« 2020年12月 | トップページ | 2021年2月 »

2021年1月

2021年1月29日 (金)

ブルガールとクレズマー

もう一つブルガールと聞いて思い出すのが、東欧系ユダヤのクレズマー音楽のダンス・レパートリーとしてのブルガールで、ベッサラビア(東ルーマニア、現在のモルドヴァ共和国)のブルガリア系少数民族にちなんで名付けられたか、ベッサラビアのジプシーミュージシャンの北ブルガリアとの接触にちなんで名付けられた説があるようです。グループ名にも入ったりして、とにかくクレズマーではよく聞く言葉です。ビザンツ帝国、サラセン帝国、ササン朝、西突厥が向かい合っていた7世紀、ブルガール人はまだブルガリアに侵入する前で黒海の北部(現在のウクライナ)辺りにいたようですが、その頃にまでクレズマー音楽のルーツを探すのは、歴史のロマンではありますが、日本なら聖徳太子の時代、無理がありそうです。ただベッサラビアと黒海北部がほとんど同じ場所であるのも確かです。なお、クレズマー音楽は私の番組での東欧音楽巡りの中で随時入れていく予定です。今日の動画は、有名なオデッサ・ブルガールを、二つのクレズマーバンドの演奏で。

Odessa Bulgar - Yxalag Klezmer Band

Odessa Bulgar - Klezmer Kollectiv

| | コメント (0)

2021年1月28日 (木)

ブルガリアン・ヴォイス&フーン・フール・トゥ

前に少し触れました通り、ブルガリア人には先住民のトラキアと南スラヴ系の上に、黒海北部辺りから侵入してきたテュルク系のブルガール人の血が入って国の名前にまでなっているので、シベリア南部の同じテュルク系のトゥヴァのグループであるフーン・フール・トゥとの共演も、一見突飛な組み合わせに見えて、実は深いところで繋がるのでしょう。実に自然に聞こえます。ガイーダ(バグパイプ)伴奏の女性の独唱も、日本の尺八伴奏の追分や馬子唄のように聞こえることがあるのを思い出します。ヨーロッパでアジアの血が入っているのは、ハンガリー、フィンランド、エストニアだけではないという事ですね。

Bulgarian Voices ANGELITE, Huun-Huur-Tu, Moscow Art Trio - Fly, Fly My Sadness

| | コメント (0)

2021年1月27日 (水)

ブルガリアン・ヴォイス・アンジェリーテ=フィリップ・クーテフ・ブルガリア国立合唱団?

一昨日上げてなかった4曲目以降をアップしておきます。一つ非常に大きな疑問があります。ブルガリアン・ヴォイス・アンジェリーテと、1988年に来日してビクターJVCから数枚出ているフィリップ・クーテフ・ブルガリア国立合唱団は、同一の団体でしょうか? アンジェリーテは1952年結成とありましたし、後者も1952年にフィリップ・クーテフが結成したという情報がありました。しかし、一昨日のアンジェリーテのプロフィールに、1995年初来日とありました。70年代のコロムビア盤や大ブレークした4AD盤とアンジェリーテは同じだろうとは思いますが。メンバーが多少重なっていたりするのでしょうか。(以下放送原稿を再度)

カヴァルと思われる笛が伴奏パートを吹きベースが支える4曲目のVrabche (Sparrow つばめ)は、伝統色を残しながらモダンな音の動きが聞き取れます。

<4 Vrabche (Sparrow) 2分54秒>
Vrabche (Sparrow)

5曲目はアルバムタイトル曲のAngelinaで、この曲でもカヴァルと思われる笛の伴奏が入ります。伝統的な合唱とカヴァルですが、音楽はモダンな面をかすかに内包しています。

<5 Angelina 4分29秒>
Angelina

タパンを打つリズムを模した7曲目Tapan Bie(太鼓を叩く)は、とてもユニークで、強く印象に残る一曲でした。

<7 Tapan Bie 2分27秒>
Tapan Bie

ロシアのジプシー民謡「オチ・チョルニエ(黒い瞳)」を思い出してしまうOchi, Ochi (Eyes, Eyes)は、とても美しいメロディが耳に残ります。Ochiという単語も、ロシア語とブルガリア語で同じ「瞳」という意味だと、この曲で分かりました。

<8 Ochi, Ochi (Eyes, Eyes) 3分28秒>
Ochi, Ochi (Eyes, Eyes)

| | コメント (0)

2021年1月25日 (月)

Bulgarian Voices Angelite

ゼアミdeワールド244回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。4曲目以降は水曜以降に。

ブルガリアの2回目は、ブルガリアン・ヴォイセス・アンジェリーテのアンジェリーナという2013年の盤をご紹介したいと思います。ドイツJaroのCDは売り切っていて現物がないので、アップルミュージックからの音出しになります。ゼアミHPでのコメントを読み上げますと、

ポリフォニー・ヴォーカルの最高峰グループが2003年のAn Angel’s Christmasから10年ぶりのスタジオ録音作を発表!〈神秘の歌声〉と形容されるブルガリアン・ヴォイス。現在のその最高峰グループといえるのが、このアンジェリーテ。社会主義時代のブルガリアで生まれたこのグループは民主化以前よりドイツのレーベル、ヤロ(Jaro)の目にとまり、80年代後半に専属アーティストとして活動を開始。欧州を中心に活動した彼女たちは93年にはグラミー賞にノミネートされるなど世界的な評価と人気を獲得し、現在に至るまでその名声を保っている。本作は単独のスタジオ録音作としては10年ぶりのリリース。今回はプリミティヴなパーカッション、バグパイプといったブルガリア伝統の楽器を加え、色彩豊かなヴォーカル・アンサンブルでブルガリア音楽の深奥部にせまる。

プロフィールの重要な点をご紹介します。
1952年、アンジェリーテの前身となる、ブルガリア国立放送合唱団(RTB合唱団)が結成される。
1986年、グループ名を大ヒットアルバム「ブルガリア声の神秘」と同じ "Le Mystere des Voix Bulgares" と名乗るようになる。
1995年、グループ名を "ブルガリアン・ヴォイス・アンジェリーテ" に変更。同年、初来日。阪神・淡路大震災の復興イベントに参加。楽曲「Hiroshima」を発表。和太鼓のグループである鼓童と佐渡島で共演したほか、新宿、大阪で公演を行う。

まずは、1曲目の「待ってくれないか、輝く太陽よ」からどうぞ。

<1 Postoi, Milo, Yasno Slanze (Please Wait, Bright Sun) 3分33秒>
Postoi, Milo, Yasno Slanze (Please Wait, Bright Sun)

先ほどのコメントで「プリミティヴなパーカッション」と表現していたタパンの伴奏の付いた2曲目Erke, Mori, Erke (Erke, Dear, Erke エルケ、愛おしい、エルケ)を次にどうぞ。

<2 Erke, Mori, Erke (Erke, Dear, Erke) 2分16秒>
Erke, Mori, Erke (Erke, Dear, Erke)

続く3曲目Imala Baba (Once Upon a Time 昔々)は二人の歌唱のようですが、一人がドローンのようなパートを担当しています。こういう多声歌はギリシア北部のエピルスから出てきていましたが、バルカンにはあちらこちらで聞かれるスタイルです。

<3 Imala Baba (Once Upon a Time) 2分41秒>
Imala Baba (Once Upon a Time)

カヴァルと思われる笛が伴奏パートを吹きベースが支える4曲目のVrabche (Sparrow つばめ)は、伝統色を残しながらモダンな音の動きが聞き取れます。

<4 Vrabche (Sparrow) 2分54秒>

5曲目はアルバムタイトル曲のAngelinaで、この曲でもカヴァルと思われる笛の伴奏が入ります。伝統的な合唱とカヴァルですが、音楽はモダンな面をかすかに内包しています。

<5 Angelina 4分29秒>

タパンを打つリズムを模した7曲目Tapan Bie(太鼓を叩く)は、とてもユニークで、強く印象に残る一曲でした。

<7 Tapan Bie 2分27秒>

ロシアのジプシー民謡「オチ・チョルニエ(黒い瞳)」を思い出してしまうOchi, Ochi (Eyes, Eyes)は、とても美しいメロディが耳に残ります。Ochiという単語も、ロシア語とブルガリア語で同じ「瞳」という意味だと、この曲で分かりました。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<8 Ochi, Ochi (Eyes, Eyes) 3分28秒>

| | コメント (0)

2021年1月22日 (金)

プリトュリ・セ・プラニナタ(母の愛は何にもまして強い)

「ブルガリアン・ポリフォニー1」の2曲目に入っていたプリトュリ・セ・プラニナタ(山が散りばめられた?)は、独唱やモダンなアレンジを施した歌唱など、色々ありました。この曲と次のピレンツェ・ペエがこの盤のベストだと思いますが、少し見た限りではほとんどが伝統的な女性合唱のみだったピレンツェ・ペエとはその点違っているようです。「憂鬱な時があっても、ほんの小さな幸せを見逃さないようにと小鳥が教えてくれた」と歌うピレンツェ・ペエと、「母の愛は何にもまして強い」と歌うトラキア地方のプリトュリ・セ・プラニナタ。どちらも心に沁み入る歌と言う点では同じですが、前者が複雑なバルカン的楽曲なのに対し、後者は編曲しやすい旋律ということでしょうか。

この曲についてロシア語のみウィキペディアがありました。要約すると、「ステフカ・サボティノワの歌唱の後、20世紀半ばに人気を博したブルガリアの民謡で、彼女は西部トラキアの祖母からこの歌を学びましたが、彼女自身は幼少期を平野で過ごし、以前は山を見たことがありませんでした。曲はフィリップ・クーテフがアレンジ。スイスのプロデューサー、マルセル・セリエは、ステフカ・サボティノワの歌に満足し、ブルガリアの民謡を収録したアルバムをリリースすることを決定。1975年に彼はジャック・アノアによる現代的なアレンジのプリトゥリ・セ・プラニナタを含むアルバム「ブルガリアの声の神秘」をリリース。これにより、この曲とStefkaSabotinovaは世界的に有名になりました。」とありました。1本目はStefka Sabotinovaのオリジナル歌唱にリズムを被せているのでしょうか。

Stefka Sabotinova - Prituri se planinata (HD) + lyrics / текст

Prituri Se Planinata by Stellamara (original)

Ку-Ку Бенд - Притури са планината / Ku-Ku band - Prituri sa planinata

| | コメント (0)

2021年1月21日 (木)

ピレンツェ・ペエ

ブルガリアン・ヴォイスの名曲としてしばしば言及されるのが、ピレンツェ・ペエとトドラでしょう。トドラは次回かける予定ですので、今日はピレンツェ・ペエを幾つかの歌唱で聞き比べしてみます。Sheet Musicに楽譜もありましたので、こちらを一本目に。最初の方にブルガリア語の歌詞のローマ字表記と英訳もありました。ピレンツェ・ペエの意味は「ナイチンゲールが歌う」と言うことで、ペルシアなど中東の詩との繋がりを感じさせ、poleやzelenaのように語彙にはロシア語から類推の効く単語も散見されます。音楽面では、9拍子と4拍子が入れ替わる複雑なリズムであることが分かり、これはバルカン音楽の典型と言えるでしょう。高音パートの細かい節回しは、ペルシアのタハリール唱法に少し似ているようにも思います。このようにスラヴと中東の要素が重層的に重なっていることが、音楽と歌詞からはっきり分かります。

Pilentze Pee (Sheet Music)

THE GREAT VOICES OF BULGARIA - Pilence Pee

Bulgarian State Women's Chorus -- Pilentze Pee

| | コメント (0)

2021年1月20日 (水)

ブルガリア女声合唱のライブ映像

1988年の来日公演は見てないのと、80年代初めに芸能山城組のブルガリアの合唱を先にLPで聞いたので、4ADの『神秘の声(Le Mystère des Voix Bulgares)』を聞いてそれほど大きな驚きはなかったのですが、ライブ映像をこうして簡単に見れるようになった現在、ますます他のロシアなどのスラヴ世界の地声合唱と共通する部分があるなと実感します。80年代当時はロシア民謡の紋切り型のイメージばかりで、スラヴ世界の地声合唱はほとんど知られてなかったと言って良いのでは。ブルガリアの場合、変拍子や不協和音が目立つのは、他のバルカン各地の民族音楽やバルトークのブルガリア音楽を題材にしたピアノ曲と共通しています。
それよりもブルガリアと聞いて個人的に最も気になるのは、中央アジア~ウラル地方にいたテュルク系のブルガール人(人種はモンゴロイド)の一派がブルガリアまで流れてきて、国名の由来にもなっているという点です。ブルガリアが属する南スラヴをベースに、どこかに今もテュルクの要素が残存しているのか、その上で長く支配を受けていた同じテュルク系のオスマンの影響がどういう所にあるのか、少しでも明らかに出来たらと思います。2本目は最近の傾向でしょうか、ソフィアのオーケストラとの非常に美しい演奏です。

Le Mystere des Voix Bulgares - Full Performance (Live on KEXP)

Cosmic Voices from Bulgaria & Sofia Philharmonic Orchestra - Zaspalo e Chelebiiche

| | コメント (0)

2021年1月18日 (月)

ブルガリアの女声合唱 今後のルート

ゼアミdeワールド243回目の放送、日曜夜10時にありました。20日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。ラヂバリスタジオが感染拡大防止のため今週からしばらく使用禁止になりましたので、久しぶりに宅録しております。もう新品では入手が難しいようで、動画はJVCの1枚目が丸々上がっていました。

今回からブルガリアに入ります。その後は、マケドニア、アルバニア、モンテネグロ、ボスニア、セルビア、クロアチア、スロヴェニア、ルーマニア、ハンガリー、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ドイツ、オーストリア、スイス、ベルギー、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド、イギリス、アイルランド、北フランス、南フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルの順で予定しております。ここまでのヨーロッパ巡りで早くても2,3年はかかるのではと思っております。その後は、ジブラルタルを渡りモロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、南エジプトと来て、イエメンからアラビア半島に渡り、その後はパキスタン、インド周辺、東南アジア、東アジア、北アジア方面に向かう予定です。ブラック・アフリカと南北アメリカ、オセアニアは、その後になりますが、何年先になるか予測が付きません。

ブルガリアの音楽、特にブルガリアン・ヴォイスと称された女声合唱ですが、パキスタンのカッワーリやモンゴルのホーミー等と並んで、1980年代半ば辺りからのワールドミュージック・ブームを牽引した音楽というイメージがあります。私はその少し前の80年代前半に日本の芸能山城組の歌唱で聞いていましたが、本場ブルガリアの録音が出回りだしたのは、その少し後の4ADの盤だったように記憶しています。4ADと言えば、80年代のニューウェーヴ~インディーズのレーベルとして有名で、80年代前半はそちらの音楽の方に強く耳が向いていたので、その1986年に4ADから出た『神秘の声(Le Mystère des Voix Bulgares)』もいち早く耳にしていました。しかし天の邪鬼なもので、流行りだすとそっぽを向いてしまう傾向がありまして(笑)、それ以降も正直ブルガリアン・ヴォイスをよく聞いていた訳ではないのですが、ビクターJVCのワールドサウンズの数枚などは聞きました。4AD盤は、スイスの音楽プロデューサー、マルセル・セリエが15年かけて集めたブルガリアの民族音楽集成で、バウハウスのピーター・マーフィーからの薦めがあって4ADの創設者であるアイヴォ・ワッツ=ラッセルがリリースを即決したそうです。イギリスのニューウェーヴバンド、バウハウスも当時よく聞いていたので、その影響もありました。

今回おかけするのは1988年の来日公演を収めたビクターJVCのワールドサウンズの「ブルガリアン・ポリフォニー 1」で、フィリップ・クーテフ・ブルガリア国立合唱団の演奏です。まずは3曲目まで続けてどうぞ。

<1 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1]  Jsnala E Dilber Jana 1分41秒>
<2 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1]  Prituri Se Planinate 4分44秒>
<3 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1]  Pilenze Pee, Govori 2分23秒>
Philip Koutev National Folk Ensemble - Bulgarian Polyphony, Vol.1

1曲目はジュヌラ・エ・ディルベル・ヤナと言う収穫の歌、2曲目の「母の愛は何にもまして強い」と歌うプリトュリ・セ・プラニナタはトラキア地方の歌、3曲目のピレンツェ・ペエ・ゴボリ(ピレンツェの歌)はCMにも使われて、ブルガリアン・ヴォイスのブームの火付け役になった曲でした。「憂鬱な時があっても、ほんの小さな幸せを見逃さないようにと小鳥が教えてくれた」と歌われています。ブルガリアン・ヴォイスと言うと、地声で不協和音が多いイメージが強いかと思います。この曲も高い音での鋭いコブシと、二度の音程の強烈な不協和音が鳥のさえずりを模しているようです。歌っているのは、当時最高の歌手と言われたナダカ・カラジョバさんです。

次にブルガリアの伝統楽器のみによる器楽アンサンブルの演奏を一曲おかけしておきます。バグパイプのガイーダ、縦笛のカヴァル、擦弦楽器のガドゥルカ、撥弦楽器のタンブーラ、両面太鼓のタパンの5人編成で、曲はショプ地方の舞曲ホロです。

<5 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1]  Shopsko Horo 3分57秒>

次は女声合唱と伝統楽器アンサンブルが一緒に演奏している曲で、レチコ・スタピャイ(踊り上手になるには)と言う曲をどうぞ。

<7 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1]  Lechko Stapjai 2分15秒>

次に、この盤ラストの15曲目曲ですが、ノーカットでかけたいので、ここでおかけしておきます。タイトルのPirinski Pesniとは「ピリン地方の歌」と言う意味で、ロシア語で歌はペスニャと言いますが、ブルガリア語も同じスラヴ系の言葉ですから、このようにそっくりな単語があります。7拍子の部分があったり、最後はトルコ的な旋律が出てきたりの起伏に富んだ曲で、オスマン帝国に入っていた時期が長かったことを思い出させます。

<15 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1]  Pirinski Pesni 4分>

では最後に12曲目のDimjaninka(ディミャニンカの水鏡)を聞きながら今回はお別れです。村の娘ディミャニンカが水面に我が身を映して「もっと美しくなりたいな」と歌っていますが、微分音程を含む旋律は、ビザンツ帝国の音楽の名残りと言われます。先ほどのPirinski Pesniは、ブルガリア南西部ピリン地方出身のビスロ姉妹が歌っていましたが、この曲も小編成で6人の歌唱です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<12 BULGARIA Bulgarian Polyphony [#1]  Dimjaninka 1分45秒>

| | コメント (0)

2021年1月15日 (金)

エピルスの多声歌

放送でアル・スール盤の間にかけたアルバトロス盤の「ポゴニアニの歌 マロよ、井戸へ行け」は、ギリシアでは北エピルスでしか聞けない、珍しい多声歌でした。北のアルバニアとかアルマニア系ワラキア人(ヴラフ人と同義でしょうか? シャンデュモンド盤をルーマニアの時にかける予定)や、ブルガリア西部、グルジアなどでは普通にあるスタイルではありますが、ギリシアでは極めて稀。ですが、面白いことに持続低音のドローンは、ビザンツ聖歌と同じで「イソン」と呼ばれるそうです。(以下放送原稿を再度)

ルメリアの方に行く前に、前にかけられなかったアルバトロス盤の5曲目をおかけしておきます。ギリシアにはまず見られない多声音楽で、かつビザンツの流れを汲むギリシアの民謡では稀なペンタトニック(5音音階)になっていて、多声合唱の盛んなアルバニアに近いことが歌からも分かります。

<5 Folk Music Of Northern Greece ~Song From Pogoniani 1分37秒>
Pogonianiko tragouidi

| | コメント (0)

2021年1月14日 (木)

明るいミロロイとドイナ風のクラリネット

放送でかけたChristos Zotosのもう一曲ミロロイと、クレズマーに似た1曲目スカロスも併せて入れておきます。このミロロイは、インド音楽のアーラープを聞いているのかと錯覚しそうです。スカロスは、ルーマニアやユダヤのドイナにそっくりで、即興的な細かい節回しをフリーリズムでたっぷり聞かせます。(以下放送原稿を再度)

ストレートにクレズマーに似ているインストの1曲目をかけられなかったのが残念ですが、最後に7曲目のエピルスのミロロイを聞きながら今回はお別れです。何と言ってもクリストス・ゾトスの芸を聞くのが主眼ですから。ミロロイとは挽歌あるいは哀歌と言うことでしたが、明るく演歌っぽい曲調でラウートの技巧を聞かせる独奏です。

<7 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Epire - Miroloï [Lamentations] 5分11秒>
Miroloï

Skaros

| | コメント (0)

2021年1月13日 (水)

ルメリアの音楽

ルメリアの音楽は、他にも地名が入った音源があったと思いますが、Poulia mou diavatarikaのようにルーマニア音楽そのもののような感じだったかな?と思いました。Itiaと言うのも好きな曲で、クラリネットが少しバラバンのように聞こえるのは、クルド系の音楽家と一緒だからかとも思います。(以下放送原稿を再度)

 

まずルメリアという地名ですが、位置を確認しますと、ギリシア本土のエピルスをおそらく含めて、テッサリア、マケドニア、トラキアまでを指すようですが、オスマン帝国統治下の南バルカン地域の「ローマ人の土地」を意味するトルコ語の名称ですので、実際は現在のギリシア中央部とトルコのヨーロッパ部分、ブルガリア、北マケドニア共和国などかなり広域になるようです。この盤の後半はルメリアの曲が集められていますが、その中から10,11曲目を続けておかけします。10曲目はルーマニア風な旋律と、演歌っぽいリズムが組み合わさった面白い曲です。11曲目もどこかで聞いたような懐かし気な旋律とリズムに聞こえて仕方ありません。

 

<10 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Roumelie - Poulia Mou Diavatarika 5分2秒>
Poulia mou diavatarika

 

<11 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Itia 4分15秒>
Itia

| | コメント (0)

2021年1月11日 (月)

アル・スールのChristos Zotos & Skaros / Continental Greek Music

ゼアミdeワールド242回目の放送、日曜夜10時にありました。13日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画はエピルスの方だけにしておきます。ルメリアは水曜以降に。
ラヂバリスタジオが感染拡大防止のため、今週からしばらく使用不可になります。また宅録する予定です。音質は落ちると思いますが、ご了承ください。

ギリシアのシリーズは一応昨年末で終える予定でしたが、久々に取り出したギリシア北部エピルス地方の一枚がとても面白かったので、是非おかけしておきたいと思いました。ですので、ギリシアのシリーズも22回になります。キングやアルバトロス盤のエピルスの曲とは一味違う演奏になっています。
それはフランスのAl Surから1993年に出ていた「ギリシア本土の音楽 エピルスとルメリア」という盤で、アル・スールは90年代の内に活動停止してしまいましたが、中東~地中海世界の音楽の名盤が数多くありました。ラウート弾き語りを聞かせるエピルス出身のクリストス・ゾトスを中心に、彼の弟子の女性ラウート奏者イオアンナ・アンゲルー、クルド系のヴァイオリン奏者バルザン・ヤッシン、クラリネットの名手ジル・トレントの4人編成です。ギターとウードとレバノンのブズクの重厚感と躍動感の全てを備えたようなラウートの音色が特に素晴らしく、ラウートのリズムとクラリネットが描く北ギリシアの旋律は、曲によってどこか演歌的だったり、特にクラリネットはやっぱりユダヤのクレズマーに似ていたり、バルカンは北ギリシアから始まるという印象を強めながらも、部分的には地中海的な明るさも感じられたり、色々な側面が聞こえて実に興味深いです。ラウートの独奏の素晴らしさも、伴奏に徹していた他の盤にはなかったものです。解説が簡素ですので各曲の詳細は不明ですが、まずはエピルスの方から、5,6曲目のEpire-I KleftesとEpire - Kondula Lemoniaを続けてどうぞ。

<5 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Epire-I Kleftes 5分15秒>
I kleftes

<6 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Epire - Kondula Lemonia 4分4秒>
Kondula lemonia

ルメリアの方に行く前に、前にかけられなかったエピルスと北ギリシアのアルバトロス盤の5曲目をおかけしておきます。ギリシアにはまず見られない多声音楽で、かつビザンツの流れを汲むギリシアの民謡では稀なペンタトニック(5音音階)になっていて、多声合唱の盛んなアルバニアに近いことが歌からも分かります。

<5 Folk Music Of Northern Greece ~Song From Pogoniani 1分37秒>

アル・スール盤に戻ります。まずルメリアという地名ですが、位置を確認しますと、ギリシア本土のエピルスをおそらく含めて、テッサリア、マケドニア、トラキアまでを指すようですが、オスマン帝国統治下の南バルカン地域の「ローマ人の土地」を意味するトルコ語の名称ですので、実際は現在のギリシア中央部とトルコのヨーロッパ部分、ブルガリア、北マケドニア共和国などかなり広域になるようです。この盤の後半はルメリアの曲が集められていますが、その中から10,11曲目を続けておかけします。10曲目はルーマニア風な旋律と、演歌っぽいリズムが組み合わさった面白い曲です。11曲目もどこかで聞いたような懐かし気な旋律とリズムに聞こえて仕方ありません。

<10 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Roumelie - Poulia Mou Diavatarika 5分2秒>
<11 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Itia 4分15秒>

ストレートにクレズマーに似ているインストの1曲目をかけられなかったのが残念ですが、最後に7曲目のエピルスのミロロイを聞きながら今回はお別れです。何と言ってもクリストス・ゾトスの芸を聞くのが主眼ですから。ミロロイとは挽歌あるいは哀歌と言うことでしたが、明るく演歌っぽい曲調でラウートの技巧を聞かせる独奏です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Epire - Miroloï [Lamentations] 5分11秒>

| | コメント (0)

2021年1月 8日 (金)

瞽女歌と民謡

短いお正月休みが終わり、強い寒波がやってきました。店のガスの給湯管が凍結するトラブルで今日はブログを書くのも遅くなり、正月気分も完全に抜けていますが、ごぜうたのドキュメンタリーと、民謡歌手・川崎千恵子さんの長尺一本を上げておきます。瞽女さんの歌を初めて聞いたのは、杉本キクイさんの演奏を収めた90年代前半のカセットブック「瞽女さん」でした。凛としたお声と撥さばきに聞き入りました。オフノートの高田瞽女編でも妙技を聞けます。来年の正月には、今回かけられなかった杉本キクイさんの春駒を是非入れたいと思います。3本目は「最後の瞽女」小林ハルさんのドキュメンタリーです。川崎千恵子さんは秋田生まれと言うことなので、やっぱり秋田長持唄が特に良いと思いましたが、残念ながら喜代節はこの中にはありませんでした。

ごぜうた

ふるさと民謡集  川崎千恵子

最後の瞽女 小林ハル 津軽三味線の源流 The Last Goze, a blind female strolling musician,Kobayashi Haru

| | コメント (0)

2021年1月 7日 (木)

「春の海」自作自演、謡曲「高砂」、民謡、瞽女唄、新内

ゼアミdeワールド241回目の放送、水曜夜8時半にありました。今回の放送は6日のみです。
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。

お正月と言えば、どこに行っても宮城道雄の「春の海」が聞こえてきますが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組から4年連続でご紹介してきました。今年はさすがにまだかけてない音源は減ってきましたが、今回も宮城道雄の自作自演をまずおかけしたいと思います。尺八は初演を勤めた吉田晴風です。(放送では、瞽女唄まで入らないので、後半の再現部分をカットしフェイドアウトしました。分かった方は、「春の海」の通だと思います(笑))

<春の海 宮城道雄自作自演 6分25秒>
春の海 宮城道雄自作自演

今回の「春の海」は宮城道雄の自作自演だけにしておきまして、後は他の邦楽曲をご紹介します。
正月がテーマではありませんが、結婚式でよく歌われる世阿弥作のお能「高砂」の、高砂やこの浦船に帆を上げて、の部分と、四海波静かにて、千秋楽は民を撫で、の3か所は祝言の謡いとして非常に有名ですので、今回取り上げておきます。この番組を始めた時にお話ししましたが、謡曲を26年前に少し習ったことが大きな転機になりまして、25年前の開店時にゼアミと言う店名にしました。私が習っていた喜多流の往年の大名人・喜多実の独吟です。能の5流それぞれの小謡集も手元にありますが、今年はこちらをおかけしておきます。

<2 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 四海波静かにて 1分13秒>
<4 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 高砂やこの浦船に 1分27秒>
<30 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 千秋楽は民を撫で 30秒>
大島輝久_小謡「高砂や」

民謡でも何か正月らしい曲はないかなと探していましたが、個人的にとても好きな秋田民謡の喜代節を今回おかけしてみます。歌、三味線共に憂いのある美しい旋律ですが、祝言的な内容の民謡です。(川崎千恵子さんではないようですが、唄、三味線共に素晴らしく、踊りも見れます)

<16 秋田民謡 喜代節 川崎千恵子 3分18秒>
喜代節(秋田県民謡)

次は、江戸の浄瑠璃の一つ、新内の曲で「廓七草」という曲をおかけします。新内も謡曲の後で私が東京にいる頃に習っていた音曲で、ちょうど放送されるのが七草がゆの頃ですので、この曲を選びました。廓(遊里)で流行った新内らしい哀切な曲調は、最も有名な蘭蝶や明烏以来のもので、艶美な節回しは古賀メロディなど、昔のナツメロ演歌のルーツにもなっているようです。歌っているのは、新内志寿さんで、往年の名人・新内志賀大掾中心のカセット「新内名曲選 子宝三番叟、広重八景」に入っていました。おそらく90年前後の録音で、新内志寿さんはその後、三味線弾き語りで重森三果のお名前で活動されていたと思います。(「新内 廓七草」は見当たらないので、新内流しの二挺三味線を上げておきます。私も昔色々な所で弾きました)

<新内 廓七草 9分34秒>
新内流し.mp4

最後に民謡に戻りますが、新潟や日本海側中心に盲目の女性だけで組織を作り、唄をうたい歩いた芸能集団、瞽女(ごぜ)の杉本キクイさん他の三味線で、金毘羅船々です。四国では正月に参ることも多い金毘羅山の有名な民謡で、キングの「名人による日本の伝統芸」シリーズの瞽女編に三味線練習曲として入っています。長調と短調が入り混じるのが、面白いところです。

時間が余りましたら、同じくキングの「名人による日本の伝統芸」シリーズの瞽女編から祝い唄「春駒」までおかけします。春駒と言えば、今治の寿太鼓の定番曲としても知られていますが、瞽女の曲も正月にふさわしい祝言的な内容です。初春に訪れる養蚕祝言の門付芸で、高田瞽女は木製の春駒を手に持って唄うそうです。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 瞽女歌 杉本キクイ 金毘羅船々 1分35秒>
<6 瞽女歌 杉本キクイ 祝い唄 春駒 6分29秒 ~2,3分>
杉本キクエ - 金毘羅船々

| | コメント (0)

« 2020年12月 | トップページ | 2021年2月 »