« クラパ・イェルサの2曲 | トップページ | グラゴル・ミサ »

2021年8月 9日 (月)

クルク島の伝統音楽

ゼアミdeワールド271回目の放送、日曜夜10時にありました。11日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。動画はフォークウェイズ盤の1曲目と、アルバム全曲もありましたのでグラゴル・ミサの所に入れておきます。他の音源はまた後日。

クロアチアの音楽の2回目です。先週かけましたクロアチア南部のアドリア海沿岸のダルマチア地方の男声合唱、クラパ歌謡はイタリア風で極めて美しい和声的な音楽でしたが、ダルマチアの北部のスロヴェニアやイタリア北東部に近い島嶼部には、クラパとは全く対照的な不協和音の多い不思議な音楽があります。私の知る限りでは、世界の不思議音楽の5本指に入る感じです。場所はアドリア海沿岸北部のイストリア半島に近いクルク島が中心で、この島はリゾート地としても有名なようです。
音源はアメリカのフォークウェイズのLP時代の音源で1枚ありますが、ノンサッチ・エクスプローラーのシリーズの「ユーゴスラヴィアのヴィレッジ・ミュージック」とアルバトロス盤にも数曲入っていますので、まずそちらからおかけします。ノンサッチの方は、11曲目の「私は赤いバラを摘み…」と言う曲です。半音階的な狭い音域の旋律と、2度の不協和音に独特な響きがあります。後半はソピレと言う大小2本のダブルリード管楽器に変わりますが、歌の旋律関係を転回し、短7度になっています。ドを中心に考えると2度はドとレ、短7度はドとシ♭になります。

<11 Village Music of Yugoslavia ~Otrgnem Rozicu Ruman Cvet: Potancu 2分23秒>

何でこういう現代音楽のような伝統音楽がイタリアの近くに存在するのか、不思議と言う他ありません。古代のバルカン半島西部にいたイリュリアに囲まれる形でアドリア海北東部に住んでいた先住民のLiburnia以来のものでしょうか? イストリア半島周辺の音源はアルバトロスの「ユーゴスラヴィアの音楽」には2曲ありまして、クルク島の笛の音源がありますので、おかけしておきます。楽器名はソペラとありますが、ノンサッチ盤と同じ笛ではないかと思います。この笛はクルク島とツリクヴェニツァ周辺のダルマチア国境地帯のみで演奏されると解説にあります。今日の3枚とも60~70年代の、まだユーゴスラヴィアが一つの国だった頃の音源です。現在もこういう伝統が残っているのかは、不明です。2本のソペラは曲の途中では6度か7度の不協和音で動きますが、終止の際はオクターヴに落ち着きます。

<9 Folk Music of Yugoslavia ~コラク・イ・ポタンツ Korak I Potancu 1分25秒>

クルク島のまとまった音源は、おそらくフォークウェイズのLP時代のThe Diaphonic Music of the Island Krk, Yugoslaviaだけだと思います。スミソニアン・フォークウェイズの自社レーベル音源中心にDL販売かカスタムCDRで購入可で、アップルミュージックのストリーミングでも聞けますし、解説はPDFで読めます。Folkwaysのお宝音源の山には、LPか10インチのアナログ盤のリリースのみで、Smithsonian FolkwaysからCD化されなかった音源も沢山ありまして、クルク島の1975年リリースのこの盤もその一枚です。70年代に日本コロムビアから一部LPで出ていましたが、クルクはなかったのではと思います。ストリーミングで入手しましたので、その中からおかけします。Diaphonicと言うのは類音素と訳が出てきます。音程が近いという意味なのか、またゼアミブログの方でも探ってみたいと思います。

1曲目は混声の合唱ですが、この近い音程の不思議な合唱で始まります。「ドブリンジは白い街」と言うドブリンジを紹介するような歌ですが、独特な音楽からは厳粛な雰囲気を感じます。

<1 The Diaphonic Music of the Island Krk, Yugoslavia ~Dobrinj Je Bili Grad 1分11秒>
Dobrinj je bili grad

この盤は2,3分までの小曲が9曲続いた後に、B面に当たる後半は結婚式の音楽が続き、その終わりに教会スラヴ語の典礼文に曲付けされたグラゴル・ミサの抜粋と、カトリックの晩課(夕べの祈り)が入っています。グラゴル・ミサと言えば、チェコ(モラヴィア)のヤナーチェクの作品が有名ですが関係はありません。この2曲はノーカットで全部入れたいので、先に続けておかけします。どちらも男女の交唱のスタイルですが、グラゴル・ミサは協和音の部分に始まり、段々と不協和音の部分が出てきます。これが大変に興味深いです。グラゴル・ミサが9分弱、晩課Vesper Sequenceは4分です。Sequenceは英語のシークエンスの意味ではなく、教会音楽のラテン語の用語、セクエンツァ(続唱)のことではと思います。

<14 The Diaphonic Music of the Island Krk, Yugoslavia ~Extract from a Glagolithic Mass 8分48秒>
Music of the Island of Krk, Yugoslavia [Full Album]

<15 The Diaphonic Music of the Island Krk, Yugoslavia ~Vesper Sequence 4分5秒>

教会に入ってから歌われるのが、グラゴル・ミサと晩課と続唱だと思いますが、その前に演奏される結婚式の音楽を聞きながら今回はお別れです。教会に入る直前と思われるWedding, Songs/Instrumental Dance Musicを先に、時間があればその前に演奏されるWedding, Bridal Marchを後におかけします。ソペラのデュエットです。こんな不思議な音楽での結婚式は、想像が付きません。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Wedding, Songs/Instrumental Dance Music 2分11秒>
<10 Wedding, Bridal March 3分32秒>

|

« クラパ・イェルサの2曲 | トップページ | グラゴル・ミサ »

バルカン」カテゴリの記事

ゼアミdeワールド」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« クラパ・イェルサの2曲 | トップページ | グラゴル・ミサ »