スラヴォニアの民謡
ゼアミdeワールド273回目の放送、日曜夜10時にありました。25日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。感染拡大のため何度目かのスタジオ閉鎖になりまして、またしばらく宅録の予定です。クロアチアの音楽の4回目です。前回に続いてクロアチア国立民族合唱舞踊団“ラド”の音源から始めたいと思います。今日の動画はスラヴォニアの3曲のみです。よく見るとAjd' Na LivoとHajd Na Levoは綴りもそっくりです。同じ曲の節違いでしょうか?
ラドのCDはたくさん出ていますが、手持ちの2枚にはセルビアに近いクロアチア東部のスラヴォニア地方の音楽は2曲だけで、これは東部で戦火が激しかったのと無関係ではないのかも知れません。その2曲はまた来週取り上げる予定です、と予告しておりました。ラドの1枚物(Lado / Iz Hrvatske Narodne Glazbene Riznice 2)に入っている2曲では明るい調子の歌声が聞けてほっとしました。最初の曲はいかにもスラヴ系の合唱と言う感じです。次の曲はタンブリッツァ・アンサンブルの伴奏が入ります。トルコのサズやタンブールの流れを汲むタンブリッツァは、音域によってソプラノを担当するビセルニツァ、その下のブラッチ、アルト音域のブガリヤ、テノール音域は何とチェロと呼ばれ、バス音域はベルデで、この5つから成ります。タンブリッツァの合奏の音はマンドリン・オーケストラにも似ています。
<12 Tri Jetrve Žito Žele 2分17秒>
Vranovci Bukovlje - Tri jetrve žito žele
Tri Jetrve Žito Žele
<13 Ajd' Na Livo 2分28秒>
KUD Kresimir Bad-Cannstatt - Ajd na ljevo, Ajd na desno
この1枚物の方にはダルマチアの曲も5曲入っておりまして、さっきのスラヴォニアに続いて入っているのは、Kolo Poskočica - Linđoと言うコロで、バルカン各地のホラやオロと繋がる舞曲なのが名前からも分かります。ダルマチアと言えばイタリア風な曲が多いですが、この曲はギリシア周辺のホロの直系の古風な趣があります。
<14 Kolo Poskočica - Linđo 1分25秒>
次の曲も地方名はジュズナ・ダルマチアとありますが、こちらはアコーディオンが入ってイタリア風にも聞こえます。
<15 Vrtajica I Dva Passa 1分26秒>
前回うっかりSenjicu Senjalaと言うハンガリー風な曲を2回かけてしまいました。同じく2枚組と1枚物の両方に入っているのが、トゥロポリエ地方のDevojka, Devojkaと言う曲で、とても親しみ易い曲ですので、ラドの最後にこの曲をかけたいと思います。この曲辺り、中央クロアチア音楽の典型的なイメージがあります。デーヴァイカとはロシア語ならジェーヴァチカで、「女の子」の意味です。
<23 Devojka, Devojka 1分50秒>
東北部のスラヴォニアの曲は他の盤にも入っておりまして、ユーゴ紛争前の録音のノンサッチ盤とアルバトロス盤にもあります。ノンサッチの方は「左へ、右へ」と言う曲で、これも明るく聞いたことのある曲でした。
<5 Hajd Na Levo 1分28秒>
アルバトロス盤のスラヴォニアの曲は「コロ・ロゴヴァツ・イ・スヴァトベナ・プラトニヤ:スラヴォニア地方の2曲のコロ・ダンス Kolo Logovac I Svatbena Pratnja」とありまして、サミッツァの独奏によるコロです。
<15 コロ・ロゴヴァツ・イ・スヴァトベナ・プラトニヤ:スラヴォニア地方の2曲のコロ・ダンス Kolo Logovac I Svatbena Pratnja 1分34秒>
このアルバトロス盤の1曲目は「ラクソン:結婚式の音楽 Lakson」と言うハンガリー風の曲です。個人的に哀調を帯びたハンガリー音楽は大好きなもので、つい選んでしまいます(笑) ヴァイオリンをヘゲデと呼んだり、4弦の木の棒ではじくベースをガルドンと呼んだりするところは、いかにもハンガリー式ですが、演奏者はクロアチア人らしいです。もう一つの楽器は小型のツィンバロムです。曲名のラクソンも、ハンガリー語の「結婚式で」の意味のラコダルモンが訛ったものとのことです。モルヴェと言うハンガリー国境に近い町での録音で、この盤のジャケットにもなっています。
<1 ラクソン:結婚式の音楽 Lakson 1分19秒>
このアルバトロス盤から、前々回のクルク島の音楽の回で「コラク・イ・ポタンツ Korak I Potancu」と言う曲をかけましたが、近くのイストリア半島の曲が2曲ありますので、今回かけておきます。「バルン:イストリアのダンス」と「ポルカ:イストリア・ポルカ・ダンス」の2曲です。最初がダブルリードの管楽器、次はドローン無しのバグパイプによる演奏です。クルクと違って、イストリアのダンスは、古楽の視点からも聞けそうな曲です。
<10 バルン:イストリアのダンス Balun 51秒>
<11 ポルカ:イストリア・ポルカ・ダンス Polka 1分11秒>
ノンサッチ盤には、他で聞けないドブロヴニクの向かいのムリュ島の音源もあります。ドブロヴニクの旧市街は「アドリア海の真珠」とも謳われ、世界遺産に登録されています。クルクやイストリアはダルマチアの北の端、ドブロヴニクは南の端に位置し、ドブロヴニクの辺りにあったラグーサ共和国はヴェネツィア共和国のライバルだった都市共和国です。女性の独唱で地味ですが、古い様式の珍しい音源ですので2曲続けておかけします。詩節の終わりの終止音が2度の音(ドが主音ならレ)になるのがクロアチア民謡の特徴なのがよく分かります。曲名は「苦しみのことは忘れて歌いましょう」と「リンゴの実は美しい」です。この2曲を聞きながら今回はお別れです。次回はオコラのクロアチア、フォークウェイズのユーゴスラヴィアの古い2枚のアナログ音源から抜粋する予定です。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<6 Pjevanti Cu Necu Stat U Muku 3分1秒>
<14 Lijepa Ti Je Od Jabuke Vocka 2分53秒>
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