元にないので、今回は見送るかも知れません。

オコラの「トルコ音楽の記録」に入っているのは、ハーフズ・メフメト・ベイ、アブラハム・カラカフ(あるいはジャラジャフ)・エフェンディ、メスード・ジェミル・ベイ、グリスタン・ハニム、カーヌーニ・ハジ・アリフ・ベイ、ヴィクトリア・ハニム、フェルヤディ・ハーフズ・ハック・ベイ他で、オスマン朝の古典音楽から、軍楽、クルドの歌などがあります。録音は1904~30年頃です。

まずは1曲目で、コーラン朗誦者ハーフズの称号を持つ男性歌手メフメト・ベイの歌唱で、サバー旋法のガゼルをどうぞ。最初を飾る素晴らしい歌声です。

<1 Hâfiz Mehmet Bey / Gazel, Makam Saba 2分57秒>

多くのオスマン音楽家がそうですが、ハーフズ・メフメト・ベイも、まず軍楽の中で鍛えられたようです。次は3曲目のオスマン軍楽のファンファーレですが、管楽器のみで打楽器抜きの演奏は、現代では珍しいように思います。演奏はゴールドベルク・オーケストラです。

<3 Orchestre Goldberg / Kanto 3分1秒>

7曲目で歌っているハーフズ・ブルハン・セスィイルマズは、ジプシーの血を引く歌手で、宗教歌から世俗音楽に転向し、イスマイル・ハック・ベイにもついたそうですが、ここで歌われるのは、ヒュセイニ旋法のクルドの山歌(Daghi Song)です。クルドの歌らしいフリーリズムから始まる高く張った歌声を聞かせます。この人は1943年演奏中に心臓発作を起こし、46歳の若さでなくなりました。

<7 Hâfiz Burhân Sesyiklmaz / Chant Populaire Daghi, Makam Huseyni 2分6秒>

10曲目はズルナとナッカーレだけの伴奏で女性歌手グリスタン・ハニムが歌っていますが、こういうタイプは現在は聞けない珍しい音楽のようです。地方の大衆歌謡になるようです。(エロティックな猥歌の類かも)

<11 Gulistan Hanim / Kanto【粉屋さん粉屋さん、ほら私の黒髪、あなたにあげる】(Gulistan hanim/ 1905) 3分7秒>

Gulistan Hanım - Değirmenci Kantosu [ Kantolar © 1998 Kalan Müzik ]


主にオリエンタル・ダンス(あるいはベリーダンス)の伴奏に使われるチフテテリもありまして、100年前の音源と言うのは貴重だと思います。クラリネット奏者を初め、演奏者名は伏せられています。

<15 Anonyme / Cifte Telli 3分11秒>

このオコラの2枚シリーズが出た95年頃は、まだ珍しかったメスード・ジェミルのタンブール独奏の音源も一曲入っています。タクシームの旋法はスズナークで、敬称の「ベイ」が名前の後に付いています。

<18 Mes'ud Cemi Bey Tel / Taksim Au Tanbur, Makam Suznak 2分44秒>

1集の音源が続きましたが、このArchives de la musique turqueの2集からも2曲ほどかけたいと思います。ギリシア系の女性歌手には、スミルナ派のレベティカと区別がつかないような歌唱もありますが、特に珍しいのがラストを飾っている「ペリヴァンの踊り」という曲で、ズルナとケトルドラムのナッカーレがレスラー(ペリヴァン)を鼓舞する曲とのことです。歌っているヤクーミ・エフェンディは、ジプシーの血を引くそうです。トラキアとルメリアのグレコ・ローマンのレスリングとありますので、もしかしたらギリシアとローマの文化が混交しているこの辺りがレスリングの発祥地でしょうか? グレコ・ローマンと言うのは、現在のオリンピックなどでも普通に聞く用語です。同じトルコでも東アナトリアのイランの近くになると、この種の音楽もイランのズルハネに近くなるようです。

<21 Yakumi Efendi - Pehlivan havasi (1903) 1分57秒>

では最後にユダヤ系の男性歌手アブラハム・ジャラジャフ・エフェンディの歌唱を時間まで聞きながら、今回はお別れです。この人の歌は1集にも入っていましたが、2集の8曲目が少しトルコのカントール風にも聞こえ、興味深いものがありました。8分の9拍子のアクサクのリズムで書かれた、ラスト旋法のシャルクです。
アメリカ盤の3枚の古い録音は、次回に取り上げたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<8 Abraham Caracach Efendi / Şarkı, Makam Rast 3分59秒>

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