まずはジプシー~バルカン・モードを鮮烈に操るサックスの名人、フェルース・ムスタフォフのマケドニアBivecoから出ていたSvadbena Ora i Coceciからご紹介します。オロやチョチェクのような舞曲を即興を交えて鮮烈に演奏する様は、先日ゼアミブログでアップしましたМакедонски нарoдни песни - Мерак меана 1/27の動画で2019年の演奏が確認できました。まさに巨匠と言う感じのステージでした。
<7 GYPSY MUSIC FROM MACEDONIA & NEIGHBOURING COUNTRIES ~Kaytarmá 4分14秒>
<8 GYPSY MUSIC FROM MACEDONIA & NEIGHBOURING COUNTRIES ~Kaytarmá (Gastoúni / Peloponnes / Greece) 3分29秒>
テシュコトと言う曲は、元々出稼ぎの男たちが家を離れる際に踊った「別れのダンス」だそうです。日本の神楽のような厳粛な雰囲気も感じます。1948年の貴重映像がありました。その他にもたくさん上がっているので、現地ではよく知られている曲のようです。演奏しているジプシーたちの母語はマケドニア語でもロマ語でもなくアルバニア語のようですので、やはりアルバニア系の踊りと見て良いようです。ビデオの解説にzurla (folk oboe) and tupan (drum)とある通り、この辺りではズルナではなくズルラ、タパンではなくトゥパンと言うようです。2本目は放送でかけた音源です。
Teškoto
Athletic Macedonian men's folkdance from near Lazaropolje. High mountainous region along the Radika River near the Albanian border. Photographed in 1948 by Jadran Film. Dance led by Rafe Žikoski followed by Dojčin Matevski. Accompanied by zurla (folk oboe) and tupan (drum). Rare movie, only one copy in existence on old nitrate film.
<4 テシュコト・イ・ショタ:マケドニアの2つの舞曲 Teskoto I Shota 7分>
Teskoto i shota
残るノンサッチ・エクスプローラーの盤のタイトルはVillage Music of Yugoslavia: Songs & Dances from Bosnia-Herzegovina, Croatia & Macedoniaですが、マケドニアの音源は、ラストのガイダ・アヴァシのみでした。ギリシアと接するヴァルダル地方の町ゲヴゲリアのトルコ風の音楽で、やはり野外での婚礼の音楽です。ガイダとありますが、ズルナとタパンの演奏です。この曲を聞きながら今回はお別れです。
エスマのSo maki sum se rodilaは余りの絶唱で、スタジオで聞いていて涙腺決壊したのは初めてのことです。すぐに続けられず、数分待って収録を再開しました。エスマの旦那さんのスティーヴォが亡くなったのが1997年という事で、この盤(ジプシー・カーペット)は10年後のリリースですが、この歌には何か亡き夫への思いが投影したのではと思います。名曲名旋律ですから、色々なアレンジがありました。涙腺を刺激する曲と言えば、クラシックならマタイ受難曲の終曲とか、無伴奏チェロ組曲5番の後半とか、イゾルデの愛の死とか、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番の5楽章とか、個人的に色々ありますが、民族系では「アルフォンシーナと海」などと並ぶのではと思います。1989年にミュージックトゥデイで「ジプシーのとき」を知ってサントラを聞いて以来、エデルレジもそうでしょうか。ペルシア音楽なら、シャヒーディーのウード弾き語りDar Madh e Aliとか。5本目は放送の最後にかけた音源です。
Esma Redzepova - So maki sum se rodila
So maki sum se rodila. Macedonian song
Klapa Cesarice - So maki sum se rodila / Со маки сум се родила - HGZ 9.3.2010
Pere Jovanov - So Maki Sum Se Rodila /Macedonian Folk Song/
So maki sum se rodila (I was Born in Sadness) (arr. L. Dimkaroski)
マケドニアの音楽の3回目になります。今回はスウェーデンのCapriceから出ていたMusic from Macedoniaの2枚シリーズからピックアップしてご紹介します。CDは売り切ってなかったので、アップルミュージックからの音出しになります。ロマ(ジプシー)音楽が非常に多い中にあって、ジプシー音楽以外のマケドニア伝統音楽の音源も多く含むシリーズです。ギリシア、トルコ、ロマ(ジプシー)、スラヴ、アルバニアなどの音楽文化が重なって、曲によって色々なグラデーションで感じられます。
まずは1枚目の1曲目を飾っているSnoshti edobra - Mitro le Mitroと言う曲からおかけします。演奏はStefche Stojkovski and the National Instruments Ensembleです。
<1-1 Snoshti edobra - Mitro le Mitro 4分24秒>
Snoshti edobra - Mitro le Mitro
エスマと言えば、この曲は忘れられない圧倒的な歌唱です。確か独Network Medienの「ジプシー・クイーン~Flammes du Coeurs」(2CD)に入っていたように思いますが、売り切れてもう20年くらい見てないもので。2001年の来日公演に行けば、聞けたのでしょうか。流浪の民の悲しみを感じさせる絶唱で、Žarko Jovanovićが1949年に書いたこのジェレム・ジェレムは、しばしば「ロマのアンセム」と言われます。「ロマのアンセム」と言えば、映画「ジプシーのとき」に出てきたバルカン・ロマの民謡「エデルレジ」も、そう呼ばれていたように思います。どちらも大好きな曲で、甲乙つけられません。これからの旧ユーゴ音楽巡りで何度か登場すると思います。
Esma Redzepova - Dzelem,Dzelem (The most beautiful song of world) - Macedonia
Ederlezi: Time of the Gypsies - Goran Bregović, Emir Kusturica
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