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2022年1月

2022年1月31日 (月)

最長老イオン・マノレの歌とヴァイオリン

ゼアミdeワールド295回目の放送、日曜夜10時にありました。2日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。イオン・マノレの歌では、オコラ盤1曲目と並ぶくらい鮮烈なクラムドからの2枚目冒頭のSpune, Spune, Mos Batrîn...のみ今日は上げておきます。

ルーマニアの音楽の8回目になります。前回はオコラの「クレジャニ村のタラフ」から、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの長老だったニコラエ・ネアクシュの歌とヴァイオリンが入ったトラックをかけました。2000年の初来日当時からタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの代名詞のような人で、2001年のライブでは元気な姿を見れましたが、ライバルとも言われたイオン・マノレの後を追うように同じ2002年に78歳で亡くなっています。

今回はゼアミブログで予告しておりました通り、体調不良のため来日は叶わず2002年に82歳で亡くなった最長老のイオン・マノレ中心の演奏を、クラムド盤数枚中心に取り上げたいと思います。90年代の欧米では彼が出ているステージも多かったようですが、日本の聴衆は彼の姿を見ることなく終わってしまいました。高い張りのある声でヴァイオリンを弾き語っているのがイオン・マノレで、低く皺枯れた声で歌っているのがニコラエ・ネアクシュです。オコラの「クレジャニ村のタラフ」の1曲目は、イオン・マノレとツィンバロム弾き語りのカクリカの掛け合いが中心でした。

まずはクラムドからの1枚目、91年に出たMusique des Tziganes de Roumanieの6曲目、「クレジャニの愛の歌」の意味のDragoste De La Clejaniからどうぞ。

<6 Dragoste De La Clejani (Folk) 5分12秒>

9曲目のCîntec Batrînesc De Haïduk (Folk)ですが、ヴァイオリン弾き語りかどうか不明ですが、もしそうだとしたら、大変な超絶技巧だと思います。タイトルは「ハイドゥークのバラード」の意味です。ハイドゥークとは、弱きを助け強きをくじくバルカンの義賊のことです。

<9 Cîntec Batrînesc De Haïduk (Folk) 8分54秒>

94年に出たクラムドからの2枚目、Honourable Brigands, Magic Horses & The Evil Eye(名誉ある山賊=義賊、魔法の馬、邪眼)は、前にゲオルゲ・ファルカルのブルウをかけたように、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのメンバー別の演奏を楽しめる盤ですが、この盤もイオン・マノレの歌声で始まります。古い農民の歌のSpune, Spune, Mos Batrînですが、これも強烈なインパクトのある曲です。

<1 Spune, Spune, Mos Batrîn... 5分31秒>

4曲目のジプシーの踊り、Tiganeascaもイオン・マノレのヴァイオリンをフィーチャーしていますが、録音当時74歳とは思えない速弾きです。

<4 Tiganeasca 1分26秒>

では最後に再度オコラの「ワラキアのジプシー音楽 クレジャニ村のラウタリ」から、もう一曲のイオン・マノレ中心のCîntec Bãtrînesc: "Bogatul Si Sãracul"(古い歌:「金持ちと貧乏人」)を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 Cîntec Bãtrînesc: "Bogatul Si Sãracul" 11分31秒>

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2022年1月28日 (金)

I`ve been all over this world

ネアクシュ爺さんのお人柄が垣間見えるインタビューと演奏に始まり、彼の葬儀までコンパクトにまとまった映像です。(孫?2人の美しいこと!)葬儀のシーンでカリウらが演奏している曲が、水曜に初めて聞いてから耳に付いて離れません。2分30秒くらいから出てくる「小さなつぼみ」も忘れられない哀愁の名歌ですが、少し下の長老二人、パシャランとイリエ・ヨルガの持ち歌かと思ったら、ここではネアクシュ爺さんが歌っています。プロフィールを見ると、パシャランが2018年に、フラメンコ歌手と見間違えそうなイリエ・ヨルガ2012年に亡くなっていました。歌とツィンバロムのカクリカも2007年に亡くなっています。味のある爺ちゃん達は、皆いなくなってしまいました。「千の風になって」を思い出すような最後のカリウの言葉、沁みました。今日のタイトルです。余談ですが、カリウとパシャランには2004年のライヴの際にサインをもらいました。パシャランの名前はその時は知らなくて、最長老イオン・マノレと間違えていました。

Nicolai‏ 1

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2022年1月27日 (木)

タラフ・ドゥ・カリウ

昨日のニコラエ・ネアクシュ翁の葬儀の映像は、これまでYouTubeを沢山見てきて一番の衝撃映像だったかも知れません。ニコラエの主要な弟子がカリウですが、彼は言うまでもなくタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのトップ・ヴァイオリニストで、2000年の来日の頃はコスティカと並んでツートップと言う印象を持ちました。コスティカは弾き語りもよくやっていましたが、カリウはヴァイオリンのみを追究するタイプで、超絶技巧ではタラフの誰もかなわないと思います。
タラフは2015年の「恋人たち、博打打ちとパラシュート・スカート (Of Lovers, Gamblers and Parachute Skirts)」以降、新作がなく気になっていましたが、昨日の関連動画にタラフ・ドゥ・カリウと言うグループ名でアップされているのを発見しました。別働グループなのか、タラフが分裂したのか不明ですが、ニコラエ爺さんの得意技だった、糸弾きヴァイオリンから披露しています(笑) テクニックの切れ味は相変わらず凄いのですが、ニコラエ翁のような味わいが出てくるのは、まだまだ先かなと思います。しかし、タラフも結成から30年経ち、メンバーも年取ったなと思いました。

Taraf de Caliu - Balada Conducătorului & Cântecul ciobanului

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2022年1月26日 (水)

Inmormantarea marelui violonist Neacsu Nicolae ( Culai ) Taraf de Haidouks

一昨日上げたチャウシェスクの圧政時代の苦しみを振り返るバラードは、映画「ラッチョ・ドローム」に確かに出てきましたが、ラストシーンではなく、真ん中辺りでした。すぐ後にカリウが家でヴァイオリンを弾き出すシーンが入っていました。ニコラエ・ネアクシュ爺さんのこの曲の弾き語りは、他のドキュメンタリーで見たのかも知れません。知人に最近聞かせたら、コンマ一秒の揺らぎがあって、圧倒的に素晴らしいとのコメントでした。私も本当にそう思います。皺枯れ声のバラードの味わい深さは言うまでもなく、ゆったりの部分でのヴァイオリンの左手の細かい装飾は、カリウやコスティカも真似できないのでは。タイミングもジャストではなく、少しためがあるとでも言えましょうか。それらは、長年のラウタリ生活の末に付いた苔のような、渋みと深みを感じます。どちらも若い世代に引き継がれることはないのではと思うと寂しい限りで、2000年と2001年に彼の生演奏を2回見れたことは大きな宝です。
そして何と2本目は、2002年に亡くなったニコラエ・ネアクシュ爺さんの葬儀と追悼演奏でした。この映像の存在を今日まで知らず。大先輩のために涙をこらえてヴァイオリンを弾くカリウや、歳の近いカクリカの嘆き歌を聞き、涙腺崩壊の今日です。

taraf_de_haidouks

Inmormantarea marelui violonist Neacsu Nicolae ( Culai ) Taraf de Haidouks

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2022年1月24日 (月)

ニコラエ・ネアクシュの歌とヴァイオリン

ゼアミdeワールド294回目の放送、日曜夜10時にありました。26日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。やはりオコラ盤に入っていたニコラエ・ネアクシュの音源はYouTubeには見当たらないので、代わりに映画「ラッチョ・ドローム」の有名なラスト・シーンを入れておきました。

Latcho Drom - Balada Conducatorolui

ルーマニアの音楽の7回目になります。前回ワラキアのジプシー音楽のグループ、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスが結成されるきっかけになった仏Ocoraの「ワラキアのジプシー音楽 クレジャニ村のラウタリ」から3曲かけましたが、肝心なニコラエ・ネアクシュの歌が出てくる前で終わってしまいました。彼の演奏を中心に聞ける曲が2曲ありますので、今回は続けておかけしたいと思います。

このオコラ盤は1988年リリースで、私は六本木ウェイブのクラシックコーナーにいた1989年に社販で購入しました。この盤は2000年にタラフ・ドゥ・ハイドゥークスが初来日した頃には、既に廃盤で入手困難になっていたように記憶しています。当時だったらプレミアがついていたかも知れません(笑) ストリーミングやYouTubeにもほとんど音源が見当たりませんので、なかなか現在は聞けない貴重音源になっているようです。
この盤が何故クラシックの売り場にあったかと言いますと、オーディオ評論家の長岡鉄男氏の本でクラシックと併せてオコラの数枚が紹介されたためでしたが、クリアな録音で当時話題になったのは、まだホーミーなどの倍音唱法がほとんど知られてなかった頃に出たDavid HykesのHarmonic Choirとか、Tran Van Kheの「ヴェトナムの即興」などでした。一緒に同じオコラの「ワラキアのジプシー音楽 クレジャニ村のラウタリ」も入っていて、それ以前からルーマニア音楽好きだった私は迷わず手に入れました。私のこの番組でいつもオープニングにかけているアブドルワハブ・シャヒーディーとファラマルズ・パイヴァールなどのペルシア音楽もオコラから出ていて、この録音はLPの頃からありましたが、民族音楽の名門レーベルであるオコラから80年代にリリースされたCDの第1号でした。

では、前回尻切れになったニコラエ・ネアクシュのヴァイオリンと歌が中心の2曲目のCîntec: "Lelitã Circuimãreasã"(歌:宿屋の主人の妻)からおかけします。名物の糸弾きヴァイオリンのドイナに始まり、あの味わい深い皺がれ声の歌声が出てきます。ドイナ、クンテク(歌)、ホラが前半、後半はダンス曲のホラとスルバですが、間に「義賊のドイナ」の歌が挟まれています。

演奏者はヴァイオリンと歌のニコラエ・ネアクシュ、イオン・マノレ、ツィンバロムのドゥミトル・カクリカ・バイク、ペトレ・マノレの長老格の4人中心に、アコーディオンのサンドゥ・マリン、コントラバスのイオン・ファルカルの6人です。イオン・ファルカルは録音当時29歳で、Rînd De Horeでは笛を吹いていたので、日本では縦笛奏者としてお馴染みのゲオルゲ・ファルカルかも知れません。

<2 Cîntec: "Lelitã Circuimãreasã" 11分>

ニコラエ・ネアクシュが中心の曲は、もう一曲、CDのラストを飾るCîntec Bãtrînesc: "Sarpel"があります。先ほどの曲が11分、5曲目のこの曲は18分余りありますので、放送時間に全ては入りませんが、時間まで聞きながら今回はお別れです。Cîntec Bãtrînescとはバラードの意味で、Sarpelは蛇だそうです。後半はダンス曲のホラとブルウになります。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Cîntec Bãtrînesc: "Sarpel" 18分18秒>

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2022年1月21日 (金)

90年代のタラフ カリウのカプリース24番

ニコラエ・ネアクシュ爺さんがまだ元気にヴァイオリンを弾いている1本目は、メンバーの面々から見ても、おそらく90年代末でしょう。2000年の初来日を思い出させるホットな名演だと思います。この曲はやったかどうか覚えていませんが、途中のカリウのヴァイオリンとファルカルのフルートの妙技も切れ味最高です。2本目は、何とカリウがパガニーニのカプリース24番を弾いていますが、素晴らしい音色です。第1変奏で終わっているので、続きも聞いてみたいものです。全部で11変奏あります。
来週はニコラエ・ネアクシュ特集、その次は体調不良のため来日は叶わず2002年に亡くなった最長老のイオン・マノレにスポットを当てる予定です。90年代の欧米では彼が出ているステージも多かったようですが、日本の聴衆は彼の姿を見ることなく終わってしまいました。

Taraf De Haidouks- Tot taraful

Learn to play Paganini in 20 minutes

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2022年1月20日 (木)

ラッチョ・ドロームのルンド・デ・ホーレ

昨日は店がなかなか忙しい上に、30日の催しに向けてのチェロとピアノの合わせも店でやりまして、ブログを書く時間がなくなりました。今週の放送でかけた曲では、Rînd De Horeが豊富にYouTubeも出てきますが、オコラ盤と同じ内容ではなく、クラムドからの1枚目Musiques de Tziganes de Roumanieや、映画「ラッチョ・ドローム」以降の組曲構成の映像がほとんどのようです。オコラ盤の頃は最長老のイオン・マノレと長老ニコラエ・ネアクシュが中心だと思いますが、ラッチョ・ドロームの映像では、カリウがコンサートマスター的な役をしているのがよく分かります。しかし、久々に見てカリウの若さに驚きました(笑) 2本目はクラムドからの1枚目のRînd De Horeです。リンド・デ・ホレと言う表記も見かけたように思いますが、ルンド・デ・ホーレの方が元の音に近いと思います。(以下放送原稿を再度)

Taraf de Haidouks- Tony Gatlif - Latcho drom

3曲目のRînd De Horeは、舞踊組曲のような意味ですが、同じタイトルで彼らの数枚の盤に入っていて、それぞれ別の曲の組曲になっているようです。この演奏は1988年のルンド・デ・ホーレ(舞踊組曲)です。

<3 Rînd De Hore 6分21秒>
Taraf de Haïdouks - Rind de Hore

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2022年1月17日 (月)

タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの前身 クレジャニ村のラウタリ

ゼアミdeワールド293回目の放送、日曜夜10時にありました。19日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。1本目は抜粋音源がありました。この80年代の写真はオコラ盤に載っていたものです。他はまた後日探しますが、あるでしょうか?

ルーマニアの音楽に戻りまして、6回目になります。今回は2000年以来、何度も来日してお馴染みのワラキアのジプシー音楽のグループ、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスが結成されるきっかけになったオコラの「ワラキアのジプシー音楽 クレジャニ村のラウタリ」をご紹介したいと思います。
1988年リリースのこの盤を聞いたベルギーのステファン・カロ他数人が現地を訪れて「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス(「義賊のバンド」の意)の結成を持ち掛け、90年代になってベルギーのCrammed Discから数枚がリリースされました。90年代から欧米では徐々に人気を集め、2000年の初来日以降、日本でも大ブレークしたのはワールドミュージックリスナーの間では周知の事と思います。
このオコラ盤には極めて泥臭いルーマニアのジプシー音楽が記録されています。演奏者はヴァイオリンと歌のニコラエ・ネアクシュ、イオン・マノレ、ツィンバロムのドゥミトル・カクリカ・バイク、ペトレ・マノレの長老格の4人が中心で、ほとんどの長老はもう亡くなっています。初来日以来、華々しい技巧で驚かせてきた花形ヴァイオリン奏者カリウなど、中堅や若手はまだこの中には見えません。
まずは、1曲目のCîntec De Dragoste 愛の歌~オベデアンの牧草地、からおかけします。

<1 Cîntec De Dragoste: "Lunca Obedeanului" 14分55秒>
Taraful Haiducilor Lunca Obedeanului

3曲目のRînd De Horeは、舞踊組曲のような意味ですが、同じタイトルで彼らの数枚の盤に入っていて、それぞれ別の曲の組曲になっているようです。この演奏は1988年のルンド・デ・ホーレ(舞踊組曲)です。

<3 Rînd De Hore 6分21秒>

私は2005年のUターン前に、2000年の初来日以来2004年までに4回、ほぼ毎年タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのステージを見ましたが、2000年と2001年にはまだニコラエ・ネアクシュがご存命中で、名物の糸弾きヴァイオリンも披露していました。彼は2002年に78歳で亡くなり、あの味わい深い皺がれ声の歌声も聞けなくなってしまいました。彼のヴァイオリンと歌から始まる2曲目のCîntec: "Lelitã Circuimãreasã"を時間まで聞きながら今回はお別れです。この盤は5曲入りですが、4曲が10分以上ですので、放送でかけられるのは限られます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 Cîntec: "Lelitã Circuimãreasã" 11分>

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2022年1月14日 (金)

岡本文弥さんと岡本宮之助さん

90年代に岡本文弥さんのバックで三味線伴奏していたのは、奥さんの宮染さんと岡本宮之助さんでした。詳しく家系に付いては知らなかったのですが、今回調べて、三味線を弾いていた奥さんは五世・岡本宮染(平成17年に92歳で死去)、上調子の宮之助さんは三世・岡本宮之助(三世・岡本宮古太夫)で、彼は四世・岡本宮染の孫で、岡本文弥さん(平成8年に101歳で死去)は大叔父に当たることが分かりました。 あの男前の宮之助さんも還暦近いようですが、新内節岡本派の後継者として膨大な文弥さんの作品を継承されているそうです。いつか東京に聞きに行きたいものです。
動画の蘭蝶は、文弥さんの私家版カセットに入っていた古風蘭蝶です。通常はカットする部分を全て語っています。2本目は文弥さんの90年代の映像で宮染さんと宮之助さんも出てきますが、ここでは宮之助さんが三味線、宮染さんが上調子です。

『若木仇名草(蘭蝶)』より抜粋 ー 新内節・岡本宮之助「文・藝・会」

至芸の時 岡本文弥(2)

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2022年1月13日 (木)

新内流し

今回久々に新内のYouTubeを検索したら、色々出て来て驚きました。数年前はほとんどなかったのですが。時代劇でも有名な新内流しですが、吉原の遊女供養の新内浄瑠璃流しと、新内仲三郎さんと息子の剛士さんの演奏が、二挺三味線の演奏風景も分かって特に素晴らしく思いました。
吉原の遊女供養の方で上調子(枷と言うカポタストのようなものを付けて4度上げた三味線)を弾いている杉浦さんには、99年の邦ジャの和音のオープニングでお会いしたことがあります。胡弓の演奏家としても有名な方です。新内所縁の地として、吉原神社も行きましたが、遊女の投げ込み寺として有名な三ノ輪の浄閑寺にも、96年の4/29の荷風忌に行きました。「生まれては苦界 死しては浄閑寺」の川柳でよく知られる浄土宗の寺です。新吉原総霊塔だけでなく有名な筆塚も見てきましたが、永井荷風は新内は好まなかったようです。
2本目の新内仲三郎さんは人間国宝で、現在の新内三味線と新内語りの最高峰でしょう。息子の新内剛士さんと娘の新内仲優莉さんの新内流しを96年に江戸東京博物館で聞く機会がありまして、大変に魅了されました。あれから早25年、びっくりです。

吉原で遊女供養の新内浄瑠璃流し

六代目新内仲三郎/新内剛士

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2022年1月12日 (水)

ペルシアの歌と新内

「あと十分で死ぬと言う時に、何か二曲だけ音楽が聞けるとしたら、まず私が世界中で一番好きなイランの歌、その次に新内を聴きたい。」と言う故・小泉文夫氏のコメントで気になり続けていたのは、それぞれ具体的に誰かの歌唱のイメージがあったのではと言う点です。
イラン(ペルシア)なら、1978年の東京国立劇場でのファーテメ・パリサーが歌った艶美の極みのホマーユンか、晴朗なマーフールの歌唱が念頭にあったのかも知れません。ビクターJVCの「ペルシア絶唱」と言うCDのタイトルそのものの絶美の歌唱でした。両録音は、1980年に柘植元一氏のNHKFM「世界の民族音楽」で流れました。因みにゼアミブログでのHNと、ラヂバリでの私のパーソナリティ名「ほまーゆん」も、ここから取っています。パリサーでないとしたら、小泉さんの著書の中で触れられていたダシュティ旋法のデイラーマンかも知れません。揺蕩うような旋律が極めて美しい曲です。デイラーマンなら、おそらく往年の男性歌手バナーンの歌唱でしょう。
そして新内の方ですが、例の岡本文弥さんのテイチクの7枚シリーズ(2014年に再発されています)の故・江波戸昭先生の解説に「小泉さんが好きだった新内」についての一文がありましたので、更に気になるところです。このシリーズは文弥さん晩年の90代の録音でした。1996年に谷中のお宅まで私家版のカセットを頂きに伺ったことがありまして、奥様の宮染さんに応対して頂きました。奥の方に文弥さんもいらっしゃいましたが、96年は暑い夏で大変そうでした。カセットの録音はおそらく60、70年代くらいでしょうか。これら昔の録音は凛とした歌声で更に素晴らしいのですが、一般に市販されていないのが残念です。女流なら70、80年代頃に一番脂が乗っていただろう花園一声さんとか鶴賀須磨寿々さん辺り、小泉さんも生で聞く機会があったのではと思います。私も昔コロムビア盤を愛聴した女流新内語りのお二人です。花園一声さんは、昔「蘭蝶」のLPを手に入れましたが、これもCD化はされていません。
今日の動画は、富士松加賀太夫 (1856-1930) の歌う四谷の段で、文弥さんより更に上の世代の江戸時代末期生まれの名人の貴重な記録です。今の新内と、かなり節が違います。ペルシアの歌については、今日は動画は上げませんが、前にブログに色々書いていますので、宜しければカテゴリーから辿ってみて下さい。

Vintage Japanese Music-RANCHOU (imasara iumo) 蘭蝶(今更言うも過ぎし秋) 富士松加賀太夫

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2022年1月10日 (月)

新内節「蘭蝶」

ゼアミdeワールド292回目の放送、日曜夜10時にありました。12日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。YouTubeですが鶴千代師匠の70年代のビクター音源はありませんが、数年前の「縁でこ」がありました! 皆さんお元気そうで何よりです。

新年の一回目ですので、まずは新年のご挨拶からになります。あけましておめでとうございます。本年もお聞き頂けましたら嬉しい限りです。どうぞよろしくお願い致します。

ルーマニア音楽巡りの途中ですが、これまで新年には「春の海」を中心に純邦楽をかけてきました。今年は初回が9日ですが、ほぼ正月とお盆にしか日本の音楽を入れられてないので、今年も日本の音楽を取り上げておきます。世界中の音楽を回ってからでは30年後位になるかも知れませんので(笑) 
今年はお正月らしくない音楽ですが、自己紹介も兼ねて新内節の有名な曲「蘭蝶」をおかけします。まだ東京の方に住んでいた98年頃に新内に入門していた件は、6年前にこの番組が始まった頃に少しお話したことがあります。太夫の付いた名前も頂いて、三味線の上調子では何度も日本橋三越や宴席などでの出番がありました。その経緯などが分かる一文として、95年に某雑誌に書いた拙稿から抜粋して読み上げてみます。

 「あと十分で死ぬと言う時に、なにか二曲だけ音楽が聞けるとしたら、まず私が世界中で一番好きなイランの歌、その次に新内を聴きたい。」これはあの世界的な民族音楽学者、故・小泉文夫氏の言葉である。世界中の音楽を訪ね、聴きつくした小泉さんが語った言葉だけに重い。
 14年ほど前にテイチクから、故・岡本文弥さんの自作曲の素晴らしい7枚シリーズが出ていた。文弥さんの淡々とした語りで「情」の音曲が演じられる時、「粋(いき)」の極致を聞く思いであった。文弥さんが101歳で亡くなったのは96年。テイチク盤も廃盤になって久しく、「新内(しんない)」と言うジャンルを耳にする機会がすっかり減ったと思うのは筆者だけだろうか。
 新内はリズミカルな音楽ではない。これが現代人に今ひとつ受けない理由だろうか。「間」が伸びたり縮んだりする音楽と言う点では、ペルシアの声楽とも通じる部分がある。節回しも表の声と裏声を交錯させる非常にテクニカルな歌唱で、小泉さんも新内と義太夫は、専門的訓練を積まなければ面白さの片鱗も表せない難しい音楽だと語っていた。
 歌舞伎の伴奏音楽として発達した同じ江戸系浄瑠璃の常磐津、清元、河東などと違い、吉原を中心とした遊廓の座敷芸、あるいは吉原被りに着流し姿の二挺三味線の新内流しが時代劇でお馴染みの流しの音楽として伝承されてきた新内は、テーマとしては遊女の悲恋物語、心中物が多い。
小泉さんの言葉がずっと頭にあって、謡曲で邦楽に目覚めた後、ちょうど文弥さんが亡くなった1996年、筆者は新内に入門した。師匠は富士松鶴千代さんという女流名人で、ビクター邦楽名曲選に入っている「蘭蝶」のサワリの部分に完全にはまっての入門だった。多少でも興味を持たれた方は、論より証拠、一度耳にされてみてはいかがだろうか。色々音楽をかじった人こそ、日本人のDNAが騒ぐことは請け合いである。

特に有名な部分が「四谷で初めて逢うた時~」と始まる遊女・此糸から男芸者・蘭蝶へのクドキ「四谷の段」と、蘭蝶の女房・お宮から此糸へ切々と縁切りを頼む「縁でこそ」の2か所ですので、「縁でこそ」(通称・縁でこ)の部分まで続けておかけします。最初の「名にし負う 隅田に添いし流れの身~」の節から好きなもので、最初からおかけします。サワリのほとんどは富士松鶴千代さんが歌っていますが、語りの部分では富士松鶴千代さんが此糸、富士松小照さんがお宮の役です。

<新内名曲集  蘭蝶 若木の仇名草 最初~21分35秒>

では「縁でこそ」の続きを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<新内名曲集  蘭蝶 若木の仇名草 21分35秒~>

富士松鶴千代 の世界「蘭蝶」

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2022年1月 7日 (金)

沢井忠夫、沢井一恵、山本邦山の「春の海」

今日までは松の内ですので、もう一度「春の海」です。沢井忠夫、沢井一恵、山本邦山の演奏は初めて聞きました。これはLPだけだったのでしょうか。端正で瑞々しく大変美しい演奏です。ゴールドブレンドのCMにも出ていた沢井忠夫さん、亡くなられたのはもう25年も前になりました。こないだのようですが、1997年が25年前と言うこと自体、驚きです(笑) 沢井一恵さんは、前にいた会社でフォーラムに出て頂いたように思います。宮城道雄に師事されていたのは、今回初めて知りました。おそらく晩年でしょう。この盤の曲目は以下の通りです。名曲・六段もあります。八段も聞きものです。

決定版 琴名曲撰   沢井忠夫、沢井一恵

春の海 宮城道雄作曲 0:00
君が代変奏曲 沢井忠夫編曲 7:05
八段 八橋検校作曲 12:01
六段 八橋検校作曲 20:55
数え唄変奏曲 沢井忠夫編曲 27:50
箏と尺八の二重奏“壱越” 31:52
越天楽変奏曲 沢井忠夫 42:12
瀬音 宮城道雄作曲 49:24
春の曲 吉沢検校作曲 55:00
さくらさくら変奏曲 沢井忠夫編曲 1:02:45
みだれ 八橋検校作曲 1:08:43
千鳥の曲 吉沢検校作曲 1:17:32

琴   沢井忠夫・沢井一恵
尺八  山本邦山
十七弦 宮本幸子

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2022年1月 4日 (火)

宮城道雄の自作自演「春の海」

今年はゼアミdeワールドの初放送が9日ですので、ブログは12/29から書いてなくて、ゼアミHPのお正月モードへの更新もバタバタしていて忘れておりました。遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。Cafeトークトーク共々、今日4日からやっております。
民族音楽専門レーベルは次々閉じていたり、レーベル自体で品切れ再プレス予定無しが多かったり、取引状況が変わって取れなくなったり等で、めぼしい新譜は非常に少なくなっていますが、これはと言うアイテムがないか、常に目を光らせています。
毎年上げている動画ですが、宮城道雄の自作自演で「春の海」を今年も上げておきます。この曲は、やはりこの演奏が一番です。

春の海 宮城道雄自作自演
箏:宮城 道雄/尺八:吉田 晴風(琴古流)

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