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2020年6月 1日 (月)

トルコのスペイン系ユダヤ人の音楽

ゼアミdeワールド210回目の放送、水曜夜8時半と日曜夜10時にありました。3日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画はA la una yo nasiだけ、また後日。

トルコの27回目、トルコ民謡の4回目になります。宅録の際に、マイクの音がほとんど出ないトラブルがありましたので、再開されたラヂバリスタジオで再度収録しております。位相の問題だったようです。
今回はトルコの民謡と言う訳ではないのですが、「トルコのスペイン系ユダヤ人の音楽」と言う盤が1989年にアメリカのTitanicから出ていましたので、この枠で入れておきたいと思います。昨年末に放送で取り上げましたVoice of the Turtleのスペイン系ユダヤ人音楽シリーズの第1集になります。

15世紀のレコンキスタで、スペインのユダヤ教徒はイスラム教徒と共に追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散しました。スペイン系ユダヤ人は、セファルディーとも呼ばれます。セファルディは、ヘブライ語に忠実に言えばスファラディ、複数形はスファラディームになります。

セファルディーの民謡を演奏するグループVoice of the Turtle(山鳩の声)のCDですが、第1集トルコ編の他には、第2集がモロッコ編、第3集はブルガリアと旧ユーゴスラヴィアのバルカン編と、第4集ロードス島とサロニカ編もありますが、第4集だけ入手出来ておりません。第5集が年末にクリスマス音楽と一緒にかけました「ハヌカー・コンサート」になります。いずれも旧オスマン帝国内になりますので、今回取り上げても良いのですが、長くなりますので、またそれぞれの時に入れようかと思います。

楽器編成は、ギター、ヴァイオリン、バーラマ、マンドリン、ウード、ダンベク、ナッカーラなどで、スペイン古楽や中東の楽器が多く見えます。セファルディーが暮らした頃のスペインは、後ウマイヤ朝以来800年近く続いたイスラーム諸王朝でしたから、音楽にもアラブ的な面は多分に入っています。
前置きはこれ位にしまして、第1集トルコ編から、1曲目のLa prima vez(初めて、あなたを見た時)という曲をどうぞ。

<1 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~La prima vez 3分11秒>

La Prima Vez


セファルディーがスペインから追放されたのは、1492年が中心と言うことで、500年経った1992年に出たセファルディー音楽の盤には、一般によく知られる「コロンブスのアメリカ大陸発見から500年」ではなく、「スペインからのセファルディー追放から500年」と言うシニカルなコメントが付いていた盤がありました。

セファルディーが話すのは、中世までスペインにいた頃のユダヤ訛りのスペイン語で、ラディーノ語と呼ばれます。ユダヤの宗教語であるヘブライ語の語彙は入っていても、音としてはスペイン語としか聞こえない言葉が、イスタンブールやブルガリアなどで聞こえることの不思議を強く感じます。

「ドナ・ドナ」に代表される東欧系ユダヤのイディッシュ民謡も悲しい音楽が多いですが、セファルディー音楽の方もイディッシュやクレズマーとは異なる風合いの哀切さがあります。スペインらしい乾いた感じの美しいメロディが多く、古くは1980年代にエステル・ラマンディエがハープ弾き語りをしていたイメージと重なる人もいらっしゃるかと思います。

7曲目のDurme, durme mi linda donzeyaは、恋人の女性へのララバイで、これも哀切なメロディです。

<7 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~Durme, durme mi linda donzeya 3分40秒>

Voice of the Turtle - "Durme, durme mi linda donzeya" - (Sephardic Jewish Music from Turkey)


10曲目のDe edad de kinzay ányoz(15歳から)という曲は、キュルディ旋法のリズミカルな曲で、7曲目のようによく知られてないけど、私は最初から強く印象に残った曲です。

<10 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~De edad de kinzay ányoz 3分47秒>

Voice of the Turtle - "De Edad de Kinzay Anyoz" - (Sephardic Jewish Music from Turkey)


ラストの19曲目を飾っているA la una yo nasi(第一に、私は生まれた)という曲は、バルカン諸国のセファルディーの歌として広く知られている曲とのことですが、ハンガリーのSzól a kakas márという曲にかなり似ています。こちらは東欧系ユダヤの歌ですので、旋律がバルカンのセファルディーに流れたのか、単なる空似か、どちらでしょうか?

<19 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~A la una yo nasi 4分40秒>

では最後に5曲目のO madre mia(おお、私の母よ)を聞きながら今回はお別れです。トルコとブルガリアの戦争の悲劇を反映した歌で、スペインを離れてからバルカンで生まれた曲も多いことが分かります。とてもセファルディーらしい哀感の溢れた一曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~O madre mia 5分>

Voice of the Turtle - "O madre mia" (Sephardic Jewish Music from Turkey)

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