« Lost Jewish Music of Transylvania再び | トップページ | セファルディの歌でのセイレーン Hélène Engelのその後 »

2020年6月 8日 (月)

セファルディ音源の数々 La Sirenaの聞き比べも

ゼアミdeワールド211回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。Voice of the Turtle以外の動画は、また水曜以降に。

トルコのシリーズは一応前々回で終わりになりました。アシュクではムハッレム・エルタシ親子やエルダール・エルジンジャンなどの注目盤も多いですが、売り切れで手持ちにはないのと、トルコはポップスも層が厚い国ですが、私はそちらには不案内ですので、若干音源もありますが外しておきます。
前回トルコのスペイン系ユダヤ人(セファルディー)の音楽を取り上げまして、色々個人的に懐かしい音源を引っ張り出していました。セファルディー関連の資料も50枚以上はあると思いますので、大体はスペインに回った際になりますが、今回もう一回だけ取り上げたいと思います。

まずは、Voice of the Turtleの第3集ブルガリアと旧ユーゴスラヴィアのバルカン編から、La Sirenaという曲をおかけします。バルカンのセファルディーの間に広まったよく知られている叙情歌です。

<14 La Sirena 4分34秒>

La Sirena


同じ曲をHélène EngelのChansons Judéo-Espagnolesでもやっていますので、併せてかけておきます。例の「スペインからのセファルディー追放から500年」と言うコメントのあった91年のフランス盤です。

<1 Hélène Engel / Chansons Judéo-Espagnoles ~La Serena (Orient) 3分59秒>

次に、セファルディーの歌と言えば、まず筆頭に出てくる名盤で、「東地中海のスペイン系ユダヤ人の歌」というフランスIneditの盤から、Bienvenida《Berta》Aguado,と Loretta《Dora》Gerassiの独唱を少し聞きたいと思いますが、この盤について、2002年の音楽之友社「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いた拙稿を読み上げます。

イスラエル在住のスファラディー系2婦人による東方に伝わっていたセファルディー(スペイン系ユダヤ)民謡集で、それぞれの出身地(トルコとブルガリア)に伝承されていた曲が選ばれている。この様な無伴奏の詠唱は他ではスペインのSaga盤位でしか聞けない。磨きあげられた二人の歌の節には、それぞれにトルコ古典声楽のデリケートな節回しとバルカン風旋律が現れている。細かい節回しの妙味は絶大で、よくある古楽からのアプローチの演奏には余りない「土の香り」が強烈に感じられる素晴らしい歌唱。特にゲラッスィの男声のような低い声で歌われるバルカン的な節は、マケドニアのジプシー女性歌手エスマに唸った人にも是非聞いて欲しい。

まずは、Loretta《Dora》Gerassiの低い美声をたっぷり堪能できる3曲目からどうぞ。タイトルを訳すと「呪われた兄弟」となるようです。

<3 Loretta《Dora》Gerassi / El Hermano Maldito 2分48秒>

Bienvenida《Berta》Aguadoの方は、El Punchon y la Rosaをおかけしますが、この曲は一般にプンチャ・プンチャと言う曲名で知られています。「チク、チク、薔薇は香り、恋はひどく苦しめる」と歌いだされるロマンセ(四行詩の物語り歌)です。

<16 Bienvenida《Berta》Aguado / El Punchon y la Rosa 2分7秒>

次はホアキン・ディアスによるギター弾き語りですが、この人はスペイン民謡の大御所として知られ、私が最初に見たのは1980年頃のTVスペイン語講座での演奏でした。素朴で古雅な趣きの歌をギターで弾き語る人ですが、スペイン音楽のルーツの一つとしてセファルディーの歌を捉えてリリースされたと思しき2枚組がスペインのTecnosagaから出ています。多くのセファルディー音源と同じく、トルコ出身でユダヤ系のラジオ・ディレクター兼歌手のイサーク・レヴィが採譜・出版した「ユダヤ・スペインの歌」の楽譜に則っての歌唱ですが、スペイン人のホアキン・ディアスがラディーノ語をどの位理解しながら歌っているのかが気になるところです。

1枚目の最初の2曲ですが、Las Tres Hermanicasと、一般にはアディオ・ケリーダ(さようなら、愛しい人)の曲名で知られるCuando Tu Madre Te Parioの2曲を続けてどうぞ。1曲目が「三姉妹」、2曲目は「あなたのお母さんがあなたを産んだ時」と訳せると思います。

<1 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Las Tres Hermanicas 2分33秒>

<2 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Cuando Tu Madre Te Pario 2分41秒>

では最初にかけましたLa Sirena(ここではLa serena)を、Loretta《Dora》Gerassiの歌唱で聞きながら今回はお別れです。セイレーンとは「サイレン」の語源ですが、ギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と匂わせる所で終わっています。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 Loretta《Dora》Gerassi / La serena 2分44秒>

|

« Lost Jewish Music of Transylvania再び | トップページ | セファルディの歌でのセイレーン Hélène Engelのその後 »

セファルディー」カテゴリの記事

ゼアミdeワールド」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« Lost Jewish Music of Transylvania再び | トップページ | セファルディの歌でのセイレーン Hélène Engelのその後 »