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2021年12月

2021年12月29日 (水)

ゲオルゲ・ククとパウル・コンスタンティネスク

今回は月曜のブログで終えようかとも思いましたが、タイトルで検索すると大体の曲が見つかりましたので、スタジオで収録しながら改めて特に聞き入ったゲオルゲ・ククの2曲他を上げておきます。(以下放送原稿を再度)

次にルーマニア人作曲家の曲の中から、前回「ルーマニアのクリスマス・キャロル」にも出てきたゲオルゲ・ククとパウル・コンスタンティネスクの曲を3曲続けます。男声合唱によるゲオルゲ・ククの短い2曲はルーマニア語で歌われているようです。ルーマニア音楽らしい哀感が感じられる曲です。混声合唱で始まるコンスタンティネスクの曲はイースター・オラトリオからの抜粋で、歌詞はギリシア語のようですが、曲調はルーマニア風に聞こえます。
グループ名のコンタキオンについてですが、正教会と東方典礼カトリックの典礼で行われる賛美歌の一形態で、6世紀頃にビザンツ帝国で生まれています。前回アントン・パンの曲に正教会とカトリックらしき曲が混じっているのを不思議に思いましたが、ルーマニア人口の5.1%を占めるというカトリックは、ローマカトリックではなく、おそらく日本ではほとんど知られていない東方典礼カトリックだったのではと思います。

<19 Gheorghe Cucu / Aghios o Theos 1分40秒>

<20 Gheorghe Cucu / I zoi en tapho 44秒>

<21 Paul Constantinescu / Easter Oratorio: "Proskinumen sou ta pathi Khriste" 3分20秒>

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2021年12月27日 (月)

コンタキオン

ゼアミdeワールド291回目の放送、日曜夜10時にありました。29日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。動画は最後のAxionとキリエしか見つかってないので、今日はAxionのみです。

ルーマニアの5回目になります。今回の放送は流れるのが26日と29日と言うことで、年の瀬ですので、ルーマニア正教の清澄な音楽を取り上げたいと思います。ミハイル・ディアコネスク指揮KontakionのMysteries of Byzantine Chantと言う盤に入っているのは、クリスマスではなくイースターの曲も多いようです。イースターは大体3月から4月に来ることが多く、日本語では復活祭と言われます。
リリースは1996年でこのタイトルですので、大ヒットしたブルガリアン・ヴォイスに続けと言うメーカーの意図があったのかも知れません。持続低音ドローンなどにギリシア正教の系統らしい重厚感がありますが、ロマンス語による正教会の典礼と言うのはルーマニアだけで行われています。この盤に関しては曲名を見る限りでは、ギリシア語が多い様に見受けられます。
ギリシア正教の聖地アトス山の音源で聞いたシマンドラに似た木製の神聖な法具を打つ音から始まります。Toacaと言う楽器のようです。作曲者不詳の冒頭からの4曲を続けます。タイトルから推測すると、歌詞はおそらく全てギリシア語だと思います。

<1 Toaca and Bells 1分43秒>
<2 Doxa 1分38秒>
<3 Tis metanias 3分9秒>
<4 Devte idomen tin zoin 3分43秒>

グループ名のコンタキオンについてですが、正教会と東方典礼カトリックの典礼で行われる賛美歌の一形態で、6世紀頃にビザンツ帝国で生まれています。前回アントン・パンの曲に正教会とカトリックらしき曲が混じっているのを不思議に思いましたが、ルーマニア人口の5.1%を占めるというカトリックは、ローマカトリックではなく、おそらく日本ではほとんど知られていない東方典礼カトリックだったのではと思います。
次にルーマニア人作曲家の曲の中から、前回「ルーマニアのクリスマス・キャロル」にも出てきたゲオルゲ・ククとパウル・コンスタンティネスクの曲を3曲続けます。男声合唱によるゲオルゲ・ククの短い2曲はルーマニア語で歌われているようです。ルーマニア音楽らしい哀感が感じられる曲です。混声合唱で始まるコンスタンティネスクの曲はイースター・オラトリオからの抜粋で、歌詞はギリシア語のようですが、曲調はルーマニア風に聞こえます。

<19 Gheorghe Cucu / Aghios o Theos 1分40秒>
<20 Gheorghe Cucu / I zoi en tapho 44秒>
<21 Paul Constantinescu / Easter Oratorio: "Proskinumen sou ta pathi Khriste" 3分20秒>

ゲオルゲ・ポペスク・ブラネスティのキリエを次におかけします。クラシック音楽ではキリエ・エレイソン(主よ、憐れみたまえ)の文句でミサ曲などに登場し、お馴染みのギリシア語起源の祈祷文です。

<13 Gheorghe Popescu Branesti / Kyrie 1分37秒>

ルーマニア人作曲家かどうかは不明ですが、鮮烈な印象のあったMacarie IeromonahulのKyrie EkekraxaとNectarie VlahulのAxionの2曲を聞きながら今回はお別れです。どちらもビザンツ典礼の重厚感とルーマニア音楽のエキゾチックさがミックスされた名曲だと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。
年明け初の当番組の放送は、1月9日になります。
それでは皆様どうぞよいお年をお迎えください。

<5 Macarie Ieromonahul / Kyrie Ekekraxa 3分34秒>
<7 Nectarie Vlahul / Axion 5分34秒>

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2021年12月23日 (木)

Colinde de Craciun

Colinde de Craciunとは、ルーマニア語で「クリスマス・キャロル」の意味です。Craciunがクリスマス、Colindeがキャロルです。2021年バージョンの今日の映像は公開されたばかり。親しみやすいルーマニアの民族音楽に乗せて女性歌手が歌っています。2本目は女声合唱によるコリンダで、今回の放送でかけた数曲出てきます。演奏はCorul Național Madrigalとあるので、おそらく放送でかけたCDと同じ団体ではと思います。
昨日の件ですが、Adoration of the Magiと言う曲についてはよく分かりませんが、このテーマに惹かれるのは、マギ(東方の三博士)がゾロアスター教徒のペルシア人で、と言う事はグノーシス絡みでは?と言う点に、歴史のロマンを感じるのが一番の大きな理由です。この曲の作曲者はV.I.Popoviciとエレクトレコード盤にクレジットがあります。クリスマス音楽コリンダの一種になるCarol for Palm Sundayの方は、作曲者はゲオルゲ・ククで、この人の曲は来週も取り上げています。

Colinde Romanesti de craciun Anisa Colinde,colinde Alb

MADRIGAL - Colinde de Crăciun (1080p)

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2021年12月22日 (水)

Romanian Christmas Carols

今日は放送でかけた曲を続けてアップしておきます。個人的に気になったのは、Adoration of the Magiと「クリスマス音楽コリンダの一種になるようで、曲名はCarol for Palm Sunday」です。また明日探れたら探ってみます。年の瀬の来週はKontakionのMysteries of Byzantine Chantを取り上げますが、今週出てきたゲオルゲ・ククとパウル・コンスタンティネスクの他の曲が登場します。(以下放送原稿を再度)

個人的に注目の2曲を先にかけましたが、次にこの盤からクリスマスらしい最初の3曲を続けます。
Christ Was Born Today、Today, Christ Appeared to Us、Santa Clauss White Locks and Good Morning, Christmas Eveの3曲です。

<1 Christ Was Born Today 59秒>

<2 Today, Christ Appeared to Us 3分26秒>

<3 Santa Clauss White Locks and Good Morning, Christmas Eve 3分22秒>

何年か前のクリスマスにかけたのが、11曲目のHere Come the Carol Singersでした。同じく短調の美しい旋律が耳に残ったのが、18曲目のDown in Bethlehemです。24曲目はルーマニアやハンガリーのクリスマス音楽コリンダの一種になるようで、曲名はCarol for Palm Sundayです。29曲目は先ほどの「東方の三博士」関連の曲で、Adoration of the Magi(東方の三博士の礼拝)と言う曲です。終曲のThe Lord Be Praisedまでおかけします。

<11 Here Come the Carol Singers 55秒>

<18 Down in Bethlehem 2分40秒>

<24 Carol for Palm Sunday 2分45秒>

<29 Adoration of the Magi 1分40秒>

<32 The Lord Be Praised 1分25秒>

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2021年12月20日 (月)

東方の三博士 ルーマニアのクリスマス・キャロル

ゼアミdeワールド290回目の放送、日曜夜10時にありました。22日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。予測より時間が余りまして、最後のThe Lord Be Praisedは3回繰り返しました。これから3週間の年末年始は、ブログは飛びがちになるかも知れません。m(__)m スタジオが休みのことも多いため、年始初の当番組の放送は、9日になります。年末は29日がラストです。

ルーマニアの4回目になります。今回の放送は流れるのが19日と22日と言うことですので、ルーマニアのクリスマス音楽を取り上げたいと思います。数年前にも1曲かけましたが、ルーマニアElectrecordから出ている「ルーマニアのクリスマス・キャロル」と言う盤です。演奏はマリン・コンスタンティン指揮のマドリガル室内混声合唱団です。
2011年の統計ではルーマニア正教会が81%、プロテスタントが6.2%、カトリックが5.1%、その他となっていて、この盤に入っているのは、大多数のルーマニア正教会だけでなく、カトリックの音楽も含まれているようです。

19世紀ワラキアの作曲家アントン・パンの曲に「東方の三博士」と言う曲がありまして、ビザンツ音楽風の重厚な旋律と持続低音ドローンの入ったこの13曲目からおかけします。「東方の三博士」とは、新約聖書の『マタイによる福音書』2:1-13に出て来ますが、イエスの誕生の際にやってきて拝んだとされる東方の三賢者で、ゾロアスター教の神官との説もあります。Three Magiのマギとは、マジック(魔法)の語源でもあります。

<13 Romanian Christmas Carols ~The Three Magi 3分8秒>

先ほどの曲は正教会の音楽らしい面がありましたが、アントン・パンは一般にカトリックの宗教音楽で知られているようで、19曲目に入っている「カナン人の結婚式で」と言う曲はカトリック音楽のように聞こえます。

<19 At the Wedding of the Canaanite 2分>

個人的に注目の2曲を先にかけましたが、次にこの盤からクリスマスらしい最初の3曲を続けます。
Christ Was Born Today
Today, Christ Appeared to Us
Santa Clauss White Locks and Good Morning, Christmas Eve
の3曲です。

<1 Christ Was Born Today 59秒>
<2 Today, Christ Appeared to Us 3分26秒>
<3 Santa Clauss White Locks and Good Morning, Christmas Eve 3分22秒>

何年か前のクリスマスにかけたのが、11曲目のHere Come the Carol Singersでした。同じく短調の美しい旋律が耳に残ったのが、18曲目のDown in Bethlehemです。24曲目はルーマニアやハンガリーのクリスマス音楽コリンダの一種になるようで、曲名はCarol for Palm Sundayです。29曲目は先ほどの「東方の三博士」関連の曲で、Adoration of the Magi(東方の三博士の礼拝)と言う曲です。もし時間が余りましたら、終曲のThe Lord Be Praisedまでおかけします。これらを聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<11 Here Come the Carol Singers 55秒>
<18 Down in Bethlehem 2分40秒>
<24 Carol for Palm Sunday 2分45秒>
<29 Adoration of the Magi 1分40秒>
<32 The Lord Be Praised 1分25秒>

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2021年12月17日 (金)

カヴァルの踊り グノシェンヌ

放送でかけた後数曲の全部は触れられないので、グノシェンヌを思い出してしまう「カヴァルの踊り」と「森林警備隊のバラード」を入れておきます。リズムが違っても似て聞こえるのは、この独特な音階ゆえでしょう。(以下放送原稿を再度)

メロディラインの独特な4曲目のHora ca la cavalを次におかけします。縦笛カヴァルの奏法を模した踊りの曲です。陰鬱なような少しユーモラスなような独特な雰囲気ですが、エリック・サティのピアノ曲グノシェンヌを思い出させる曲です。サティは1889年のパリ万博で聞いたルーマニア音楽からインスピレーションを受けてグノシェンヌを書いたと言われています。

<4 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Hora ca la caval 2分1秒>

8曲目のBalada lui Costea Pacurarulは、LPでは「森林警備隊のバラード」と言う邦題が付いていました。ドイナのスタイルで25管の特大型のナイの性能が最も発揮された曲で、農民の間にあったバラードを取り上げてパンパイプ(ナイ)の曲にしていると解説にあります。

<8 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Balada lui Costea Pacurarul 3分22秒>

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2021年12月16日 (木)

イニマとアニマ 魂に聞く

イニマと聞いて、すぐさま思い出すのは、松山のルーマニア料理店「ろまにあ」で頂いたルーマニア料理の一品「イニマ・ドラキュラ(ドラキュラの心臓)」です。同時にイニマと言うのは、ラテン語ルーツのアニマ(魂)と同義ではと常々思っていましたが、ルーマニア語のグーグル翻訳ではイニマの訳は心臓のみで、魂は別にsufletと言う単語がありました。放送でかけたMult ma-ntreaba inimaの訳は「魂に聞く」になっていますので、魂の訳もあるのでしょう。この曲は原曲と思われる歌の映像もありました。2本目によるとTiberiu Brediceanu (1877-1968)が作った曲のようです。3本目は同じ曲名ですが節違いです。(以下放送原稿を再度)

ElectrecordのLP(国内発売はビクター)A面5曲目の「魂に聞く」と邦題が付いているMult ma-ntreaba inimaと言う曲が、うちのカフェの常連の方のお気に入りでしたので、次におかけします。小泉文夫さんの解説には以下のようにありました。「一部に激しい気分の部分を含むが、一体に平和な祈りの溢れた曲。拍子のない自由リズムで、ドイナの技巧に特有のポルタメントや、ザンフィルの名人芸によって活かされた曲。」

<5 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Mult ma-ntreaba inima 2分55秒>
Gheorghe Zamfir Mult Ma Ntreaba Inima Often My Heart Interrogates

Ruben Muresan "Mult ma-ntreaba inima"

Alexandra Bleaje - Mult ma-ntreaba inima (Official Video) NOU

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2021年12月15日 (水)

チョカリアとボチェッツ

ゲオルゲ・ザンフィルの70年代前半以前の映像があれば良いのですが、大体は「ロンリーシェパード」以降のイージーリスニングにも進出して以降のものがほとんどのようです。先日のホラ・スタッカートのようなモノクロ映像は稀なようです。今日のチョカリア(ひばり)は最近の映像でしょう。ボチェッツはエレクトレコード音源と同じかと思いましたが、アリオンから出た録音は細部が違っていて別テイクに聞こえます。(以下放送原稿を再度)

LPの頃にB面のラストに入っていたのが、余りにも有名な「ひばり」です。ルーマニア・ロマのパンフルート名人アンゲルシュ・ディニクが19世紀に作ったとされる曲で、彼の孫グリゴラシュ・ディニクもヴァイオリンの名人芸(ワン・ボウ・スタッカート)で有名なホラ・スタッカートを作っています。

<12 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Ciocarlia 2分51秒>
Gheorghe Zamfir - Ciocârlia -Tel Aviv.

特に注目の曲を先にご紹介したいと思いますが、B面の終わりの方に入っていたのが、セルビア東部ヴラフ人の葬儀の音楽とイメージが重なるBocet(ボチェッツ)と言う曲です。会葬者の慟哭の声まで生々しく描写した音楽です。

<11 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Bocet 3分9秒>
Bocet

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2021年12月13日 (月)

ゲオルゲ・ザンフィルのパンパイプ(Electrecord)

ゼアミdeワールド289回目の放送、日曜夜10時にありました。15日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。先日も上げた2本ですが、今日はオルテニアの踊り(ブルウ)のみです。

ルーマニアの3回目になります。何度かゼアミブログには書いたと思いますが、パンパイプの名人ゲオルゲ・ザンフィルのLPを1977年に聞いたことが、個人的にルーマニア音楽だけでなく民族音楽事始めだったので、ここでそのルーマニアElectrecord盤を入れておきたいと思います。フランス風に「ジョルジュ・ザンフィル」としてイージーリスニングに進出する前の録音です。LPのライナーノーツは、世界的な民族音楽学者だった故・小泉文夫氏が担当されています。タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのようにロマ(ジプシー)ではないようですが、ザンフィルも同じくラウタル(職業楽士)です。1970年に彼のタラフ(小さなバンド)を結成し、そのメンバーには当時の各楽器のトップソリストだったIon Drăgoi (violin), Ion Lăceanu (flutes), Dumitru Fărcaș (tarogato), Tony Iordache (cymbalum)などがいました。

1曲目がタラフ・ドゥ・ハイドゥークスがBrîu(ブルウ)と言うタイトルで入れていた曲と同じで、ルーマニア南部ワラキア西部のオルテニア地方の舞曲です。タラフのゲオルゲ・ファルカルは猛烈な速さで縦笛を吹いていました。タラフ・ドゥ・ハイドゥークス程は速く粗削りではないですが、東欧一と言われる速さを十分に実感できる演奏です。指で押さえて音程を変える縦笛よりも、一本ずつの管で音程を吹き分けるパンパイプの方が演奏は困難だろうと推測します。パンパイプはルーマニアではナイとも呼ばれます。

<1 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Braul oltenesc 2分24秒>
Gheorghe Zamfir - Briul Oltenesc.

前々回かけましたがタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのBrîu(ブルウ)も再度かけておきます。クラムドのHonourable Brigands, Magic Horsesに入っていました。ゲオルゲ・ファルカルの吹いている縦笛は、fluteとしか書かれていませんが、小さめのサイズから見て、おそらくセルビアのフルーラと同系統なのではと思います。ゲオルゲ・ファルカルは2016年に62歳の若さで亡くなっています。

<14 Taraf de Haïdouks / Honourable Brigands, Magic Horses & The Evil Eye ~Brîu 2分4秒>
TARAF DE HAIDOUKS Live at Union Chapel (Briu)

LPの頃にB面の1曲目だった「ムンテニアとケンロングの踊り」を次におかけします。ワラキア西部がオルテニアで、首都ブカレストも含む東部はムンテニア地方と言います。これは推測ですが、ルーマニアの中心であるムンテニアよりも先にオルテニアを出してきた所に、ルーマニア民族音楽での比重があるようにも思いました。それは日本の民謡で中央から離れた東北に素晴らしい曲が多いのと似ているのかも知れません。

<7 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Hora din Muntenia si Campulung, oras de munte 2分46秒>

特に注目の曲を先にご紹介したいと思いますが、B面の終わりの方に入っていたのが、セルビア東部ヴラフ人の葬儀の音楽とイメージが重なるBocet(ボチェッツ)と言う曲です。会葬者の慟哭の声まで生々しく描写した音楽です。

<11 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Bocet 3分9秒>

LPの頃にB面のラストに入っていたのが、余りにも有名な「ひばり」です。ルーマニア・ロマのパンフルート名人アンゲルシュ・ディニクが19世紀に作ったとされる曲で、彼の孫グリゴラシュ・ディニクもヴァイオリンの名人芸(ワン・ボウ・スタッカート)で有名なホラ・スタッカートを作っています。

<12 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Ciocarlia 2分51秒>

メロディラインの独特な4曲目のHora ca la cavalを次におかけします。縦笛カヴァルの奏法を模した踊りの曲です。陰鬱なような少しユーモラスなような独特な雰囲気ですが、エリック・サティのピアノ曲グノシェンヌを思い出させる曲です。サティは1889年のパリ万博で聞いたルーマニア音楽からインスピレーションを受けてグノシェンヌを書いたと言われています。

<4 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Hora ca la caval 2分1秒>

8曲目のBalada lui Costea Pacurarulは、LPでは「森林警備隊のバラード」と言う邦題が付いていました。ドイナのスタイルで25管の特大型のナイの性能が最も発揮された曲で、農民の間にあったバラードを取り上げてパンパイプ(ナイ)の曲にしていると解説にあります。

<8 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Balada lui Costea Pacurarul 3分22秒>

5曲目の「魂に聞く」と邦題が付いているMult ma-ntreaba inimaと言う曲が、うちのカフェの常連の方のお気に入りでしたので、次におかけします。小泉文夫さんの解説には以下のようにありました。「一部に激しい気分の部分を含むが、一体に平和な祈りの溢れた曲。拍子のない自由リズムで、ドイナの技巧に特有のポルタメントや、ザンフィルの名人芸によって活かされた曲。」
もし時間が余りましたら、最後に速い農民の踊り、コレギャスカまで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Mult ma-ntreaba inima 2分55秒>
<9 Gheorghe Zamfir / The Sound of the Pan-pipe ~Coragheasca 2分6秒>

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2021年12月10日 (金)

アルーマニアとサラカツァニ

ARMANAMEと言うタイトルが1本目に付いていたので、アルーマニアを連想させましたが、映像に写っているのはギリシア北部ピンドゥス山脈の少数民族サラカツァニの伝統衣装を纏った少女でした。サラカツァニは言語や遊牧の伝統から見て、ギリシア語に同化したヴラフ人の末裔と言う説もあったり、ルーマニア人とアルーマニア人の学者たちは、サラカツァニとアルーマニア人の共通の起源について解き明かそうと努めてきたそうですが、ヴラフ人 は通常ギリシア語とアルマーニ語の両方を話すのに対し、サラカツァニの人々の間ではギリシア語のみを話し、お互いをはっきり区別しているそうです。サラカツァニの話すギリシア語には、現代ギリシア語には残っていない古代ギリシア語の要素が多く含まれているのもあってでしょうか、ドーリア人など古代ギリシアの先住民の末裔ではないかと言う説も出ていたようです。
このように、遊牧と衣装の類似もあるのでしょうか、混同されることも多かったようですが、音楽も似ているとすれば、ますます区別が難しいように思いました。2本目はマケドニアのアルーマニア(ヴラフ)の歌で、これはまた沁みる歌です。

ARMANAME-Hei_hei_pi_munti

Vlach Song From Macedonia

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2021年12月 9日 (木)

Aromanian Vlach Music アルバニアのアルーマニア人

アルーマニアの綴りは様々で、arumãni, armãni, Aromâni , Makedonji-armãnji などから、中世の東ローマ帝国時代には「ヴラフ人」(Vlachs)と称していたため、英語でVallachians,Wallachians, Wlachs などの表記も見られます。YouTubでの検索もなかなか見分けが大変ですが、その中で出てきた民族衣装を着けた古いモノクロ写真のバックにかかっているのは、ほとんどが昨日のようなポップスのスタイルです。今の所一本だけですが、シャン・デュ・モンド盤に似た演奏がありました。最初のクラリネットが活躍する曲はギリシア北部エピルスの音楽に似ています。
最も人口が多いと考えられるギリシアではアルーマニア人は少数民族と見なされず、ギリシア人であるとされているため、正確な統計は分からないようです。アルーマニア人はギリシア独立戦争においても重要な役割を果たし、アルーマニア系のギリシア人としては初期の首相イオアニス・コレティス、バルカン戦争中の国防大臣のエヴァンジェロス・アヴァロフなどがいます。
2本目は「アルバニアのアルーマニア人」と言うルーマニアのドキュメンタリー番組です。同じラテン系民族ですから、同朋意識があるのでしょうか。上記のような古いモノクロ写真が豊富に出てきます。

Aromanian Vlach Music

Aromânii din Albania. O comunitate unită în Biserică (29 04 2017)

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2021年12月 8日 (水)

アルーマニアの歴史

放送でかけたかけたシャン・デュ・モンド盤だけでなく、アルーマニアの音源はYouTube上にはほとんど見当たりませんが、彼らのポップスらしき映像がありました。ポップスでもポリフォニーの時と声と歌唱スタイルが似ているように思います。その前にアルーマニアの歴史に付いて、簡潔に日本語でまとめられた一本がありましたので、こちらを1本目に入れておきます。ギリシアのサラカツァニとの関係について調べていましたが、店が忙しくなって中断しましたので、また明日か明後日に。

アルーマニア人

Stelu Enache - Di-una eta him armanji

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2021年12月 6日 (月)

アルーマニアのポリフォニー

ゼアミdeワールド288回目の放送、日曜夜10時にありました。8日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。シャン・デュ・モンドのクリーム色のジャケットのシリーズは名盤が多かったのですが、いずれも廃盤でYouTubeにもほとんど上がってないようです。おそらく唯一で、バグパイプ弾き語りだけありました。

ルーマニアの2回目は、仏Chant du mondeから出ていた「アルーマニアのポリフォニー」(Vocal Polyphony of the Arumanians)と言う盤です。ルーマニアの前に「ア」が付きます。90年代の内には廃盤になっていて現在は入手不可の盤です。この盤はルーマニア南東部ドブロジャ地方での録音ですが、アルーマニア人はギリシア、アルバニア、マケドニア、ブルガリアなど、バルカン半島南部各地に点々と居住しています。ローマ帝国の公用語だったラテン語由来のルーマニア語では周囲のスラヴ語からの借用語も多いのに対して、アルーマニア語は南に寄っていたためギリシア語起源の語彙が多いそうです。ローマ帝国内で話されていた口語ラテン語から分化したヴラフの言葉とルーマニア語は方言程度の差だと思いますが、アルーマニア語とルーマニア語の相互理解は、なかなか難しいようです。

ヴラフ人の定義ですが、広義に取ればルーマニア人やアルーマニア人も入れるようです。現代のルーマニア人を古代のダキアのルーマニア人と言う意味でダコ=ルーマニア人と呼び、その他にアルーマニア人、モルラク人(Morlachs)、メグレノ=ルーマニア人(Megleno-Romanians)、クロアチア西部イストリア半島のイストロ=ルーマニア人(Istro-Romanians)などが含まれ、ヴラフ人とは自民族の国としてルーマニアを持つルーマニア人を除いた人々を指すことが多い、とされています。

まずはアルーマニアのポリフォニーを3曲続けておかけしますが、最初の2曲がアルバニア系、最後の曲がギリシア系のようで、よく聞くと歌唱が違っています。アルバニア系では独特なポルタメントが目立ち、ギリシア系は旋律と持続低音ドローンの組み合わせがギリシア正教の歌唱に近いように思います。

<1 Song. Female Duo And Mixed Drone 2分29秒>
<2 Song. Male Duo And Drone 4分4秒>
<3 Song. Alternate Male Trio And Drone 5分14秒>

この仏Chant du mondeの「アルーマニアのポリフォニー」に入っているのは、二つの大戦の際の住民交換でアルバニアとギリシアからルーマニア東部に移住してきた人々による演奏ですので、ポリフォニーはアルバニアやギリシアの歌唱に似ています。「地中海のポリフォニー」のシリーズ名通り、コルシカやサルディニアと近い部分もあると思います。
楽器で入っているのは唯一バグパイプで、これはブルガリア風にも聞こえます。因みにポリフォニーが盛んなこの地域のアルーマニア人の間ではロマの音楽家も出る幕がないそうです。

バグパイプ演奏を2曲おかけしますが、最初の曲は弾き語りで歌っていて、2曲目はドイナ・スタイルのフリーリズムから始まる独奏です。

<6 Bagpipe Solo 3分18秒>
Hristu Budina - Bagpipe Solo With Sung Parts ( Vocal Polyphony Of The Arumanians )

<7 Bagpipe Solo 6分15秒>

では最後に3曲入っている結婚式の歌から、「花嫁の出発」の部分を聞きながら今回はお別れです。日本の木遣り歌のようなアンティフォーナルな合唱は、アルーマニアならではです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9 Wedding Song, for the departure of the bride 5分9秒>

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2021年12月 3日 (金)

Splet igara iz Srbije

3月から続いた旧ユーゴ諸国の音楽巡りは、泣いても笑っても今日で終わり。次週からルーマニアですが、おそらく番組20回はかけると思います。その後はハンガリー、これも20回は行くでしょう。と言うことは両国終えてチェコ、モラヴィア、スロヴァキアに入るのは、早くて8か月後です。ルーマニアとハンガリー関連のユダヤ音源をどこで入れるかもありますので、入れていった場合、1年後になるかも知れません。
セルビアのラストは、放送の最後にかけたSveti SavaのSplet Igara Iz Centralne I Zapadne Srbijeで、セルビアの中部と西部の音楽のようですが、この曲もルーマニア音楽に似て聞こえる部分があるように思いました。ワラキア西部のオルテニアは、すぐ近くですから似てくるのでしょうか。2本目は舞踊のライブ映像の中では、一番ARC盤に似た演奏に聞こえました。

Splet Igara Iz Centralne I Zapadne Srbije

Splet igara iz Srbije

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2021年12月 2日 (木)

オルテニア組曲とコマネチ カクリカの歌声

今日のゲオルゲ・ザンフィルの1本には、昨日のブルウとは別のルーマニア南部ワラキアのオルテニア地方の舞曲が色々出てきます。7分30秒頃から出てくる曲は、1977年頃ナディア・コマネチが床運動に使っていた曲です。当時TVから録音したカセットが残っているので、間違いありません(笑) 1976年のモントリオール五輪で10点満点を連発した時は別な曲で、これは20年以上経ってクレズマーのレパートリーに見つかりました。この辺りはタラフ・ドゥ・ハイドゥークスで聞いた記憶が余りありませんが、また探してみます。オルテニアはタラフを聞く前からワラキア音楽の中心のイメージがあります。

Suita Oltenesca

カクリカのライブ映像がありました。この曲も来日の際に何度か聞いた覚えがあります。ステージが懐かしいです。(以下放送原稿を再度)

セルビア東部のヴラフ人の葬儀の音源に、Padura, Sora Paduraと言うバラードがありまして、2回前にかけましたが、この曲は「森、姉妹の森」のような意味でした。埋葬後に故人の家で歌われるということでしたが、そっくりなタイトルの曲がタラフ・ドゥ・ハイドゥークスにもありまして、こちらはラヴソングと言う解説になっています。曲名はPadure Verde, Padureで、やはり「緑の森、森」のような意味です。タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの2000年頃の来日の際は、長老の一人だったカクリカがツィンバロム弾き語りでエモーショナルな歌声を聞かせています。彼は88年にオコラから出ていた「ワラキアのジプシー音楽」でニコラエ・ネアクシュやイオン・マノレと一緒に名を連ねています。3人とも故人になってしまいました。

Taraf de Haidouks Clejani Roata - Cacurică( "Pădure verde,pădure")

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2021年12月 1日 (水)

タラフのBrîu(ブルウ)=オルテニア地方の踊り

タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのゲオルゲ・ファルカルが縦笛で吹いていたBrîu(ブルウ)と言う曲は、ゲオルゲ・ザンフィルのパンパイプ演奏では「オルテニア地方の踊り」となっていました。ザンフィルの演奏をLPで聞いたのは1977年、ゲオルゲ・ファルカルの演奏をライブで見たのは確か2000年でした。ザンフィルのLPのオープニングを飾っていた快活なこの曲は強く印象に残っていて、まさか同じ曲がタラフのステージで飛び出すとは思ってなかったので、驚きました。ファルカルは2016年に62歳の若さで亡くなっています。もう聞けないかと思うと寂しい限りです。タラフのCDでは、クラムドのHonourable Brigands, Magic Horsesに入っていました。彼の吹いている縦笛は、fluteとしか書かれていませんが、おそらくセルビアのフルーラと同系統なのではと思います。
1本目がタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのBrîu(ブルウ)、2本目がゲオルゲ・ザンフィルの「オルテニア地方の踊り」、3本目は似た感じのセルビアの曲として番組でかけたFolk Dance Ensemble VilaのVisocko koloです。

TARAF DE HAIDOUKS Live at Union Chapel (Briu)

Gheorghe Zamfir - Briul Oltenesc.

Visocko kolo

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