ヘレン・メリルとラド
ゼアミdeワールド272回目の放送、日曜夜10時にありました。18日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。ヘレン・メリル「イェレーナ」のキリエ以外のラドの演奏は、また後日。2本目はイェレーナの2曲目、両親の故郷クルク島を追想する曲、Imagining Krkです。
クロアチアの音楽の3回目です。今回はクロアチア国立民族合唱舞踊団“ラド”のCDからご紹介します。2014年の来日公演を高松に見に行きまして、その際に会場で買ったクロアチア盤の2枚組と1枚物からの抜粋です。アドリア海沿岸のダルマチアの辺りはイタリア~ヴェネツィア風、スロヴェニアに近い北西部はチロル風、ハンガリーに近い北部はハンガリー的な音楽が聞ける、非常に地方色がはっきり分かれる国だと思います。ラドはダルマチア辺りの音楽は余りやってないようですが、その他の地域は地図入りでCDに紹介されています。
ちょうど今週の予定をそのように考えていたところ、M大の黒田先生からジャズ歌手のヘレン・メリルの2000年のアルバム「イェレーナ」と言う盤を教わりまして、何というシンクロ!と思いました。ヘレン・メリルは両親の出身地が先週の放送で特集したクルク島で、戦場になった故郷の惨禍を悼む思いと自画像を重ねたこの盤は、クルクのソペラをスティーヴ・レイシーがソプラノサックスで模していたり、アルバムの冒頭にはラドの合唱団と民族楽団の演奏する、カトリックのミサの最初か2曲目に歌われるキリエ(キリエ・エレイソン=主よ 憐れみたまえ)にドラムを被せた演奏が入っていたり、ジャズをベースにしながら随所に祖国への思いをオーバーラップさせた作品になっています。何よりもアルバムタイトルの「イェレーナ」は、ヘレン・メリルの本名です。クロアチア名のフルネームはイェレナ・アナ・ミルチェティッチです。まず、そのラドのキリエからおかけします。
<1 Jelena Ana Milcetic a.k.a. Helen Merrill ~Lado Folk Dance And Music Ensemble / Kirje 3分15秒>
Imagining Kirk
この後はラドのクロアチア盤の2枚組と1枚物から抜粋します。2枚組のタイトルはLado / Iz kajkavskih krajeva vol. 3 i 4です。1枚目の1曲目は北部のハンガリー国境に近いポドラヴィナ郡の民謡です。ハンガリー色の濃い音楽です。
<1-1 Podravina: Senjicu senjala 4分14秒>
次は首都ザグレブのポルカを一曲おかけしておきます。こういう明るい調子がクロアチア音楽の典型なのではと思います。クロアチアの民族楽器で最も有名な小型サズのようなタンブリッツァとヴァイオリンなどのアンサンブル演奏です。
<1-13 Zagrebacko prigorje: Prigorska polka 1分29秒>
次はクロアチア最北部に位置し、ハンガリー・スロヴェニアと接しており、オーストリアにも近いメジムリェ郡の曲はかなり多くて、9曲入っています。聞けば聞くほどハンガリー音楽にそっくりです。18~20曲目まで続けておかけします。
<1-18 Medimurje: Lepe nase senokose 1分25秒>
<1-19 Medimurje: Zaigrajte meni 1分37秒>
<1-20 Medimurje: Regica 1分40秒>
2枚目の15曲目から数曲、スロヴェニアに近いゴルスキ・コタルの音楽は、アルプスやオーストリアのチロル地方の音楽にも似ていますが、音楽では全く陸地と異質なクルク島も、このゴルスキ・コタル地方に含まれます。15曲目は雪山賛歌に似ていますし、16曲目はアルペン音楽そのもののようです。
<2-15 Gorski kotar: Dekle je na gajnku stala 1分43秒>
<2-16 Gorski kotar: Od kad si dekle ti doma 1分46秒>
2枚目のポクプリエとトゥロポリエの音楽は、明るいポルカ調の曲が多く、こういう中央クロアチアの音楽が典型的なタイプかと思いますが、その中でトゥロポリエの哀歌調の女性の合唱が耳に残りました。
<2-11 Turopolje: Ej, mila majko 1分25秒>
1枚物のLado / Iz Hrvatske Narodne Glazbene Riznice 2の方からも2曲選びましたが、やはりハンガリーに近いメジムリェとポドラヴィナのハンガリー風な歌でした。このハンガリー風の2曲を聞きながら今回はお別れです。ラドのCDはたくさん出ていますが、手持ちの2枚にはセルビアに近いクロアチア東部のスラヴォニア地方の音楽は2曲だけでした。これは東部で戦火が激しかったのと無関係ではないのかも知れません。その2曲はまた来週取り上げる予定です。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<9 Štiri Snehe 1分38秒>
<17 Senjicu Senjala 4分15秒>
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