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2020年10月26日 (月)

ビザンツ聖歌とビザンティン世俗音楽

ゼアミdeワールド231回目の放送、日曜夜10時にありました。28日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今回の動画はオコラのビザンツ聖歌のみです。ビザンティンの世俗音楽は、また水曜以降に。

ギリシアの12回目になります。今回はオコラのギリシア正教の音源から2曲聞いた後で、ビザンティンの世俗音楽も少しかけておこうと思います。オコラ盤はテオドロス・バシリコス・アンサンブルの演奏です。コンスタンティノープル総主教区から主唱者プロトプサルトの称号を受けたペトロス・ベレケティス(Petros Bérékétis)が18世紀に書いたビザンティン音楽の8つの調「オクトエーコス」による生神女(しょうしんじょ)マリア大賛歌の完全版の初めての録音です。

ゼアミブログで先日触れましたが、ビザンツの音楽理論では、オクターブは68の部分に分けられ全音が12、4分の3音が9、半音が7で示され、音階そのものは8つのエコスの体系の中で4つの正格エコスと、4つの変格エコスにまとめられる、とあります。これだけを読むと、オスマン音楽以上の複雑な音程体系のように見えます。

それと、ビザンツ音楽の特徴としてよく上げられる持続低音(ドローン)ですが、ギリシア語ではイソンと呼ばれ、合唱長に当たるプロトプサルティスが担当し、アトス山のLPでは修道院長アレクシオスが歌っていたそうです。伴奏声部と言うよりは、音の支えであり旋律の響きを豊かにするための重要なパートとされています。オコラ盤では、8つのエコスが全て収録されれています。この中から1曲目と8曲目をおかけします。それぞれの音階は、各動画の下に記しております。

<1 Grèce - Musique sacrée byzantine, grand chant octotonal à la Vierge ~Sainte Vierge, mère de Dieu (1er mode) 5分40秒>

Sainte Vierge, mère de Dieu (1er mode)



第1エコス d,9,e,7,f,12,g,12,a,9,h,7,c,12,d

<8 Grèce - Musique sacrée byzantine, grand chant octotonal à la Vierge ~Le sauveur de nos âmes (4e mode plagal) 9分34秒>

Le sauveur de nos âmes (4e mode plagal)



第8エコス c,d,e,f,g,a,h,c

ギリシアのOrataから出ていたビザンティンの世俗音楽シリーズについて、1990年の前半だったと思いますが、私が六本木ウェイブのクラシックコーナーに勤務している時に、この第一集を中心にバルカン~ロシアの音源で企画を組んだことがあります。ちょうどベルリンの壁が崩壊し、東欧革命が進んでいる頃で、ソ連崩壊前夜という時期でしたから、「東方・東欧からの風」というタイトルを付けたように記憶しています。フリストドゥーロス・ハラリスの演奏は、1000年以上続いたビザンツ帝国の時代を髣髴とさせるような大らかな響きがありましたが、その背景にはビザンツの典礼音楽と共通する精妙な音程感覚が潜んでいたのだろうと思います。しかし第一集以降も、とめどもなくリリースが続き、ビザンツの音楽理論まで理解が及ばない日本のリスナーには、かなりヘビーなシリーズだったと思います。

フリストドゥーロス・ハラリス Christodoulos Halaris (Χριστόδουλος Χάλαρης)は、1946年生まれで2019年に亡くなったギリシアの作曲家で音楽学者です。ギリシア中世のビザンツ音楽や古代ギリシアの音楽の解釈で広く知られ、まだ五線譜がなかった頃のネウマ譜から考証・復元されたビザンツ時代の世俗音楽には、トルコの場所が11世紀に「トルコ化」する前のアナトリアの音楽も入っていたのだろうと思います。
30年ほど経った現在、手元にCDは残っていませんでしたが、アップルミュージックにはこのシリーズが色々ありました。何故かビザンティンの世俗音楽シリーズの第一集(Byzantine Secular Classical Music, Vol. 1)は見当たりませんが、この3枚組の分売と思われるAnthology of Byzantine Secular Music, Vol 1がありましたので、1曲目のThe Lampadarios: Pleasant, Sweet, Instrumenをおかけします。元の3枚組では、Pleasant, Sweet, Instrumental And Pagan. Fourth Mode Composed By – Chryssafis, The "Lampadarios"*となっていた曲です。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Anthology of Byzantine Secular Music, Vol 1 ~The Lampadarios: Pleasant, Sweet, Instrumen 10分28秒>

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