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2021年11月

2021年11月29日 (月)

セルビアの9回目とルーマニアの1回目

ゼアミdeワールド287回目の放送、日曜夜10時にありました。12月1日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日は2曲目まで動画を入れました。

今回はセルビアの9回目とルーマニアの1回目にしたいと思います。ヴラフ関連という事でアルーマニアの音源の話もしていましたが、この盤はルーマニア南東部ドブロジャ地方での録音ですので、次回取り上げる予定です。

セルビアの音楽のラスト9回目とルーマニアの1回目にしようと思ったのは、前回かけたSveti Savaの演奏は、曲によってタラフ・ドゥ・ハイドゥークスなどルーマニア南部ワラキア地方のジプシー音楽に似ていると思ったからです。と言う訳で、3月から続いていた旧ユーゴ諸国の音楽巡りは、今回で最後になります。

セルビアとルーマニアの伝統音楽で明確に違うのは、セルビアでは変拍子と合唱がある点だと思います。ルーマニアでは変拍子はない代わりに、東欧一と言われるほどの高速で演奏されることも多いです。タラフのライヴで「ひばり」を聞いた方は納得されると思います。タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのようなワラキアのジプシー音楽は地理的な近さからか、似ている部分が色々見つかるように思います。

バルカン・ブラスの影に隠れて日本では知られてないように思いますが、ブラス以外のセルビアの民族音楽グループの演奏力も相当なものだと思います。まずはスヴェティ・サヴァの演奏から、Vesele Sopske Igreという曲をおかけします。

<Sveti Sava / Vesele Sopske Igre 4分45秒>

次にタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの「魔法の馬の帰還」と言う曲をおかけしますが、私がタラフを聞いていて特にワクワクする曲の一つです。

<Taraf De Haidouks / Band of Gypsies  ~The Return Of Magic Horse 5分2秒>

もう一枚のARC盤のFolk Dance Ensemble Vilaの演奏にはVisocko koloと言う曲がありまして、これもルーマニアの音楽に似た一面が聞こえました。

<Folk Dance Ensemble Vila / Visocko kolo 2分43秒>

縦笛フルーラと思われる笛の諧謔味を帯びた演奏でしたが、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの演奏ならゲオルゲ・ファルカルが縦笛を吹いているBrîu(ブルウ)と言う曲がそっくりで、この曲はゲオルゲ・ザンフィルのパンパイプ演奏では「オルテニアの踊り」と紹介されていました。

<Taraf de Haïdouks / Honourable Brigands, Magic Horses & The Evil Eye ~Brîu 2分4秒>

セルビア東部のヴラフ人の葬儀の音源に、Padura, Sora Paduraと言うバラードがありまして、2回前にかけましたが、この曲は「森、姉妹の森」のような意味でした。埋葬後に故人の家で歌われるということでしたが、そっくりなタイトルの曲がタラフ・ドゥ・ハイドゥークスにもありまして、こちらはラヴソングと言う解説になっています。曲名はPadure Verde, Padureで、やはり「緑の森、森」のような意味です。タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの2000年頃の来日の際は、長老の一人だったカクリカがツィンバロム弾き語りでエモーショナルな歌声を聞かせています。彼は88年にオコラから出ていた「ワラキアのジプシー音楽」でニコラエ・ネアクシュやイオン・マノレと一緒に名を連ねています。3人とも故人になってしまいました。長いので、途中までおかけします。

<Taraf de Haïdouks / Dumbala Dumba ~Padure Verde, Padure 7分1秒>

では最後にセルビアの民族音楽グループ、スヴェティ・サヴァの演奏でSplet Igara Iz Centralne I Zapadne Srbijeという曲を時間まで聞きながらお別れです。セルビアの中部と西部の音楽のようですが、この曲もルーマニア音楽に似て聞こえる部分があるように思いました。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Sveti Sava / Splet Igara Iz Centralne I Zapadne Srbije 6分27秒>

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2021年11月26日 (金)

ヴラフ人のバグパイプ

結婚式のブラスバンド、Cintec Alu Nasu Lunitaを探していましたが、「ヴラフのバグパイプ」と言う興味深い映像がありましたので、こちらを1本目に入れておきます。Cintec Alu Nasu Lunitaは、何故かこの曲だけ「楽園の蝋燭」の単独ファイルがありましたので、2本目に。
ヴラフ人ですが、広義に取ればルーマニア人もアルーマニア人も入れるようです。アルーマニア人はギリシアやアルバニアにも多いことが地図で分かります。現代のルーマニア人を古代のダキアのルーマニア人と言う意味でダコ=ルーマニア人と呼び、その他にアルーマニア人、モルラク人(Morlachs)、メグレノ=ルーマニア人(Megleno-Romanians)、イストロ=ルーマニア人(Istro-Romanians)などが含まれ、ヴラフ人とは自民族の国としてルーマニアを持つルーマニア人を除いた人々を指すことが多い、とされています。イストロ=ルーマニア人(Istro-Romanians)と言うのが、前にクロアチアで出てきたイタリアの近くのイストリア半島のルーマニア人のことです。話者はわずか1000人ほどだそうです。

Vlach bagpipe ballads (Timoc and Epir regions)

Radujevac ( Wallachs of eastern serbia ) - Cintec Alu Nasu Lunita

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2021年11月25日 (木)

ヴラフの装飾技巧 ウングレアンカ他

細かくトリルをかけているのだろうと思いますが、ウングレアンカのフィドリングは独特です。トリルと言うより、コブシのようになって旋律に一体化している感じです。演奏している動画があれば見たいものですが、なさそうです。この曲は東セルビアのヴラフとルーマニアに共通するのか、またルーマニアに回ったらそちらの音源で探してみようかと思いますが、すぐに出てきた2本目は全く違うタイプの曲でした。
今回放送でかけた「楽園の蝋燭」前半の音源7曲で、他に特に気になるのはDor, Dorituleです。やはり細かい揺れのような装飾技巧が耳に残ります。4本目はAuvidis Ethnicの音源のようですが、こちらはバグパイプでの演奏。よく聞くと同じ曲かなと思いました。(以下放送原稿を再度)

ヴラフ人に伝わるダンス音楽は非常に豊富で、編成もフィドル、フルーラ、バグパイプ、ブラスバンドなどのいずれかがフィーチャーされた演奏が多いようです。まずは前回オープニングに少しだけ流したフィドルのUngureancaからおかけします。独特なしゃがれたような音色には、トランシルヴァニアのフィドルに近い印象を持ちます。

<1 Ungureanca 2分35秒>
Ungureanca / Dance from Timok area

Ungureanca

牧畜生活の部では、フルーラの独奏とバグパイプが入っていますが、フリーリズムで装飾豊かに演奏されるフルーラ独奏の方をおかけします。「吸血鬼を追い払う曲」と並べてじっくり装飾技巧を聞き比べてみたい演奏です。

<7 Dor, Doritule 1分56秒>
Dor, doriţule - Lexa Fluieraşul (satul Osnicea)

Dor, Doritule

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2021年11月24日 (水)

Sveti Savaのスヴァトヴァツとヴラスケ・イグレ

Sveti Savaと検索するとセルビア正教関係らしき映像が色々出てきます。聖人だと思いますが、聖サヴァと言う意味のようです。放送でかけたARCの音源はそれぞれありました。Vlaske Igreだけ民族舞踊付きの動画もありましたので、3本目に入れました。一口にVlaske Igreと言っても、メドレーで演奏される曲は色々あるように思います。(以下放送原稿を再度)

セルビアの音源は、他に英ARCから2枚、スイスのVDE-Galloから1枚、Auvidis Ethnicから1枚などがありますが、いずれも手元に残ってないので、ストリーミングから次回1、2曲おかけすると、前回予告していましたので、英ARCの「セルビアの伝統音楽  Sveti Sava」から2曲おかけします。1978年に結成されたセルビア民謡グループ、スヴェティ・サヴァによるセルビア各地の伝統音楽演奏ですが、曲名を見て気になったのがSvatovacとVlaske Igreです。
スヴァトヴァツと言えば東部クロアチアのスラヴォニア地方の古いタイプの婚礼の合唱曲Svatovacを思い出しました。スラヴォニアとセルビア北西部はすぐ近くで関係有かとも思いますが、セルビアのこの演奏では器楽で、解説が参照できないので婚礼の音楽かどうかは不明です。
Vlaske Igreは、283回目の放送で「ブランコ・クルスマノヴィッチ・グループ/セルビア&モンテネグロの音楽」からかけた曲で、「ヴラフ人の演奏」のような意味でした。ルーマニア寄りの音楽である点で、この2つの演奏は似ていると思います。

<3 Sveti Sava / Serbia: Traditional Music ~Svatovac 3分57秒>

<11 Sveti Sava / Serbia: Traditional Music ~Vlaske Igre 3分24秒>

Vlaške igre

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2021年11月22日 (月)

「楽園の蝋燭」の前半

ゼアミdeワールド286回目の放送、日曜夜10時にありました。24日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。動画は一週間前に上げた「楽園の蝋燭」丸々の一本ですから、後半は先週の「死」の部分です。個別の曲の捜索とARC盤は、また後日。

セルビアの音楽の8回目です。前回は「楽園の蝋燭」と言う盤の「生と死」の「死」の方をご紹介しましたが、今回は「生」の方です。この盤は東セルビアのラテン系少数民族、ヴラフ人の音楽を記録した盤で、ユーゴ崩壊前の70~78年の貴重な現地録音です。アルバムタイトルの「楽園の蝋燭」とは、夜明け前に灯される数十の蝋燭のことで、原題はSerbie Orientale Les Bougies Du Paradisです。
「生」の部分は、ダンス、牧畜生活、結婚式の音楽の3つのパートに分かれています。バルカン文化の肝の一つである「吸血鬼を追い払う曲」を含む「死」の部分のインパクトが余りにも凄すぎて陰に隠れがちなように思いますが、今回の「生」の部分からこの盤は始まります。

Various ‎– Yougoslavie 1 (Serbie Orientale) - Les Bougies Du Paradis

ヴラフ人に伝わるダンス音楽は非常に豊富で、編成もフィドル、フルーラ、バグパイプ、ブラスバンドなどのいずれかがフィーチャーされた演奏が多いようです。まずは前回オープニングに少しだけ流したフィドルのUngureancaからおかけします。独特なしゃがれたような音色には、トランシルヴァニアのフィドルに近い印象を持ちます。

<1 Ungureanca 2分35秒>

続いて縦笛フルーラによるコロが入っています。「吸血鬼を追い払う曲」もこの笛による演奏でした。葬儀の音楽でも出てきた太鼓がバックに聞こえます。

<2 Razvedeno Kolo 1分24秒>

バグパイプの演奏はHora da patruと言うホラですが、ブルガリア辺りで聞いた始まりの特徴的な音の並びが、ヴラフの演奏でも聞こえます。

<3 Hora da patru 1分36秒>

ブラスバンドの演奏もダンス音楽として入っています。前回の埋葬の音楽は意外にも明るい調子でしたが、今回はダンス曲と言うことで更に弾むように演奏されています。

<4 Miletovo Kolo 2分58秒>

牧畜生活の部では、フルーラの独奏とバグパイプが入っていますが、フリーリズムで装飾豊かに演奏されるフルーラ独奏の方をおかけします。「吸血鬼を追い払う曲」と並べてじっくり装飾技巧を聞き比べてみたい演奏です。

<7 Dor, Doritule 1分56秒>

結婚式の音楽の部は、ブラスバンドが2曲、フルーラと太鼓が1曲の計3曲入っていますが、最初のCintec Alu Nasu Lunitaをおかけしておきます。演奏されるのは式の最初の方でしょうか、厳かな中でトランペットがバルカン的な旋律美を聞かせます。

<9 Cintec Alu Nasu Lunita 3分36秒>

セルビアの音源は、他に英ARCから2枚、スイスのVDE-Galloから1枚、Auvidis Ethnicから1枚などがありますが、いずれも手元に残ってないので、ストリーミングから次回1、2曲おかけすると、前回予告していましたので、英ARCの「セルビアの伝統音楽  Sveti Sava」から2曲おかけします。1978年に結成されたセルビア民謡グループ、スヴェティ・サヴァによるセルビア各地の伝統音楽演奏ですが、曲名を見て気になったのがSvatovacとVlaske Igreです。
スヴァトヴァツと言えば東部クロアチアのスラヴォニア地方の古いタイプの婚礼の合唱曲Svatovacを思い出しました。スラヴォニアとセルビア北西部はすぐ近くで関係有かとも思いますが、セルビアのこの演奏では器楽で、解説が参照できないので婚礼の音楽かどうかは不明です。
Vlaske Igreは、283回目の放送で「ブランコ・クルスマノヴィッチ・グループ/セルビア&モンテネグロの音楽」からかけた曲で、「ヴラフ人の演奏」のような意味でした。ルーマニア寄りの音楽である点で、この2つの演奏は似ていると思います。2曲続けておかけします。

<3 Sveti Sava / Serbia: Traditional Music ~Svatovac 3分57秒>
<11 Sveti Sava / Serbia: Traditional Music ~Vlaske Igre 3分24秒>

では最後にオコラの「楽園の蝋燭」に戻りまして、ダンスの部分のSochitを時間まで聞きながら今回はお別れです。1曲目のUngureancaと同じく、ルーマニア西北部トランシルヴァニアのハンガリー系フィドルにそっくりです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Sochit 1分23秒>

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2021年11月19日 (金)

ポマナとパドゥラ・ソラ・パドゥラ

「楽園の蝋燭」の「死」の部分で、その他にYouTube検索可能なのは、ポマナとパドゥラ・ソラ・パドゥラです。ポマナとは、1週間、1か月、7か月、1年、そして没後7年ごとに行われる行事で、日本の~回忌やお盆にそっくりです。パドゥラ・ソラ・パドゥラは「森、姉妹の森」の意味で、太陽、月、森に関するバラードであり、埋葬後に故人の家で歌われるそうですから、故人を偲ぶ歌の一種と見ていいのでは、と解説していました。オコラの「楽園の蝋燭」の死のパートは、色々な場所での葬儀の音源を集めていましたが、亡くなってからの時系列の曲順ではありませんでした。順番で言えば、ゾリレ、ナ・ドラムル、Melodie Funeraire、吸血鬼を追い払う曲(これはいつも演奏されるのではないように思いますが)、パドゥラ・ソラ・パドゥラ、ポマナではないかと思いました。女性の嘆き歌がどこに入るかは不明です。
今日の動画として、パドゥラ・ソラ・パドゥラで検索すると、92年リリースで手元に残ってなかったAuvidis Ethnicの音源が出てきましたので、こちらを一本目に入れました。この盤の解説は土着の吸血鬼伝説にも言及していたそうで、返す返すも手元に残らなかったのが残念です。この演奏のフルーラは「吸血鬼を追い払う曲」のように聞こえますから、本当にパドゥラ・ソラ・パドゥラの部分か疑問は残りますが。2本目はオコラ盤と同じ音源をポマナの食事風景の画像に被せているようです。後半のリズミカルになる部分「鏡を付けた歓びのラウンド」は、お盆ではないですが死者が参加するダンスに当たるようです。3、4本目は「ポマナのホラ」とありますが、これはセルビアのヴラフではなくルーマニア側のようです。

Sora Padura

Timocul sârbesc - Pomană de viaţă din Plamna

Hora de pomană

Petrica Mitu Stoian Hora de pomana

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2021年11月18日 (木)

ゾリレ Romanian traditionall funeral song from Transylvania

Zorileで検索すると残念ながらセルビアのヴラフ人の音源は見当たりませんが、ルーマニアのトランシルヴァニアのものと思われる葬送の歌が色々出てきました。1本目は1937年ブラショフでの録音、老婦人の独唱も貴重な記録だろうと思います。「朝の歌」と言う点でも「楽園の蝋燭」のバグパイプ演奏と共通しているようです。Zorile (bocet)のように括弧してボチェッツと書いてあるのもあって、ルーマニアではボチェッツとも呼ばれるということでしょうか。この曲名ではゲオルゲ・ザンフィルのパンパイプの名演をすぐさま思い出します。生々しく慟哭も描写したような演奏でした。4本目はRomanian traditional folk lament ("bocet") とあって、こちらは1940年の録音。西部のバナートなので、トランシルヴァニアよりもセルビアの近くです。
Na Drumulも探して、ありましたが、残念ながら「楽園の蝋燭」とは別の曲が出てきました。

Zorile / The dawn song

Domnica Trop - Zorile (bocet)

Domnica Trop - Zorile (bocet de priveghi)

Zorile de la amiază / Lament song

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2021年11月17日 (水)

Melodie pour chasser les Vampires

「吸血鬼を追い払う曲」だけを取り出したYouTubeがありました。吸血鬼になりそうな死者に杭を打ち込む時に演奏される、と某書では解説されていましたが、オコラ盤の解説には以下のようにありました。(以下放送原稿を再度)

「吸血鬼(ヴァンパイア)を追い払う曲」は、歌か笛で演奏されるそうですが、この盤に入っている笛の独奏を次におかけします。知らずに聞けば、縦笛フルーラの飄々とした曲に聞こえるだけだと思います。
死んだ人が戻って村人を苦しめたり、作物を燃やしたり、牛を不妊にしたりすることのないようにと言うことですが、先のとがったものを埋葬前の遺体の心臓に刺し込むのかと思うと、ぞっとします。この残酷な方法を家族が反対する場合に、とげで覆われた硬い木の長い棒が墓の棺に刺し込まれる際に「吸血鬼を追い払う曲」が演奏されるそうです。
吸血鬼は映画のドラキュラ伯爵とはほとんど共通点はなく、肉も骨も持たない幽霊であり、自由にハエや黒い犬などに変身することが出来ると民間伝承では考えられています。

<18 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Melodie Pour Chasser Les Vampires 1分12秒>
18 Melodie pour chasser les Vampires mp3

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2021年11月15日 (月)

吸血鬼を追い払う曲 他(ヴラフの葬送音楽)

ゼアミdeワールド285回目の放送、日曜夜10時にありました。17日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。曲ごとのYouTubeはないようですので、今日の動画には「死」だけでなく来週の予定の「生」の部分から全て入っています。

セルビアの音楽の7回目です。セルビアの音源は、他に英ARCから2枚、スイスのVDE-Galloから1枚、Auvidis Ethnicから1枚などがありますが、いずれも手元に残ってないので、これからおかけするオコラのヴラフ人(あるいはワラキア人)の「楽園の蝋燭」と言う盤との関連で、ストリーミングから次回1、2曲おかけしようかと思います。
放送とゼアミブログの両方で何度か予告のように言って来ましたが、このオコラのヴラフ人の音源は人生の「生と死」の両面から東セルビアのラテン系少数民族、ヴラフ人の音楽を捉えた盤で、終わりの方に「吸血鬼を追い払う曲」と言う極めて珍しい音源が入っています。スラヴ系のセルビア人の音楽ではありませんが、個人的にはセルビアの音源で真っ先に思い浮かべる盤です。今回はその後半の「死」の方からご紹介します。ユーゴ崩壊前の1970~78年の貴重な現地録音で、キリスト教以前からの民間信仰の息づく記録です。アルバムタイトルの「楽園の蝋燭」とは、夜明け前に灯される数十の蝋燭のことです。

Various ‎– Yougoslavie 1 (Serbie Orientale) - Les Bougies Du Paradis

まずはこの盤の12曲目の「ワラキアの女性の嘆き」からどうぞ。

<12 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Complainte D'une Femme Valaque 2分4秒>

次のゾリレと言う曲は「朝の歌」の一種で、太陽が昇る時にバグパイプで演奏されます。曲が10回か30回繰り返されている間、死者のそばの3人の女性は東に向かわなければならないという決まりがあるそうです。 はっきりと聞こえる倍音で演奏を装飾する技法は、ヨーロッパでは珍しいとのことです。

<13 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Zorile 2分46秒>

棺の台が墓地に運ばれている間、「路上」を意味するナ・ドラムル(セルビア語:Putnjacki)が演奏されます。

<14 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Na Drumul 2分20秒>

最も重要な儀式は、1週間、1か月、7か月、1年、そしてその人の死後7年ごとに行われるポマナです。ポマナは施し、慈善を意味し、会葬者が提供されるものを食べたり飲んだりする葬儀の食事でもあります。これは日本の七回忌の精進落としにそっくりです。後半のリズミカルになる部分「鏡を付けた歓びのラウンド」は、お盆ではないですが死者が参加するダンスに当たるようです。

<15 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Une Pomana A Jabukovac 6分56秒>

次の埋葬の旋律はロマのブラスが演奏していて、棺桶が墓に降ろされている間、このメロディーが演奏されます。バルカン・ブラスの響きが故人の最後を華やかに彩っているように思います。

<16 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Melodie Funeraire 2分1秒>

「吸血鬼(ヴァンパイア)を追い払う曲」は、歌か笛で演奏されるそうですが、この盤に入っている笛の独奏を次におかけします。先入観なしで聞けば、縦笛フルーラの飄々とした曲に聞こえるだけだと思います。
死んだ人が戻って村人を苦しめたり、作物を燃やしたり、牛を不妊にしたりすることのないようにと言うことですが、先のとがったものを埋葬前の遺体の心臓に刺し込むのかと思うと、ぞっとします。この残酷な方法を家族が反対する場合に、とげで覆われた硬い木の長い棒が墓の棺に刺し込まれる際に「吸血鬼を追い払う曲」が演奏されるそうです。
吸血鬼は映画のドラキュラ伯爵とはほとんど共通点はなく、肉も骨も持たない幽霊であり、自由にハエや黒い犬などに変身することが出来ると民間伝承では考えられています。

<18 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Melodie Pour Chasser Les Vampires 1分12秒>

最後に入っている最愛の故人との奇妙な会話を含むセルビア女性の嘆きは、憑依を伴っているようにも聞こえ、最初のワラキア女性のルーマニア風な嘆き歌と明らかに違っています。

<19 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Complaintes De Femmes Derbes 3分38秒>

では最後に、長いので飛ばしていた17曲目のBallad; Padura, Sora Paduraを時間まで聞きながら今回はお別れです。パドゥラ、ソラパドゥラとは「森、姉妹の森」の意味で、先ほどのゾリーレのように、太陽、月、森に関するバラードと言うことです。通常、埋葬後に故人の家で歌われるそうですから、故人を偲ぶ歌の一種と見ていいでしょうか。この録音にはないようですが、遺族による精霊流しもあるそうです。
次回は同じ「楽園の蝋燭」から、前半の「生」の部分に当たるダンスと結婚式の方を取り上げる予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<17 Serbie Orientale Les Bougies Du Paradis ~Ballad; Padura, Sora Padura 6分35秒>

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2021年11月11日 (木)

Vasilija Radojčić - Zlatna ploča

今日の1本目にはヴァシリヤ・ラドイチッチが色々なタイプのセルビアの歌を歌った往年の映像が次々出てきて、たまにコメントで見かける「ディーヴァ」の形容がますますぴったりに思います。伴奏のスタイルが色々で、そちらも面白く見ました。2本目はもっと長く3時間半ですが、静止画像です。3、4本目は放送でかけたNajlepse Pesme(最も美しい歌)と言う盤?のNa Uskrs Sam Se Rodila(私はイースターに生まれた)のスタジオ録音とライブ映像です。1本目では41分頃にこの曲が出てきます。
日曜は文化祭の本番。1年ぶりの催しです。バッハの「羊は安らかに草を食み」とアメイジン・グレースを弦楽合奏で弾きます。今日は長い映像を上げたので、明日はブログは休むかも知れません。

Vasilija Radojčić - Zlatna ploča

Splet najlepsih pevanja Vasilije Radojcic

Na uskrs sam se rodila

Vasilija Radojčić - Na Uskrs sam se rodila.

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2021年11月10日 (水)

ヴァシリヤ・ラドイチッチの歌声

ヴァシリヤ・ラドイチッチの歌うドイナに少し似たAnica ovce cuvalaは強く印象に残っていて、ストリーミングで検索してコソヴォに関する歌を歌っていたということで、更に関心を深めました。放送で最初にかけたKad Ti Umrem Stara Mila Majkoは、セルビア語Кад ти умрем, стара мила мајкоとクロアチア語Kad ti umrem, stara mila majko共に機械翻訳ですが、「私が死ぬとき、古い親愛なる母親」と出てきました。正しい訳とそう遠くはないように思います。Anica ovce cuvalaを再度2本目に。(以下放送原稿を再度)

後半は9月頃にゼアミブログでSongs and Dances of Yugoslaviaに入っているAnica ovce cuvalaを歌っていた女性歌手として取り上げたVasilija Radojcicの歌唱を聞いておきたいと思います。セルビアの民謡を元にした歌を聞かせる歌手で、何枚かデータで持っていますが、その中に「コソヴォの歌」と言うタイトルの盤(あるいはプレイリスト?)があります。
セルビアの歌手が何故コソヴォの歌を、と思いますが、これはコソボの地で12世紀に初のセルビア人の統一王国が誕生したことと、14世紀のコソボの戦いでの敗北によってセルビアは最終的にオスマン帝国に飲み込まれるに至ったことから、セルビア人からコソボは重要な土地とみなされていることにあるようです。「セルビア建国の地」として特別視されている場所であるために、90年代末のアルバニア系住民とのコソヴォ紛争も激化することになってしまいました。1936年生まれで2011年に亡くなっている歌手で、この録音はチトー時代のものだと思いますから、当時はリリースできたのでしょう。
この盤で特に印象的な、美しく物悲しい最後のKad Ti Umrem Stara Mila Majkoと言う曲をおかけします。

<5 Vasilija Radojcic / Kosovske Pesme - EP ~Kad Ti Umrem Stara Mila Majko 5分33秒>

Vasilija Radocic Anica ovce cuvala

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2021年11月 8日 (月)

セルビアのヒストリカル録音

ゼアミdeワールド284回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。YouTubeはFolk Music of Yugoslaviaの方は6曲全て入れました。

セルビアの音楽の6回目です。今回は前に旧ユーゴの他の国の音源をご紹介したフォークウェイズのアナログ時代の音源からおかけします。この数少ない70年代以前の貴重な記録はアメリカのフォークウェイズからアナログ盤で出ていて、クロアチアのクルク島とユーゴスラヴィアの2枚の計3枚でした。Smithsonian FolkwaysのサイトでDLかCDRで購入可能ですが、今ではストリーミングでも聞け、ライナーノーツもSmithsonian FolkwaysのサイトでDLできます。セルビアの音源は、1952年のFolk Music of Yugoslaviaの方に多く入っていまして、今ではおそらく聞けないのではと思われる土俗的なリチュアル・ソングから始まる6曲を続けておかけします。
宗教的な歌Ritual Songは、思わず吸血鬼伝説を想起してしまうような雰囲気がありますが、これはキリスト教の信仰を守るために殉教した聖ゲオルギオスを記憶する4月23日土曜日の祝日「ゲオルギオスの日」に当たるセルビアのジュルジェヴダン関連の歌のようです。ジュルジェヴダンは、ロマ語ではエデルレジ (Ederlezi) と呼ばれ、これが映画「ジプシーのとき」のエデルレジの由来です。
その後は縦笛フルーラによる舞曲、バグパイプ伴奏の男性歌手の愛の歌が続いた後、舞曲のコロが3曲続きます。バグパイプ演奏が2曲とズルレあるいはクラリネットとタパンに似たゴツによる演奏が1曲です。終わりのコロだけ、タパンに似た大太鼓を使っている通りで、オスマン・トルコのカラーが感じられます。

<2 Folk Music of Yugoslavia ~Serbia: Ritual Song 1分58秒>

<3 Folk Music of Yugoslavia ~Serbia: Dance Tunes 1分14秒>

<4 Folk Music of Yugoslavia ~Serbia: Love Song 1分56秒>

<5 Folk Music of Yugoslavia ~Serbia: Kolo Dance 38秒>

<6 Folk Music of Yugoslavia ~Serbia: Kolo Dance 1分25秒>

<7 Folk Music of Yugoslavia ~Serbia: Kolo Dance 1分25秒>

フォークウェイズのもう一枚のSongs and Dances of Yugoslaviaからは、9月にセルビアの音源を5曲かけていましたので、かけてなかった東部セルビアのKoloをおかけしておきます。ヴァイオリンとクラリネット中心の演奏です。

<13 Songs and Dances of Yugoslavia ~Kolo 31秒>

後半は9月頃にゼアミブログでSongs and Dances of Yugoslaviaに入っているAnica ovce cuvalaを歌っていた女性歌手として取り上げたVasilija Radojcicの歌唱を聞いておきたいと思います。セルビアの民謡を元にした歌を聞かせる歌手で、何枚かデータで持っていますが、その中に「コソヴォの歌」と言うタイトルの盤(あるいはプレイリスト?)があります。
セルビアの歌手が何故コソヴォの歌を、と思いますが、これはコソボの地で12世紀に初のセルビア人の統一王国が誕生したことと、14世紀のコソボの戦いでの敗北によってセルビアは最終的にオスマン帝国に飲み込まれるに至ったことから、セルビア人からコソボは重要な土地とみなされていることにあるようです。「セルビア建国の地」として特別視されている場所であるために、90年代末のアルバニア系住民とのコソヴォ紛争も激化することになってしまいました。1936年生まれで2011年に亡くなっている歌手で、この録音はチトー時代のものだと思いますから、当時はリリースできたのでしょう。
この盤で特に印象的な、美しく物悲しい最後のKad Ti Umrem Stara Mila Majkoと言う曲をおかけします。

<5 Vasilija Radojcic / Kosovske Pesme - EP ~Kad Ti Umrem Stara Mila Majko 5分33秒>

Najlepse Pesme(最も美しい歌)と言う盤?から、Na Uskrs Sam Se Rodilaは「私はイースターに生まれた」と言う曲と、続く2、3曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Vasilija Radojcic / Najlepse Pesme ~Na Uskrs Sam Se Rodila 3分26秒>
<Vasilija Radojcic / Najlepse Pesme ~Dimitrijo, Sine Mitre 3分47秒>
<Vasilija Radojcic / Najlepse Pesme ~Ajde Jano Kolo Da Igramo 2分3秒>

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2021年11月 5日 (金)

Branko KrsmanovicとRakija

今週の放送でかけたセルビアの2つのフォーク・アンサンブルですが、ブランコ・クルスマノヴィッチは1950年代からメンバーチェンジをしながら活動を続けている現地のトップグループと言うことですので、映像もありましたが、ユーゴ紛争前の録音のプラヤサウンド盤「Yugoslavian Songs & Dances)」のアンサンブル・ラキアに関しては、それらしき映像も見当たりませんでした。プラヤサウンド盤で見つかったのは、前にボスニアの時に取り上げた「おお、リューバフ」のみです。現在も活動しているのか今の所手掛かりがありません。曲名で検索するとLjiljanino KoloとSestorka共に有名な曲のようで、沢山ありましたので、それらを貼っておきます。Ljiljanino Koloはプラヤ盤と同じ録音か演奏者ではと思います。Sestorkaは1951年の珍しい映像がありました。(以下放送原稿を再度)

「ブランコ・クルスマノヴィッチ・グループ/セルビア&モンテネグロの音楽」と言うイギリスARC盤は、この2つの国が一つだった2005年に出たので、一緒に入っています。現物が手元に残ってないので、どの曲がセルビアとモンテネグロのどちらになるのか不明ですが、一曲目は一番華やかですし、おそらくセルビアだろうと思って取り上げました。1950年代からメンバーチェンジをしながら活動を続けている現地のトップグループだそうです。
タイトルのVlaske igreは、セルビア語の翻訳にかけると、「ヴラフ人のゲームあるいは演奏」と出てきました。「演奏する」や「遊ぶ」はロシア語でもイグラーチなので、またもやそっくりです。吸血鬼伝説だけでなく諸々のセルビアとルーマニアの文化を繋ぐ民族として、ラテン系の少数民族ヴラフ人は捉えられているのではと思いますが、この音楽もどちらにも似ています。

<Branko Krsmanovic Group / Music of Serbia & Montenegro ~Vlaske igre 5分28秒>
Vlaske igre (Valahian Dances)

XXII MODF „BRANKO KRSMANOVIC” 18-07-2017

ここ数回セルビアのロマ音楽を中心に聞いてきましたが、一般のセルビアの民族音楽の音源からも探してみました。旧ユーゴに入って何度か出てきたフランスのプラヤサウンドの「Chants & Danses De Yougoslavie (Yugoslavian Songs & Dances)」から、アンサンブル・ラキアの演奏で2曲続けます。ユーゴスラヴィアが一つの国だった頃の音源で、Ljiljanino KoloとSestorkaの2曲です。アコーディオンと裏打ちリズムを刻むギターによるコロは典型的なユーゴの旋律を奏でていますが、ユダヤの速いホラにもそっくりです。Sestorkaもテンポは速いですが、ヴァイオリンと笛のメロディはバルカンど真ん中のイメージです。

<Ensemble "Rakija" / Ljiljanino Kolo (Servia) 2分24秒>
Branimir Djokic - Ljiljanino kolo - (Audio 1969) HD

<Ensemble "Rakija" / Sestorka (Servia) 1分53秒>
Narodna igra ŠESTORKA, 1951.

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2021年11月 4日 (木)

イムレ・カールマンのコダーイ無伴奏チェロ

コダーイの無伴奏チェロ・ソナタは、何故か1楽章だけ見られるのが少ないようで、この曲を一躍有名にしたヤーノシュ・シュタルケルの1楽章もないようですし、イムレ・カールマンさんの映像も3楽章のみのようです。仕方ないのでイムレさんの3楽章を一本目に、2本目は現代フランスの名手ゴーティエ・カプソンの1楽章冒頭、3本目は例のイムレ・カールマンさんのバッハのシャコンヌです。ジャンルは違いますが、旧ユーゴのハンガリー系弦楽器名人、イムレさんとライコー・フェリックスに共通するのは、心を打つ激しさと悲しみでしょうか。それはディアスポラのハンガリー人だからなのでしょうか?(以下放送原稿を再度)

では最後に先ほど名前が出たユーゴ側のハンガリー系音楽家、チェリストのイムレ・カールマンが演奏するハンガリーの大作曲家ゾルタン・コダーイの無伴奏チェロソナタを時間まで聞きながら今回はお別れです。ハンガリーの民族舞曲ヴェルブンコシュなどの様式を踏まえた30分を越える大曲ですので、おかけできるのは冒頭の一部です。ヨーヨー・マによる演奏で、第1楽章がサントリーローヤルのCM曲として使用されたので、聞き覚えのある方もいらっしゃるのではと思います。
10年以上前にイムレ・カールマンがチェロで弾くJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのパルティータ2番のシャコンヌのYouTubeをゼアミブログで特集したことがありますが、その記事を見た沖縄のイムレさんのお知り合いの方からこのハンガリー盤を頂きました。シャコンヌを元の調で弾く程の名手ですから、コダーイのこの難曲も楽々弾いているように聞こえます。

Imre Kalman - Kodály Cello Solo Sonata op. 8, III Mvt

Gautier Capuçon plays Kodaly: Sonata for Solo Cello, Op. 8: I. Allegro maestoso ma appassionato

Kalman Imre Cello Johann Sebastian Bach: Chaconne part 1

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2021年11月 1日 (月)

ボバン・マルコヴィチとライコー・フェリックスの共演 他

ゼアミdeワールド283回目の放送、日曜夜10時にありました。3日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はボバン・マルコヴィチ・オーケスターとライコー・フェリックスの共演のみにしておきます。放送でかけたCrni Vozと、46分の共演映像も。生映像を一本目に入れておきます。

セルビアの音楽の5回目です。まずは前回予告していたボバン・マルコヴィチ・オーケスターのSrce Cigansko(ジプシーの心)から、セルビア北部ヴォイヴォディナ出身のハンガリー系超絶ヴァイオリニスト、ライコー・フェリックスと共演したCrni Voz (feat. Lajkó Félix)からおかけします。ライコー・フェリックスはハンガリー盤が多いので、てっきりハンガリー在住だと思っていて、今回初めてヴォイヴォディナのハンガリー系の人と知りました。ユーゴ側のハンガリー系音楽家と言えば、チェリストのイムレ・カールマンもそうで、弦楽器名人が目立つように思います。ブラスの強烈な音に負けないヴァイオリンを聞かせるのは、彼くらいかも知れません。タイトルのCrni Vozの意味は、「黒い電車」だと思います。2+2+2+3の9拍子ですから、チョチェクの一種ではと思います。

Boban Marković Orkestar feat. Lajkó Félix

<Boban Marković Orkestar / Srce Cigansko (feat. Lajkó Félix) ~Crni Voz 8分51秒>

ここ数回セルビアのロマ音楽を中心に聞いてきましたが、一般のセルビアの民族音楽の音源からも探してみました。旧ユーゴに入って何度か出てきたフランスのプラヤサウンドの「Chants & Danses De Yougoslavie (Yugoslavian Songs & Dances)」から、アンサンブル・ラキアの演奏で2曲続けます。ユーゴスラヴィアが一つの国だった頃の音源で、Ljiljanino KoloとSestorkaの2曲です。アコーディオンと裏打ちリズムを刻むギターによるコロは典型的なユーゴの旋律を奏でていますが、ユダヤの速いホラにもそっくりです。Sestorkaもテンポは速いですが、ヴァイオリンと笛のメロディはバルカンど真ん中のイメージです。

<Ensemble "Rakija" / Ljiljanino Kolo (Servia) 2分24秒>
<Ensemble "Rakija" / Sestorka (Servia) 1分53秒>

次の「ブランコ・クルスマノヴィッチ・グループ/セルビア&モンテネグロの音楽」と言うイギリスARC盤は、この二つの国が一つだった2005年に出たので、一緒に入っています。現物が手元に残ってないので、どの曲がセルビアとモンテネグロのどちらになるのか不明ですが、一曲目は一番華やかですし、おそらくセルビアだろうと思って取り上げました。1950年代からメンバーチェンジをしながら活動を続けている現地のトップグループだそうです。
タイトルのVlaske igreは、セルビア語の翻訳にかけると、「ヴラフ人のゲームあるいは演奏」と出てきました。「演奏する」や「遊ぶ」はロシア語でもイグラーチなので、またもやそっくりです。吸血鬼伝説だけでなく諸々のセルビアとルーマニアの文化を繋ぐ民族として、ラテン系の少数民族ヴラフ人は捉えられているのではと思いますが、この音楽もどちらにも似ています。

<Branko Krsmanovic Group / Music of Serbia & Montenegro ~Vlaske igre 5分28秒>

では最後に先ほど名前が出たユーゴ側のハンガリー系音楽家、チェリストのイムレ・カールマンが演奏するハンガリーの大作曲家ゾルタン・コダーイの無伴奏チェロソナタを時間まで聞きながら今回はお別れです。ハンガリーの民族舞曲ヴェルブンコシュなどの様式を踏まえた30分を越える大曲ですので、おかけできるのは冒頭の一部です。ヨーヨー・マによる演奏で、第1楽章がサントリーローヤルのCM曲として使用されたので、聞き覚えのある方もいらっしゃるのではと思います。
10年以上前にイムレ・カールマンがチェロで弾くJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのパルティータ2番のシャコンヌのYouTubeをゼアミブログで特集したことがありますが、その記事を見た沖縄のイムレさんのお知り合いの方からこのハンガリー盤を頂きました。シャコンヌを元の調で弾く程の名手ですから、コダーイのこの難曲も楽々弾いているように聞こえます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Imre Kalman / Music for Solo Cello ~Kodaly / Solo Sonata for Cello 30分10秒>

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