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2022年4月

2022年4月29日 (金)

ハンガリーのユダヤ人の民謡(Magyar zsidó népzene)

アニ・マアミンについては、ハンニバル盤のジャケット入りで出て来ました。インストで演じられるのが、ムジカーシュの場合は、かえって哀感を強めるように思います。2本目はジプシー(ロマ)の老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とのセッションのフル映像になるのでしょうか。マルタ・セバスチャンが歌うユダヤ教の安息日(シャバト)の祈りの独唱Szombateste Búcsúztatóで始まり、Áni Mááminが5分過ぎ、タイトル通りSzól a kakas márも26分過ぎから出て来ますし、Chasid lakodalmi táncokも23分前に出て来ます。カラー版映像はここから取られていたのでしょうか。とにかく全編素晴らしい映像の連続ですが、ロマの楽士がしばしば「紅茶」と呼ぶコニャック?の回し飲みは、兄弟の盃を交わしているかのようです(笑)(以下放送原稿を再度)

アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤでは最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

Szól a kakas már - Magyar zsidó népzene

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2022年4月28日 (木)

ドハーニ街シナゴーグのSzol a kakas mar

今週の番組で2曲目にかけた名曲Szol a kakas mar (Rooster is Crowing)については、2010年にZeAmiブログに書いていました。下の方にペーストしておきます。2010年の時点でも沢山動画がありましたが、最近調べたら、ブダペストのドハーニ街シナゴーグでのカントールの独唱もありまして、これは見たことのなかった映像です。初めて見る会堂内です。1989年の映像のようで、カントールの熱唱に聞き惚れ、辛い戦時中を思い出すのか、涙を流す老婦人を何人も見かけます。方々で書いているように、ドハーニ街シナゴーグのカントールと合唱のフンガロトン盤を1989年に聞いて民族音楽に舞い戻ったので、その点でも見過ごせない映像です。Szol a kakas marは、YouTubeで上位に上がっているように、2000年代に入ってからは、Palya Beaの歌唱でも有名になりました。

Sol o Kokosh

ハンガリアン・ジューの名曲Szol a kakas marは、まず何よりMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)の2曲目の、マルタ・セバスチャンの歌唱で有名になったと思います。その悲愴美は筆舌に尽くせないほど印象的で、きーんと冷えたトランシルヴァニアの空気感も運んでくるかのような、更には匂いも感じさせるような曲でした。これぞハンガリー系ユダヤの秘曲と唸らせるものがありました。90年頃来日を果たしたムジカーシュの演奏も非常に素晴らしいものでしたが、この盤の出る前だったようで、このアルバムからは聞いた記憶がありません。ハンニバル盤が出たのは93年と、もう大分経ってしまいましたので、そちらでは最近入り難くなっているのが残念です。ハンガリー現地盤(ムジカーシュ自身のレーベル)は生きていたと思います。
この曲名、和訳すれば「雄鶏が鳴いている」となりますが、そのメロディ・ラインで思い出すのは、ユダヤ宗教歌で最も名高いKol Nidreでしょうか。コル・ニドレ(ドイツ語風に読むとコル・ニドライ)は、典型的なユダヤ旋法の一つ、Ahavo Rabo(「大いなる愛」の意味)旋法の歌。エキゾチックな増二度音程が悲しみを最大限に醸し出しています。いずれもユダヤ民族の運命を歌ったような悲劇的な調子ですが、そんなSzol a kakas marがハンガリーのユダヤ人の間では最も人気があったようです。この透徹した悲しみの歌については、まだ分らないことが多いです。また何か分ったら書いてみたいと思います。そう言えば、往年のシャンソン歌手ダミアが歌った「暗い日曜日」の原曲は、ハンガリーの歌でした。この歌のムードに似たものがあるようにも思います。

更にソル・ア・カカス・マール
29日にアップしたソル・ア・カカス・マールは、チャールダッシュのラッサンの部分から生まれた曲なのでしょうか。その深い憂愁のメロディには、「極北のジューイッシュ・メロディ」の印象を勝手に持っていました。あのムジカーシュの盤以降、いつの間にかクレズマー・シーンでもメジャーになったのか、youtubeはまだまだ見つかります。何とマイケル・アルパートの弾き語りもありました。今日は幾つかまとめて上げておきます。ムジカーシュ&マルタ・セバスチャンとは異なる趣向を色々楽しめます。ルーマニアでドイナと結合したように、ハンガリーの農村ジプシー音楽のスタイルとの見事な融合例として、この曲は上げられるかも知れません。個人的には最も好きなジューイッシュ~ハンガリアン・メロディの一つです。

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2022年4月27日 (水)

Chasid lakodalmi táncok

Chasid lakodalmi táncokは、1本目のチオアタとのセッションが何より貴重ですが、2013年のライブもありました。ムジカーシュのリーダーのMihály Siposは、セッションの時で40代半ばくらいでしょうか、ライブの時は60代半ばだと思います。ムジカーシュは、90年頃の来日公演を聞きに行きましたが、ミハーイ氏を見ると、いつも大泉滉を思い出してしまいます(笑)(以下放送原稿を再度)

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
Muzsikas: Chasid Dances with Cioata

Muzsikás Együttes: Haszid lakodalmi táncok

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2022年4月25日 (月)

トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽

ゼアミdeワールド306回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。重要盤だと思いますが、2000年前後に執筆参加したディスクガイドでは、何故か漏れていたThe Lost Jewish Music of Transylvania。93年のリリース頃、六本木の店で随分売った記憶があります。今日は3本目までにしておきますが、このジャケットはハンニバル盤ではなく、ハンガリーからの再発盤です。

ルーマニアの音楽の18回目になります。今回は米Hannibalから1993年に出た「ムジカーシュ/トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」(Muzsikás / Maramoros - The Lost Jewish Music of Transylvania)を特集します。ハンガリー・トラッド界の雄、ムジカーシュの代表作の一つで、名歌手マルタ・セバスチャンが歌で参加して華を添えています。ホロコーストでユダヤ人楽士の全てが亡くなり、忘れ去られていたトランシルヴァニアのユダヤ人の音楽を、ハンガリーのユダヤ人音楽学者のZoltan Simonとムジカーシュが協力して再現した盤です。戦前にユダヤ人の結婚式で演奏していたジプシーの老フィドラーGheorghe Covaciが記憶していて、取材したムジカーシュによって現代に蘇った曲も収録されています。音楽の印象は、一般的なクレズマーではなく、ムジカーシュが普段演奏するハンガリーのヴィレッジ音楽とも少し違っていて、当時のハンガリーのユダヤ音楽を忠実に再現しているという評価が高い演奏です。基本編成は、リーダーのMihály Siposのヴァイオリンと、伴奏は3弦のヴィオラ奏者が二人、コントラバスが一人です。
タイトルに「トランシルヴァニア」とありますが、本題はマラマロシュと言いまして、ルーマニア北部のマラムレシュ地方のハンガリー語読みですので、トランシルヴァニアでも最北部になります。狭義ではマラムレシュはトランシルヴァニアに入れない場合もあります。

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
01 Chaszid lakodalmi táncok Khosid Wedding Dances

2曲目の物悲しく凄絶な程に美しい旋律のSzól A Kakas Márは、この盤の白眉でしょう。英訳ではThe Rooster is crowingですから、「雄鶏は鳴く」となるでしょうか。ハンガリー系ユダヤ人のみならず一般のハンガリー人の間でも有名な旋律で、ハンガリー語の歌詞ですがユダヤの歌らしくヘブライ語の行が挿入されています。言い伝えでは、ある羊飼いが歌っていた旋律をハシディズムの指導者ツァディク(義人)のReib Eizikがいたく気に入って覚えていた旋律だそうで、後には宗教や民族を分け隔てなく寛容に統治した17世紀のトランシルヴァニア公Gabor Bethlenのお気に入りの歌だったという記録もあるそうです。

<2 Szól A Kakas Már 3分7秒>

3曲目のMáramarosszigeti tánc(マラマロシュシゲティの踊り)は、ゾルタン・シモンの採譜で知られていて、ツィンバロム奏者のアルパド・トニをフィーチャーした、これもトランシルヴァニアとハシディックが入り混じった感じの曲です。Máramarosszigetiの地名は、マラマロシュとシゲティに分離できると思いますが、ヴァイオリニストのヨーゼフ・シゲティを思い出す曲名だと思ったら、この国境の町でシゲティは少年時代を過ごしたそうです。因みにハンガリー語のszigetiは「小島」の意味でした。

<3 Máramarosszigeti tánc 3分36秒>

次は1曲飛びまして、5曲目のアニ・マアミンです。アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤでは最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

7曲目はZoltan Simonがマルタ・セバスチャンに見せて歌うように勧めたユダヤ教の安息日(シャバト)の祈りの独唱で、シナゴーグでは男性が唱えるアハヴォ・ラボ旋法の曲を女性に歌わせているのがユニークです。

<7 Szombateste Búcsúztató 3分15秒>

8曲目はツィンバロム奏者のアルパド・トニが覚えていた曲で、トランシルヴァニアのSzaszregenのユダヤ・コミュニティで好まれていて、男女入り混じったジューイッシュ・ダンス・パーティーでは、いつもこの曲から始まるそうです。有名なイディッシュ民謡のBelzが元になっているようです。

<8 Szászrégeni szidó tánc 3分7秒>

では最後に年末の重要なユダヤ人の祭り、ハヌカーのための13曲目Chanukka gyertyagyújtásを時間まで聞きながら今回はお別れです。ヘブライ語ではHaneros Haleluとなっているこの曲は、ムジカーシュのメンバーがKlezmer Music; Early Yiddish Instrumental Musicと言う1910年のヒストリカル音源を聞いていて知ったそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Chanukka gyertyagyújtás 3分11秒>

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2022年4月22日 (金)

エネスコの「無伴奏ヴァイオリンのソナタとパルティータ」

エネスコの弾くJ.Sバッハの「無伴奏ヴァイオリンのソナタとパルティータ」は、LPでは数十万の値段が付いていたことがあるそうです。録音は有名な1948年のものと、1920年代にもあるそうですが、後者は残念ながら未聴。高値が付いていたのは前者でしょうか。今回の放送ではラストにかけて、残念ながら時間が足りずフェイドアウトしました。このような名曲をフェイドアウトはしたくなかったので、5月1日と4日の放送分では、シャコンヌと併せてノーカットでかけようと思います。今日は1949年の貴重なライブ録音がありましたので、そちらで上げておきます。(以下放送原稿を再度)

ジョルジュ・エネスコは、作曲家としてはルーマニアの伝統音楽を常に重視していましたが、演奏家としてはフリッツ・クライスラーやジャック・ティボーと共に20世紀前半の三大ヴァイオリニストの一人とされています。1920年代半ばからはヴァイオリン教師としても知られ、門下にユーディ・メニューイン、アルテュール・グリュミオー、クリスチャン・フェラス、イヴリー・ギトリスなど錚々たる名手がいます。
バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」については、ヴァイオリニストとしておそらく最も早い時期から注目し、実演・録音ともに語り継がれる名演を残しています。1948年頃の全曲録音の2枚組から、一番有名なパルティータ2番のシャコンヌは時間がかかりますので、番組の残り時間で出来るだけ長くかけられるソナタ1番のフーガを時間まで聞きながら今回はお別れです。80年代にアイダ・カヴァフィアンの生演奏で聞いてから、特に忘れられない曲の一つです。確かアンサンブル・タッシのメンバーとの来日公演でのアンコール演奏でした。

George Enescu plays live encore, rare 1949: Bach G Minor Fugue

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2022年4月21日 (木)

Irina Muresanuのヴァイオリン・ソロ入りルーマニア狂詩曲第1番

ジョルジュ・エネスコのルーマニア狂詩曲第1番に、ヴァイオリン・ソロと弦楽合奏に編曲された3本組の映像がありました。「ひばり」が出てくる部分は2本目の後半ですが、即興の部分をかなり長く取っていて実に面白い演奏です。しかも全て暗譜! 演奏しているルーマニアの女流ヴァイオリニストIrina Muresanuは、バッハのシャコンヌやパガニーニのカプリース24番などのオーソドックスなクラシックに混じって、エネスコのルーマニアの曲(Airs in Romanian Folk Style)や、インド音楽、ペルシア音楽、タンゴなどを弾いている盤がありました。実にユニークなプログラムですが、一人でそれらを演奏している例は、他にほとんど知りません。今日のルーマニア狂詩曲第1番の映像が2008年で、もう結構前です。今まで知らなかったのが残念です。このように、ヴァイオリンは世界中の音楽で使われている楽器で、ギターやピアノよりも広いと思います。日本にも昔は演歌師の音楽がありました。

Irina Muresanu plays Enescu Romanian Rhapsody No. 1 arranged for violin and strings PART 1

Irina Muresanu plays Enescu Romanian Rhapsody No. 1 arranged for violin and strings PART 2

Irina Muresanu plays Enescu Romanian Rhapsody No. 1 arranged for violin and strings PART 3

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2022年4月20日 (水)

モルダヴィア生まれのエネスコとチェリビダッケ

エネスコのルーマニア狂詩曲第1番は、今でもルーマニアのクラシックで一番有名な曲だと思います。第1番の後半で有名な「ひばり(チョカリア)」が登場することで知られていますが、意外にその事を書いてない解説を見かけます。1903年にエネスク自身の指揮により初演されていますが、1908年にはパリでカザルスの指揮により第1番と第2番が演奏されたそうです。
映像は無数にありますが、エネスコと同じモルダヴィア地方出身のセルジュ・チェリビダッケの名演がありましたので、こちらを2本目に上げておきます。郷土の名曲ですから、楽しんで指揮しているようです。1本目は貴重なエネスコの自作自演です。チェリビダッケと言えば、1980年にラジオで聞いたブラームスのハンガリー舞曲第1番の演奏が忘れられません。芳醇な旋律美と共に、東欧系の曲ではテンポを絶妙に操り、低音を強調して民族的な躍動感を出すのが非常に上手いと思います。
ルーマニア北東部のモルダヴィアと言えば、ファンファーレ・チョカリアを半分忘れていました。何回か先で必ず取り上げます。

RARE! ENESCU CONDUCTS ENESCU - ROMANIAN RHAPSODY No.1

George Enescu - Romanian Rhapsody N° 1 Op 11


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2022年4月18日 (月)

イヴァノヴィッチ エネスコ

ゼアミdeワールド305回目の放送、日曜夜10時にありました。20日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画は『ドナウ川のさざなみ』のみです。

今回はルーマニアの音楽の17回目になります。前回に続きましてルーマニアのクラシック作品をいくつかご紹介したいと思います。
まずはヨシフ・イヴァノヴィチが1880年に作曲したワルツ『ドナウ川のさざなみ』です。この曲は1889年に開催されたパリ万国博覧会で演奏され、その哀愁を帯びた旋律などから、東ヨーロッパの作曲家のワルツ作品としては世界的に有名になりました。エリック・サティも聞いていたのかも知れません。
音源は前々回にポルムベスクのバラーダをかけたルーマニアElectrecordのA romanian prom concertと言う盤で、演奏はEmil Simion指揮のCluj-Napoca Philharmonic Orchestraです。

<3 Iosif Ivanovici / The Waves of the Danube 9分48秒>
Iosif Ivanovici - Donauwellen Walzer (Waves of the Danube Waltz)

次に、やはり前々回に同じ盤からチプリアン・ポルムベスクのルーマニア狂詩曲の冒頭をかけましたが、同じタイトルの曲がルーマニア出身の大作曲家ジョルジュ・エネスコにありまして、ルーマニアのクラシックでは一番有名な曲ですので、ここでおかけしておきます。2曲ありますが、第1番では有名な「ひばり」が登場することで知られています。
音源は1989年のルーマニア革命の翌年にルーマニアElectrecordから出たRecord for Rumaniaと言う盤で、ルーマニア狂詩曲の2曲と、「自然の声」、「ルーマニアの詩」の4曲が入っています。演奏は「自然の声」のティミショアラ・フィルハーモニー管弦楽団以外は、ルーマニア放送管弦楽団です。

<1 George Enescu / Rumanian Rhapsody No.1 12分12秒>

ジョルジュ・エネスコは、作曲家としてはルーマニアの伝統音楽を常に重視していましたが、演奏家としてはフリッツ・クライスラーやジャック・ティボーと共に20世紀前半の三大ヴァイオリニストの一人とされています。1920年代半ばからはヴァイオリン教師としても知られ、門下にユーディ・メニューイン、アルテュール・グリュミオー、クリスチャン・フェラス、イヴリー・ギトリスなどがいます。
バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」については、ヴァイオリニストとしておそらく最も早い時期から注目し、実演・録音ともに語り継がれる名演を残しています。1948年頃の全曲録音の2枚組から、一番有名なパルティータ2番のシャコンヌは時間がかかりますので、番組の残り時間で出来るだけ長くかけられるソナタ1番のフーガを時間まで聞きながら今回はお別れです。80年代にアイダ・カヴァフィアンの生演奏で聞いてから、特に忘れられない曲の一つです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1-2 Violin Sonata No. 1 in G minor, BWV 1001: II. Fuga (Allegro) 5分5秒>

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2022年4月15日 (金)

ビスクラのアラブの旋律とトランシルヴァニアの音楽

バルトークの44のヴァイオリンの二重奏曲集で特に注目の曲は、後半に出てくるアラブの旋律と終曲のエルデーイ(「トランシルヴァニア」のハンガリー語名)の踊り、マラマロシュ(マラムレシュ)の踊り、ルテニアのコロメイカ辺りだと思います。アルジェリアのビスクラで採集された旋律の特徴は、エキゾチックでエネルギッシュな増2度音程のメロディと、打楽器を模した第2ヴァイオリンのリズムですが、増2度音程はエルデーイの踊りでも出てきます。その類似については、バルトーク自身が指摘していました。この音程間隔は東欧系ユダヤのアハヴォ・ラボ旋法にもありまして、そのルーツはと言えば、中東のペルシアやアラブに遡るのかも知れません。コロメイカとは、ウクライナ西部に住むグツウール人の踊りです。ウクライナ全域にまで共通するスタイルが広まっているとのバルトークの見解ですが、中部や東部の方まであったか、また機会があれば調べてみたいと思います。
上記4曲の動画は色々ありましたが、スロヴァキア出身の女流ヴァイオリニストMargareta Benkovaが多重演奏したものが、曲の特徴がよく分かって一番いいと思いました。彼女はシュロモ・ミンツやイダ・ヘンデルに教わったこともあるそうです!
私の番組では、ギリシアからバルカン半島を北上中で、ようやくルーマニアに辿り着いたところです。この後ヨーロッパ全域を回って、スペインから再び北アフリカのイスラム世界に入るのは、早くて2,3年後だと思います。長いと5年後でしょうか。アルジェリアのビスクラ辺りの音源をかけるのも、その際になります。

Bartók - ARABIAN SONG / Margaréta Benková (2020)

Bartók - TRANSYLVANIAN DANCE (Ardeliana) / Margaréta Benková (2020)

Béla Bartók (1881-1945) : Dancing Song No.32 (Tanzlied/Máramarosi Tánc), 44 Duos for 2 Violins, Sz.98

Bartók - RUTHENIAN KOLOMEJKA / Margaréta Benková (2020)

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2022年4月14日 (木)

バルトークの44のヴァイオリン二重奏

バルトークの44のヴァイオリン二重奏については、手元に部分的な楽譜がありまして、80年代から面白いと思ってたまに弾いたりもしていた8曲を選びました。ハンガリーHungarotonのミクロコスモスとのカップリング盤は、ポーランドの名女流ヴァイオリニストのワンダ・ウィウコミルスカと、ハンガリーのミハーイ・シュックスの演奏ですが、何曲かずつが一つのトラックになっているので、楽譜を片手に番組で流さない曲は飛ばして頭出しをしながらの、少し手間のかかる収録でした。ワンダ・ウィウコミルスカについては、ディーリアスのヴァイオリン・ソナタ3曲のコニサー・ソサエティの名盤が耳に付いて離れず、手にした3枚組でした。ブラームスのソナタ3曲やバッハのシャコンヌなどの入った盤も、その勢いで手に入れました。
特に華やかなのはフィナーレを飾っている"Erdélyi" Tánc(トランシルヴァニアの踊り)で、この曲は単独でも色々出てきましたが、今日は演奏者は不明ですが、全44曲の楽譜が画面に出てくる映像を上げておきます。番組でかけたのは、以下の8曲です。映像の下には、解説にある曲名と時間を貼っておきます。

<9-2 38 Forgatós(ルーマニアの旋舞)>
<9-4 40 Oláh Tánc(ワラキアの踊り)>
<10-2 42 Arab Dal(アラビアの踊り)>
<10-4 44 "Erdélyi" Tánc(トランシルヴァニアの踊り)>
<8-1 32 Máramarosi Tánc(マラマロシュの踊り)>
<8-4 35 Rutén Kolomejka(ルテニアのコロメイカ)>
<8-5 36 Szól a Duda(バグパイプ)A 36 Sz. Változata(36番の変形)>
<7-1 26 "Ugyan Édes Komámasszony..."(からかいの歌)>

Béla Bartók - 44 Duos for Two Violins, Sz. 98

Book I:
Párosíto (Teasing Song) - 0:00
Kalamajkó (Maypole Dance) - 0:52
Menuetto - 1:31
Szentivánéji (Midsummer Night Song) - 2:20
Tót Nóta (Slovakian Song) [1] - 3:05
Magyar Nóta (Hungarian Song) [1] - 4:08
Oláh Nóta (Wallachian Song) - 4:50
Tót Nóta (Slovakian Song) [2] - 5:22
Játék (Play Song) - 6:17
Rutén Nóta (Ruthenian Song) - 6:50
Gyermekrengetéskor (Cradle Song) - 8:01
Szénagyüjtéskor (Hay Song) - 8:58
Lakodalmas (Wedding Song) - 9:48
Párnás Tánc (Pillow Dance) - 11:14
Book II:
Katonanóta (Soldiers' Song) - 11:51
Burleszk (Burlesque) - 12:44
Menetelő Nóta (Hungarian March) [1] - 13:35
Menetelő Nóta (Hungarian March) [2] - 14:16
Mese (Fairy Tale) - 15:02
Dal (A Rhythm Song) - 16:04
Újévköszöntő (New Year's Greeting) [1] - 17:23
Szunyogtánc (Mosquito Dance) - 19:16
Mennyasszonybúcsútató (Bride's Farewell) - 19:52
Tréfás Nóta (Comic Song) - 20:56
Magyar Nóta (Hungarian Song) [2] - 21:32
Book III:
"Ugyan Édes Komámasszony..." (Teasing Song) - 22:15
Sánta-Tánc (Limping Dance) - 22:41
Bánkódás (Sorrow) - 23:07
Újévköszöntő (New Year's Greeting) [2] - 25:27
Újévköszöntő (New Year's Greeting) [3] - 26:00
Újévköszöntő (New Year's Greeting) [1] - 26:48
Máramarosi Tánc (Dance from Máramaros) - 28:41
Ara táskor (Harvest Song) - 29:21
Számláló Nóta (Enumerating Song) - 30:42
Rutén Kolomejka (Ruthenian Kolomejka) - 31:38
Szól a Duda (Bagpipes) - 32:40
A 36 Sz. Változata (Variant of No. 36) - 33:40
Book IV:
Preludium és Kanon (Prelude and Canon) - 34:42
Forgatós (Romanian Whirling Dance) - 37:37
Szerb Tánc (Serbian Dance) - 38:15
Oláh Tánc (Wallachian Dance) - 39:02
Scherzo - 39:47
Arab Dal (Arabian Dance) - 40:34
Pizzicato - 41:52
"Erdélyi" Tánc (Transylvanian Dance) - 42:53

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2022年4月13日 (水)

Rusanda Panfiliとタラフ・ドゥ・カリウで ルーマニア民族舞曲

バルトークのルーマニア民族舞曲の編曲版は、ヴァイオリンとピアノの版が一番知られているでしょう。大分前にツィゴイネルワイゼンと一緒に上げたかも知れませんが、モルドヴァの首都キシニョフ出身の女流ヴァイオリニストRusanda Panfiliの演奏は、最近見た中では、このスタイルでの演奏のベストかも知れません。2本目はタラフ・ドゥ・カリウの演奏を上げておきました。カリウがこの曲をこれでもかと言う程料理し尽くして、たっぷり楽しませてくれます(笑) タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの「仮面舞踏会」での演奏は何度も上げていますので、今回は外します。この曲のヴァイオリン譜は80年代から持っていますが、まだピアノと合わす機会はなく、弦楽四重奏版の方も少し練習中です。フラジオなど特殊奏法もあって、ヴァイオリン弾きにとっては難曲です。

Bela Bartok - 6 Romanian Dances for Violin and Piano

Taraf de Caliu - Romanian Folk Dances (Bartok)

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2022年4月11日 (月)

ルーマニア民族舞曲と44のヴァイオリンの二重奏曲集から

ゼアミdeワールド304回目の放送、日曜夜10時にありました。13日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はミシェル・ベロフのみです。

今回はルーマニアの音楽の16回目になります。297回目の放送で予告しておりましたが、ハンガリーの大作曲家バルトークが1915年に作曲したルーマニア民族舞曲から始めます。1977年に初めてこの曲をフランスのピアニスト、ミシェル・ベロフのLPで聞いたことがルーマニア音楽や民族音楽全般に目が向くきっかけになったので、個人的に非常に思い入れの深い曲です。「ルーマニア」と付いていますが、作曲当時にはハンガリー王国の一部だったトランシルヴァニア各地の民謡を題材にしていて、今でもハンガリー系住民も多い地方ですから、ハンガリーの影響が見られる曲が大半になっています。冒頭から親しみ易い旋律で、昔からバルトーク作品の中で特によく知られている曲です。ミシェル・ベロフ(Michel Béroff)のピアノでまずおかけします。

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: I. Joc cu bata (Allegro moderato) 1分8秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: II. Braul (Allegro) 27秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: III. Pê-loc (Andante) 59秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: IV. Buciumeana (Moderato) 45秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: V. Poarga romaneasca (Allegro) 29秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: VI. Maruntel (Allegro) 54秒>

この曲は6曲からなっていますが、その素材は1910年と1912年にバルトーク自身が現地で農民と共に暮らしながら採集した民謡の録音が元になっていて、1912~14年にかけては採集した旋律の分析作業に没頭、そして何と3500もの録音から選び抜かれたのが、この6曲です。第一次世界大戦が勃発して後の1915年にはトランシルヴァニアを含むルーマニアも戦場になり、再び採集旅行に出ることは不可能になりましたが、その1915年にこの曲が生まれています。

1曲目の棒踊りは二人のジプシー・フィドラーの演奏が元になっています。2曲目は帯踊りで、これはタラフ・ドゥ・ハイドゥークスなどの演奏で度々登場しているブルウのトランシルヴァニア版です。3曲目の「足踏み踊り」は、弦楽器ではフラジオレットで演奏され、増2度音程が妖しくメランコリックに響きます。4曲目のアルペンホルンあるいは角笛の踊りですが、バルトークが採集した音源はジプシーのヴァイオリン独奏でした。この後2曲はエキゾチックな前半と打って変わって快活な曲に変わります。5曲目はルーマニア風ポルカと言うことで、タイトルからはチェコの影響を感じさせるリズム的に面白い楽章で、オリジナルは村の青年によるヴァイオリン演奏です。6曲目の「速い踊り」は、トランシルヴァニアの別々の場所で採譜された、相互に関係のない2つの舞曲のメドレーと言うことで、華々しくこの曲を締めています。

では、297回目の放送でかけたタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの2007年の「仮面舞踏会」に入っているルーマニア民族舞曲を再度おかけします。この名曲をタラフがどう料理しているかが聞きものですが、生粋のジプシーが現代のジプシー音楽にアレンジし直した陽気な音楽に様変わりしています。私はこの演奏を大変楽しく聞きました。

<7 Maškaradă ~Romanian Folk Dances 7分34秒>

この後は、バルトークが1931年に作曲したヴァイオリンのための二重奏曲集からおかけします。演奏は、ポーランドの名女流ヴァイオリニストのワンダ・ウィウコミルスカと、ハンガリーのミハーイ・シュックスです。ハンガリーのHungarotonからの3枚組で、バルトークのピアノ曲集ミクロコスモスとのカップリングです。どちらの曲集もピアノやヴァイオリンの初学者向きの曲から順々に難度が増し、終わりの方は聞きごたえ十分な作品になっています。
ルーマニア各地の曲を中心に選びましたが、バルトーク作品の中でも特に多くの国で採集された曲が網羅されています。一番の変わり種は、42曲目の「アラビアの踊り」で、アルジェリアのビスクラで採集された旋律が使われています。1分程の曲が7曲続きますが、ルーマニアの旋舞、ワラキアの踊り、アラビアの踊り、トランシルヴァニアの踊り、マラマロシュの踊り、ルテニアのコロメイカ、バグパイプの順です。トランシルヴァニアはハンガリー語でエルデーイとも呼ばれますので、「エルデーイの踊り」となっています。このラスト44曲目は、ジプシーのヴァイオリン弾きの旋律が使われています。マラマロシュとは、ルーマニア最北部のマラムレシュのことです。ルテニアとはルーシから来ていて、現在のウクライナ西部です。

<9-2 38 Forgatós(ルーマニアの旋舞)>
<9-4 40 Oláh Tánc(ワラキアの踊り)>
<10-2 42 Arab Dal(アラビアの踊り)>
<10-4 44 "Erdélyi" Tánc(トランシルヴァニアの踊り)>
<8-1 32 Máramarosi Tánc(マラマロシュの踊り)>
<8-4 35 Rutén Kolomejka(ルテニアのコロメイカ)>
<8-5 36 Szól a Duda(バグパイプ)A 36 Sz. Változata(36番の変形)>

難度の高い第4巻から始まって、マラマロシュから後は第3巻までの7曲でした。では最後に第2巻にさかのぼりまして、確かバルトーク作品の何かに使わた26曲目の「からかいの歌」から、ルーマニアのクリスマスの旋律コリンダ(あるいは「新年のあいさつ」)まで、もし入れば続けて聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7-1 26 "Ugyan Édes Komámasszony..."(からかいの歌)>
<7-2 27 Sánta-Tánc(びっこひきの踊り)>
<7-3 28 Bánkódás(悲しみ)>
<7-4 29 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >
<7-5 30 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >
<7-6 31 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >

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2022年4月 8日 (金)

天満さんのバラーダ

そして日本でバラーダを一躍有名にした天満敦子さんの2015年の映像もありました。1980年にシルヴィア・マルコヴィッチの演奏をTVで聞いてから15年ほど経っていたでしょうか。この曲を題材にした高樹のぶ子の小説『百年の預言』の噂を聞いてから、半分忘れかけていた曲を天満さんの演奏で再び耳にして、二人の演奏が繋がりました。その後、天満さん校訂の楽譜を手に入れたのは2004年くらいだったように思います。時折自分でも弾いてみますが、なかなか速い部分が覚えられないままです。
祖国ルーマニアの独立運動に参加して投獄され、獄中で故郷を偲び、恋人に思いを馳せながら書いたと言われる哀切極まりない緩徐部分は、ルーマニア音楽で言えば、ドイナに当たると思います。ルバートのかけ方は演奏者によって色々ですが、ドイナは本来フリーリズムの部分ですから、ルバートのかけ方にこそ味があると言えるでしょう。
2本目は一昨日、スラーをかけている速い部分が個性的と書いた演奏です。上げ弓でワボウスタッカート気味になったり、弓を浮かせた弱音部分のかすれるような音色の部分では、中東のケマンチェのような枯れた味わいを出したり(9分38秒辺り)、見どころの多い演奏です。

天満敦子ヴァイオリンコンサート 2015/ 望郷のバラード【ガトーフェスタ ハラダ エスポワールホール】

ポルムベスク:望郷のバラード - アンタル・シャライ

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2022年4月 7日 (木)

Stefan Ruhaのバラーダ シルヴィア・マルコヴィッチのその後

動画は見当たりませんが、やはりポルンベスクのバラーダ(望郷のバラード)でどれが一番かと言えば、Stefan Ruhaの演奏でしょう。天満さん校訂の楽譜にはない細かい装飾や重音が入って、これほどの熱い「泣き」の演奏はないように思います。1958年の録音で彼の写真入りもありましたが、6分ほどの演奏時間でした。これを2本目に、3本目はシルヴィア・マルコヴィッチのロン・ティボー・コンクールの映像です。曲はラロのスペイン交響曲。今日ぐぐって彼女はユダヤ系であることを知りました。息子のアイモ・パギン(ピアニスト)との室内楽演奏がYouTubeにも上がっていたのを今日思い出しました。曲は確かフォーレのヴァイオリン・ソナタ1番でした。現在はストラスブール(フランス)とグラーツ(オーストリア)に住んでいて、グラーツ音楽大学の教授を務めているそうです。(以下放送原稿を再度)

バラーダは日本では天満敦子さんの演奏で知られていますが、曲自体の日本初演はルーマニアの女流ヴァイオリニスト、シルヴィア・マルコヴィッチにより、1980年5月10日、NHK教育TVの午後7時30分からのコンサートで行われています。実は私はこの番組を見ておりまして、更にTVから録音もしていて、42年間そのカセットテープを保存してあります。その録音をiPhoneから音出しすることも可能ですが、著作権問題に抵触するようですので控えておきます。
代わりに本場ルーマニアの演奏家の録音がありますので、そちらをおかけします。天満さんの演奏より長く、伴奏はピアノではなく本来のオーケストラです。音源はルーマニアElectrecordのA romanian prom concertと言う盤で、演奏はEmil Simion指揮のCluj-Napoca Philharmonic OrchestraとヴァイオリニストはStefan Ruhaです。録音は1977年とあります。

<Cluj-Napoca Philharmonic Orchestra, Emil Simion, Orchestra simfonică a Filarmonicii din Cluj-Napoca / Ballad for violin and orchestra 11分16秒>
Ciprian Porumbescu - Baladă pentru vioară și orchestră

Stefan Ruha plays Balada by Porumbescu

Stefan Ruha, violin
Eva Shinka, piano
live in Leningrad, 1958

Silvia Marcovici, Concours Long-Thibaud 1969

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2022年4月 6日 (水)

Clara Cernatのバラーダ

ポルムベスクのバラーダ(望郷のバラード)は、最初に聞いたのが1980年のシルヴィア・マルコヴィッチだったので、いくつか見てみましたが、やはりルーマニア人の女流演奏家の情感豊かな演奏が良い様に思いました。Clara Cernatの演奏は何よりも柔らかい音色が出色で、ボウイングとフィンガリング、大きなヴィブラートが実に自然に聞こえます。シルヴィア・マルコヴィッチもこんな感じの演奏でした。他の演奏では速い部分でスラーをかけていたりするのが、音響的に面白いとは思いながらも、やはりデタシェ(一音ずつ切って弾く方法)で弾くのが、この曲には合っていると思います。
シルヴィア・マルコヴィッチについては大分前のブログに書きましたが、確か1983年の新宿文化センターでの来日公演を聞きに行きましたが、バラーダは残念ながら出てきませんでした。しかし、ブラームスの3番のソナタが特に素晴らしかったのをよく覚えています。あの曲も東欧(ハンガリー)の民族音楽の影響が感じられます。シルヴィア・マルコヴィッチは、結婚~出産後、活動している話をほとんど聞かないので、残念な限りです。

Porumbescu Balada by Clara Cernat and Thierry Huillet


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2022年4月 4日 (月)

ポルムベスク / 望郷のバラード

ゼアミdeワールド303回目の放送、日曜夜10時にありました。6日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。Electrecord盤の方は、また水曜以降に。

前回は緊急ウクライナ特集でしたが、今回はルーマニアの音楽の方に戻りまして、15回目になります。
今回はポルンベスクのバラーダの特集です。日本では一般に『望郷のバラード』と呼ばれています。19世紀末に29歳の若さで薄幸の生涯を閉じたチプリアン・ポルムベスク(1854~1883)は、オーストリア・ハンガリー帝国に支配されていた母国ルーマニアの独立運動に参加して投獄されてしまいますが、獄中で故郷を偲び、恋人に思いを馳せながら書いたのが、このバラーダと言うヴァイオリンの名曲です。
日本の女流ヴァイオリニストの天満敦子さんが1992年に文化使節としてルーマニアを訪問した際、ポルムベスクのバラーダの楽譜を托されますが、日本で初演すると大評判になり、1993年発売のアルバム『望郷のバラード』はクラシックとしては異例の5万枚を超える大ヒットになりました。東欧革命前夜のルーマニアを舞台に、この曲をめぐる謎とヴァイオリニストの恋愛を描いた高樹のぶ子の小説『百年の預言』のヒロインは、天満さんをモデルとしています。
バラーダはヴァイオリンとオーケストラによる哀歌で、ルーマニアの愛国歌のような位置にある曲です。その哀切極まりない美しさは格別です。まずは天満さんの2003年の演奏でおかけします。

<11 天満敦子 ポルムベスク / 望郷のバラード 8分36秒>
天満敦子 / Ballad (C.Porumbescu)

バラーダは日本では天満敦子さんの演奏で知られていますが、曲自体の日本初演はルーマニアの女流ヴァイオリニスト、シルヴィア・マルコヴィッチにより、1980年5月10日、NHK教育TVの午後7時30分からのコンサートで行われています。実は私はこの番組を見ておりまして、更にTVから録音もしていて、42年間そのカセットテープを保存してあります。その録音をiPhoneから音出しすることも可能ですが、著作権問題に抵触するようですので控えておきます。
代わりに本場ルーマニアの演奏家の録音がありますので、そちらをおかけします。天満さんの演奏より長く、伴奏はピアノではなく本来のオーケストラです。音源はルーマニアElectrecordのA romanian prom concertと言う盤で、演奏はEmil Simion指揮のCluj-Napoca Philharmonic OrchestraとヴァイオリニストはStefan Ruhaです。録音は1977年とあります。

<Cluj-Napoca Philharmonic Orchestra, Emil Simion, Orchestra simfonică a Filarmonicii din Cluj-Napoca / Ballad for violin and orchestra 11分16秒>

バラーダのエレクトレコードの音源は、他に「チプリアン・ポルムベスク作品集」と言う盤がありましてバラーダも別音源かも知れませんが、現物が残ってないので、A romanian prom concertからポルムベスクのルーマニア狂詩曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。同じタイトルの曲はジョルジュ・エネスコにもありますが、全く別の曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Romanian Radiotelevision Orchestra, Paul Popescu, Orchestra simfonică a Radioteleviziunii Române / Romanian rhapsody for orchestra 11分43秒>

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2022年4月 1日 (金)

バンドゥーラ弾き語り

数年前にも上げた動画ですが、彼女らがどうかご無事で、また美しい歌声を聞かせてくれる日が来ますように、と祈るばかりです。バンドゥーラの響きには、ウクライナ語がぴったり合います。
今週の放送では、西ウクライナのQuintana音源が残っていますが、5年前にも取り上げていますし、おそらく地域は西部のルテニアの辺りで、音楽的にはほぼ完全にハンガリー音楽なので、またハンガリーの時に取り上げようかと思います。

KIEV - Khreshchatik. Hermanas tocando la bandura ucraniana

Місяць на небі Українська народна пісня (ukrainian folk song) bandura

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