Klapa CambiのLipa Moja
ゼアミdeワールド270回目の放送、日曜夜10時にありました。4日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。クラパ・ツァンビのリパ・モヤ以外は、また水曜以降に。今日の動画は大分前に貼ったことのある一本です。
今回からクロアチアの音楽に移ります。まずはクロアチア南部のアドリア海沿岸のダルマチア地方の男声合唱、クラパ歌謡です。イタリア風でダンディな明るい合唱が多く、これが本当に南スラヴ系のクロアチアの歌か?と不思議に思う程にイタリア的です。
私が最初にクラパ歌謡を聞いたのが、2005年頃の北中さんのNHKFMワールドミュージックタイムでした。特にクラパ・ツァンビのリパ・モヤと言う、美しく格好いい曲に非常に驚いて、チェック漏れしていたイギリスARCの盤「クロアチアの歌 ダルマチア海岸のクラパ歌謡」Songs Of Croatia: Klapa Singing From The Dalmatian Coastを急いで入れた記憶があります。
リパ・モヤは「時の流れと女性の美しさについての歌」と言うことですが、英訳歌詞を読むと、かなりストレートなラヴソングと言う印象でした。グループ名を最初クラパ・カンビと読んでいましたが、クラパ・ツァンビの方がより近いと思います。このARC盤は現在は廃盤のようで、ストリーミングでも原盤のクロアチアDallasの盤と思われる写真が出てきます。
<1 Klapa Cambi / Lipa Moja 3分44秒>
Lipa moja - klapa Cambi - Proglašenje pobjednika FDK 2000
クラパ(クロアチア語: Klapa)は、クロアチア南部沿海部のダルマチア地方で伝統的に行われているア・カペラ(無伴奏)の男声合唱で、第1テナー、第2テナー、バリトン、バスで構成され、2012年にユネスコ無形文化財にも登録されています。低音のバス・パートから、裏声のファルセット・パートまで入れると、そのダイナミックスの幅は女声合唱の比ではないと思います。クラパの歌では主に、愛と女性の美しさ、葡萄とワイン、故郷と海について歌われています。最近は女性のグループも出来ているようですが、そうなると歌詞も気になります。なおクラパとは”友人の集まり”という意味合いのようです。
クラパのルーツは、アドリア海沿岸にも広まったカトリックの教会の合唱に辿れるようです。アドリア海に面したダルマチア辺りは、7世紀末から1797年まで1000年以上に亘り歴史上最も長く続いた国、ヴェネツィア共和国があった場所で、そこで話されていた西ロマンス語系のヴェネト語や、標準イタリア語と同系統の南ロマンス語系のダルマチア語と共に、カトリックの信仰と北イタリア風な合唱がスラヴ人の間にも広まったのではと思います。ダルマチア語は、クロアチアのダルマチア海岸とモンテネグロのコトル南部で使用され、19世紀末に最後の話者が亡くなり、現在では死語になっています。
この「クロアチアの歌 ダルマチア海岸のクラパ歌謡」と言う盤は、クラパ・ツァンビともう一つのグループのクラパ・イェルサの歌唱が一曲ずつ入れ替わりで入っています。まず奇数番号に入っているクラパ・ツァンビの歌唱を数曲続けたいと思います。
5曲目Temperaは「愛のない世界がいかに灰色かについての歌」と言う解説がありました。
<5 Klapa Cambi / Tempera 2分11秒>
9曲目Sve ću preživitは「貧困と不幸を乗り越えることはできても、愛の喪失を乗り越えることができない男の物語。」と解説にありました。「あなたは何故ここにいない?」の意味のシュトテネーマの文句で終わる曲で、どうしてもヤドランカさんの歌を思い出してしまいますが、ダルマチアの歌はどこまでも明るい曲調なのが対照的です。
<9 Klapa Cambi / Sve ću preživit 3分>
11曲目のDobri Judiは、「女性に拒絶された後、男性は友人を頼って歌の快適さを見つけ、傷ついた心を癒す」と言う内容で、これも実にダンディな歌です。
<11 Klapa Cambi / Dobri Judi 3分8秒>
クラパ・イェルサの方は、クラパのルーツであるカトリックの合唱音楽のカラーが強い曲や歌唱スタイルが多いように思いました。このグループの最初の歌である2曲目のO, jablane moj visokiは、愛についての歌で、イェルサのポプラの木の伐採に触発されているとのことで、グループ名の由来の曲かも知れません。
<2 Klapa Jelsa / O, jablane moj visoki 2分17秒>
クラパ・イェルサの最後の曲である19曲目のSutra će te ponitは、亡くなった父親と翌日の葬儀について息子が歌うという内容で、言葉が分かれば、ピアソラのアディオス・ノニーノのような泣ける曲かも知れません。音楽的にはカトリックよりも正教会風にも聞こえます。
<19 Klapa Jelsa / Sutra će te ponit 4分21秒>
では最後に再びクラパ・ツァンビのこの盤の最後の歌唱で、20曲目のDobro Jutro Tugoを時間まで聞きながら今回はお別れです。「ずっと前に他の男と逃げてきた、忘れられない愛人に出会う男について」と言う意味深な解説がありました。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<20 Klapa Cambi / Dobro Jutro Tugo 3分>
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