サヴィナ・ヤナトゥと「サロニカの春」
ゼアミdeワールド235回目の放送、日曜夜10時にありました。25日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はロス・ビルビリコスのみにしておきます。
ギリシアの16回目になります。前回サロニカ(テッサロニキ)のセファルディの歌のDavid Saltielの盤を取り上げて、重要なセファルディの音源を思い出しまして、ここで取り上げないとこの後は良い機会がないと思いましたので、もう一回ギリシアのセファルディ音源をご紹介します。
前にハジダキスの曲をかけた女性歌手サヴィナ・ヤナトゥの「サロニカの春」Ανοιξη στη Σαλονίκη ( Anixi Sti Salonici 1995年)というギリシアLyraの盤で、テッサロニキ(サロニカ)で歌われていたセファルディムの伝承曲を研究していたテッサロニキ大学のクセノフォン・ココリス教授の委嘱により、セファルディ音楽の復元プロジェクトに取り組み、1995年にリリース。この時のレコーディングメンバーによりプリマヴェーラ・エン・サルニコ(サロニカの春) Primavera En Salonico が結成されています。後にサヴィナ・ヤナトゥとサロニカの春で、ユダヤの音楽に限らず、主に東地中海各地の歌を集めた素晴らしい注目作が何枚も続けてリリースされました。
サヴィナ・ヤナトゥ自身はスペイン系ユダヤ人(セファルディ)ではないと思いますが、セファルディの歌の非常に美しい旋律と節回しを、リリカルな歌声で見事に表現しています。セファルディの歌が特に注目を浴び始めたのは、1492年のスペインからの追放から500周年に当たる1992年前後だったと思います。この頃セファルディの歌のCDリリースが相次ぎ、サヴィナ・ヤナトゥの盤もそれから間もない時期でした。1996年のゼアミ開店当時かなり売れていた盤で、まだカタログ販売のみでHPを作っていない頃でしたので、その後入荷が不安定になったこの盤はHPには載せていませんでした。
セファルディの歌の中でも特に有名な曲が5曲程ありますので、間に短く解説を入れながら続けておかけします。
3曲目のロス・ビルビリコスという曲は、ペルシア語のBolbolに似た綴りにピンとくる人もいらっしゃるのではと思いますが、ナイチンゲール(小夜鳴鳥)のことで、Global Villageから2枚セファルディの歌のCDを出していたジュディ・フランケルの解説では、この歌をギリシアのロードス島出身のセファルディの婦人の歌で聞いたとありました。一聴で忘れられない印象を覚えるセファルディらしい歌です。
<3 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Los Bilbilicos 4分11秒>
Σαβίνα Γιαννάτου - Los Bilbilicos - Τα Aηδονάκια | Official Audio Release
前回時間が余ればかけようと思っていたLa llamada de la morenaという曲は、一般にMorenicaというタイトルで良く知られているセファルディ民謡で、サヴィナ・ヤナトゥの盤にも入っていますので、おかけしておきます。モレニカとはDark Beautyの意味だそうです。
<4 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Morenica 3分>
セファルディの歌の名盤であるホアキン・ディアスやジュディ・フランケルのCDにも入っていたトレ・ゼルマニカス・エラン(三姉妹、あるいは3人の妹)という曲は、ジュディ・フランケルはスペインで聞いたそうですが、やはり歌詞の中にギリシアのロードス島が出て来ます。これも非常に美しい曲ですが、ジュディ・フランケルの方と旋律が異なっていますので、二人の音源を続けてかけてみます。歌詞はどちらもイサーク・レヴィの「ユダヤ・スペインの歌」から取られています。
<5 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Tres Hermanicas Eran 3分42秒>
<2 Judy Frankel / Sephardic Songs of Love and Hope ~Tres Hermanicas 4分50秒>
ウナ・マティカ・デ・ルーダ(ヘンルーダの一株)は、有名な婚礼のロマンセで、ロマンセというのは、セファルディの歌では物語り歌を指し、叙事詩、バラッドなどの四行詩を同じ旋律を繰り返しながら歌うジャンルです。ヘンルーダとは芸香(うんこう)のことで、セファルディの言い伝えでは新婚夫婦に吉をもたらすものとされています。
<8 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Una Matica de Ruda 2分52秒>
オスマン帝国に住んでいたセファルディの子守歌で、エキゾチックなヒジャーズ旋法の曲です。妻が子供を寝かしつけながら、愛人のところから帰ってきた夫をなじっている部分があるとのことです。
もし時間が余りましたら、テッサロニキに伝わる古いセファルディの歌、ジャコも聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<11 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Nani Nani 4分31秒>
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