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2020年6月

2020年6月29日 (月)

クルド・マカーム名曲選 ジェロシャーヒ

ゼアミdeワールド214回目の放送、日曜夜10時にありました。7月1日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はジェロシャーヒのみにしておきますが、ナーゼリーの方はブダではなくイラン盤の演奏です。

クルドの音楽の3回目です。今回はクルド・マカームの名曲選として、ジェロシャーヒと言う曲の聞き比べと、サハリーと言う曲を取り上げます。演奏される楽器は、中東の弦楽器でも特に古い歴史を持つと言われるタンブールです。クルド・マカームとは、クルド独自の旋法を指すのと同時に、そのレパートリー自体も指しています。

往年のタンブール名人にして哲学者のオスタッド・エラーヒの演奏からかけますが、彼は名ヴァイオリニストのユーディ・メニューヒンや、モダンバレエの巨匠モーリス・ベジャールなどからも賞賛を受けていたと言う人です。私がまず目に留めたのは、そのコメントでした。仏Chant du mondeのシリーズで最初に出た「オスタッド・エラーヒ/天上のタンブール」について2001年に書きました音楽之友社刊「世界の民族音楽ディスクガイド」の拙稿を読み上げます。

この人のタンブールによる即興演奏の凄さは筆舌に尽くし難い。たった2本弦の素朴な弦楽器から、ピーンと張り詰めた非常に求心力の高い信じられない世界を作り出す。真剣にまた何度か聞き込む内にそのことが実感されると思うが、時折自然に出てくる彼の歌声がまた凄い。彼はペルシア古典音楽の大御所ムーサー・マアルフィーを初め、西洋のユーディ・メニューヒンやモーリス・ベジャールなどからも絶大な賞賛を受けていた。
 このイランのクルディスタンの音楽家、哲学者、エラーヒ(1895-1974)のCDもシャン・デュ・モンドから5枚、Truspaceから1枚を数えている。まだ出るかもしれない。しかしあのChant du mondeから5枚とは尋常ではない。フランスには彼のHPもあり、その筋ではやはりカリスマ的な注目を集めているようで、最近では日本にCDがなかなか回ってこないような状況になっている。音楽家だけでなく哲学者でもある彼は、生前録音を禁じたとも言われるが、没後20年程経って宗教的催しの際の秘蔵録音がこうしてCD化されることとなった。
 

ジェロシャーヒも、淡々としながらも激しく繊細なかき鳴らしの中に、スーフィー音楽の極致がかいまみえてくるような演奏です。シャンデュモンド盤は売り切れで手元にないので、iPhoneからの音出しになります。

<1 The Sacred Lute: The Art of Ostad Elahi, Vol. 2 - Reverence ~Jelo Shāhi Suite 7分33秒>

Jelo Shāhi Suite


このジェロシャーヒが、シャハラーム・ナーゼリーwithアリ・レザ・ファイズ・バシプール&ハーフェズ・ナゼリ/Mythical ChantというフランスBuda盤にも入っていますので、続けておかけしておきます。先週一部かけましたナーゼリーの2006年の日本公演では演奏されなかった曲です。ひとつ前に入っているロスタム(Rousam)がジェロシャーヒに当たるとの説もありますので、2曲続けておかけします。

<4 Shahram Nazeri - Mythical Chant ~Rousam 4分19秒>

<5 Shahram Nazeri - Mythical Chant ~Magham-E-Jeloshahi 3分30秒>

Maqam-e-Jelo Shahi


ナーゼリーとも共演しているタンブールの名人アリ・アクバル・モラディの仏Ineditの4枚組「ヤルサンのマカーム儀礼」を見ると、クルド・マカームには70曲以上のレパートリーがありますが、この中にはジェロシャーヒが見当たりませんでした。日本のタンブール奏者のKさんを通して曲名を聞くことの多いサハリーという曲を代わりにかけておきます。この盤についてのゼアミHPでのコメントを引用します。

11世紀に生まれたヤルサンのタンブールを用いた儀礼音楽を収めた初のアルバム。ヤルサンはアフレハック(Ahl-e Haqq: "People of the Truth")としても知られ、イスラーム以前の古代ペルシアの信仰に起源があると言われるクルディスタンに多く見られる宗教(クルド人口の3~10%)。モラディはイラン西部ケルマンシャー出身のクルドのタンブールの巨匠。4枚にわたって秘教ヤルサンのマカーム儀礼を収録したイネディならではの注目作で、特に往年の大巨匠エラーヒや最近のシャーラム・ナゼリの音楽に感動した方は要チェックです。

では、モラディのタンブール独奏でサハリーを聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1-14 Ali Akbar Moradi / Sahari 10分38秒>

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2020年6月25日 (木)

カーブーキとその後

「カーブーキ」は、「花嫁」あるいは「小鳩」の意味とのことですが、スーフィー的な深意があるのかどうか、2006年の来日時のナーゼリーさんへのインタビューの際に聞いておけば良かったと思いました。あの日のライブを思い出させる弾き語り映像がありました。赤いラインの入った黒い衣装もあの時と同じですが、演奏は2010年代ではと思います。改めてナーゼリーさんの歌のパワーと、セタールの妙技が手に取るように分かって嬉しい一本です。2本目はカムカル・アンサンブルのライブ映像です。先日は静止画像でしたから。ビジャン・カムカルのダフ叩き歌いも凄いなぁと改めて思います。
この曲は、その後(でしょうか?)ノリの良さからか、色々なヴァリエーションが登場して来ていました。ヴァイオリン独奏なら分かりますが、4本目のようなポップな展開は、ナーゼリーさんが知ったらどう思うでしょうか(笑) イラン・ポップスのほとんどは、人々を騙す悪い音楽だとインタビューの際に本人から聞きました(笑)

Persian Music:"Kurdish Folk Song: Kabouke"by Shahram Nazeri


Kamkars - Kabukê / @Kommuzik


Kabooki


AHOURA KABOOKI REMIX

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2020年6月24日 (水)

バレエ「ガイーヌ」の自作自演

ハチャトゥリアンが1964年に自ら指揮したバレエ「ガイーヌ」(ガヤネー)の映像がありました。これは凄いです! 3本目が全曲、2本目はレズギンカの部分、1本目は現代のマリインスキー劇場バレエ団の舞台ですが「剣の舞」です。指揮はフェドセーエフではありませんが、バレエがめちゃくちゃカッコいいです。指揮者他、アルメニア系の名前だけ見えます。全曲の中で、レズギンカは16分過ぎ、剣の舞は26分過ぎに出てきます。
コーカサスの時に書いたと思いますが、レズギンカは大学オーケストラでやりまして、パーカッション担当が真ん中に陣取り、スネアでカフカス・ドラムのリズムを張り切って叩いていたのを昨日のように思い出します。ハチャトゥリアンの演奏では、カフカス・ドラムの音色に聞こえます。コーカサスのサーベル・ダンスとの比較もしたと思いますので、宜しければ併せてご覧下さい。これも書いたように思いますが、英訳ではサーベルではなくサブレと、洋風せんべい(笑)のような表記になっていますが、原語がТанец с саблями(ターニェツ・ス・サブリャミ)となっているので、音を合わせたのではと思いました。

Gayaneh at the Mariinsky


Khachaturian - Lezginka (from Gayane Ballet) - Khachaturian conductor - 1964


Aram Khachaturian - Gayane

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2020年6月22日 (月)

剣の舞 カーブーキ

ゼアミdeワールド213回目の放送、日曜夜10時にありました。24日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はカムカル・アンサンブルのカーブーキだけにしておきます。

クルドの音楽の2回目です。まずは前回iPhoneを忘れてかけられなかった「剣の舞」をおかけしておきます。

クルド音楽のイメージは、ハチャトゥリアンのバレエ『ガイーヌ』に出てくる「剣の舞」によく表れていると思いますが、クルド人が剣を持って舞う戦いの踊りを描写したこのタテノリの激しい音楽は、枠太鼓ダフを叩き歌う一部のクルド音楽そのもののように聞こえます。
「剣の舞」は、グルジア生まれのアルメニア人作曲家ハチャトゥリアンにしか書けないであろう、コーカサス音楽の見本市のような「ガイーヌ」の一曲ですが、剣の舞というスタイルはクルド以外のコーカサス系諸民族にも豊富に見られます。

コーカサスでは「ガイーヌ」からレズギンカをかけましたが、今回は「剣の舞」をウラジーミル・フェドセーエフ指揮、モスクワ放送交響楽団の演奏でおかけします。

<剣の舞 ウラジーミル・フェドセーエフ指揮、モスクワ放送交響楽団 2分16秒>

「剣の舞」のようなタテノリのクルド音楽の典型として、イランのカムカール・アンサンブルの演奏を聞いてみたいと思います。シャハラーム・ナーゼリーなどのクルド系のペルシア古典音楽家との演奏と、クルド音楽そのものの場合と両方のレパートリーがあります。彼らはサントゥールなどペルシア楽器のそれぞれの達人でもあり、ソロ作まで含めると欧米盤とイラン盤でかなりの枚数が出ています。イランShahramからのクルド音楽盤からKagaue (The Bride's Place)と言う曲をおかけします。「花嫁の場所」のタイトル通り、結婚式での音楽と思われます。

<4 Kamkars Ensemble / Kagaue (The Bride's Place) 5分7秒>

もう一曲、シャハラーム・ナーゼリーが2006年の来日公演で歌った「カーブーキ」も入っていますので、カムカールの演奏でおかけしておきます。この曲を訳すと「花嫁」ということで、先ほどと同じテーマの曲ですが、スーフィー的な深意があるのかも知れません。

<8 Kamkars Ensemble / Kabooki 5分>

Kabouki by Kamkars Ensemble


カーブーキが出てきましたので、2006年のシャハラーム・ナーゼリーの浜離宮朝日ホールでのライブ録音からもかけておきます。キングのワールドルーツミュージックライブラリー150枚の1枚ですが、ライナーノーツ執筆は私が担当しました。「ナーゼリーによるセタール独奏と歌。イラン西部ケルマンシャーの北に位置するサナンダージで話されている言葉による歌。訳は小鳩とする説もあり」と言う風に拙稿を書いておりました。余談ですが、この東京公演の時、私はナーゼリーやペルシア音楽全般のCDの即売で会場に行っておりました。関東方面で聞いて頂いている方で、14年前の会場でご来店頂いた方がいらっしゃるかも知れません。公演の直前に某社の企画でナーゼリー氏にインタビューもしまして、当時の某社のミニコミ誌に載りましたが、ゼアミブログにもアップしてあります。

<5 シャハラーム・ナーゼリー / カーブーキ (花嫁) 9分>

では最後に同じライブ録音から「ビジャンの再生」を聞きながら今回はお別れです。2006年のライブのクライマックスで演奏された曲で、王書(シャーナーメ)の中のロマンスの主人公ビジャンが井戸に落ち、英雄ロスタムに助け出される物語が歌われています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 シャハラーム・ナーゼリー / ビジャンの再生 7分47秒>

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2020年6月19日 (金)

ホラサーンのクルド

西イランのクルド圏から遠く離れたイラン東北部の広大なホラサーン地方にクルド人が住んでいることは、長らく不思議に思っていました。日本で喩えれば、沖縄の人が北海道にいるような感じでしょうか(笑) このクルドの飛び地は、イラン第二の都市マシュハドが州都のラザヴィー・ホラーサーン州にもいるようですが、北隣の北ホラサーンが中心のようです。
女性アンサンブルの映像が見つかりましたが、ドタールが入るところがホラサーン~中央アジアらしい点です。どうしてもクルドのタンブール風に弾いているようにも見えてきますが。打楽器には地方音楽色が強く出ています。タールは上側に皮を貼ってないように見えます。これならメンテしやすそうと思いました。クルド音楽らしい迸る激情は、ここにも垣間見えます。

Kurdish Medes folk songs Koma Heray 'Leylo' Xorasan Kurds 1

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2020年6月18日 (木)

コマ・ゾザンの現在

コマ・ゾザンのArionの音源がLPで出たのは40年近く前ですので、今も同じメンバーでやっているのかどうかは不明です。1本目と同じ画像の動画が何本か見当たりますが、これが現在のコマ・ゾザンなのかも知れません。写真を見る限りでは、全員メンバーが変わっているように見えます。12曲入りCD?が出ているということのようですが、曲によってはほとんどクルド・ポップスという感じで、芸風の変化を感じます。2本目の映像では男性の踊りの伴奏をしていますが、1996年と言うことですからアリオン盤から14年後。同じメンバーの可能性ありのように思います。野外ですから、ズルナのようなけたたましいダブルリードが多用されています。3本目は、やはり男性群舞の伴奏で、これは2016年なので最近の映像です。

Koma Zozan - Dostê


1996 koma zozan


Koma Zozan Neurwz Bremen 2016

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2020年6月17日 (水)

Zembilfiros

クルドの叙事詩と思われるゼムビルフィロシュについてのこの歌は、なだらかに下降していく美しい旋律だからでしょうか、曲名を入れなくてもSivan Perwer & Gulistanと検索すると、かなり上に上げってきています。この盤が出たのは1992年。既に30年近く経っていますが、根強い人気があるようです。トルコ側クルドの名アシュク、シヴァン・ペルウェルのトルコSes Plakからの1992年リリースの14枚目から、シヴァン・ペルウェルとギュリスタン夫妻の演奏です。2本目は、この14枚目の全曲です。ゼムビルフィロシュは、ペルシア語なら「ダスタン」のようですから、口承の叙事詩を指すと思われますが、同時に登場人物でもあるようです。

Șiwan Perwer- Gülistan Perwer (Zembilfroș -Sepet Satan)


Şivan Perwer - Zembîlfiroş-Full Albüm

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2020年6月15日 (月)

トルコ東部のクルド音楽

ゼアミdeワールド212回目の放送、日曜夜10時にありました。17日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はコマ・ゾザンだけにしておきます。

今回から4,5回かけてクルドの音楽をご紹介したいと思います。人口4000万以上と言われるクルド人は、国家を持たない世界最大の民族と言われ、トルコ東部、イラン西部、イラク北部、シリア北部を中心に住んでいるイラン系の民族です。音楽においても独自の文化を保持しています。
これまでこの番組ではイランから始めて中東各地、旧ソ連のヨーロッパ部分、ウラル地方、コーカサス、中央アジアと来て、トルコの音楽を回り終えたところでした。クルドだけ入れる機会がなかったので、この後ギリシアからヨーロッパに入って行く前に入れておきます。

クルド音楽のイメージは、ハチャトゥリアンのバレエ『ガイーヌ』に出てくる「剣の舞」によく表れていると思いますが、クルド人が剣を持って舞う戦いの踊りを描写したこのタテノリの激しい音楽は、枠太鼓ダフを叩き歌う一部のクルド音楽そのもののように聞こえます。

いつもヘッダ部分をかけているiPhoneを忘れまして、「剣の舞」もその中に入っていますので、また次回におかけします。

トルコのクルド音楽の音源と言えば、トルコ側クルドの名アシュク、シヴァン・ペルウェルの諸作が一番多いように思いますが、80年代にLPでも出ていたコマ・ゾザンのフランスArion盤をまず最初にご紹介します。Komaと言うのはクルド語でグループの意味です。編成はサズに似た弦楽器テンブール、フレットのないバンジョーのジュムビューシュ、両面太鼓ダウル、ダブルリード管楽器のドゥドゥク、ウードに男女の独唱が入ります。旋律が素朴で美しいGulisanという曲から3曲続けてどうぞ。

<5 Groupe Koma Zozan / Gulisan 4分17秒>

Gulisan



<6 Groupe Koma Zozan / Em Kurdin 2分40秒>

Koma Zozan 'Em Kurdin'



<7 Groupe Koma Zozan / Cecane 2分6秒>

Ceçanê (Danse traditionnelle)


続いてトルコ側クルドの名アシュク、シヴァン・ペルウェルのトルコSes Plakからの1992年リリースの14枚目から、シヴァン・ペルウェルとギュリスタン夫妻の演奏で、タイトル曲のゼムビルフィロシュと次のEz Nexwesimを続けてどうぞ。独特なリズムと美しいメロディに耳が喜ぶ2曲です。

<1 Sivan Perwer & Gulistan / Zembilfiros ~Zembilfiros 4分16秒>

<2 Sivan Perwer & Gulistan / Zembilfiros ~Ez Nexwesim 5分11秒>

では最後に奥さんのギュリスタンの歌声をフィーチャーしたNarineを聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 Sivan Perwer & Gulistan / Zembilfiros ~Narine 4分16秒>

<5 Sivan Perwer & Gulistan / Zembilfiros ~Zara>

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2020年6月12日 (金)

Bienvenida《Berta》Aguadoと Loretta《Dora》Gerassi

今回のセファルディ・シリーズの締めは、やはりイネディ盤のお二人、ビエンベニーダ・ベルタ・アグアドとロレッタ・ドーラ・ゲラッスィです。イネディ盤に写真が一枚ありましたが、小柄なお祖母ちゃんのアグアドさんのリリカルな歌声と、いかにもアルトの低い声が出そうな大柄なゲラッスィさんのエモーショナルな歌唱。とても対照的なお二人です。先日取り上げたセイレーンの歌は番組ではフェイドアウトしましたので、最初に持ってきました。アグアドさんのプンチャ・プンチャは見当たらないので、ライブ映像を代わりに上げておきました。オスマン音楽の微細な節が感じられます。(以下放送原稿を再度)

セファルディーの歌と言えば、まず筆頭に出てくる名盤で、「東地中海のスペイン系ユダヤ人の歌」というフランスIneditの盤から、Bienvenida《Berta》Aguadoと Loretta《Dora》Gerassiの独唱を少し聞きたいと思いますが、この盤について、2002年の音楽之友社「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いた拙稿を読み上げます。

イスラエル在住のスファラディー系2婦人による東方に伝わっていたセファルディー(スペイン系ユダヤ)民謡集で、それぞれの出身地(トルコとブルガリア)に伝承されていた曲が選ばれている。この様な無伴奏の詠唱は他ではスペインのSaga盤位でしか聞けない。磨きあげられた二人の歌の節には、それぞれにトルコ古典声楽のデリケートな節回しとバルカン風旋律が現れている。細かい節回しの妙味は絶大で、よくある古楽からのアプローチの演奏には余りない「土の香り」が強烈に感じられる素晴らしい歌唱。特にゲラッスィの男声のような低い声で歌われるバルカン的な節は、マケドニアのジプシー女性歌手エスマに唸った人にも是非聞いて欲しい。

La serena(セイレーン)とは「サイレン」の語源ですが、ギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と、匂わせる所で終わっています。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうです。

<14 Loretta《Dora》Gerassi / La serena 2分44秒>

La serena..wmv


Loretta《Dora》Gerassiの低い美声をたっぷり堪能できる3曲目のタイトルを訳すと「呪われた兄弟」となるようです。

<3 Loretta《Dora》Gerassi / El Hermano Maldito 2分48秒>

El hermano maldito


Bienvenida《Berta》Aguadoの方は、El Punchon y la Rosaをおかけしますが、この曲は一般にプンチャ・プンチャと言う曲名で知られています。「チク、チク、薔薇は香り、恋はひどく苦しめる」と歌いだされるロマンセ(四行詩の物語り歌)です。

<16 Bienvenida《Berta》Aguado / El Punchon y la Rosa 2分7秒>

Romancero Sefardi -Coleccion Susana Weich-Shahak- BIENVENIDA AGUADO

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2020年6月11日 (木)

ホアキン・ディアスのセファルディの歌

40年前にスペイン語講座で聞いたホアキン・ディアスの曲が何だったか、よく覚えていませんが、講師は東谷穎人さんでした。マドゥルガーダと言う詩の朗読もホアキン・ディアスだったかも。「フリオ・ヌエボ、カンタ・ウン・ガージョ~」と言う最初の詩句をまだ覚えていました。彼の動画を調べてみると、1986年のテクノサガ盤は丸々上がっています。2本目の1974年の方では、セファルディの歌で特に有名な「クアンド・エル・レイ・ニムロド(ニムロデ王の頃)」も演奏しています。3本目は嬉しいライブ映像。前にも出ましたが、ドゥルメ・ドゥルメも有名なセファルディの歌です。随分若い頃からセファルディの歌も歌われていたようです。(以下放送原稿を再度)

ホアキン・ディアスによるギター弾き語りですが、この人はスペイン民謡の大御所として知られ、私が最初に見たのは1980年頃のTVスペイン語講座での演奏でした。素朴で古雅な趣きの歌をギターで弾き語る人ですが、スペイン音楽のルーツの一つとしてセファルディーの歌を捉えてリリースされたと思しき2枚組がスペインのTecnosagaから出ています。多くのセファルディー音源と同じく、トルコ出身でユダヤ系のラジオ・ディレクター兼歌手のイサーク・レヴィが採譜・出版した「ユダヤ・スペインの歌」の楽譜に則っての歌唱ですが、スペイン人のホアキン・ディアスがラディーノ語をどの位理解しながら歌っているのかが気になるところです。

1枚目の最初の2曲ですが、Las Tres Hermanicasと、一般にはアディオ・ケリーダ(さようなら、愛しい人)の曲名で知られるCuando Tu Madre Te Parioの2曲を続けてどうぞ。1曲目が「三姉妹」、2曲目は「あなたのお母さんがあなたを産んだ時」と訳せると思います。
<1 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Las Tres Hermanicas 2分33秒>
<2 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Cuando Tu Madre Te Pario 2分41秒>

Joaquín Díaz 1986 - Kantes Djudeo Espanyoles


Joaquín Díaz 1974 - En Este Mundo, temas sefardíes 2


Durme, durme

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2020年6月10日 (水)

セファルディの歌でのセイレーン Hélène Engelのその後

3人の歌手で聞き比べたLa Sirena(セイレーン)は、魔女あるいはファム・ファタールの類でしょうが、セファルディのあの名旋律が「男を誘惑し破滅させる悪女」の魅惑と危険性をよく表していたと思います。それを女性が歌うというのは不思議な気もしますが、そう言えばヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「宿命の女 (Femme Fatale)」も、女性のニコが歌っていたなと思い出しました(笑) 
ギリシア神話のセイレーンが、ボスニアのセファルディの歌に入った経緯と言うのが、とても気になるところです。この歌の4行詩と哀愁のメロディのブレンドの妙を強く感じます。

この曲をアルバムのトップに持って来たHélène Engelでyoutube検索したら、最近の映像が色々出てきました。CDが出たのは91年ですから、大分お年をめされた感じですが、最近はギター弾き語りされているようです。ヘレーネ・エンゲル(フランス語式ではエレーヌ・ウンゲル?)の名からは、セファルディと言うよりアシュケナジー(東欧系ユダヤ)の人のように見えます。その通りイディッシュの歌を歌っている映像もありました。残念ながらLa Sirenaはないようですので、ユダヤの8本の燭台(ハヌカーに用いられる8枝のハヌキヤー)を歌ったオチョ・カンデリーカを上げておきます。これはよく知られたセファルディの歌の一つです。2本目はお馴染みのクレズマー曲から始まり、途中フランス語で歌っている部分などありますが、バイ・ミール・ビスト・ドゥ・シェーンなど、イディッシュ・ソングが目立ちます。

Ocho Candelicas


Hélène Engel: A Jewish Musical Medley Montage

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2020年6月 8日 (月)

セファルディ音源の数々 La Sirenaの聞き比べも

ゼアミdeワールド211回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。Voice of the Turtle以外の動画は、また水曜以降に。

トルコのシリーズは一応前々回で終わりになりました。アシュクではムハッレム・エルタシ親子やエルダール・エルジンジャンなどの注目盤も多いですが、売り切れで手持ちにはないのと、トルコはポップスも層が厚い国ですが、私はそちらには不案内ですので、若干音源もありますが外しておきます。
前回トルコのスペイン系ユダヤ人(セファルディー)の音楽を取り上げまして、色々個人的に懐かしい音源を引っ張り出していました。セファルディー関連の資料も50枚以上はあると思いますので、大体はスペインに回った際になりますが、今回もう一回だけ取り上げたいと思います。

まずは、Voice of the Turtleの第3集ブルガリアと旧ユーゴスラヴィアのバルカン編から、La Sirenaという曲をおかけします。バルカンのセファルディーの間に広まったよく知られている叙情歌です。

<14 La Sirena 4分34秒>

La Sirena


同じ曲をHélène EngelのChansons Judéo-Espagnolesでもやっていますので、併せてかけておきます。例の「スペインからのセファルディー追放から500年」と言うコメントのあった91年のフランス盤です。

<1 Hélène Engel / Chansons Judéo-Espagnoles ~La Serena (Orient) 3分59秒>

次に、セファルディーの歌と言えば、まず筆頭に出てくる名盤で、「東地中海のスペイン系ユダヤ人の歌」というフランスIneditの盤から、Bienvenida《Berta》Aguado,と Loretta《Dora》Gerassiの独唱を少し聞きたいと思いますが、この盤について、2002年の音楽之友社「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いた拙稿を読み上げます。

イスラエル在住のスファラディー系2婦人による東方に伝わっていたセファルディー(スペイン系ユダヤ)民謡集で、それぞれの出身地(トルコとブルガリア)に伝承されていた曲が選ばれている。この様な無伴奏の詠唱は他ではスペインのSaga盤位でしか聞けない。磨きあげられた二人の歌の節には、それぞれにトルコ古典声楽のデリケートな節回しとバルカン風旋律が現れている。細かい節回しの妙味は絶大で、よくある古楽からのアプローチの演奏には余りない「土の香り」が強烈に感じられる素晴らしい歌唱。特にゲラッスィの男声のような低い声で歌われるバルカン的な節は、マケドニアのジプシー女性歌手エスマに唸った人にも是非聞いて欲しい。

まずは、Loretta《Dora》Gerassiの低い美声をたっぷり堪能できる3曲目からどうぞ。タイトルを訳すと「呪われた兄弟」となるようです。

<3 Loretta《Dora》Gerassi / El Hermano Maldito 2分48秒>

Bienvenida《Berta》Aguadoの方は、El Punchon y la Rosaをおかけしますが、この曲は一般にプンチャ・プンチャと言う曲名で知られています。「チク、チク、薔薇は香り、恋はひどく苦しめる」と歌いだされるロマンセ(四行詩の物語り歌)です。

<16 Bienvenida《Berta》Aguado / El Punchon y la Rosa 2分7秒>

次はホアキン・ディアスによるギター弾き語りですが、この人はスペイン民謡の大御所として知られ、私が最初に見たのは1980年頃のTVスペイン語講座での演奏でした。素朴で古雅な趣きの歌をギターで弾き語る人ですが、スペイン音楽のルーツの一つとしてセファルディーの歌を捉えてリリースされたと思しき2枚組がスペインのTecnosagaから出ています。多くのセファルディー音源と同じく、トルコ出身でユダヤ系のラジオ・ディレクター兼歌手のイサーク・レヴィが採譜・出版した「ユダヤ・スペインの歌」の楽譜に則っての歌唱ですが、スペイン人のホアキン・ディアスがラディーノ語をどの位理解しながら歌っているのかが気になるところです。

1枚目の最初の2曲ですが、Las Tres Hermanicasと、一般にはアディオ・ケリーダ(さようなら、愛しい人)の曲名で知られるCuando Tu Madre Te Parioの2曲を続けてどうぞ。1曲目が「三姉妹」、2曲目は「あなたのお母さんがあなたを産んだ時」と訳せると思います。

<1 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Las Tres Hermanicas 2分33秒>

<2 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Cuando Tu Madre Te Pario 2分41秒>

では最初にかけましたLa Sirena(ここではLa serena)を、Loretta《Dora》Gerassiの歌唱で聞きながら今回はお別れです。セイレーンとは「サイレン」の語源ですが、ギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と匂わせる所で終わっています。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 Loretta《Dora》Gerassi / La serena 2分44秒>

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2020年6月 5日 (金)

Lost Jewish Music of Transylvania再び

これ程こだわるのも、余りにSzol a kakas marのインパクトが強かったからですが、そのMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(米Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)で共演していたハンガリーの歌姫マルタ・セバスチャンの2010年の歌唱がありましたので、1本目に入れておきます。2000年代のクレズマーグループの雄、ディ・ナイェ・カペリエの伴奏です。やはりこの歌は彼女の歌声と不可分に思えてしまう程、素晴らしい歌唱です。エキゾチックな増二度音程ではセファルディの歌と共通しますが、こちらが割と他愛のない恋歌なのに対し、ハンガリーのユダヤ人の間で最も人気があったというこの透徹した悲しみの歌は、「雄鶏が鳴いている」のタイトルに象徴的な意味が隠されているように思えてなりません。
2本目は上記のマラマロシュの1曲目に入っていたハシッド・ダンスで、ムジカーシュの2013年のライブ映像です。聴衆の盛り上がりが凄いです。ムジカーシュのメンバーがロマの古老からこの曲を教わるシーンの映像を、大分前にブログに上げたことがありました。これも大好きな曲で、どちらもヴァイオリンで真似してみました。

Sebestyén Márta és a Di Naye Kapelye - Szól a kakas már


Muzsikás Együttes: Haszid lakodalmi táncok

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2020年6月 4日 (木)

A la una yo nasiとSzól a kakas márの類似

Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkeyのラストの19曲目を飾っているA la una yo nasi(第一に、私は生まれた)という曲は、バルカン諸国のセファルディーの歌として広く知られている曲とのことですが、ハンガリーのSzól a kakas márという曲にかなり似ています。こちらは東欧系ユダヤの歌ですので、旋律がバルカンのセファルディーに流れたのか、単なる空似か、どちらでしょうか?

<19 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~A la una yo nasi 4分40秒>

A la una yo nací. Música Sefardí. Emilio Villalba & Sephardica


A la una yo nasi


ちょうど10年前と9年前にSzól a kakas márについて書いたブログを振り返ります。今日は取り合えず2曲を並べて、また探ってみたいと思います。今日の動画はベアタ・パヤの歌唱で。

名曲Szol a kakas mar (Rooster is Crowing)

一昨日予告したハンガリアン・ジューの名曲Szol a kakas marにいってみます。この曲は、まず何よりMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)の2曲目の、マルタ・セバスチャンの歌唱で有名になったと思います。その悲愴美は筆舌に尽くせないほど印象的で、きーんと冷えたトランシルヴァニアの空気感も運んでくるかのような、更には匂いも感じさせるような曲でした。これぞハンガリー系ユダヤの秘曲と唸らせるものがありました。90年頃来日を果たしたムジカーシュの演奏も非常に素晴らしいものでしたが、この盤の出る前だったようで、このアルバムからは聞いた記憶がありません。ハンニバル盤が出たのは93年と、もう大分経ってしまいましたので、そちらでは最近入り難くなっているのが残念です。ハンガリー現地盤(ムジカーシュ自身のレーベル)は生きていたと思います。
この曲名、和訳すれば「雄鶏が鳴いている」となりますが、そのメロディ・ラインで思い出すのは、ユダヤ宗教歌で最も名高いKol Nidreでしょうか。コル・ニドレ(ドイツ語風に読むとコル・ニドライ)は、典型的なユダヤ旋法の一つ、Ahavo Rabo(「大いなる愛」の意味)旋法の歌。エキゾチックな増二度音程が悲しみを最大限に醸し出しています。いずれもユダヤ民族の運命を歌ったような悲劇的な調子ですが、そんなSzol a kakas marがハンガリーのユダヤ人の間では最も人気があったようです。この透徹した悲しみの歌については、まだ分らないことが多いです。また何か分ったら書いてみたいと思います。そう言えば、往年のシャンソン歌手ダミアが歌った「暗い日曜日」の原曲は、ハンガリーの歌でした。この歌のムードに似たものがあるようにも思います。

サトゥマールのフィドルとSzól a kakas már

サトゥマールの音楽と言えば、フンガロトンの「サトゥマール地方のハンガリー音楽 Szatmari Bandak」(残念ながら廃盤のようです)をどうしても思い出しますが、その中には一昨日の一本目のヴェルブンク(チャールダーシュとも言えるようです)が2曲目に入っていて、更にはムジカーシュ&マルタ・セバスチャンのハンニバルからの名盤「マラマロシュ(トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽)」の白眉ソール・ア・カカシュ・マールも入っています。マラマロシュ(現在のルーマニア北部のマラムレシュ辺りのようです)に伝わっていたユダヤの哀歌は、迫害によって歌そのものの主を失ったようですが、この地のロマの音楽家によって記憶されていたというもの。この余りに印象的なメロディは、西に隣接するサトゥマールでも伝承されたのでしょう。一昨日見た舞踊も古いスタイルを保っているように思いました。
この地方、ハンガリーの民族音楽学者の間では「Hungary`s Transylvania」と形容もされるようです。その位この地方には古いハンガリー音楽の伝統が残っている所として知られています。
Szól a kakas márについては、ちょうど一年程前にもユダヤ音楽枠で取り上げました。「サトゥマール地方のハンガリー音楽 Szatmari Bandak」のライナーノーツは、Brave Old Worldのマイケル・アルパートも書いています。これは見逃せないポイントでしょう。
一昨日書いた「ウクライナのカルパチア西麓の地方名」とは、ルテニアでした。2008年2月12日にブログにも書いていました。

Palya Bea Szefárd Trió - Szól a kakas már

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2020年6月 1日 (月)

トルコのスペイン系ユダヤ人の音楽

ゼアミdeワールド210回目の放送、水曜夜8時半と日曜夜10時にありました。3日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画はA la una yo nasiだけ、また後日。

トルコの27回目、トルコ民謡の4回目になります。宅録の際に、マイクの音がほとんど出ないトラブルがありましたので、再開されたラヂバリスタジオで再度収録しております。位相の問題だったようです。
今回はトルコの民謡と言う訳ではないのですが、「トルコのスペイン系ユダヤ人の音楽」と言う盤が1989年にアメリカのTitanicから出ていましたので、この枠で入れておきたいと思います。昨年末に放送で取り上げましたVoice of the Turtleのスペイン系ユダヤ人音楽シリーズの第1集になります。

15世紀のレコンキスタで、スペインのユダヤ教徒はイスラム教徒と共に追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散しました。スペイン系ユダヤ人は、セファルディーとも呼ばれます。セファルディは、ヘブライ語に忠実に言えばスファラディ、複数形はスファラディームになります。

セファルディーの民謡を演奏するグループVoice of the Turtle(山鳩の声)のCDですが、第1集トルコ編の他には、第2集がモロッコ編、第3集はブルガリアと旧ユーゴスラヴィアのバルカン編と、第4集ロードス島とサロニカ編もありますが、第4集だけ入手出来ておりません。第5集が年末にクリスマス音楽と一緒にかけました「ハヌカー・コンサート」になります。いずれも旧オスマン帝国内になりますので、今回取り上げても良いのですが、長くなりますので、またそれぞれの時に入れようかと思います。

楽器編成は、ギター、ヴァイオリン、バーラマ、マンドリン、ウード、ダンベク、ナッカーラなどで、スペイン古楽や中東の楽器が多く見えます。セファルディーが暮らした頃のスペインは、後ウマイヤ朝以来800年近く続いたイスラーム諸王朝でしたから、音楽にもアラブ的な面は多分に入っています。
前置きはこれ位にしまして、第1集トルコ編から、1曲目のLa prima vez(初めて、あなたを見た時)という曲をどうぞ。

<1 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~La prima vez 3分11秒>

La Prima Vez


セファルディーがスペインから追放されたのは、1492年が中心と言うことで、500年経った1992年に出たセファルディー音楽の盤には、一般によく知られる「コロンブスのアメリカ大陸発見から500年」ではなく、「スペインからのセファルディー追放から500年」と言うシニカルなコメントが付いていた盤がありました。

セファルディーが話すのは、中世までスペインにいた頃のユダヤ訛りのスペイン語で、ラディーノ語と呼ばれます。ユダヤの宗教語であるヘブライ語の語彙は入っていても、音としてはスペイン語としか聞こえない言葉が、イスタンブールやブルガリアなどで聞こえることの不思議を強く感じます。

「ドナ・ドナ」に代表される東欧系ユダヤのイディッシュ民謡も悲しい音楽が多いですが、セファルディー音楽の方もイディッシュやクレズマーとは異なる風合いの哀切さがあります。スペインらしい乾いた感じの美しいメロディが多く、古くは1980年代にエステル・ラマンディエがハープ弾き語りをしていたイメージと重なる人もいらっしゃるかと思います。

7曲目のDurme, durme mi linda donzeyaは、恋人の女性へのララバイで、これも哀切なメロディです。

<7 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~Durme, durme mi linda donzeya 3分40秒>

Voice of the Turtle - "Durme, durme mi linda donzeya" - (Sephardic Jewish Music from Turkey)


10曲目のDe edad de kinzay ányoz(15歳から)という曲は、キュルディ旋法のリズミカルな曲で、7曲目のようによく知られてないけど、私は最初から強く印象に残った曲です。

<10 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~De edad de kinzay ányoz 3分47秒>

Voice of the Turtle - "De Edad de Kinzay Anyoz" - (Sephardic Jewish Music from Turkey)


ラストの19曲目を飾っているA la una yo nasi(第一に、私は生まれた)という曲は、バルカン諸国のセファルディーの歌として広く知られている曲とのことですが、ハンガリーのSzól a kakas márという曲にかなり似ています。こちらは東欧系ユダヤの歌ですので、旋律がバルカンのセファルディーに流れたのか、単なる空似か、どちらでしょうか?

<19 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~A la una yo nasi 4分40秒>

では最後に5曲目のO madre mia(おお、私の母よ)を聞きながら今回はお別れです。トルコとブルガリアの戦争の悲劇を反映した歌で、スペインを離れてからバルカンで生まれた曲も多いことが分かります。とてもセファルディーらしい哀感の溢れた一曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~O madre mia 5分>

Voice of the Turtle - "O madre mia" (Sephardic Jewish Music from Turkey)

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