ロス・ダリ~キプロス
ゼアミdeワールド238回目の放送、日曜夜10時にありました。16日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。4曲目だけは無さそうですが、6曲目はありました。もう一本はRoss Daly & Labyrinth, Niki Tramba / At The Cafe Amanの丸々音源です。おそらくCDは入手難になっているように思います。キプロスはまた後日。
ギリシアの19回目になります。エーゲ海の島ごとの音楽の3回目は、クレタの2回目とキプロスの音楽を取り上げます。クレタは割と注目度が高いようで、ツイッターでリアクションがありましたが、ギリシアのシリーズも結構長くなりまして、今年中に一応終えようと思いますので、まだクレタの音源はありますが、この辺で切り上げたいと思います。
まずは、アイルランド系でイギリス生まれでありながら、中東、中央アジア、インドの偉大な旋法音楽の伝統へ向かい、1975年以降はクレタ島を拠点に演奏と作曲の活動をしているロス・ダリの曲を2曲かけておきます。英語風に発音するとロス・デイリーになると思います。彼によると「私が神聖であると感じるものとの対話の言語」としての音楽を探し求めた結果、中東、中央アジア、インドの音楽に辿り着いたということですから、グルジェフの伝記映画「注目すべき人々との出会い」を地で行くようなエピソードだと思います。
彼も最初は西洋音楽(チェロ、クラシック・ギター)から始めたようですが、その後インド、アフガニスタンの音楽に移り、1975年にはクレタに渡り、この地のリラの名手コスタス・ムンダキスに師事。以後40年以上に亘ってクレタ音楽のリラ演奏を中心に、マルチインストゥルメンタリストとしても活躍している鬼才です。クレタでラビリンス(迷宮の意)と言う一種の東地中海音楽の音楽院を結成し、クレタ音楽を交えた東地中海の音楽を様々に組み合わせて演奏しています。そのままグループ名にもなっているラビリンスのメンバーは卒業生も多いのでしょうか。彼ら以外にもアテネ五輪の際には古楽界の大御所Jordi Savall、アゼルバイジャンのケマンチェ奏者Habil Aliyev、アフガニスタンのラバーブ奏者Mohammad Rahim Khushnawaz、イランのトンバク・トリオChemirani Trio、パレスチナのウード奏者Adel Selamehなど、各国の名だたる演奏家と共演しています。
独Network Medienから2,3枚アルバムがありまして、92年リリースのユーラシア:ロス・ダリ&ラビリンスのミトスと言う盤と、98年リリースの女性歌手Niki Trambaを迎えてのAt The Cafe Amanで、今回は後者から2曲おかけします。「レベティコの生まれた場所」の副題通り、どちらもレベティカ的な曲です。
<4 Ross Daly & Labyrinth, Niki Tramba / At The Cafe Aman ~Zoúla - Zoúla 6分28秒>
<6 Ross Daly & Labyrinth, Niki Tramba / At The Cafe Aman ~Ah Poú'Nai 'Kéinos O Kairós 4分28秒>
Daly Ross & Niki Trampa - At the Café Aman
ΝΙΚΗ ΤΡΑΜΠΑ / ROSS DALY & LABYRINTH - ΣΤΟ ΚΑΦΕ ΑΜΑΝ
キプロスはギリシアとは別の国ですが、ギリシア系とトルコ系の住民が同居する東地中海の島国として知られています。キプロスの音源は数枚あったと思いますが、現在手元にあるのがアルバトロス盤のみですので、こちらからギリシア系とトルコ系の曲をそれぞれ2曲ずつおかけしますが、その前にキプロスの政治状況は現在以下のようになっていますので、ウィキペディアから引いておきます。
1974年以来、南北に分断されており、島の北部約37%を、国際的にはトルコ共和国のみが承認する「独立国家」であるトルコ系住民による北キプロス・トルコ共和国が占めている。一方のキプロス共和国は国際連合加盟国193か国のうち、トルコを除く192か国が国家承認をしている。公用語はトルコ語とギリシャ語である。
まずギリシア系の方ですが、1曲目のト・マエリと言う曲は、短剣を持って芸術的に踊る男性の踊りとのことですが、映画「ヴェニスに死す」で白塗りの辻楽師が弾いていた曲(おそらくナポリターナ)にそっくりに聞こえました。
<1 ト・マエリ 2分29秒>
ギリシア系の音源は12曲ありますが、この後の比較の意味でも、ギリシアの踊りで最古のもので、最もよく知られているキプロスのシルトスをおかけしておきます。伝承によれば、このダンスはアテネの王テセウスが、クノッソス宮殿の迷宮から苦労して出てきたことを表しているそうです。
<4 シルトス 2分28秒>
結婚祝いのパーティーで録音されたと言うトルコ系の一曲目「カザンジュ(いかけ屋のダンス) 」は、ロシア民謡のカチューシャに似て聞こえましたが、いかがでしょうか。他国の有名曲に酷似した曲がこの盤では幾つか聞こえてきました。
<13 カザンジュ(いかけ屋のダンス) 1分6秒>
トルコ系の2曲目「アジゼ:オユン・ハワス」ですが、解説にはアナトリアのラヴ・ソングとありますが、これはもう明らかにエジプトの大作曲家アブデルワハブが書いたラクス・アジザそのもので、ベリーダンスでも盛んに踊られ、アラブ音楽では5本指に入るほどポピュラーな曲だと思います。ウードを初めて手にした97年頃、弾いた記憶があります。
<14 アジゼ:オユン・ハワス 2分50秒>
では最後にキプロスのギリシア系の音源から、三つのカルツィラマデス・ダンスのメドレーを時間まで聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<7 三つのカルツィラマデス・ダンスのメドレーa 1分30秒>
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