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2022年5月

2022年5月30日 (月)

オルテニアの様々なドイナ

ゼアミdeワールド311回目の放送、日曜夜10時にありました。6/1日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はドイナ6曲の聞き比べです。

ルーマニアの音楽の23回目になります。先週に続いてスイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組から、ワラキア西部のオルテニア編からご紹介します。次回は残りのモルダヴィア編を取り上げます。
盤の解説は先週の繰り返しになりますが、90年代にはLPサイズのケースに入って英仏の豪華解説が付いていました。国内では、この3枚からの抜粋盤がクラウンから出ていました。
ルーマニアの民謡研究の先駆者であるハンガリーのバルトークを受け継いだ、ルーマニアの作曲家で民族音楽学者のコンスタンティン・ブライロイウの貴重な記録で、現在は消滅してしまった伝承歌も多いと言われています。1933~1943年の間に録音されています。
VDE-Galloは、ブライロイウが1944 年にジュネーヴに設立したフィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関=AIMP(Les Archives internationales de musique populaire)が所有する音源を中心にリリースしてきたレーベルですが、最近の新録も登場していました。
ブライロイウは1893生まれ、1958年にスイスのジュネーヴで亡くなっていますので、生没年はバルトークのほぼ10年ずつ後ですから、相当昔の人です。録音は蝋管録音になるでしょうか、各1~3分の曲がほとんどです。

オルテニア編は、6曲のドイナから始まります。ドイナと言えば、フリーリズムの哀歌のイメージが強いため、1,2曲目のバグパイプや笛の演奏は、ドイナの一般的なイメージからは外れるようにも思いました。2曲目の笛と声のダブルトーンの演奏からおかけします。

<2 Doina CA Din Cimpoi 1分30秒>

3曲目からが歌によるドイナに変わります。独特な節回しとヨーデルのような裏声を伴う歌唱も、現在のドイナのイメージからかけ離れているように思います。少しヨーロッパとは思えないような歌唱です。間にヨーデルかアフリカの歌と聞き紛うような短い4曲目を挟んで、同じタイプの男性独唱まで3曲続けます。

<3 Doina Cu Haulit "Ferice, Codre, De Tine 1分52秒>

<4 Semnul Vocal Haulit 17秒>

<5 Doina, De La Val De Casa Mea 1分46秒>

6曲目は女性独唱に戻りますが、この曲は現在の哀歌風のドイナにそっくりに聞こえます。同じドイナでこれほど違うのは、音階の違いが大きいのだろうと思います。この曲はオルテニアのゴルジ地方のドイナの典型で、ゴルジではこのタイプが広まったそうです。マリツァ・グラマの1939年の歌唱です。

<6 Doina, La Fîntîna De Faget 2分4秒>

次の7曲目は当地のタラフ(Taraf de Ion Piper)の器楽伴奏が付いた6曲目の変奏で、歌唱はイオアナ・ピペルのギター弾き語りとあります。

<7 Doina, La Fîntîna De Faget 2 3分28秒>

8曲目は有名な女性歌手マリア・ラタレツの歌唱で、タイトルのCîntec De Jocは「踊り歌」と訳せると思います。速くてリズミカルなバックに対し、長い旋律を悠然と歌う典型的なワラキアのホラです。マリア・ラタレツは、301回目の放送でサニエ・ク・ズルガライをかけた歌手で、1937年の録音です。

<8 Cîntec De Joc 3分34秒>

オルテニアはタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのいるムンテニアの西に位置しますが、9曲目から数曲はタラフ・ドゥ・ハイドゥークスを思い出してしまうような曲が続きますので、3曲続けておかけします。
カルパチア南麓のゴルジ村は、古くからタラフたちが活躍してきた所で、バルトークの仕事を引き継いだコンスタンティン・ブライロウが、まず民謡調査地に選んだ場所です。
ゴルジのホラ、スルバ、ブルウをそれぞれ組曲のように演奏しています。これらの曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9 Hore Gorjenesti 3分29秒>
<10 Sîrbe 3分11秒>
<11 Brîuletul 3分15秒>

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2022年5月27日 (金)

ダブルトーンのブルウ、オルトのドイナ、「葬儀:雄鶏」

今週の番組でかけた音源は他には、笛のブルウ、クリスマスのコリンダ、オルト地方のドイナ、Ritual funebru: Cocosdaiul「葬儀:雄鶏」辺りですが、10曲目のハンガリー系の弦楽器のダンス音楽と昨日の女性の掛け声のように、現代も引き継がれているのは他にはコリンダくらいかも知れません。ブルウはロマの楽士が伝えているかも知れませんが、ダブルトーンでは聞いた記憶がありません。その笛の演奏と、個人的にとても興味深く思ったのは20曲目と31曲目ですので、この3曲を上げておきます。ワラキア西部のオルテニアとトランシルヴァニアのオルトが別の場所と言うのは、この盤で知ったことですが、共にオルト川で繋がっています。(以下放送原稿を再度)

8曲目はルーマニアに入ってからタラフなどの演奏で度々出てきたブルウですが、縦笛を吹きながら声も入るダブルトーン奏法です。8曲目から11曲目まではジョク(舞踊曲)が続きます。

<8 Joc: Briul 1分3秒>

20曲目にドイナが入っていますが、この歌はワラキア西部のオルテニアのスタイルのドイナで、このタイプはトランシルヴァニアのオルト地方では珍しいようです。おそらくカルパチア山脈を越えて移牧してきた羊飼いが伝えたのだろうと推測されています。

<20 Doina: "In padure duce-m-oi" 1分29秒>

31曲目のRitual funebru: Cocosdaiulは「葬儀:雄鶏」と訳せるようで、このタイトルは数回前にムジカーシュでかけたSzól A Kakas Márを思い出させます。関係はありやなしや、気になります。厳粛な雰囲気が女声合唱から伝わってきます。

<31 Ritual funebru: Cocosdaiul 1分51秒>

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2022年5月26日 (木)

トランシルヴァニアの結婚式の儀礼歌

トランシルヴァニアの戦前の録音は、まだ人々の日常に伝統歌が脈々と生きていた頃の息遣いが感じられます。昨日は葬儀、今日は結婚式の儀礼歌です。決まった詩節を歌った後に出てくるように思われる、北アフリカのユーユーに少し似た裏声の掛け声を聞くと、古い譬えですが、大屋政子さんの声を思い出します(笑) 
アグネス・ヘルツクなど現代ハンガリーのトラッド界の女性歌手が、類似の歌唱を披露していたと思いましたので、探してみました。5本目は左からHerczku Ágnes, Bognár Szilvia, Szalóki Ágiです。そう言えばこの映像の2008年頃、この3人のハンガリーの歌姫のコラボ作が連発していました。これが結婚式用の歌唱かどうかは不明ですが、唱法としてはそっくりです。70年代からのハンガリーのタンツハーズ(ダンスハウス)運動で復興したハンガリーのヴィレッジ音楽は、エルデーイ(トランシルヴァニア)のハンガリー音楽を重要なルーツにしていますから、当然と言えば当然でしょう。

<22 Ritual de nunta. Joc: "Pe drum" 53秒>

<23 Ritual de nunta. Cintec: Cintecul miresei 1分18秒>

<24 Ritual de nunta. Joc: "Cind pleaca mireasa la cununie" 35秒>

<25 Ritual de nunta: Strigaturi 31秒>

"Háljunk ketten az éjjel"

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2022年5月25日 (水)

80年前の葬送歌ボチェッツ

スイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組は、15年くらい前の段階でCDでは入手困難だったと思います。このレーベルはクラシックがメインで、今も色々出ているようですが、最近も民族音楽方面の新譜が出ているのか不明です。以前の音源は、今回のようにほとんどがストリーミングやYouTubeで聞けるようです。「ルーマニアの農村音楽」の場合ですが、ジャケットは90年代とは異なっています。
LPサイズの解説を読みながら聞いていると色々発見のある盤ですが、トランシルヴァニア編で一番驚いたのは12曲目と32曲目に入っているボチェッツが、ゲオルゲ・ザンフィルのパンパイプ演奏で聞いたような「セルビア東部ヴラフ人の葬儀の音楽とイメージが重なるBocet(ボチェッツ)は、会葬者の慟哭の声まで生々しく描写した音楽」ではなく、意外なまでに淡々と歌われていることでした。トランシルヴァニアと、ザンフィルの拠点のワラキアでは音楽も違うとは思いますが、ザンフィルが彼なりの修飾を施した(ドラマ仕立てのような)演奏をしていたのか、80年の間に徐々に変わっていたのか、どちらでしょうか。
トランシルヴァニア編の2曲の後に、ザンフィルの演奏を入れておきます。ワラキアのオルテニア編とモルダヴィア編にもボチェッツがありますので、またそれぞれで取り上げる予定です。

<12 Bocet: "La sot" (I) 1分35秒>

<32 Bocet: "La sot" (II) 1分13秒>

Bocet

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2022年5月24日 (火)

更にエネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番

火曜には通常ブログは書いておりませんが、先週のネタが多過ぎて4回で収まらなかったので、今日2本上げておきます。明日の放送原稿も、ほぼ出来ていますし。イラン系ユダヤ人のペルシア音楽のヴァイオリン演奏も、最近見つけて非常に驚いた映像ですが、それはまたの機会にして、エネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番ですが、Yehudi Menuhinと妹のHephzibah Menuhinの全曲演奏がありました。録音は1967年とあります。先日はライブ映像でしたが、1楽章だけでしたから。既存の音源かも知れませんが、何よりこの静止画の写真が貴重です。少年時代のメニューインと、彼を温かく見守る師匠のジョルジュ・エネスコ。最高の一枚です。
そして2本目は、何とエネスコがピアノ伴奏に回っての全曲演奏。ヴァイオリンはSerge Blancと言う人です。1952年ですから、亡くなる3年前の演奏です。2楽章初めの同音連打など弱音部分も割と大きく聞こえて、曲の秘密の一端が垣間見えるようです。コメントにInteresting to hear this after a recording of a doina by Maria Tanase.と言うのを見かけて、ニヤリとしました(笑) マリア・タナセは、何回か先で取り上げます。

George Enescu. Violin Sonata No. 3 - Yehudi Menuhin (violin), Hephzibah Menuhin (piano); rec.1967

RARE! Enescu plays Piano - Sonata Nr.3 for Violin & Piano, Serge Blanc (Violin), Live 1952

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2022年5月23日 (月)

VDE-Gallo「ルーマニアの農村音楽」トランシルヴァニア編

ゼアミdeワールド310回目の放送、日曜夜10時にありました。25日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日のYouTubeは4曲目まで入れました。

ルーマニアの音楽の22回目になります。今回はスイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組の、トランシルヴァニア編からご紹介します。他にモルダヴィア編とワラキア西部のオルテニア編がありまして、90年代にはLPサイズのケースに入って英仏の豪華解説が付いていました。国内では、この3枚からの抜粋盤がクラウンから出ていました。
ルーマニアの民謡研究の先駆者であるハンガリーのバルトークを受け継いだ、ルーマニアの作曲家で民族音楽学者のコンスタンティン・ブライロイウの貴重な記録で、現在は消滅してしまった伝承歌も多いと言われています。録音は1933~1943年の間にされています。
VDE-Galloは、ブライロイウが1944 年にジュネーヴに設立したフィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関=AIMP(Les Archives internationales de musique populaire)が所有する音源を中心にリリースしてきたレーベルですが、最近の新録も登場していました。
ブライロイウは1893生まれ、1958年にスイスのジュネーヴで亡くなっていますので、生没年はバルトークのほぼ10年ずつ後ですから、相当昔の人です。録音は蝋管録音になるでしょうか、各1~3分の曲がほとんどです。

曲名の最初にクンテク(歌)と付いている7曲の内、4曲目までを続けておかけします。2曲目の笛の演奏は、南トランシルヴァニアの1曲目の歌の変奏です。3曲目はトランシルヴァニア南部のオルト地方起源でトランシルヴァニア中に広まったという民謡です。4曲目もオルトの古い民謡で、ドイナ風のフリーリズムの歌です。大きなヴィブラートのかかった声が特徴的です。

<1 Cintec: "Nino, bade, serile" 1分9秒>

<2 Cintec 1分19秒>

<3 Cintec: "Du-te, dor, cu dorurile" 1分45秒>

<4 Cintec: "Ian asculta cum mai cinta" 1分50秒>

8曲目はルーマニアに入ってからタラフなどの演奏で度々出てきたブルウですが、縦笛を吹きながら声も入るダブルトーン奏法です。8曲目から11曲目まではジョク(舞踊曲)が続きますが、いかにもトランシルヴァニアのハンガリー系音楽らしい伴奏ヴァイオリンが3弦の10曲目までの3曲をおかけします。

<8 Joc: Briul 1分3秒>
<9 Joc: Invirtia 1分16秒>
<10 Joc: Ardeleana cu strigaturi 3分12秒>

20曲目にドイナが入っていますが、この歌はワラキア西部のオルテニアのスタイルのドイナで、このタイプはトランシルヴァニアのオルト地方では珍しいようです。おそらくカルパチア山脈を越えて移牧してきた羊飼いが伝えたのだろうと推測されています。

<20 Doina: "In padure duce-m-oi" 1分29秒>

12曲目と32曲目に入っているボチェッツも、ルーマニア初回のゲオルゲ・ザンフィルの時以来これまで何度か出て来ました。ザンフィルの演奏では「セルビア東部ヴラフ人の葬儀の音楽とイメージが重なるBocet(ボチェッツ)は、会葬者の慟哭の声まで生々しく描写した音楽」と言うことでしたが、ここでは意外に淡々と歌われています。2曲続けておかけします。

<12 Bocet: "La sot" (I) 1分35秒>
<32 Bocet: "La sot" (II) 1分13秒>

31曲目のRitual funebru: Cocosdaiulは「葬儀:雄鶏」と訳せるようで、これは数回前にムジカーシュでかけたSzól A Kakas Márを思い出させます。厳粛な雰囲気が女声合唱から伝わってきます。

<31 Ritual funebru: Cocosdaiul 1分51秒>

22~25曲目は結婚式の音楽で、24曲目と25曲目辺りの女性のコーラスと管楽器の演奏は、裏声を巧みに使った結婚式の儀礼歌です。アグネス・ヘルツクなど現代ハンガリーのトラッド界の女性歌手が、類似の歌唱を披露していたと思います。

<22 Ritual de nunta. Joc: "Pe drum" 53秒>
<23 Ritual de nunta. Cintec: Cintecul miresei 1分18秒>
<24 Ritual de nunta. Joc: "Cind pleaca mireasa la cununie" 35秒>
<25 Ritual de nunta: Strigaturi 31秒>

13、14曲目にはコリンドとありますので、クリスマス関連の歌になります。カウベルらしき音も入ったほのぼのとした14曲目を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 Ritual de Craciun. Colinde si urari 3分38秒>

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2022年5月20日 (金)

Ami Flammerのヴァイオリン

アミ・フラメールのYouTubeは、イディッシュ関係はすぐに出てきましたが、クラシックはセザール・フランクのヴァイオリン・ソナタがほとんどで、残念ながらエネスコのヴァイオリン・ソナタ3番はなさそうです。カタカナ表記は、アミ・フラマーと言うのも見かけますが、フランス語圏ですからフラメールとする方が近いと思います。
アミ・フラメールはルイ・マル監督の映画「さよなら子供たち」の中で、お道化た調子でサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を弾いていたのを、たまたま見かけたこともありました。番組でかけたThesis盤は、エネスコの他にチェコのヤナーチェクと、新ウィーン楽派のウェーベルンとシェーンベルクのヴァイオリン作品も演奏しています。アミ・フラメールは1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCDでも演奏していまして、それで名前を覚えていてThesis盤を購入しました。

この人のプロフィールを調べると、以下のようにありました。現代音楽寄りの活動にユダヤ音楽まで入るユニークな経歴です。(おそらく、まず間違いなくユダヤ系でしょう)
パリ音楽院でローラン・シャルミーのクラスで学び、1969年にヴァイオリンで1等賞を受賞。その後、J.ギンゴールド、H.セリグ、C.フェラスに師事。 マリア・カナルス国際コンクール(バルセロナ)で第1位を獲得し、イヴァン・ガラミアン(ニューヨーク・ジュリアード音楽院)、ナタン・ミルシテインに師事。現代音楽のアンサンブル「2e2m」のメンバーであり、1983年にはSACEMのジョルジュ・エネスコ賞を受賞している。ジョン・ケージの「フリーマン・エチュード」をフランスで初演。J.-C.ペネティエとのデュオでヴァイオリンを演奏し、フランク、ドビュッシー、シマノフスキ、エネスコ、ウェーベルン、シェーンベルク、ヤナーチェクなどの作品を一緒に録音している。1999年にカルテット "Carre-Le Partage des Voix "を設立し、現代的なレパートリーを提供している。シャロン=シュル=ソーヌ音楽院とジャンヌヴィリエ音楽院で教鞭をとり、パリCNSMDではヴァイオリンと室内楽の教師を務めている。2017年には、ジャン・ジャック・カントロフ指揮によるベートーヴェンの協奏曲を録音している。

フランクは今回は外して、イディッシュのみにしておきます。1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCD「Chansons Yiddish - Tendresses et Rage」から、Avremlとパピロシュンを上げておきます。編成は、Ami Flammerのヴァイオリン、Moshe Leiserのギターと歌、Gerard Barreauxのアコーディオンです。東欧系ユダヤ人のイディッシュ語の哀感溢れる歌を聞かせるCDは沢山ありますが、この盤はCDでは最も早い時期に出た一枚だったと思います。2本目を見て、LPの頃から出ていたことを知りました。またポーランドの時に東欧系ユダヤの音楽は集中的に取り上げる予定です。

Avreml

Ami Flammer, Moshe Leiser, Gérard Barreaux - A kalte Nakht (Papirosn) (Yiddish Song)

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2022年5月19日 (木)

メニューイン兄妹、イダ・ヘンデル、Savitri Grier

今日はユーディ・メニューインとイダ・ヘンデルの演奏を上げて、と思っていたら、若手Savitri Grierの素晴らしい演奏がありましたので3本目に入れました。明日は番組でかけたアミ・フラメールに当てたいので、エネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番については今日詰め込むことになってしまいますが。
メニューインの演奏の素晴らしさは言わずもがなですが、妹のヘプシバ・メニューインがこんなに素晴らしいピアニストだったのは今回初めて知りました。1981年に60歳の若さで亡くなったのが残念な限りです。イダ・ヘンデルの演奏は、この曲を完全に消化しきった凄い演奏だと思いました。この時81歳とは思えない美音です。ロマ風を意識してか、左手のひらを棹に付けた細かいヴィブラートにも驚きましたが、それはこの曲に合わせたものでしょうか。
この曲は1楽章の入りの装飾のかけ方がまず聞きもので、前に「コンマ一秒の装飾技巧の妙」と形容したタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのニコラエ・ネアクシュ爺さんの技を毎回思い出します。Savitri Grierの演奏は、上げ弓から入って、その後の弓の使い方など、この曲について霧が晴れるように分かってくる素晴らしいボウイングでした。

YEHUDI MENUHIN. G. Enescu - Violin Sonata No.3, a moll, Op.26, 1st mvt (excerpt) [H. Menuhin]

GEORGE ENESCU SONATA No. 3 Op. 25 IDA HAENDEL MISHA DACIC

Savitri Grier, Richard Uttley; Enescu Violin Sonata No. 3 in A minor; mov. i

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2022年5月18日 (水)

エネスコ自作自演のヴァイオリン・ソナタ第3番

エネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番ですが、20世紀ヴァイオリン・ソナタ屈指の名曲だけに、沢山動画も上がっていました。特に探していたエネスコ自身のヴァイオリンと、若くして亡くなった同郷の名手ディヌ・リパッティのピアノによる演奏も、第1楽章のみですがありました。エネスコは他のピアニストとの全曲もあり、その他にはイダ・ヘンデル、コパチンスカヤの別録音?、ユーディ・メニューインとヘプシバ・メニューイン兄妹の第1楽章などが、特に貴重だと思います。
今日はエネスコの自作自演を2本上げておきます。1本目のディヌ・リパッティとの演奏ですが、リパッティは1950年に亡くなっているので、もしかしたら戦前の録音でしょうか。やはりリパッティとの演奏はベストだと思いました。2本目の全曲の方のピアノはCeliny Chailley-Richezで、1949年の録音です。最後に今更ですが、エネスコの名前はルーマニア語ではエネスクと表記する方が近いです。

George Enescu and Dinu Lipatti - Enescu Violin Sonata no.3 - I

Enescu Violin Sonata No.3 in A minor"dans le caractère populaire roumain",Op.25(Enescu 1949)

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2022年5月16日 (月)

エネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番 コパチンスカヤ

ゼアミdeワールド309回目の放送、日曜夜10時にありました。18日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。エネスコの3番ですが、アミ・フラメールでは見当たらなかったので、モルドヴァのヴァイオリニスト、コパチンスカヤの全曲演奏で上げました。アミ・フラメール他のイディッシュはまた後日。

ルーマニアの音楽の21回目になります。ゼアミ26周年に当たる5/15の回は、スイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組を予定していましたが、エネスコでもう一回!とリクエストがありましたので、前に予告していたエネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番からおかけします。1926年に完成したこの曲には「ルーマニア民族音楽の性格によって」(dans le caractère populaire roumain)と言う副題が付いていて、エネスコの最高傑作の一つとの呼び声高い曲ですが、バルトークのヴァイオリン・ソナタ第2番から影響を受けたとされる難解な曲ですので、どうしようか迷っていました。エネスコの弟子の一人である、イダ・ヘンデルの得意のレパートリーだったそうです。エネスコ自身のヴァイオリンと、若くして亡くなった同郷の名手ディヌ・リパッティのピアノによる自作自演もあるそうですが、残念ながらどちらも未聴です。
手持ちのCD音源は、1989年にフランスのThesisから出たアミ・フラメールのヴァイオリンとジャン・クロード・ペネティエのピアノによる全曲演奏と、伊東信宏氏の「中東欧音楽の回路」付録CDのコパチンスカヤによる第1楽章のみですが、データで聞いた音源はAzoitei Remus & Eduard Stanのものもあります。アミ・フラメールは1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCDでも演奏していまして、それで名前を覚えていて購入した盤でした。ジプシーのラウタルやユダヤの影響が濃厚なエネスコの曲と、イディッシュと言うのは、ベストマッチの感があります。後でそのオコラ盤からも一曲かけようかと思います。
アミ・フラメールはルイ・マル監督の映画「さよなら子供たち」の中で、お道化た調子でサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を弾いていたのを、たまたま見かけたこともありました。このテシス盤は、エネスコの他にチェコのヤナーチェクと、新ウィーン楽派のウェーベルンとシェーンベルクのヴァイオリン作品も演奏しています。
では第1楽章からおかけします。

<1 Pennetier - Flammer / Enesco 3e Sonate Op 25 1 10分19秒>

即興性が重視される面があるためか、違う曲かと思う程に聞こえますので、コパチンスカヤと、Azoitei Remus & Eduard Stanの演奏の第1楽章の最初だけ少しおかけしてみます。

<パトリツィア・コパチンスカヤ / エネスコ ヴァイオリン・ソナタ第3番 第1楽章>
Patricia Kopatchinskaja / Polina Leschenko - Enescu Violin Sonata no. 3 - live 2015

<1 Azoitei Remus & Eduard Stan / Enescu, G.: Violin Music, Vol. 2 1分程>

第2楽章も大変に素晴らしいのですが、最弱音から始まりまして、その部分で無音と判断されて放送事故になるかも知れませんので、外しまして、かなり民族色が濃く出ているフィナーレの第3楽章を次におかけします。第1楽章と第2楽章が10分余り、第3楽章は8分49秒です。

<3 Pennetier - Flammer / Enesco 3e Sonate Op 25 3 8分49秒>

では最後に、先ほどの1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCDの1曲目Avremlを時間まで聞きながら今回はお別れです。編成は、Ami Flammerのヴァイオリン、Moshe Leiserのギターと歌、Gerard Barreauxのアコーディオンです。東欧系ユダヤ人のイディッシュ語の哀感溢れる歌を聞かせるCDは沢山ありますが、この盤はCDでは最も早い時期に出た一枚だったと思います。またポーランドの時に東欧系ユダヤの音楽は集中的に取り上げる予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Chansons Yiddish - Tendresses et Rage ~Avreml 3分43秒>

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2022年5月13日 (金)

マラムレシュのクリスマス

マラムレシュの楽師をクローズアップした映像を探していますが、なかなか見当たりません。1本目は7分頃から少年少女のグループですが、フィドラーと例の3弦のギターの演奏を確認できます。ギターは完全にリズムとコードとテンポ維持の担当のようです。少年フィドラーの演奏もなかなかのものです。歌っているのは、コリンダ(クリスマス・キャロル)のようです。この映像は、何よりもマラムレシュの民族衣装と人々の暮らし、村の風景が素晴らしいです。仮面は、秋田のなまはげを思い出します。そう言えば、結婚式ではなくクリスマスのCDもありました。
この動画だけかと思ったら、2本目がありました。豚を切るシーンが辛いですが、合間に盃のような帽子を被った楽師も出てきます。マラムレシュの楽師は、2005年頃TVRでよく見かけました。

マラムレシュのクリスマス

Obiceiul taiatului porcului in Maramures

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2022年5月12日 (木)

マラムレシュと白川郷

Musiques De Mariage De MaramureșでYouTube検索すると出てきますが、オコラやBudaだけでなくArionからも出ていました。ジャケットを見て思い出しました。3つともフランスのレーベルです。一方、「マラムレシュ」でYouTube検索すると、何故か日本の白川郷の映像が混じっています。マラムレシュと飛騨高山の白川郷、確かにそれぞれの古い民俗文化が残っているという点では似ていると思います。
今日は1本目にアリオン盤の映像、2本目にNHKのドキュメンタリー映像を上げておきました。アリオン盤では共鳴胴の代わりにラッパが付いたシュトロー・ヴァイオリンと思しき音色が聞こえますが、極めて激しく急速な曲が演奏されています。NHKの方は、私が見た90年代のものではないと思いますが、少し似ているようにも思いました。NHKの番組が海外で放送された際のUNESCOの映像のようで、日本語字幕が入っています。

Musique des Maramures IV

マラムレシュの木造教会(ユネスコ/ NHK)

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2022年5月11日 (水)

マラムレシュの結婚式、木造聖堂群、陽気な墓

マラムレシュと聞くと、どうしても90年代に見たドキュメンタリーを思い出してしまいます。おそらく、みやこうせいさんが関わっていたのではと思います。ドラキュラ伝説の場所に近い土地ながら、素朴な伝統衣装と建物の佇まいなどのフォークロア面では、極めて美しく温かみのあるもので、強く印象に残っています。男性の盃のような帽子も特徴的です。ロマが多いと言われるヴァイオリン弾きの技が、さりげなく凄いのはオコラ盤を聞いてもよく分かります。演奏風景が垣間見られる1本目、世界遺産に登録されている木造聖堂群とサプンツァ村の「陽気な墓」が出てくる2本目が、いくつか見た中では秀逸でした。「陽気な墓」については、3本目の解説もなかなか面白く見ました。90年代のドキュメンタリーそのものがないか、更に探してみます。

Maramures, Romania

マラムレシュにようこそ

陽気な墓

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2022年5月 9日 (月)

マラムレシュの結婚式の音楽

ゼアミdeワールド308回目の放送、日曜夜10時にありました。11日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の一本には放送でかけてない曲も全て入っています。

ルーマニアの音楽の20回目になります。今回は1993年にフランスOcoraから出た「マラムレシュの結婚式の音楽」からご紹介します。前々回の「ムジカーシュ/マラマロシュ トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」と同じく、トランシルヴァニア北部のマラムレシュ地方での1973年の音源です。

まずは1曲目と3曲目からおかけしますが、1曲目の途中から「ひばり(チョカリア)」が登場します。マラムレシュ版のチョカリアです。編成は旋律を奏でるヴァイオリン、リズム担当の3弦のギター、ベース担当のコントラバスが基本のようです。マラムレシュでは戦前はユダヤ人楽士も多かったそうですが、今はジプシーのヴァイオリン奏者が多いように聞きました。

<1 Musiques De Mariage De Maramureș ~Four Dances 5分>
<3 Musiques De Mariage De Maramureș ~Four Dances 4分53秒>
Roumanie - Musiques de mariage du Maramureș

マラムレシュと言えば、写真家でエッセイストの、みやこうせいさんを思い出します。ルーマニアのフォークロアの宝庫のようなマラムレシュ地方に魅せられて度々現地に赴き、紀行エッセイや写真集を何冊も出されています。「森のかなたのミューズたち」は、特に魅了された一冊です。

90年代前半だったと思いますが、UNESCO世界遺産に登録されているマラムレシュの木造聖堂群や、埋葬者の人生に関わるレリーフと墓碑文が刻まれた色彩豊かな墓碑が並ぶことで知られるサプンツァ村の墓地(Merry Cemetery of Săpânţa)の特集番組を見た記憶があります。青が基調のカラフルな墓碑のため「陽気な墓」と呼ばれるそうで、埋葬者の生前の姿が生き生きと描かれています。ピンポイントの内容だったので、みやこうせいさんが制作に関わっていたのかも知れません。

次に5曲目のグリッサンドを伴うダンスから、ダンス・ソング、ローカル・ソングの3曲を続けます。グリッサンドとは音をずり上げまたはずり下げる奏法で、弦楽器の場合ポルタメントと言うことが多いと思いますが、鍵盤に使われる用語が使われている所が目を引きます。続く2曲も、前半より短いですが多様さが目立つ曲です。

<5 Musiques De Mariage De Maramureș ~Dance With Glissandi 2分32秒>
<6 Musiques De Mariage De Maramureș ~Dance Song 3分57秒>
<7 Musiques De Mariage De Maramureș ~Local Song 5分52秒>

では最後に、この盤のラスト8曲目のDancesを時間まで聞きながら今回はお別れです。この盤は3つの村の楽士の演奏を収めていますが、この曲はベルベシュティ村での録音です。マラムレシュの結婚式の音源はフランスのBudaからも出ていますが、現物とデータ共に行方不明ですので、オコラ盤のみにしておきます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<8 Musiques De Mariage De Maramureș ~Dances 9分39秒>

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2022年5月 6日 (金)

自然の声(Voix de la Nature)、ルーマニアの詩(Rumanian Poem)

1989年のルーマニア革命の翌年にルーマニアElectrecordから出たRecord for Rumaniaには、ルーマニア狂詩曲2曲の他に、室内オーケストラのための交響詩「自然の声」(Voix de la Nature)と、「ルーマニアの詩」(Rumanian Poem)が入っていました。枯淡の境地の印象の「自然の声」は、1931~39年に作曲されていますが、エネスコの遺作だそうです。演奏はティミショアラ・フィルハーモニー管弦楽団です。最も有名なルーマニア狂詩曲は、二十歳の頃の作品です。
一方「ルーマニアの詩」は男声合唱つきの交響組曲で、1889年の時に僅か8歳のエネスコが書いた作品1の処女作だそうで、これには驚きました。ヴァイオリニストとしては、バッハだけでなく幅広いレパートリーのほとんどの曲を暗譜で演奏したとか、言葉と和声構造の張力を感じるためにバッハのカンタータ120曲を全て暗記していたなど、信じられないようなエピソードが残っています。

Voix de la nature

George Enescu - Romanian Poem

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2022年5月 5日 (木)

ミルシテインのシャコンヌ

バッハの無伴奏ヴァイオリンで誰のものを一番聞くかと言いますと、実はナタン・ミルシテインのドイツグラモフォン盤です。2番目がエネスコ、3番目は天満さんの演奏でしょうか。先日手に入れたIrina Muresanuのシャコンヌは完璧な演奏でした。80年代のLPの頃はヘンリック・シェリングの盤が有名で、よく聞いたものです。エネスコのCDは90年代末頃になってから聞いたと思います。ナタン・ミルシテインは、レオポルト・アウアーやウジェーヌ・イザイなど、歴史的な名人に教わった人で、「イザイを通じて身につけた、歌心と美音を尊重するフランコ・ベルギー楽派の優美な演奏スタイル」と言うウィキペディアのコメントに強く同感です。
2本目のモノクロ動画は大分前から知っていましたが、1本目の1986年のラストコンサートの映像は、今回初めて見ました。当時82歳とは思えない凄い演奏で、ルーマニアシリーズの途中ですが、今日はこの2本を上げておきます。終わり間近の3声になる至難の箇所では、2本とも3連符で弾いていますが、これはミルシテインだけだと思います。残念なのは感動的なアルペジオの部分の後半で背中からの映像になっている点です。

Nathan Milstein...Last Concert...Chaconne (1986)

Bach BWV 1004 Chaconne Nathan Milstein Violin - Complete

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2022年5月 4日 (水)

エネスコのツィゴイネルワイゼン

連休真っ只中の今日は、会食と弦楽合奏の練習のため、ブログアップは夜になりました。エネスコは1955年に73歳で亡くなっているので、さすがに動画はなさそうです。今日のYouTubeはヴァイオリンではなく、何とエネスコのピアノ独奏によるツィゴイネルワイゼンで、これはもう大変に面白く聞きました。ピアニストでもあったエネスコのタッチを再現するピアノロールが残っていたようです。
何度かブログに書いていますが、スペインのサラサーテが書いたツィゴイネルワイゼンも、19世紀にヨーロッパ中で大流行したハンガリーのチャールダーシュの一つです。チャールダッシュと言えば、モンティの曲の固有名詞と思われ勝ちなように思いますが、ツィゴイネルワイゼンもブラームスのハンガリー舞曲も、全てチャールダッシュです。他にもクラシック作品だけでも星の数ほどあると思います。面白いのはジプシー音楽に楽譜はなく、口伝だったため、例えばブラームスの曲でジプシーの原曲がある場合も、今ではほとんどがジプシーの間でも知られてないように見受けられる点です。クラシック作品にだけ残っている19世紀のジプシー音楽があるということが、大変に面白いです。

RARE! ENESCU PIANIST VIRTUOSO - Sarasate "Zigeunerweisen" (Piano Roll, 1928)

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2022年5月 2日 (月)

エネスコのシャコンヌ

ゼアミdeワールド307回目の放送、日曜夜10時にありました。4日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。エネスコのこの演奏は晩年の録音ですから荒い部分もありますが、バッハの音楽の核心に到達していると言われます。テクニック的には今はもっと完璧な演奏がたくさんありますが、核心に迫る「何か」が欠けているのかも知れません。余談ですが、1983年頃よくバッハのシャコンヌを練習していて、大学オケの仲間からシャコンドーとあだ名されたことがありました(笑) 当時は全て暗譜していましたが、今ではもうさっぱり。しかし、大変思い出深い曲なので、また少しずつさらおうかと思っている所です。今日のYouTubeは、エネスコのシャコンヌのみです。
 

今回はルーマニアの音楽の19回目になります。前々回の放送の最後にエネスコのヴァイオリン独奏で、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番のフーガをかけましたが、フェイドアウトになっておりましたので、今回はこの曲と、一番有名なパルティータ2番のシャコンヌをノーカットでおかけしたいと思います。

ジョルジュ・エネスコは、作曲家としてはルーマニアの伝統音楽を常に重視していましたが、演奏家としてはフリッツ・クライスラーやジャック・ティボーと共に20世紀前半の三大ヴァイオリニストの一人とされています。1920年代半ばからはヴァイオリン教師としても知られ、門下生にはユーディ・メニューイン、アルテュール・グリュミオー、クリスチャン・フェラス、イヴリー・ギトリスなど錚々たる名手がいます。
バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」については、ヴァイオリニストとしておそらく最も早い時期から注目し、実演・録音ともに語り継がれる名演を残しています。1948年頃の全曲録音の2枚組から、ソナタ1番の2曲目のフーガをまずおかけします。1985年頃にアイダ・カヴァフィアンの生演奏で聞いてから、特に忘れられない曲の一つです。メシアンを得意にしていたアンサンブル・タッシの来日公演のアンコール演奏だったと思います。

<1-2 Violin Sonata No. 1 in G minor, BWV 1001: II. Fuga (Allegro) 5分12秒>

次に無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ2番のフィナーレを飾る、余りにも有名なシャコンヌです。14分近いこの曲はニ短調で荘重に始まり、感動的なアルペジオの部分を経て、明るい部分に移行し、オルガンのような重音も聞かせます。最後は再びニ短調に戻り枯淡の境地で曲を締めくくっています。

<2-5 Violin Partita No. 2 in D minor, BWV 1004: V. Ciaccona 14分7秒>

では最後に、室内オーケストラのための交響詩「自然の声」(Voix de la Nature)を時間まで聞きながら今回はお別れです。この曲は1931~39年に作曲されていますが、エネスコの遺作だそうです。こちらも若い頃に書かれたルーマニア狂詩曲とは打って変わって、枯淡の境地の印象です。
音源は1989年のルーマニア革命の翌年にルーマニアElectrecordから出たRecord for Rumaniaと言う盤です。この中から前々回にルーマニア狂詩曲第1番をかけましたが、ルーマニア狂詩曲第2番と、「自然の声」、「ルーマニアの詩」の4曲が入っています。演奏はティミショアラ・フィルハーモニー管弦楽団です。因みに「ルーマニアの詩」は男声合唱つきの交響組曲で、1889年の時に僅か8歳のエネスコが書いた作品1の処女作でした。ルーマニア狂詩曲は、二十歳の頃の作品です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<3 Record for Rumania ~Voix de la Nature 8分35秒>

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