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2020年10月

2020年10月30日 (金)

Christodoulos Halaris

この人の名前は1990年にOrataのビザンティン世俗音楽の盤で見て以来「クリストドゥーロス・ハラリス」と読んで来ましたが、Χριστόδουλος Χάλαρηςですからギリシア語の発音としては、フリストドゥーロス・ハラリスの方が近いでしょう。1946年生まれで2019年に亡くなったギリシアの作曲家・音楽学者で、去年亡くなっていたことは今回初めて知りました。先日の繰り返しになりますが、ギリシア中世のビザンツ音楽や古代ギリシアの音楽の解釈で広く知られ、まだ五線譜がなかった頃のネウマ譜から考証・復元されたビザンツ時代の世俗音楽には、トルコの場所が11世紀に「トルコ化」する前のアナトリアの音楽も入っていたのだろうと思います。何か生映像はないかと探してみましたが、どうやらなさそうです。このガドゥルカやリラ、ケメンチェの大型のような、おそらく擦弦楽器を弾いている映像で初めて写真を見ました。
昨日の疑問について、黒田先生から情報を頂きました。Manuel Chrysaphesは、15世紀ビザンツ帝国の著名な音楽家で、300を越える曲を残しているそうです。ハラリスのオラータからの第一作は、この人の曲から始まっていたということです。ランパダリオスについては、元はローマ帝国時代に、執政官、皇帝の前で松明を運んだ奴隷のような存在だったようですが、マヌエル・クリサフィスの生きたビザンチン時代のランパダリオスは、東方正教会の合唱団のリーダーを指しているようです。西洋ならカントールに当たるでしょうか。

Christodoulos Halaris - Akritika (1995)

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2020年10月29日 (木)

テオドール・ヴァシリコスの生映像

今週の気になるポイントは、オコラのギリシア正教の音源を歌っていたテオドール・ヴァシリコスの生映像がないかと言うのと、昨日の一曲目ランパダリオスの生映像ももしあれば、そしてこの曲の作曲者のクリサフィスについて等、結構探りどころの多い週です。調べていたら、他のオラータ盤の違う曲でA Work By Lampadarios (manuel Chrysafis)と出ていましたので、曲名ではなくマヌエル・クリサフィスの別名と言うことなのかも知れません。それなら曲名は?と、また謎のまま終わりました。と言う訳で、今日はテオドール・ヴァシリコス・アンサンブルの映像を上げておきます。音程の精妙さもありますが、ドローンに支えられた男声合唱のダイナミズムも、グルジアの男声合唱と並び称されるべきだと思います。

Psalm 135 - SEM & Arkhon Protopsaltis Theodoros Vassilikos


Theodoros Vassilikos - video - Paraklesis

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2020年10月28日 (水)

「第4のモード」とビザンツ聖歌の第4エコス

希Orataのビザンティンの世俗音楽シリーズの第一集(Byzantine Secular Classical Music, Vol. 1)3枚組の分売と思われるAnthology of Byzantine Secular Music, Vol 1の1曲目、The Lampadarios: Pleasant, Sweet, Instrumental And Pagan. Fourth Modeには、「第4のモード」と「ペイガン(異教の)」という表記がありまして、第4のモードと言うのがビザンツ聖歌の第4エコスと同じかどうか、それとペイガンの真意は?、と言うのが今週一番気になる点です。と言う訳で、ビザンティンの世俗音楽シリーズの第一集の1曲目と、オコラのギリシア正教の音源の第4エコスを並べてみます。第4エコスの音階は、d,e,f,g,a,h,c,dでした。前者は大らかな長調系、後者は最初短調系の音の動きで始まり段々晴れてきます。同じ旋法に聞こえますでしょうか?(下の方に放送原稿を再度)

The Lampadarios: Pleasant, Sweet, Instrumen


Tu es bénie entre toutes les femmes (4e mode)


ギリシアのOrataから出ていたビザンティンの世俗音楽シリーズについて、1990年の前半だったと思いますが、私が六本木ウェイブのクラシックコーナーに勤務している時に、この第一集を中心にバルカン~ロシアの音源で企画を組んだことがあります。ちょうどベルリンの壁が崩壊し、東欧革命が進んでいる頃で、ソ連崩壊前夜という時期でしたから、「東方・東欧からの風」というタイトルを付けたように記憶しています。フリストドゥーロス・ハラリスの演奏は、1000年以上続いたビザンツ帝国の時代を髣髴とさせるような大らかな響きがありましたが、その背景にはビザンツの典礼音楽と共通する精妙な音程感覚が潜んでいたのだろうと思います。しかし第一集以降も、とめどもなくリリースが続き、ビザンツの音楽理論まで理解が及ばない日本のリスナーには、かなりヘビーなシリーズだったと思います。
フリストドゥーロス・ハラリス Christodoulos Halaris (Χριστόδουλος Χάλαρης)は、1946年生まれで2019年に亡くなったギリシアの作曲家で音楽学者です。ギリシア中世のビザンツ音楽や古代ギリシアの音楽の解釈で広く知られ、まだ五線譜がなかった頃のネウマ譜から考証・復元されたビザンツ時代の世俗音楽には、トルコの場所が11世紀に「トルコ化」する前のアナトリアの音楽も入っていたのだろうと思います。
30年ほど経った現在、手元にCDは残っていませんでしたが、アップルミュージックにはこのシリーズが色々ありました。何故かビザンティンの世俗音楽シリーズの第一集(Byzantine Secular Classical Music, Vol. 1)は見当たりませんが、この3枚組の分売と思われるAnthology of Byzantine Secular Music, Vol 1がありましたので、1曲目のThe Lampadarios: Pleasant, Sweet, Instrumenをおかけします。元の3枚組では、Pleasant, Sweet, Instrumental And Pagan. Fourth Mode Composed By – Chryssafis, The "Lampadarios"*となっていた曲です。

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2020年10月26日 (月)

ビザンツ聖歌とビザンティン世俗音楽

ゼアミdeワールド231回目の放送、日曜夜10時にありました。28日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今回の動画はオコラのビザンツ聖歌のみです。ビザンティンの世俗音楽は、また水曜以降に。

ギリシアの12回目になります。今回はオコラのギリシア正教の音源から2曲聞いた後で、ビザンティンの世俗音楽も少しかけておこうと思います。オコラ盤はテオドロス・バシリコス・アンサンブルの演奏です。コンスタンティノープル総主教区から主唱者プロトプサルトの称号を受けたペトロス・ベレケティス(Petros Bérékétis)が18世紀に書いたビザンティン音楽の8つの調「オクトエーコス」による生神女(しょうしんじょ)マリア大賛歌の完全版の初めての録音です。

ゼアミブログで先日触れましたが、ビザンツの音楽理論では、オクターブは68の部分に分けられ全音が12、4分の3音が9、半音が7で示され、音階そのものは8つのエコスの体系の中で4つの正格エコスと、4つの変格エコスにまとめられる、とあります。これだけを読むと、オスマン音楽以上の複雑な音程体系のように見えます。

それと、ビザンツ音楽の特徴としてよく上げられる持続低音(ドローン)ですが、ギリシア語ではイソンと呼ばれ、合唱長に当たるプロトプサルティスが担当し、アトス山のLPでは修道院長アレクシオスが歌っていたそうです。伴奏声部と言うよりは、音の支えであり旋律の響きを豊かにするための重要なパートとされています。オコラ盤では、8つのエコスが全て収録されれています。この中から1曲目と8曲目をおかけします。それぞれの音階は、各動画の下に記しております。

<1 Grèce - Musique sacrée byzantine, grand chant octotonal à la Vierge ~Sainte Vierge, mère de Dieu (1er mode) 5分40秒>

Sainte Vierge, mère de Dieu (1er mode)



第1エコス d,9,e,7,f,12,g,12,a,9,h,7,c,12,d

<8 Grèce - Musique sacrée byzantine, grand chant octotonal à la Vierge ~Le sauveur de nos âmes (4e mode plagal) 9分34秒>

Le sauveur de nos âmes (4e mode plagal)



第8エコス c,d,e,f,g,a,h,c

ギリシアのOrataから出ていたビザンティンの世俗音楽シリーズについて、1990年の前半だったと思いますが、私が六本木ウェイブのクラシックコーナーに勤務している時に、この第一集を中心にバルカン~ロシアの音源で企画を組んだことがあります。ちょうどベルリンの壁が崩壊し、東欧革命が進んでいる頃で、ソ連崩壊前夜という時期でしたから、「東方・東欧からの風」というタイトルを付けたように記憶しています。フリストドゥーロス・ハラリスの演奏は、1000年以上続いたビザンツ帝国の時代を髣髴とさせるような大らかな響きがありましたが、その背景にはビザンツの典礼音楽と共通する精妙な音程感覚が潜んでいたのだろうと思います。しかし第一集以降も、とめどもなくリリースが続き、ビザンツの音楽理論まで理解が及ばない日本のリスナーには、かなりヘビーなシリーズだったと思います。

フリストドゥーロス・ハラリス Christodoulos Halaris (Χριστόδουλος Χάλαρης)は、1946年生まれで2019年に亡くなったギリシアの作曲家で音楽学者です。ギリシア中世のビザンツ音楽や古代ギリシアの音楽の解釈で広く知られ、まだ五線譜がなかった頃のネウマ譜から考証・復元されたビザンツ時代の世俗音楽には、トルコの場所が11世紀に「トルコ化」する前のアナトリアの音楽も入っていたのだろうと思います。
30年ほど経った現在、手元にCDは残っていませんでしたが、アップルミュージックにはこのシリーズが色々ありました。何故かビザンティンの世俗音楽シリーズの第一集(Byzantine Secular Classical Music, Vol. 1)は見当たりませんが、この3枚組の分売と思われるAnthology of Byzantine Secular Music, Vol 1がありましたので、1曲目のThe Lampadarios: Pleasant, Sweet, Instrumenをおかけします。元の3枚組では、Pleasant, Sweet, Instrumental And Pagan. Fourth Mode Composed By – Chryssafis, The "Lampadarios"*となっていた曲です。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Anthology of Byzantine Secular Music, Vol 1 ~The Lampadarios: Pleasant, Sweet, Instrumen 10分28秒>

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2020年10月23日 (金)

オクトエコス(八調)

アトス山のLPで知って驚いたのが、ビザンツ音楽のオクトエコスという音組織で、これを知らずにオコラのビザンツ典礼のCDを聞いていたのかと恥ずかしくなりました。ドローンを聞いてビザンツ音楽らしさを漠然と感じるだけでは入り口に立っただけでしょう。音階構造を検証してみる必要を感じました。

先日の繰り返しになりますが、ビザンツの音楽理論では、オクターブは68の部分に分けられ全音が12、4分の3音が9、半音が7で示され、音階そのものは8つのエコスの体系の中で4つの正格エコスと、4つの変格エコスにまとめられる、とアトスLPにありました。レゲトスは第4エコスから派生したエコスです。

アトスのLPに載っていたオクトエコスごとの音階表を転記しておきます。12平均律的に考えると、何でミとファの間に半音があるのかとか、ドとレの間にもう一つ全音があるのかとか、そこから引っかかってきます(笑) 第4と第5、レゲトスは、音は同じレミファソラシドレですが、plagalが入るかどうかで音の動きが変わってくるのだろうと思います。墓調とも呼ばれる第七調の音階も出ていますが、シから始まるところから特殊な感じに見えます。

plagal=(教会旋法で)変格の, プラガルの, 変格旋法の《1聖歌のような教会旋法で終止音[主音]が音階の中央部に位置する.2下属和音から主和音に進行して楽曲を終止させる》

第1エコス d,9,e,7,f,12,g,12,a,9,h,7,c,12,d
第2エコス c,9,des,12,e,f,g,9,as,12,h,c
第3エコス c,12,d,e,f,g,a,7,b,9,c
第4エコス d,e,f,g,a,h,c,d
第5エコス d,e,f,g,a,h,c,d
第6エコス d,7,es,18,fis,3,g,a,7,b,18,cis,3,d
第7エコス h,7,c,d,e,f,g,a,b
第8エコス c,d,e,f,g,a,h,c
レゲトス d,e,f,g,a,h,c,d

以下は、ウィキペディアのビザンツ聖歌の説明文ですが、アトスLPの解説とオクターブの構成が68と72で異なっています。

八調(はっちょう、ギリシア語: οκτοηχος, 英語: Octoechos)とは、正教会の教会音楽で用いられる八種の音階・音楽パターン・祈祷文をいう。7,8世紀ダマスコの克肖者、聖イオアンが体系化したとされている。ギリシャ語・英語の"οκτοηχος", "Octoechos"は、八調によって構成される祈祷書「八調經(はっちょうけい・八調経)」をも指す。

現在のビザンティン聖歌の運用は、八調(はっちょう…"eight modes"もしくは"eight tones")に従っている。それぞれの調に固有の調性がある。聖使徒フォマ(トマス)の主日の翌月曜日に第一調で始まり、それ以降、週ごとに調が順次変更される。光明週間には、以下のように一日ごとに調が変更される。

主日(日曜日) - 第一調(だいいっちょう、mode 1)
月曜日 - 第二調(だいにちょう、mode 2)
火曜日 - 第三調(だいさんちょう、mode 3)
水曜日 - 第四調(だいよんちょう、mode 4)
木曜日 - 第五調(だいごちょう、mode plagal of the first)
金曜日 - 第六調(だいろくちょう、mode plagal of the second)
土曜日 - 第八調(だいはっちょう、mode plagal of the fourth)

墓調とも呼ばれる第七調は、その重い響きのために八調の中では祭りの時期に相応しく無いために、光明週間からは外されていると考えられる。

ビザンティン聖歌は七つの音階(ギリシア語: "Νη, Πα, Βου, Γα, Δι, Κε, Ζω."、ニ・パ・ヴ・ガ・ディ・ケ・ソ)から構成される。これらの音階は、"Νη"(ニ)の繰り返しを伴いつつ、1オクターブの間隔を占める。この1オクターブ内で、相対的な音高は音階の調によって変化する。現在のビザンティン聖歌理論は1オクターブを72のモリア(moria)に分割している。従って西欧音楽における全音は12モリアから構成されることとなり、半音は6モリアから構成されることとなる。

Mysteries of the Christian East: Byzantine Chant: The Ochtoechos


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2020年10月21日 (水)

最近のクセノフォントス修道院

ビザンツ典礼の精妙な音組織は、知れば知るほど、深い泉を覗き込むようで驚くばかりです。目下の関心事は、中東音楽の中でも特に微細な音程を操るトルコ古典音楽は、ビザンツ音楽から影響を受けていたのではという点ですが、意外に資料は少なそうです。ビザンツ時代の遥か前の紀元前6世紀の古代ギリシアでは、数学・物理学として音楽を研究したピタゴラスがピタゴラス音律を生み出す国柄ですから、元々素地が連綿と存在しているのでしょう。今日の動画は、最近のクセノフォントス修道院の典礼音楽です。ミレニアムの頃でしょうか?

Millenium 998-1998 Holy Monastery of Xenophontos ☦ Sfânta Mănăstirea Xenofont

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2020年10月19日 (月)

クセノフォントス修道院

ゼアミdeワールド230回目の放送、日曜夜10時にありました。21日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。
ギリシアの11回目になります。先週に続いてギリシア正教の聖地アトス山の音源を入れたいと思います。もう一度ディスク情報を繰り返しますが、ギリシア正教の音源はフランスのオコラなどからありますが、女人禁制のアトス山の音源は、私が知っている限りではドイツArchivのレコードくらいで、国内盤LPは出ていたようですが、CDは輸入盤のみで国内盤は出なかったように思います。アトス山の修道士によるイースターの音源は、A面、B面共に26分前後ありますので、2週に亘ってノーカットでおかけしております。解説は、ゼアミブログの方で入れる予定です。今回はB面を続けておかけします。ドイツArchiv盤が80年代から手元にありまして、その音源をデジタル化してiPhoneから流しております。

<Easter on Mount Athos-B 26分27秒>

このLPの演奏団体名を入れておりませんでした。アトス山に20ほどある修道院の内の、クセノフォントス修道院長アレクシオスと修道士達です。今日の動画は、そのXenophontos monasteryの映像です。クリスマスですが、シマンドラと鐘が出てきます。キリストの生誕や復活を祝うこれらの楽器は、必ず教会の外で奏されるそうです。

B面の曲名は、以下の通りです。
5. 復活祭のスティキロンを持つ賛課の詩篇
6.復活祭の説教(偽クリュソストモス作)
7.鐘の音とシマンドラ

Christmas at Xenophontos Monastery

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2020年10月16日 (金)

アトスのビザンツ典礼 8つのエコスと持続低音イソンの話

昨日は弦楽四重奏の本番だったので、ブログはお休みしました。16本の動画がアップされているEaster On Mount Athos / Greek Byzantine Orthodox Hymnsですが、現在はMP3のみのようですが、2011年にはCDが出ていたのかも知れません。これは知らない録音でした。
例のアトス山のイースターのLPの解説によると、ビザンツ音楽理論では、オクターブは68の部分に分けられ全音が12、4分の3音が9、半音が7で示され、音階そのものは8つのエコスの体系の中で4つの正格エコスと、4つの変格エコスにまとめられる、とあります。これだけを読むと、オスマン音楽以上の複雑な音程体系のように見えます。
それと、ビザンツ音楽の特徴としてよく上げられる持続低音(ドローン)ですが、ギリシア語ではイソンと呼ばれ、合唱長に当たるプロトプサルティスと呼ばれるパートが担当し、このLPでは修道院長アレクシオスが歌っているそうです。伴奏声部と言うよりは、音の支えであり旋律の響きを豊かにするための重要なパートとされています。8つのエコスの音階表もありますので、また随時動画に添えてみます。(実際は第4エコスから派生したレゲトスがあるので、都合9つになります)次回の放送でかける予定のオコラ盤では、8つのエコスが全て収録されれています。

Holy Saturday Lamentations (the first and second part, 1st plagal mode, the third part 3rd mode)



plagal modeと言うのがエコスだとすれば、第一エコスの音列は、d, 9, e, 7, f, 12, g, 12, a, 9, h, 7, c, 12, d になります。

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2020年10月14日 (水)

アトス山の復活祭(アラビア語字幕付き)

アルヒーフのアトス山の音源はYouTubeでは見当たらないままですが、このLPの国内盤を知人からお借りしまして、おそらく1980年頃の発売当時の邦訳が分かりました。A面の曲目は、以下の通りです。



1.光の分配と教会からの行列による外出
2.鐘の音とシマンドラ(木製か金属製の一種の法具)
2.カノンの第1オードとシナプティ(代願の祈り)による教会への入場
4.カノンの第9オード

カノンと言うのは、西洋音楽のカノンの意味ではなく、7世紀に現れたビザンツの宗教詩の重要な形式を指し、オードとは聖歌の意味で、これは西洋とほぼ同じでしょう。以下幾つか重要な記述を拾ってみました。今日のアトス山の復活祭の動画はアラビア語字幕が付いていますが、古代のヘレニズムの時代には現在のエジプトまでギリシア世界だったことを、以下の文章からも思い出させます。

ギリシア正教の修道制度が興ったエジプトでは、4世紀に最初の隠者たちがナイル川流域の両岸に沿った砂漠の山地に隠遁していた。

隠者、つまりアナコレート(世捨て人)は、今日でもなお修道制度の最高の形と考えられている。彼らは、禁欲主義という理由で、神の姿を見たり、奇蹟的な力を持つとされる。

アトス山の諸修道院で行われている礼拝の形式は、ギリシア語圏の全ての教会やその布教地域(バルカン半島、ロシア、グルジア)と同様、ビザンツ典礼である。

Easter on Mount Athos (arabic subtitles)

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2020年10月13日 (火)

Τράβα βρε μάγκα και αλάνι

火曜は通常ブログは上げていませんが、先週の話題で気になる動画がありましたので、一本上げておきます。クレズマーに酷似していると言っていたハサポセルビコのMin Perasis Ap' Ti Gitonia Mouですが、ピレウス派のヴァンヴァカーリスだけでなく、スミルナ派のローザ・エスケナージも歌っていました。両派に共通の歌なのか、どちらが元なのか、謎です。エスケナージでは、この曲の副題?のΤράβα βρε μάγκα και αλάνιがタイトルになっています。解説に、Σύνθεση & στίχοι Κώστας Σκαρβέλης 1934 Δίσκος HMV AO 2147(作曲と作詞:コースタス・スカルヴェリス 1934年)とあって、HMVのSP番号が出ていました。コースタス・スカルヴェリスが、どういう関係の人か調べれば分かりそうです。

Τράβα βρε μάγκα και αλάνι Εσκενάζυ Ρόζα

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2020年10月12日 (月)

ギリシア正教の聖地 アトス山

ゼアミdeワールド229回目の放送、日曜夜10時にありました。14日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。アルヒーフと同じ音源は今の所見当たらないので、音楽のみの長尺の一本とドキュメンタリーを上げておきます。次回のB面は抜粋にしようかとも思いましたが、昨晩改めてラジオから流れる素晴らしい修道士の合唱を聞いて、一瞬にして気持ちが固まりました。やはり全てノーカットでかけます。

ギリシアの10回目になります。中世と古代の音楽と、エーゲ海の島ごとの音楽に行く前に、2回ほどギリシア正教の聖地アトス山の音源を入れたいと思います。ギリシア正教の音源はフランスのオコラなどからありますが、女人禁制のアトス山の音源は、私が知っている限りではドイツArchivのレコードくらいで、国内盤LPは出ていたようですが、CDは輸入盤のみで国内盤のCD化はされてなかったように思います。アトス山の修道士によるイースターの音源は、A面、B面共に26分前後ありますので、2週に亘ってノーカットでおかけしたいと思います。解説は、ゼアミブログの方で入れる予定です。今回はA面を続けておかけします。

<Easter on Mount Athos-A 25分38秒>

Beautiful Orthodox songs from the Mount Athos- Greece


A Visit To The Holy Mountain ATHOS, Greece


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2020年10月 9日 (金)

クレズマーにそっくりなΜην Περάσεις Απ'την Γειτονιά Μου ツォミディスも少し

ツォミディスのSto Limani Tou Pireaを探す予定でしたが、それよりも昨日の2本目のダンスの最後に出てきたハサポセルビコの曲、Μην Περάσεις Απ'την Γειτονιά Μου(Min Perasis Ap' Ti Gitonia Mou)の方が気になってしまいました。何故かと言うと、余りにユダヤのクレズマーに似ている上に、マルコス・ヴァンヴァカーリスの映像があったので、もしかしたら彼が書いた曲なのではと思ったためです。調べてみると、Poly Panou(ポリー・パヌー 1940-2013)というライカの女性歌手が歌って広く知られるようになったようで、アップルミュージックでもヴァンヴァカーリスではなく彼女の歌唱で見つかりました。
ツォミディスについても、ノンサッチと同一人物だろうかと思うようなヴァンヴァカーリスばりのダミ声で弾き語っている後の音源があったり、ジャズのアルト・サックス奏者フィル・ウッズと共演していたり、一筋縄で行かない人だとよく分かりました。Min Perasis Ap' Ti Gitonia Mouは、1本目がヴァンヴァカーリス、2本目はギオタ・ネウカの歌唱。3本目は怪しげな舞台設定にツォミディスのダミ声がぴったりです。Sto Limani Tou Pireaを4本目に入れておきますが、多過ぎるのでフィル・ウッズのは外しました。

Μην περάσεις απ΄ τη γειτονιά μου ( Τράβα ρε μάγκα και αλάνι ) - Μάρκος Βαμβακάρης


Γιώτα Νέγκα - Μην περάσεις απ΄ τη γειτονιά μου (Στην υγειά μας)


Ιορδάνης Τσομίδης IORDANIS TSOMIDIS - Μην είσαι ψεύτρα δίγνωμη


Iordanis Tsomidis "Stō Limani Tou Peraea (On The Waterfront Of Piraeas)"

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2020年10月 8日 (木)

ヨルダニス・ツォミディスのハサポセルビコ

ヨルダニス・ツォミディスのYouTubeは色々ありました。ハサポセルビコを聞いていつも思いますが、ユダヤのクレズマーに酷似して聞こえることがよくあります。バルカンやルーマニアのホラと繋がっているので当然と言えば当然ですが。2本目のようなギリシアの舞踊で見ると、更にそう思います。「ピレウスの浜辺で」は明日探す予定です。(以下放送原稿を再度)

今日ご紹介したいもう一枚は、アメリカのノンサッチ・エクスプローラー50の世界の民族音楽シリーズの一枚で、「《ギリシア》ブズーキの魅力」というタイトルでワーナーパイオニアから出ています。演奏者はヨルダニス・ツォミディス他ですが、60年代後半の録音らしいこと以外、演奏者のプロフィールなどは不明です。

一番興味深く聞いたのが、4曲目のハサピコ「水夫の踊り」で、原盤ではKasaposerbiko Me Taximとなっている通り、セルビア風のハサピコとなるでしょうか。元はコンスタンティノープルの肉屋の踊りでしたが、江波戸先生の解説によると、起源はマケドニア地方の羊飼いの踊りで、マケドニア出身のアレクサンダー大王の兵士たちが好んで踊ったところから広く各地に伝えられ、ホラやホロ、あるいはオロと呼ばれ、バルカン各地に共通して見られるようになった輪舞に繋がって行きます。

<4 Iordanis Tsomidis / Bouzoukee - The Music Of Greece ~Kasaposerbiko Me Taxim 6分41秒>

Iordanis Tsomidis "Kasapōserbikō Me Taxim" from album "BOUZOUKEE The Music of Greece" 1960s


ΧΑΣΑΠΟΣΕΡΒΙΚΑ - ΜΠΑΜΠΗΣ ΤΣΕΡΤΟΣ - ΚΑΤΕΡΙΝΑ ΤΣΙΡΙΔΟΥ

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2020年10月 7日 (水)

2つのΣ' αγαπώ サガポー

Σ' αγαπώ (Αχ περιστέρι μου)は、「私はあなたを愛している(ああ私の鳩)」の意味ですが、このサガポーと言う曲は、ヨルゴス・ダラーラスやアレクシーウも歌っていたように思います。甘く切ない感じは似ていますが、別の曲でしょう。一本目の1974年の映像は、50秒辺りに当時のライカを支えた若手名歌手が集っています。左から、ダラーラス、アレクシーウ、アンナ・ヴィッシですが、奥の男性二人は不明でした。アンナ・ヴィッシのリリカルな歌唱が素晴らしいです。この映像では作曲はΣταύρος Κουγιουμτζής(スタヴロス・クギウムツィス)とあります。2本目はダラーラスの2003年のサガポー。ブズーキのソロから魅せます。

Σ' αγαπώ (Αχ περιστέρι μου): ΑΝΝΑ ΒΙΣΣΗ [1974]


Γιώργος Νταλάρας - Σ' Αγαπώ

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2020年10月 5日 (月)

Anna Vissi / Re!

ゼアミdeワールド228回目の放送、日曜夜10時にありました。7日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。Triada Ke Valeは、ライブ映像もありました。ノンサッチ・エクスプローラーの方は、また水曜以降に。

ギリシアの9回目になります。前回これまでにかけてなかったレベティカ関連の音源と予告していましたので、レベティカ風な曲を2枚の音源からピックアップしてみました。

まずは、トゥンダスのガルソナを取り上げた際に、キプロス生まれの現代ギリシアのポップクイーン、アンナ・ヴィッシのYouTubeをゼアミブログでご紹介しましたが、おそらくこの曲は彼女のアルバムには入ってないので、代わりにレベティカ風な曲と言うことで、手持ちの94年のアルバム「レー!」から2曲選びました。Triada Ke ValeとMelagholiesという曲で、他の曲もそうですが彼女の元夫でプロデューサーのニコス・カルヴェラスの作曲です。ジャンル的にはContemporary Laikaになるようです。この盤のヒット曲は他にありますが、一番伝統寄りに聞こえた2曲です。2曲続けてどうぞ。

<2 Anna Vissi / Re! ~Triada Ke Vale 5分19秒>

ΑΝΝΑ ΒΙΣΣΗ 30 ΚΑΙ ΒΑΛΕ


Anna Vissi - Triada Ke Vale, Mercedes Rex (1994) [fannatics.gr]


<7 Anna Vissi / Re! ~Melagholies [Album Version] 4分11秒>

Anna Vissi - Melagholies (Official Audio Release) [fannatics.gr]


妖艶なイメージの強いアンナ・ヴィッシですが、16歳から20歳前後の頃の録音を集成したアルバム「Ta Kalitera Mou Tragoudia」を最近アップルミュージックで聞きまして、清楚かつ爽やかな印象な上に伝統的な曲が多くて非常に驚きました。その中からも1曲おかけします。

<1 Anna Vissi / Ta Kalitera Mou Tragoudia ~Na 'Mouna Sta Heria Sou Karavi 2分16秒>

Na 'Mouna Sta Heria Sou Karavi


今日ご紹介したいもう一枚は、アメリカのノンサッチ・エクスプローラー50の世界の民族音楽シリーズの一枚で、「《ギリシア》ブズーキの魅力」というタイトルでワーナーパイオニアから出ています。演奏者はヨルダニス・ツォミディス他ですが、60年代後半の録音らしいこと以外、演奏者のプロフィールなどは不明です。

一番興味深く聞いたのが、4曲目のハサピコ「水夫の踊り」で、原盤ではKasaposerbiko Me Taximとなっている通り、セルビア風のハサピコとなるでしょうか。元はコンスタンティノープルの肉屋の踊りでしたが、江波戸先生の解説によると、起源はマケドニア地方の羊飼いの踊りで、マケドニア出身のアレクサンダー大王の兵士たちが好んで踊ったところから広く各地に伝えられ、ホラやホロ、あるいはオロと呼ばれバルカン各地に共通して見られるようになった輪舞に繋がって行きます。

<4 Iordanis Tsomidis / Bouzoukee - The Music Of Greece ~Kasaposerbiko Me Taxim 6分41秒>

もう一曲この盤から、同じくハサピコですが、「ピレウスの浜辺で」を聞きながら今回はお別れです。非常によく聞く旋律です。
時間が余りましたら、1曲目の「ワインを飲むとき」というチフテテリを時間までおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Iordanis Tsomidis / Bouzoukee - The Music Of Greece ~Sto Limani Tou Pirea 2分56秒>

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2020年10月 2日 (金)

Ούζο Όταν Πίνεις ウーゾ・オタン・ピニス

放送では最後にかけたのでフェイドアウトになってしまいましたが、「レベティコのディアスポラ」のジャケットを飾っているSalto OrientaleのDiki Mou Ine I Ellasと言う曲は、ハリス・アレクシーウも歌っていた曲です。どれに入っていたか思い出せなかったのですが、YouTubeに「23のトラグーディア(民謡)」のジャケットが出ていて思い出しました。この盤の2曲目で、とてもレベティカらしい一曲です。「歌」の意味のトラグーディは、民謡を指す場合、Παραδοσιακό τραγούδι(パラドシアコ・トラグーディ)と言う言い方があるようです。この曲のギリシア語の原題はΟύζο Όταν Πίνεις(ウーゾ・オタン・ピニス)で、意味は「あなたがウーゾを飲む時」になるでしょうか? サルト・オリエンターレで曲名になっているDiki Mou Ine I Ellasの原文表記はΔική Μου Είναι Η Ελλάςで、2本目のカッコ内に出ています。意味は「ギリシャは私のものです」で合っているのでしょうか? いずれにしてもウーゾ好きな酒飲みの歌のようです。おまけで、3本目には先日のステリオス・ヴァンヴァカーリスとルイジアナ・レッドのインタープレイを上げておきます。
ギリシア語については、大学時代に哲学科だったので古代ギリシア語を取っていまして、大体の表記は読めますが、そのアッティカ方言の古典ギリシア語(新約聖書のコイネーより前のギリシア語)では、MとPでBと読ませるようなルール(ブズーキのΜπουζούκιなど)はなかったので、その辺の現代ギリシア語特有の発音のコツは知っておく必要があります。

<2-6 Salto Orientale / Diki Mou Ine I Ellas 4分28秒>

Diki mou ine i ellas - Salto Orientale


Χάρις Αλεξίου - Ούζο Όταν Πίνεις (Δική Μου Είναι Η Ελλάς) - Official Audio Release


Stelios Vamvakaris with Louisiana Red Live @KYTTARO2008

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2020年10月 1日 (木)

メリハット・ギュルセスの歌うレベティカ

メリハット・ギュルセスと言えば、トルコの古典歌謡、サナートのベテラン歌手として有名だと思います。最近では「アタ・テュルクのシャルク」、古くはTraditional Crossroadsから1996年に出たTatyos Efendiのトルコ古典声楽曲に名を連ねていました。サナートど真ん中の人かと思いきや、99年にレベティカ・ソングを含むアルバムを出していて、その中にBarba Yannakakisがありまして、「レベティコのディアスポラ」に収録されています。言うまでもなく、ハリス・アレクシーウの名盤タ・ツィリカの1枚目でオープニングを飾っていた曲です。タ・ツィリカからは、アマン・カテリーナ・ムーと、タイトルは少し変わっていますがTelgrafın Türküsü & İstanbul Türküsüもありました。Barba Yannakakisは、別名のように使われるKurbanと表記されています。他はウッシャーク・シルトと言う曲が、シルトスのリズムかと思うくらいで、17曲中の残りはサナートの範囲かなと思います。

Melihat Gülses - Barba Yannakakis


Melihat Gülses - Aman Katerina Mu

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