サロニカ(テッサロニキ)のセファルディとセイレーン
David Saltielについては、オリエンテ・ムジーク盤の英文ライナーを丹念に読むしかないのでしょうが、余りに字が小さいもので追いついていません(笑) この人の歌唱とバックの演奏は、とてもオスマン音楽色を強く感じます。なお、放送では「6月頃にビエンベニーダ・ベルタ・アグアド他の歌唱でかけた曲」と言ってしまいましたが、正しくはInedit盤のもう一人の女性歌手Loretta《Dora》Gerassiでした。低音で唸る声が、何ともこの曲にピッタリでした。この曲はジュディ・フランケルの盤ではEn la Mar (海の中で)となっていました。これもしっくりくるタイトルです。今日の2本目はそのLoretta《Dora》Gerassiの歌唱で、左の大柄な女性がロレッタさんです。(以下放送原稿を再度)
ギリシア北東部のサロニカ(テッサロニキ)のセファルディの歌ですが、ドイツのOriente MusikからDavid Saltielの盤が98年に出ていますので、こちらからLa serenaをおかけします。6月頃にビエンベニーダ・ベルタ・アグアド(正しくはLoretta《Dora》Gerassi)とVoice of the Turtleの歌唱でかけた曲です。
アテネが古代ギリシアを象徴する街なのに対して、中世の東ローマ帝国時代のギリシアを象徴する街で、初期キリスト教とビザンチン様式の建造物が点在するテッサロニキは、首都アテネに次いでギリシアで2番目に大きな都市です。使徒パウロが書いたとされる、新約聖書の「テサロニケの信徒への手紙」にその名が見えるように、キリスト教の拡大の中心として重要で、古くからユダヤ人のコミュニティーがありました。テッサロニキは近世以降セファルディ系ユダヤ人の最大の中心となり、「バルカンのエルサレム」と言う愛称が町に付けられていた程だそうです。
La serena(セイレーン)とは「サイレン」の語源ですが、ホメロスのオデュッセイアやギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と、匂わせる所で終わっていました。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうですが、ここではギリシアのセファルディがセイレーンを歌ったと言うことで、最もルーツの地に近いということになるでしょうか。他の歌唱では短調でしたが、ここでは部分的に長調の旋律になっていて、オスマン風な伴奏が付いています。
<2 David Saltiel / Canciones Judeo Espanoles de Tesalonica ~La serena 7分11秒>
David Saltiel - La Serena
La serena..wmv
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