1988年の来日公演は見てないのと、80年代初めに芸能山城組のブルガリアの合唱を先にLPで聞いたので、4ADの『神秘の声(Le Mystère des Voix Bulgares)』を聞いてそれほど大きな驚きはなかったのですが、ライブ映像をこうして簡単に見れるようになった現在、ますます他のロシアなどのスラヴ世界の地声合唱と共通する部分があるなと実感します。80年代当時はロシア民謡の紋切り型のイメージばかりで、スラヴ世界の地声合唱はほとんど知られてなかったと言って良いのでは。ブルガリアの場合、変拍子や不協和音が目立つのは、他のバルカン各地の民族音楽やバルトークのブルガリア音楽を題材にしたピアノ曲と共通しています。それよりもブルガリアと聞いて個人的に最も気になるのは、中央アジア~ウラル地方にいたテュルク系のブルガール人(人種はモンゴロイド)の一派がブルガリアまで流れてきて、国名の由来にもなっているという点です。ブルガリアが属する南スラヴをベースに、どこかに今もテュルクの要素が残存しているのか、その上で長く支配を受けていた同じテュルク系のオスマンの影響がどういう所にあるのか、少しでも明らかに出来たらと思います。2本目は最近の傾向でしょうか、ソフィアのオーケストラとの非常に美しい演奏です。
Le Mystere des Voix Bulgares - Full Performance (Live on KEXP)
Cosmic Voices from Bulgaria & Sofia Philharmonic Orchestra - Zaspalo e Chelebiiche
ブルガリアの音楽、特にブルガリアン・ヴォイスと称された女声合唱ですが、パキスタンのカッワーリやモンゴルのホーミー等と並んで、1980年代半ば辺りからのワールドミュージック・ブームを牽引した音楽というイメージがあります。私はその少し前の80年代前半に日本の芸能山城組の歌唱で聞いていましたが、本場ブルガリアの録音が出回りだしたのは、その少し後の4ADの盤だったように記憶しています。4ADと言えば、80年代のニューウェーヴ~インディーズのレーベルとして有名で、80年代前半はそちらの音楽の方に強く耳が向いていたので、その1986年に4ADから出た『神秘の声(Le Mystère des Voix Bulgares)』もいち早く耳にしていました。しかし天の邪鬼なもので、流行りだすとそっぽを向いてしまう傾向がありまして(笑)、それ以降も正直ブルガリアン・ヴォイスをよく聞いていた訳ではないのですが、ビクターJVCのワールドサウンズの数枚などは聞きました。4AD盤は、スイスの音楽プロデューサー、マルセル・セリエが15年かけて集めたブルガリアの民族音楽集成で、バウハウスのピーター・マーフィーからの薦めがあって4ADの創設者であるアイヴォ・ワッツ=ラッセルがリリースを即決したそうです。イギリスのニューウェーヴバンド、バウハウスも当時よく聞いていたので、その影響もありました。
<1 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1] Jsnala E Dilber Jana 1分41秒>
<2 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1] Prituri Se Planinate 4分44秒>
<3 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1] Pilenze Pee, Govori 2分23秒>
Philip Koutev National Folk Ensemble - Bulgarian Polyphony, Vol.1
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