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2020年11月16日 (月)

不断に流れる雲

ゼアミdeワールド234回目の放送、日曜夜10時にありました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はアリストファネスの『雲』のみにしておきます。ヴァンゲリスとイレーネ・パパスは水曜に、セファルディの2枚は木金の予定です。

ギリシアの15回目になります。次回からエーゲ海の島ごとの地方音楽に移ろうと思いますが、その前に今回はこれまで漏れていた音源から拾って行きたいと思います。まずはパニアグアの古代ギリシアの音源から、謎めいたタイトルの曲がずっと気になっていましたので、この一曲だけかけておきます。アエナオイ・ネフェライ(不断に流れる雲)という曲ですが、ソクラテスに仮託する形でソフィストを風刺した古代アテナイの喜劇詩人、風刺詩人アリストファネスの代表作『雲』に関する曲と思われます。

<10 Aenaoi Nefelai(アエナオイ・ネフェライ(不断に流れる雲)) 1分28秒>
Ancient Greek Music - Aristophanes: Aenaoi Nefelai (from comedy The Clouds)

次は映画「ブレードランナー」のサントラなどで有名なギリシアのシンセサイザー奏者ヴァンゲリスが、ギリシアの名女優兼歌手のイレーネ・パパスと組んで1986年にリリースしたアルバム「ラプソディー」から、O! Gliki Mou Earという曲です。ギリシア正教の音楽やギリシア民謡を素材に自身のルーツに迫った大作で、"Oh, My Sweet Springtime"「ああ、私の甘い春」と訳せるこの曲は、明るい曲調からは想像が付き難いですが、亡くなった息子イエスの亡骸を見た聖母マリアの嘆きであり、イースターの前の金曜日によく歌われるそうです。ヴァンゲリスの本名はエヴァンゲロス・オディセアス・パパサナスィウとのことです。

<2 Vangelis / Rhapsodies ~O! Gliki Mou Ear 8分42秒>

次はギリシアのセファルディ(スペイン系ユダヤ人)の歌ですが、ギリシア北東部のサロニカ(テッサロニキ)のセファルディの音源がありますが、その前にスペイン(あるいはモロッコのセファルディ)の女性歌手ですが、アウロラ・モレーノが1990年にリリースしたセファルディ・アルバムにギリシアっぽい曲がありますので、ここでかけておきたいと思います。ヤ・ファティン(若者)という曲で、後半のナツメロのような部分は、往年のギリシア歌謡を聞くような感じがあります。

<6 Aurora Moreno / Aynadamar ~Ya Fatin 3分55秒>

ギリシア北東部のサロニカ(テッサロニキ)のセファルディの歌ですが、ドイツのOriente MusikからDavid Saltielの盤が98年に出ていますので、こちらからLa serenaをおかけします。6月頃にビエンベニーダ・ベルタ・アグアドとVoice of the Turtleの歌唱でかけた曲です。
アテネが古代ギリシアを象徴する街なのに対して、中世の東ローマ帝国時代のギリシアを象徴する街で、初期キリスト教とビザンチン様式の建造物が点在するテッサロニキは、首都アテネに次いでギリシアで2番目に大きな都市です。使徒パウロが書いたとされる、新約聖書の「テサロニケの信徒への手紙」にその名が見えるように、キリスト教の拡大の中心として重要で、古くからユダヤ人のコミュニティーがありました。テッサロニキは近世以降セファルディ系ユダヤ人の最大の中心となり、「バルカンのエルサレム」と言う愛称が町に付けられていた程だそうです。
La serena(セイレーン)とは「サイレン」の語源ですが、ホメロスのオデュッセイアやギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と、匂わせる所で終わっていました。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうですが、ここではギリシアのセファルディがセイレーンを歌ったと言うことで、最もルーツの地に近いということになるでしょうか。他の歌唱では短調でしたが、ここでは部分的に長調の旋律になっていて、オスマン風な伴奏が付いています。

<2 David Saltiel / Canciones Judeo Espanoles de Tesalonica ~La serena 7分11秒>

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

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