ホラ・スタッカートとワン・ボウ・スタッカート
ルーマニア・ロマのパンフルート名人アンゲルシュ・ディニクが19世紀に作ったとされる「ひばり」の話が出たので、彼の孫グリゴラシュ・ディニクが作ったホラ・スタッカートについて少し見ておきます。ひばりが出たらホラ・スタッカートも取り上げないと片手落ちでしょう。(前にも何度か書いたかも知れません)
ひばり(Ciocârlia)はロマなどのラウタルの演奏以外に、ルーマニアの大作曲家エネスコ(ジョルジェ・エネスク)がルーマニア狂詩曲第1番に引用されて広く知られるようになったと思いますが、ホラ・スタッカートは往年の名ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツの編曲でヴァイオリンのピースとしてよく知られています。ハイフェッツの編曲で特筆されるのは、一弓で多くは32個ほどの音をスタッカートで鳴らすワン・ボウ・スタッカートの指定があることで、アップ(上げ弓)でもダウン(下げ弓)でも出てくるので、ヴァイオリン奏者を悩ませるところかと思います。かくいう私も80年代から楽譜は持っていますが、ワン・ボウでうまく飛んだことはありません。この曲をチェロで弾いたのがアメリカの名手、故リン・ハーレルで、1984年頃TVで見て度肝を抜かれたものです。アップでもダウンでもニコニコしながら弾いていました。
ホラ・スタッカートは現在のラウタル(ルーマニアの職業楽師)もよく弾いているようで、持っているルーマニアElectrecordのLPに入っていますが、ワン・ボウで弾いているかどうかは、音だけですので確認できていません。合奏の場合、ワン・ボウでは合わないのではと推測します。一方、ひばりですが、エネスコの曲以外ではクラシックの演奏家が弾いているのは、ほとんど聞いた記憶がありません。即興性が重視される曲なので、困難なのでしょうか。
1本目がハイフェッツの有名な動画。2本目は何とディニクの演奏ですが、ワン・ボウではなく1つずつ切って弾いています。3本目は往年の名女流ジネット・ヌヴーで、これもおそらくワン・ボウでしょう。4本目は現代の名手ジェームス・エーネス。さすが完璧なワン・ボウ・スタッカートを披露しています。リン・ハーレルもありました! 5本目です。
Jascha Heifetz plays Hora Staccato
Grigoras Dinicu - Recital
Ginette Neveu / Dinicu:Hora Staccato
Hora staccato Antonio Stradivari, 1713 'Baron d'Assgnies'
Hora Staccato: Lynn Harrell & Brooks Smith
| 固定リンク
「ルーマニア」カテゴリの記事
- サースチャーヴァーシュの楽士達(2022.12.28)
- エルデーイ~ブコヴィナとジメシュ~モルドヴァ編(2022.12.12)
- Chant du mondeの「トランシルヴァニアの弦楽四重奏」の1曲目(2022.07.28)
- ハルツァグル(2022.07.27)
- エチェル村の結婚式(2022.07.25)
「チェロ」カテゴリの記事
- もう一つの「鳥の歌」(2022.11.16)
- 鳥の歌(2022.11.14)
- オーヤン・ナナのポッパー / ハンガリー狂詩曲(2022.09.29)
- イェネー・フバイとダヴィッド・ポッパー(2022.09.26)
- イムレ・カールマンのコダーイ無伴奏チェロ(2021.11.04)
「ヴァイオリン」カテゴリの記事
- ジネット・ヌヴーのブラームス(2022.10.12)
- 77歳のイェネー・フバイの至芸(2022.10.07)
- Scenes de la Csardaの8番 So They Say(2022.10.06)
- ヘイレ・カティ(2022.10.05)
- Scenes de la Csarda シゲティの3番(2022.10.03)
コメント