ルーマニア民族舞曲と44のヴァイオリンの二重奏曲集から
ゼアミdeワールド304回目の放送、日曜夜10時にありました。13日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はミシェル・ベロフのみです。
今回はルーマニアの音楽の16回目になります。297回目の放送で予告しておりましたが、ハンガリーの大作曲家バルトークが1915年に作曲したルーマニア民族舞曲から始めます。1977年に初めてこの曲をフランスのピアニスト、ミシェル・ベロフのLPで聞いたことがルーマニア音楽や民族音楽全般に目が向くきっかけになったので、個人的に非常に思い入れの深い曲です。「ルーマニア」と付いていますが、作曲当時にはハンガリー王国の一部だったトランシルヴァニア各地の民謡を題材にしていて、今でもハンガリー系住民も多い地方ですから、ハンガリーの影響が見られる曲が大半になっています。冒頭から親しみ易い旋律で、昔からバルトーク作品の中で特によく知られている曲です。ミシェル・ベロフ(Michel Béroff)のピアノでまずおかけします。
<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: I. Joc cu bata (Allegro moderato) 1分8秒>
<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: II. Braul (Allegro) 27秒>
<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: III. Pê-loc (Andante) 59秒>
<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: IV. Buciumeana (Moderato) 45秒>
<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: V. Poarga romaneasca (Allegro) 29秒>
<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: VI. Maruntel (Allegro) 54秒>
この曲は6曲からなっていますが、その素材は1910年と1912年にバルトーク自身が現地で農民と共に暮らしながら採集した民謡の録音が元になっていて、1912~14年にかけては採集した旋律の分析作業に没頭、そして何と3500もの録音から選び抜かれたのが、この6曲です。第一次世界大戦が勃発して後の1915年にはトランシルヴァニアを含むルーマニアも戦場になり、再び採集旅行に出ることは不可能になりましたが、その1915年にこの曲が生まれています。
1曲目の棒踊りは二人のジプシー・フィドラーの演奏が元になっています。2曲目は帯踊りで、これはタラフ・ドゥ・ハイドゥークスなどの演奏で度々登場しているブルウのトランシルヴァニア版です。3曲目の「足踏み踊り」は、弦楽器ではフラジオレットで演奏され、増2度音程が妖しくメランコリックに響きます。4曲目のアルペンホルンあるいは角笛の踊りですが、バルトークが採集した音源はジプシーのヴァイオリン独奏でした。この後2曲はエキゾチックな前半と打って変わって快活な曲に変わります。5曲目はルーマニア風ポルカと言うことで、タイトルからはチェコの影響を感じさせるリズム的に面白い楽章で、オリジナルは村の青年によるヴァイオリン演奏です。6曲目の「速い踊り」は、トランシルヴァニアの別々の場所で採譜された、相互に関係のない2つの舞曲のメドレーと言うことで、華々しくこの曲を締めています。
では、297回目の放送でかけたタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの2007年の「仮面舞踏会」に入っているルーマニア民族舞曲を再度おかけします。この名曲をタラフがどう料理しているかが聞きものですが、生粋のジプシーが現代のジプシー音楽にアレンジし直した陽気な音楽に様変わりしています。私はこの演奏を大変楽しく聞きました。
<7 Maškaradă ~Romanian Folk Dances 7分34秒>
この後は、バルトークが1931年に作曲したヴァイオリンのための二重奏曲集からおかけします。演奏は、ポーランドの名女流ヴァイオリニストのワンダ・ウィウコミルスカと、ハンガリーのミハーイ・シュックスです。ハンガリーのHungarotonからの3枚組で、バルトークのピアノ曲集ミクロコスモスとのカップリングです。どちらの曲集もピアノやヴァイオリンの初学者向きの曲から順々に難度が増し、終わりの方は聞きごたえ十分な作品になっています。
ルーマニア各地の曲を中心に選びましたが、バルトーク作品の中でも特に多くの国で採集された曲が網羅されています。一番の変わり種は、42曲目の「アラビアの踊り」で、アルジェリアのビスクラで採集された旋律が使われています。1分程の曲が7曲続きますが、ルーマニアの旋舞、ワラキアの踊り、アラビアの踊り、トランシルヴァニアの踊り、マラマロシュの踊り、ルテニアのコロメイカ、バグパイプの順です。トランシルヴァニアはハンガリー語でエルデーイとも呼ばれますので、「エルデーイの踊り」となっています。このラスト44曲目は、ジプシーのヴァイオリン弾きの旋律が使われています。マラマロシュとは、ルーマニア最北部のマラムレシュのことです。ルテニアとはルーシから来ていて、現在のウクライナ西部です。
<9-2 38 Forgatós(ルーマニアの旋舞)>
<9-4 40 Oláh Tánc(ワラキアの踊り)>
<10-2 42 Arab Dal(アラビアの踊り)>
<10-4 44 "Erdélyi" Tánc(トランシルヴァニアの踊り)>
<8-1 32 Máramarosi Tánc(マラマロシュの踊り)>
<8-4 35 Rutén Kolomejka(ルテニアのコロメイカ)>
<8-5 36 Szól a Duda(バグパイプ)A 36 Sz. Változata(36番の変形)>
難度の高い第4巻から始まって、マラマロシュから後は第3巻までの7曲でした。では最後に第2巻にさかのぼりまして、確かバルトーク作品の何かに使わた26曲目の「からかいの歌」から、ルーマニアのクリスマスの旋律コリンダ(あるいは「新年のあいさつ」)まで、もし入れば続けて聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<7-1 26 "Ugyan Édes Komámasszony..."(からかいの歌)>
<7-2 27 Sánta-Tánc(びっこひきの踊り)>
<7-3 28 Bánkódás(悲しみ)>
<7-4 29 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >
<7-5 30 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >
<7-6 31 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >
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