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2020年11月 2日 (月)

古代ギリシアの音楽

ゼアミdeワールド232回目の放送、日曜夜10時にありました。4日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。パニアグヮの動画は、個別の曲では余り見当たらないので、丸ごと全て入っている一本を上げておきます。

Musique de la Grèce antique


ギリシアの13回目になります。古代ギリシアの音楽の音源2枚からご紹介したいと思いますが、今回の音源は、スペイン古楽界の鬼才グレゴリオ・パニアグヮとアトリウム・ムジケーの1978年の演奏、もう一枚は、前回のビザンティン世俗音楽シリーズで有名なギリシアのフリストドゥーロス・ハラリスの演奏です。ハラリスの方は、次回になると思います。

ヨーロッパ文化を特徴づけている哲学、科学、芸術は古代ギリシアに起源を持っていて、音楽もまた然りです。英語のmusicの語源はゼウスの娘、女神ムーサに由来していて、ムーサは創造神であり、知の守護神でした。

古代ギリシアの時代にもちろん五線譜はありませんので、パピルスや大理石に残された音楽の断片から想像力豊かに展開している音楽と言えると思います。12平均律的には外れて聞こえる音もありますので、ピタゴラス音律の観点から聞いても面白いと思います。パニアグヮの演奏は、優秀録音でも有名で、マドリード郊外に持つ彼の工房で、36種類もの古代ギリシアの楽器を復元して録音しています。ハルモニア・ムンディ・フランスの大ヒットアルバムの一つです。

36種の中から注目の使用楽器を上げると、
1.エピゴネイオン:40弦をもつ、古代ギリシャ最大の撥弦楽器。ひざの上に横向きに乗せ指ではじいて演奏する。
5.プサルテリオン ここではプレクトロン(義甲)を用いず、指のみで弾くハープ形の弦楽器を広くさす。
7.テュンパノン:打楽器。両側に皮膜を張った円筒形の本体をもつ。ふつうディオニュソス祭祀のときに女性によって演奏された。
9.キタラ:古代ギリシャを代表する撥弦楽器。アマチュアの弾くリラにくらべ、キタラは職業音楽家の楽器とされ、共鳴胴も幅広く、音色もいっそう充実している。7弦が基本。調和、節度というアポロン的理想を表現する楽器とされる。
10.キュンバ:シンバル。ディオニュソスの祭祀で用いられる。
13.アウロス:もっとも代表的な管楽器。ふつう2本の管が一体を成し、それぞれにダブル・リードと4~15の指穴をもつ。鋭い音色によって、熱狂的なディオニュソスの世界を表現する。ディスクでは各種のアウロスが使い分けられている。(現代の縦笛にアウロスの名前が残っています)
16.セイストロン:シストルム。柄のついた馬蹄形の金属枠を振り、そこにはめこまれた金属片を打ち鳴らす。古代エジプトに由来し、多くの種類がある。
19.シリンクス:パンの笛。長さの異なる閉管の縦笛を高さの順に並べたもの。
21.パンドゥーラ:3本の弦をもつ、長柄のリュート。トリコルドンとも呼ばれる。(グルジアに残る)
26.カノン:ピタゴラスが発明したといわれる、単弦の楽器。音程比の測定に利用された。モノコルド。
28.フォルミンクス:吟遊詩人によって演奏された、原始的なリラ。最古の弦楽器といわれる。
32.ヒュドラウロス:水力オルガン。クテシボイスまたはアルキメデスの発明といわれる。パンの笛に水圧で風を送ったもの。
33.リラ(リュラ):キタラの単純化された楽器。演奏もずっと容易である。ふつう4弦か7弦。(ライアーの原型?)

まずは、3曲目まで続けておかけします。
01:序奏-[オレステーヌ]のスタシモン  02:コントラポリノポリスの器楽曲断片  03:デルフォイのアポロン讃歌第1 と続きます。

<1 Anakrousis - Orestes Stasimo 3分7秒>
<2 Fragments Instrumentaux de Contrapollinopolis 1分2秒>
<3 Premier Hymne Delphique À Apollon 4分54秒>

先ほど「英語のmusicの語源はゼウスの娘、女神ムーサに由来していて、ムーサは創造神であり、知の守護神でした。」とコメントを入れましたので、7曲目の「ミューズ(ムーサ)への讃歌」もおかけしておきます。

<7 Hymne À la Muse 1分>

他にタイトルを見るだけで興味深いのが、06:太陽神への讃歌、11:セイキロスの墓碑銘、16:オクシュリンコスのキリスト教聖歌、17:ホメロスの讃歌、18:パピルス・ゼノン、カイロ断片、辺りです。キリスト教が興るのは紀元後ですから、大体は紀元前を想定していると思われる中で、16曲目は新しい歌になると思います。

<16 Hymne Chrétienne D'Oxyrhynchus 1分32秒>

次は、英雄叙事詩のイリアスとオデュッセイアで有名な「ホメロスの讃歌」というタイトルの17曲目ですが、ホメロスのテキストから歌っているかどうかは要調査です。オデュッセイアのウィキペディアには以下のようにありました。紀元前8世紀の吟遊詩人ホメロスの弾き語りを彷彿とさせる解説です。
ホメロスの叙事詩には、朗誦の開始において「ムーサへの祈り」の句が入っている。これは話を始める契機としての重要な宣言であり、自然なかたちで詩のなかに織り込まれている。『オデュッセイア』では、最初の行は次のようになっている。「Ἄνδρα μοι ἔννεπε, Μοῦσα, πολύτροπον, ὃς μάλα πολλὰ」原文の語順どおりに訳すと、「あの男のことを わたしに 語ってください ムーサよ 数多くの苦難を経験した「あの男」を…」
因みに、『オデュッセイア』の第6歌には、ナウシカのモデル、スケリア島(現在のケルキラ島(コルフ島))の王女ナウシカアーが登場し、第12歌では前にセファルディの歌でも引用しましたが「セイレーンの懺悔」で一般に知られるようになった?ファム・ファタールの典型、セイレーン(サイレンの語源)が登場します。

<17 Homero Hymnus 30秒>

次は「パピルス・ゼノン、カイロ断片」です。ヘレニズムの時代にはエジプトもギリシア語の世界だったことを思い出させるタイトルです。

<18 Papyrus Zenon. Cairo Fragment 51秒>

では最後に21曲目の「デルフォイのアポロンの讃歌第2」を聞きながら今回はお別れです。スペイン語と古代ギリシア語の混じった女性の語りに、静謐な古代風の調べが続きます。北インドのタブラのような打楽器の音が聞こえますが、古代ギリシアの打楽器のどれかが似た音なのだろうと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<21 Deuxième Hymne Delphique À Apollon 7分15秒>

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