ガルソナ、アンゲロプロス、ミシルルーなど
ゼアミdeワールド224回目の放送、日曜夜10時にありました。9日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はアレクシーウのガルソナの1976年のライブのみにしておきます。やっぱりこれが最高!
ギリシアの5回目になります。ギリシアの歌姫ハリス・アレクシーウの歌を何度かご紹介しましたが、デビューから数年の彼女を76年頃一躍有名にした曲にガルソナという曲があります。今日はこの曲から始めます。個人的には30分間ずっとかけたい位好きな曲ですので(笑)、また後で解説を入れます。ではミノスレコードからの「ハリス・アレクシーウ2」から、ガルソナです。
<4 Haris Alexiou / Haris Alexiou 2 ~Η γκαρσόνα 3分52秒>
HARIS ALEXIOU - GARSONA / ΧΑΡΙΣ ΑΛΕΞΙΟΥ - ΓΚΑΡΣΟΝΑ (1976)
前にゼアミブログにも書いたことがありますが、このガルソナと言う曲も、レベティカの大御所パナヨティス・トゥンダスの作曲でした。つくづく凄いメロディメーカーだなと思います。
私が最初に聞いたのはキプロス生まれのポップ・クイーン、アンナ・ヴィッシの映像でしたが、この曲、リズム的にはハサピコになるのでしょうか? メロディは典型的なハサピコに聞こえます。ハサピコは元々東ローマ帝国のコンスタンチノープル(現在のイスタンプール)の肉屋たちの踊りだったそうです。当時はトルコの場所が「トルコ化」する前で、セルジュク朝を起こしたテュルク人が中央アジアから今のトルコの場所に来たのが11世紀ですから、それより前の古い古い踊りと言うことになります。ハサピコは、ギリシアの踊りで最も有名なシルタキに繋がって行くようですが、ハサピコのエキゾチックなメロディ・ラインは、東欧系ユダヤの祭礼音楽の一種、クレズマーにもそっくりに聞こえます。と言うか、ハサピコの楽士がクレズマーを真似たとは思えないので、ハサピコが本家本元なのでしょうか?
という話を大分前にもゼアミブログに書きました。この謎はまだ解明できてないままです。この曲は、何度か出てきたRita Abatziの古い録音がよく知られているので、彼女が最初に歌ったのではと思います。
次に、オルターポップのベスト盤から、ギリシアの映画監督テオ・アンゲロプロスの91年の「こうのとり、たちずさんで」に使われた「恋が満ちる時」をおかけしておきます。アンゲロプロスらしい仄暗い雰囲気の美しい曲で、この監督の映画音楽を多く手掛けたエレニ・カラインドルーの作曲です。ギリシアではミノスから、欧米ではドイツのECMからサントラがリリースされました。
<1 ベスト・オブ・ハリス・アレクシーウ ~恋が満ちる時 4分23秒>
ベスト盤から、もう一曲「夜明けの歌」と言う切々とした美しい曲をおかけします。ブズーキをマンドリンのようにトレモロでも奏でています。「23の歌謡」というアルバムからで、原題はTo Minore Tis Avgisです。
<14 ベスト・オブ・ハリス・アレクシーウ ~夜明けの歌 3分56秒>
もう一曲、アレクシーウのミノス時代の「23の歌謡」の一曲目ですが、大分前にトルコの時にもかけましたが、マンタレーナと言う曲を再度おかけします。オスマン古典音楽の巨匠タンブーリ・ジェミル・ベイが弾くゼイベクと、ハリス・アレクシーウのこのΜαntalio (Mantalena)が、全く同じ旋律だった話をその際にしました。
マンタレーナと言うのがどういう曲なのか、まだはっきり分かっていませんが、Μανταλένα (Σαμοθράκη)という映像を見ると、このギリシア語は「マンタレーナ(サモトラキ島)」と訳せますので、エーゲ海北東部に位置するサモトラキ島の民族舞踊のようです。ゼイベクに特徴的な2+2+2+3の9拍子が聞き取れます。明るくはつらつとしたアレクシーウの歌と、タンブールの渋い音色のイメージを重ねて聞いてみて下さい。
<1 Haris Alexiou / 23 Τragoudia ~Μαntalio (Mantalena) 3分>
ハリス・アレクシーウの大先輩に当たる往年のレベティカのユダヤ系名女性歌手ローザ・エスケナージの録音をご紹介したいと思っていましたが、全て売り切れて手元にコンピレーションが一つあるだけですので、アップルミュージックで出てきた中から一曲おかけします。
YouTubeでハリス・アレクシーウと握手している写真を見たことがありまして、エスケナージは1890年生まれですが1980年までご存命だったので、アレクシーウが若い頃、直接のやりとりがあったようです。新旧のレベティカのディーヴァのツーショットは、とても感動的だと思いました。エスケナージの歌うレベティカは、曲によってトルコ的、そのままギリシア的、あるいはどこか微妙にユダヤ風だったり等々、色々な側面が垣間見えるように思います。エスケナージという名前からはアシュケナジー(東欧系ユダヤ)を連想しますが、イスタンブール生まれですから、やはりセファルディ(スペイン系ユダヤ)のようです。
Faces of Rebetikoというコンピレーションから、ローザ・エスケナージの歌唱でThe Washer's Woes (Ta Vasana Tis Plistras)という曲ですが、オスマン音楽風な面、ユダヤの宗教歌を思わせる部分が合わさって聞こえるように思います。
<8 Rosa Eskenazi / The Washer's Woes (Ta Vasana Tis Plistras) 3分17秒>
では最後にFaces of Rebetikoというコンピレーションから、レベティコ、ベリーダンス、ユダヤのクレツマー、更にはビーチボーイズのサーフ・ロックまで、共通のレパートリーとして知られるエキゾチックな「エジプト娘」を描いたミシルルー(英語ではミザルー)を時間まで聞きながら今回はお別れです。Mikes Patrinosの歌唱です。ギリシア語読みから来ている「エジプト」のアラビア語での呼称「ミスル」に由来するこの歌は、レベティコの様式で、トルコあるいはギリシアのテンポのゆったりしたダンスであるチフテテッリの舞踊のための歌として作曲され、レベティコ勃興と共に生まれた曲と考えられているようです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<54 Mikes Patrinos / Mousourlou 4分12秒>
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