« イオン・ドラゴイのスルバ | トップページ | ベノネ・ダミアン »

2022年3月10日 (木)

ベスト・オブ・ルーマニアン・フォーク・ミュージック

ゼアミdeワールド300回目の本放送、水曜夜8時半にありました。13日22時と16日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日のYouTubeはホラ・スタッカートのみにしておきます。エレクトレコードの音源は今の所見当たらないので、比較的近いイメージの演奏を上げますが、今日のはほとんどクラシック寄りの演奏です。

ルーマニアの音楽の13回目になります。今回はルーマニアElectrecordから出ているコンピレーションの国内盤「ベスト・オブ・ルーマニアン・フォーク・ミュージック」からご紹介したいと思います。アオラから2006年に出たこの盤は、私がライナーノーツを担当しました。このレーベルの国内配給は終わって既に廃盤になっていますが、おそらく現地ではオリジナル・タイトルのRomanian Folk Dancesでまだ流通しているのではと思います。
では、1曲目から抜粋で、拙稿解説を入れながら進めたいと思います。

一曲目はブカレストのフィドラー、ディニク(1889-1949)が作曲し、往年のユダヤ系名ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツが編曲、超絶技巧ワンボウ・スタッカート(32個位の音を一弓で小刻みに飛ばす技法)を駆使して演奏したことですっかり有名になったホラ・スタッカートに始まる。これなどはクラシックからトラッドへの逆輸入例かも知れない。合奏なので、見る者の度肝を抜くワンボウ奏法ではなく、一音一音弓を返していると思われる。

<1 Rapsodia Romana Ensemble / Hora Staccato 1分54秒>
Grigoras Dinicu - Hora Staccato (Orchestra) Romania

 次にルーマニアといえばナンバーワンの有名曲、「ひばり(チョカリーア)」が続く。タラフたちも十八番にしているし、北部のマラムレシュでも演奏されるほど全土に広まっているようだ。鳥の鳴き声の模倣での即興の閃きが演奏の良し悪しを左右しそう。ルーマニアの大作曲家エネスコがルーマニア狂詩曲第1番の中で使ったことも人気に拍車をかけたようだ。タラフだけでなくザンフィル他ラウタールたちは、楽器は何であれ誰もが演奏する名曲中の名曲。

<2 Benone Damian / Ciocârlia 1分33秒>

10曲目「ロシアの一本足ダンス」はトランシルヴァニアのザラウのアンサンブル。共鳴胴の代わりにラッパが付いたStroh Violin (vioara cu goarna)をフィーチャー。ベースラインはハンガリー色濃厚。

<10 Ensemble from Zalau, Gheorghe Rada, Stroh violin / Pe Picior Din Roșia 1分28秒>

14曲目「三人の番兵」、32曲目「アルネル・デ・ブルウ」はイオン・アルベシュテアヌの楽団の演奏。フランスのBudaからソロ・アルバムがあった。ロマのみで構成された楽団で、歌の名人でもあるがフィドルの合奏にも実に味がある。

<14 Ion Albesteanu / Trei Păzește 2分18秒>
<32 Ion Albesteanu / Alunelul De Brâu 1分53秒>

19曲目「ツァラ・モツィロール」は、ルーマニアとハンガリーの民族クラリネットのタラゴトの名手ドゥミトル・ファルカシュのソロ。柔らかいビブラートが印象的な、一種の西カルパチア民族組曲。

<19 Dumitru Fărcaş / Suită Din Țara Moților 5分41秒>

20曲目は北部の町バイア・マーレのマラムレシュ・アンサンブル。ベースラインがハンガリー的になり、寒冷の地らしく忙しなく動く。

<20 Maramuresul Ensemble from Baia Mare / Moara 1分26秒>

23曲目「美しきもの」のソリストは名手ゲオルゲ・ザンフィル。この微妙に音程が下がる吹奏は、一度聞くと忘れられない不思議な味わい。トニ・イオルダッケと同じフロリアン・エコノム・オルケストラの伴奏。

<23 Gheorghe Zamfir / Mândrele 1分50秒>

28曲目の黒海沿岸ドブロジャ地方のカドゥネアスカは、このアルバムで唯一のオリエンタル・ナンバー。トルコ起源の変拍子の曲を演じるのは、コンスタンツァの楽団。
と書いていましたが、29曲目には先週かけたトニ・イオルダッケのジャムパラーレが入っていまして、この曲もオリエンタルと言えなくはない感じです。

<28 Cadâneasca Dreaptă Ca-N Dobrogea 2分16秒>

31曲目はラドゥ・シミオン楽団の演奏。マルチインストゥルメンタリスト、イオン・ラケアヌのバグパイプをソロに迎えて、オルテニアの伝統曲を演奏。ワラキアは通常オルテニアとムンテニアに分けて呼ばれることが多い。
と書いていました。原題はRustem Oltenescとありまして、これはタラフもやっていたルステムのオルテニア版に当たるのではと思われます。

もし時間が余りましたら、モルダヴィアの北の端、スチャーヴァのチプリアン・ポルムベスク・アンサンブルの演奏で、男性がブーツを踏み鳴らし踊る18曲目までおかけします。バラーダで有名な作曲家ポルンベスクの名を冠しているアンサンブルです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<31 Ion Laceanu / Rustem Oltenesc 1分53秒>

<18 Ciprian Porumbescu Ensemble from Suceava / Pădurețul De La Pârtești 1分4秒>

|

« イオン・ドラゴイのスルバ | トップページ | ベノネ・ダミアン »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« イオン・ドラゴイのスルバ | トップページ | ベノネ・ダミアン »