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2020年3月30日 (月)

ドニゼッティ・パシャ、アルバトロス盤

ゼアミdeワールド206回目の放送、日曜夜10時にありました。1日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。アルバトロスの方は、同じ音源はおそらく見当たらないと思います。女性音楽家ディルハヤット・カルファはまた後日と言うことで、今日はドニゼッティ・パシャのみにします。

トルコの23回目になります。オスマン音楽が長くなりましたので、そろそろトルコの民謡の方に移ろうかと思いますが、その前に2曲ほどまだ取り上げてなかったオスマン古典音楽の音源をご紹介します。

「愛の妙薬」や「ランメルモールのルチア」など、イタリア・オペラの作曲家として有名なガエターノ・ドニゼッティの兄であるドニゼッティ・パシャは、オスマン朝に招かれて西洋音楽を本格的に導入した人として知られています。イェニチェリ軍楽隊の廃止の後、新たに宮廷軍楽隊を指導するため、在イスタンブールのサルディニア大使館を通してスルタンに招かれ、1828年から68歳で亡くなるまで28年間をイスタンブールで過ごしました。本名はジュゼッペ・ドニゼッティですが、パシャの称号を付けて呼ばれるのが常になっています。後にオスマン帝国の事実上の国歌となったマーチなどを作曲し、その功によりパシャの称号を与えられたとのことです。
ドニゼッティ・パシャの名前は知っていても、音源は聞いたことがなかったのですが、未入荷アイテムのデータをアップルミュージックで一曲見つけましたので、その曲をおかけします。Ensemble Bîrûn & Kudsi Ergünerの演奏で、曲名はŞevk-efza Peşrevです。いかにもオスマン軍楽らしい一曲です。アルバムタイトルはCompositori alla corte ottomanaというイタリア盤です。

<Ensemble Bîrûn & Kudsi Ergüner / Şevk-efza Peşrev 3分19秒>

Şevk-efza Peşrev


オスマン古典音楽には、これまでにかけてない音源に土Sonyの「トルコ古典音楽作曲家シリーズ」や「オスマンのモザイク」シリーズなど、色々ありますが、きりがないので、ユダヤ系、アルメニア系、ギリシア系、女性作曲家作品集が出ている「オスマンのモザイク」シリーズの中から、女性作曲家作品集の一曲をおかけしておきます。前回「ハーレムの歌」という盤を取り上げましたが、関係がある作曲家もいるのではと思います。セリム3世の時代に王宮で活躍した18世紀の女性音楽家ディルハヤット・カルファが最も有名な人で、混声合唱付きのサバー旋法のベステ「Yek Be Yek Gerci Merami Dil-I」がありますのでおかけします。

<2 The Government Chorus Of Ministry Culture / Yek Be Yek Gerci Merami Dil-I 7分33秒から3分位>

この後はトルコの民謡と地方音楽に移ります。最初におかけするのは、2002年にキングレコードから出たイタリアのアルバトロス名盤復刻30選の一枚「トルコの歌と音楽」です。まだ関東にいた頃に、プロデューサーの星川京児さんとキングの担当者から依頼を受けまして、私がこの盤とユダヤ音楽の盤、2枚のライナーノーツの翻訳を担当しました。原盤は1978年のイタリア盤で、解説はイタリア語から英語に翻訳されていましたが、ラテン系の言葉からの少々癖のある英訳で、なかなか手強かったのを覚えています。このシリーズは現在は全て廃盤ですが、サンプル盤で30枚全て手元にあります。オスマン音楽や軍楽も入っていますが、民謡と民俗音楽(フォークミュージック)のみおかけします。

まずは周辺部の変わり種の音楽ですが、トルコの後で取り掛かるギリシアの音楽とも繋がりのあるトルコ東北部のグルジアに近い黒海沿岸のホロン・ダンスの音楽です。この地に住むギリシア系のポントス人の伝統的な8分の7拍子の踊りで、アルメニアのドゥドゥクに似た柔らかい音色のダブルリード管楽器メイと、バスドラムのような大型両面太鼓ダウルによる演奏です。ホロン・ダンスは、細長い「黒海のケメンチェ」 (カラデニス・ケメンチェ)で演奏されることが多いので、メイによる演奏は珍しいように思います。

<9 サディ・テルネズ / アルドヴンのホロン・ダンス 1分41秒>

次は一つ戻って8曲目の「ギリシアのチフテテッリ・ダンス」です。ホロン・ダンスと似ているのは、管楽器とダウルという編成ですが、ジプシー音楽家らしく管楽器がここではクラリネットに変わります。ベリーダンスのレパートリーとしても知られるチフテテリの原義は「二重の弦」という意味です。トルコ中部カッパドキアのユルギュプには1923年までギリシア人が多く住んでいて、この曲はその頃演奏されていた旋律に基づくので、「ギリシアの」の意味のルーメリの名が付いています。

<8 ハイダル・チェヴィク / ギリシアのチフテテッリ・ダンス 3分6秒>

これまで放送とブログ共に何度か出てきたカルシラマは、チフテテリと同じでトルコ中西部辺りの踊りですが、ゼイベクはエーゲ海に近い西部の方に特徴的な舞踊曲になります。「古いアラブのゼイベク・ダンス」という曲が入っていますので、こちらをおかけします。瓢箪を共鳴胴にしたフィドル、カバク・ケマンと、一番小さいサイズのサズのジュラの組み合わせの珍しい演奏です。

<13 イドリズ・ケスキン / 古いアラブのゼイベク・ダンス 1分22秒>

ラストの14曲目はアルハヴィ地方の踊りというケメンチェ独奏の曲です。トルコ東部と言うことで、音の印象はホロンと同じくギリシアやクレタの音楽に近い感じもありますが、民族的にはトルコに住む南カフカス系のラズ族との関係が深いようです。

<14 ハサン・トゥルナ / アルハヴィ地方の踊り 3分54秒>

踊りの曲が続きましたので、サズ弾き語りの民謡「ダマスカスのピスタチオ」をおかけして、最後はトルコ西部の羊飼いの笛を聞きながら今回はお別れです。サズは小さいものから順にジュラ、バーラマ、ディヴァンと呼ばれ、ここで弾かれているのはバーラマ・サズです。羊飼いの笛の名前はカヴァルで、バルカン半島でも愛好されている歌口のない素朴な縦笛です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<12 イブラヒム・ケペトチオール / 民謡「ダマスカスのピスタチオ」 2分21秒>

<10 レシャト・ウイサル / アフシャルの遊牧民の旋律「羊のために」 2分40秒>

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