パウル・スティンガのツィンバロム
ゼアミdeワールド298回目の放送、日曜夜10時にありました。23日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。YouTubeは全てありそうですが、今日はツィンバロムの技が光る8曲目だけにしておきます。サムネイルの画像は、再発時のジャケットでしょうか?
ルーマニアの音楽の11回目になります。今回はタラフ・ドゥ・ハイドゥークス以外の職業楽士ラウタルの音楽をご紹介したいと思います。今回かけるのは南フランス、エクス・アン・プロヴァンスのPierre Veranyから1987年に出たパウル・スティンガのツィンバロムを中心にしたグループの演奏です。私がこの盤(Paul Stinga and his Orchestra / Charms of the Rumanian Music)を手に入れたのは1990年だったと思います。1977年にゲオルゲ・ザンフィルのLPを聞いて以来のルーマニア伝統音楽で、その頃には既に出ていたタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの前身の「クレジャニのジプシー音楽」共々、楽しく聞いた一枚です。ピエール・ヴェラニーはクラシック中心のレーベルで、まだ活動は続いているようですが、この盤については現在のリストに見当たらないので、おそらく廃盤のようです。
タラフ・ドゥ・ハイドゥークスよりも打弦楽器ツィンバロムの比重が大きい演奏ですが、タラフのように南部のワラキアだけでなく、北東部のモルダヴィア地方や北西部のトランシルヴァニアと西部のバナート地方など、ルーマニア各地の音楽を演奏しています。編成はツィンバロム、クラリネット、ルーマニアとハンガリーの民族的なクラリネットのタラゴト、トランペット、サキソフォン、パンパイプ、ウード系統の弦楽器コブザ、ヴァイオリン、アコーディオン、コントラバスです。
まずは1曲目のムンテニアの南部セアカのスルバと、パウル・スティンガのツィンバロムの妙技を聞ける8曲目のHora Din Rasomirestiを続けておかけします。
<1 Sirba De La Seaca 2分5秒>
<8 Hora Din Rasomiresti 2分30秒>
ルーマニア東北部のモルダヴィア地方のメドレーが2曲入っていますので、4,5曲目を続けておかけします。ジプシーブラスのファンファーレ・チョカリアや体操選手のコマネチの故郷としても有名な地方ですが、ゆったりしたドイナに続いて出てくるグラニセスティのホラは、ユダヤのクレズマー音楽にそっくりに聞こえます。モルダヴィアやすぐ東のベッサラビアに元々ユダヤの楽士が多かったからでしょうか。その後はリテニのスルバなどが続きます。モルダヴィア組曲の2曲目は、おそらく高地で吹かれる笛のドイナとBatutaと言う早い部分から成っています。
<4 Suite De Moldavie I 10分36秒>
<5 Suite De Moldavie II 2分48秒>
6曲目は「ビストリツァのプルタタ、スルバ」となっています。ビストリツァと言えば、ルーマニア中北部あるいはトランシルヴァニア北部の町で、ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」に登場しますが、予想を裏切って明るい曲調です(笑) プルタタと言えば、東欧のトラッドも取り入れた日本のインディーズバンド名にありました。ルーマニアの伝統音楽あるいは舞曲の一種のようですが、ここから取っていたかと思いました。
<6 Purtata De La Bistrica/Sirba 2分37秒>
地方ごとの組曲にはワラキア東部ムンテニアとルーマニア西部のバナートもありますが、時間的に入りませんので、全曲かけられるトランシルヴァニアの組曲を次におかけします。言うまでもなくドラキュラ伝説で有名なルーマニア北西部の地方です。現在はルーマニア領ですが、第一次世界大戦後のトリアノン条約まではハンガリー領だったので、今でもハンガリー系住民が多い山がちな地方です。また何回か後で取り上げますが、ムジカーシュの「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」で聞けるジプシー音楽と似た部分があるように思います。この曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<11 Suite De Transylvanie 4分42秒>
※時間が僅かに余ったので、4曲目の後にかけられなかった5曲目の頭を最後にかけました。
<5 Suite De Moldavie II 2分48秒>
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