今週の気になるポイントは、オコラのギリシア正教の音源を歌っていたテオドール・ヴァシリコスの生映像がないかと言うのと、昨日の一曲目ランパダリオスの生映像ももしあれば、そしてこの曲の作曲者のクリサフィスについて等、結構探りどころの多い週です。調べていたら、他のオラータ盤の違う曲でA Work By Lampadarios (manuel Chrysafis)と出ていましたので、曲名ではなくマヌエル・クリサフィスの別名と言うことなのかも知れません。それなら曲名は?と、また謎のまま終わりました。と言う訳で、今日はテオドール・ヴァシリコス・アンサンブルの映像を上げておきます。音程の精妙さもありますが、ドローンに支えられた男声合唱のダイナミズムも、グルジアの男声合唱と並び称されるべきだと思います。
Psalm 135 - SEM & Arkhon Protopsaltis Theodoros Vassilikos
<1 Grèce - Musique sacrée byzantine, grand chant octotonal à la Vierge ~Sainte Vierge, mère de Dieu (1er mode) 5分40秒>
Sainte Vierge, mère de Dieu (1er mode)
第1エコス d,9,e,7,f,12,g,12,a,9,h,7,c,12,d
<8 Grèce - Musique sacrée byzantine, grand chant octotonal à la Vierge ~Le sauveur de nos âmes (4e mode plagal) 9分34秒>
Le sauveur de nos âmes (4e mode plagal)
第8エコス c,d,e,f,g,a,h,c
ギリシアのOrataから出ていたビザンティンの世俗音楽シリーズについて、1990年の前半だったと思いますが、私が六本木ウェイブのクラシックコーナーに勤務している時に、この第一集を中心にバルカン~ロシアの音源で企画を組んだことがあります。ちょうどベルリンの壁が崩壊し、東欧革命が進んでいる頃で、ソ連崩壊前夜という時期でしたから、「東方・東欧からの風」というタイトルを付けたように記憶しています。フリストドゥーロス・ハラリスの演奏は、1000年以上続いたビザンツ帝国の時代を髣髴とさせるような大らかな響きがありましたが、その背景にはビザンツの典礼音楽と共通する精妙な音程感覚が潜んでいたのだろうと思います。しかし第一集以降も、とめどもなくリリースが続き、ビザンツの音楽理論まで理解が及ばない日本のリスナーには、かなりヘビーなシリーズだったと思います。
フリストドゥーロス・ハラリス Christodoulos Halaris (Χριστόδουλος Χάλαρης)は、1946年生まれで2019年に亡くなったギリシアの作曲家で音楽学者です。ギリシア中世のビザンツ音楽や古代ギリシアの音楽の解釈で広く知られ、まだ五線譜がなかった頃のネウマ譜から考証・復元されたビザンツ時代の世俗音楽には、トルコの場所が11世紀に「トルコ化」する前のアナトリアの音楽も入っていたのだろうと思います。
30年ほど経った現在、手元にCDは残っていませんでしたが、アップルミュージックにはこのシリーズが色々ありました。何故かビザンティンの世俗音楽シリーズの第一集(Byzantine Secular Classical Music, Vol. 1)は見当たりませんが、この3枚組の分売と思われるAnthology of Byzantine Secular Music, Vol 1がありましたので、1曲目のThe Lampadarios: Pleasant, Sweet, Instrumenをおかけします。元の3枚組では、Pleasant, Sweet, Instrumental And Pagan. Fourth Mode Composed By – Chryssafis, The "Lampadarios"*となっていた曲です。この曲を聞きながら今回はお別れです。
昨日は弦楽四重奏の本番だったので、ブログはお休みしました。16本の動画がアップされているEaster On Mount Athos / Greek Byzantine Orthodox Hymnsですが、現在はMP3のみのようですが、2011年にはCDが出ていたのかも知れません。これは知らない録音でした。例のアトス山のイースターのLPの解説によると、ビザンツ音楽理論では、オクターブは68の部分に分けられ全音が12、4分の3音が9、半音が7で示され、音階そのものは8つのエコスの体系の中で4つの正格エコスと、4つの変格エコスにまとめられる、とあります。これだけを読むと、オスマン音楽以上の複雑な音程体系のように見えます。それと、ビザンツ音楽の特徴としてよく上げられる持続低音(ドローン)ですが、ギリシア語ではイソンと呼ばれ、合唱長に当たるプロトプサルティスと呼ばれるパートが担当し、このLPでは修道院長アレクシオスが歌っているそうです。伴奏声部と言うよりは、音の支えであり旋律の響きを豊かにするための重要なパートとされています。8つのエコスの音階表もありますので、また随時動画に添えてみます。(実際は第4エコスから派生したレゲトスがあるので、都合9つになります)次回の放送でかける予定のオコラ盤では、8つのエコスが全て収録されれています。
Holy Saturday Lamentations (the first and second part, 1st plagal mode, the third part 3rd mode)
plagal modeと言うのがエコスだとすれば、第一エコスの音列は、d, 9, e, 7, f, 12, g, 12, a, 9, h, 7, c, 12, d になります。
一番興味深く聞いたのが、4曲目のハサピコ「水夫の踊り」で、原盤ではKasaposerbiko Me Taximとなっている通り、セルビア風のハサピコとなるでしょうか。元はコンスタンティノープルの肉屋の踊りでしたが、江波戸先生の解説によると、起源はマケドニア地方の羊飼いの踊りで、マケドニア出身のアレクサンダー大王の兵士たちが好んで踊ったところから広く各地に伝えられ、ホラやホロ、あるいはオロと呼ばれ、バルカン各地に共通して見られるようになった輪舞に繋がって行きます。
<4 Iordanis Tsomidis / Bouzoukee - The Music Of Greece ~Kasaposerbiko Me Taxim 6分41秒>
Iordanis Tsomidis "Kasapōserbikō Me Taxim" from album "BOUZOUKEE The Music of Greece" 1960s
まずは、トゥンダスのガルソナを取り上げた際に、キプロス生まれの現代ギリシアのポップクイーン、アンナ・ヴィッシのYouTubeをゼアミブログでご紹介しましたが、おそらくこの曲は彼女のアルバムには入ってないので、代わりにレベティカ風な曲と言うことで、手持ちの94年のアルバム「レー!」から2曲選びました。Triada Ke ValeとMelagholiesという曲で、他の曲もそうですが彼女の元夫でプロデューサーのニコス・カルヴェラスの作曲です。ジャンル的にはContemporary Laikaになるようです。この盤のヒット曲は他にありますが、一番伝統寄りに聞こえた2曲です。2曲続けてどうぞ。
<2 Anna Vissi / Re! ~Triada Ke Vale 5分19秒>
ΑΝΝΑ ΒΙΣΣΗ 30 ΚΑΙ ΒΑΛΕ
Anna Vissi - Triada Ke Vale, Mercedes Rex (1994) [fannatics.gr]
<7 Anna Vissi / Re! ~Melagholies [Album Version] 4分11秒>
Anna Vissi - Melagholies (Official Audio Release) [fannatics.gr]
一番興味深く聞いたのが、4曲目のハサピコ「水夫の踊り」で、原盤ではKasaposerbiko Me Taximとなっている通り、セルビア風のハサピコとなるでしょうか。元はコンスタンティノープルの肉屋の踊りでしたが、江波戸先生の解説によると、起源はマケドニア地方の羊飼いの踊りで、マケドニア出身のアレクサンダー大王の兵士たちが好んで踊ったところから広く各地に伝えられ、ホラやホロ、あるいはオロと呼ばれバルカン各地に共通して見られるようになった輪舞に繋がって行きます。
<4 Iordanis Tsomidis / Bouzoukee - The Music Of Greece ~Kasaposerbiko Me Taxim 6分41秒>
放送では最後にかけたのでフェイドアウトになってしまいましたが、「レベティコのディアスポラ」のジャケットを飾っているSalto OrientaleのDiki Mou Ine I Ellasと言う曲は、ハリス・アレクシーウも歌っていた曲です。どれに入っていたか思い出せなかったのですが、YouTubeに「23のトラグーディア(民謡)」のジャケットが出ていて思い出しました。この盤の2曲目で、とてもレベティカらしい一曲です。「歌」の意味のトラグーディは、民謡を指す場合、Παραδοσιακό τραγούδι(パラドシアコ・トラグーディ)と言う言い方があるようです。この曲のギリシア語の原題はΟύζο Όταν Πίνεις(ウーゾ・オタン・ピニス)で、意味は「あなたがウーゾを飲む時」になるでしょうか? サルト・オリエンターレで曲名になっているDiki Mou Ine I Ellasの原文表記はΔική Μου Είναι Η Ελλάςで、2本目のカッコ内に出ています。意味は「ギリシャは私のものです」で合っているのでしょうか? いずれにしてもウーゾ好きな酒飲みの歌のようです。おまけで、3本目には先日のステリオス・ヴァンヴァカーリスとルイジアナ・レッドのインタープレイを上げておきます。ギリシア語については、大学時代に哲学科だったので古代ギリシア語を取っていまして、大体の表記は読めますが、そのアッティカ方言の古典ギリシア語(新約聖書のコイネーより前のギリシア語)では、MとPでBと読ませるようなルール(ブズーキのΜπουζούκιなど)はなかったので、その辺の現代ギリシア語特有の発音のコツは知っておく必要があります。
<2-6 Salto Orientale / Diki Mou Ine I Ellas 4分28秒>
Diki mou ine i ellas - Salto Orientale
Χάρις Αλεξίου - Ούζο Όταν Πίνεις (Δική Μου Είναι Η Ελλάς) - Official Audio Release
Stelios Vamvakaris with Louisiana Red Live @KYTTARO2008
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