ゼイベクとゼイベキコ
ゼアミdeワールド199回目の放送、日曜夜にありました。12日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。
トルコの16回目になります。今回はオスマン音楽の曲名によく出てくるゼイベクと、ギリシアの舞踊ゼイベキコの関係を探ってみたいと思います。今日の2本以外は、また後日。
オスマン古典音楽を聞いていて、曲名にギリシアの舞踊と関連のあるゼイベク(あるいあはゼイベキ)とか、ベリーダンスと関連する舞踊チフテテリの名が出てくるのが、少々意外に思われる方もいらっしゃるのではと思います。
ギリシアのZeibekiko(ギリシア語:Ζεϊμπέκικο)は、オスマン大衆音楽の影響を強く受けたギリシアにおける貧民層のサブカルチャーだった音楽、レベティカとともに踊られた踊りと言われます。
一方、ゼイベクはトルコの西アナトリアに特有の踊りで、ギリシアのゼイベキコはトルコ・アナトリア西部のゼイベクに由来する踊りです。リズムが特徴的で、ゆっくりとした9拍のリズム・パターンが多く、多くは4分の9拍子=2+2+2+3拍ですが、3+2+2+2拍の変化形も見られます。
これは推測ですが、今のトルコの場所が「トルコ化」するのは、オスマン朝以前のセルジュク朝が興った11世紀頃からで、セルジュク朝以前のトルコの場所は、長らくビザンツ帝国でしたからギリシア系住民が多かったはずなので、ゼイベクもその頃のギリシア系舞踊にルーツを辿れるのかも知れません。
まずは、タンブーリ・ジェミル・ベイのTraditional Crossroadsからの1枚目に入っているZeibek Havasiからおかけします。2+2+2+3の9拍子がはっきり分かる踊りの曲です。
<7 Zeibek Havasi 3分39秒>
Tanburi Cemil Bey - Zeybek Havası - Kemençe – Ud [ Külliyat © 2016 Kalan Müzik ]
タンブーリ・ジェミル・ベイがケメンチェで弾いていたZeibek Havasiと全く同じ旋律を、現代ギリシアの歌姫ハリス・アレクシーウが歌っていますので、続いておかけします。伴奏のギリシアの代表的弦楽器は、明るい音色のブズーキで、トルコのサズ、レバノンやシリアのブズクと兄弟楽器になります。
<1 Xaris Alexiou / 23 Tragoudia ~Μαntalio (Mantalena) 3分>
Μανταλιώ ( Μανταλένα ) Χάρις Αλεξίου
ハリス・アレクシーウがレベティカやライカを歌った名盤タ・ツィリカには、2+2+2+3の9拍子とはっきり分かるカモマトゥと言う曲がありますので、併せておかけしておきます。これもゼイベキコになるのかと思いましたが、アレクシーウのベスト盤の中村とうようさんの解説によると、トルコのカルシュラーマがギリシアに根付いたカルシラマスの踊りのリズムのようです。
<1-2 ハリス・アレクシーウ / カモマトゥ 2分56秒>
タンブーリ・ジェミル・ベイの息子メスード・ジェミルの2枚組にも、ゼイベクと付く曲がありますので、2曲続けておかけします。最初がタンブールの独奏で、2曲目は民謡歌唱のような合唱で、どちらも1932年録音です。2曲とも2+2+2+3の9拍子とはっきり分かります。
<1-8 Nikriz Taksim Nikriz Zeybek (1932 Kahire Arap Musıkisi Kongresi Kayıtları) 2分45秒>
<1-10 Muhayyer Aksak Zeybek - Sarı Zeybek (1932 Kahire Arap Musıkisi Kongresi Kayıtları) 3分19秒>
1938年生まれのサズやタンブールの名手タリプ・オズカンのオコラ盤にもゼイベクがありましたので、一曲おかけします。タリプ・オズカンと言えば、サズの名人の印象が強いので、古典楽器のタンブールを弾いてもどうしても民謡系のニュアンスを感じてしまいますが、そこが面白い点でもあります。
<13 Talip Özkan / Makam Nikris: Taksim / Kordon Zeybeği (Açış) 6分3秒>
では最後に東地中海各国の擦弦楽器(フィドル)を集めたギリシアFMのコンピレーション盤から、ソクラテス・シノプーロスのリラ演奏でゼイベキコを時間まで聞きながら、今回はお別れです。リラは音と形共にトルコのケメンチェにそっくりの楽器です。
もし時間が余りましたら、ギリシア南部に浮かぶクレタ島のリラもおかけします。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<10 Sokratis Sinopoulos / Zeibekikos 3分>
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