オルテニアの様々なドイナ
ゼアミdeワールド311回目の放送、日曜夜10時にありました。6/1日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はドイナ6曲の聞き比べです。
ルーマニアの音楽の23回目になります。先週に続いてスイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組から、ワラキア西部のオルテニア編からご紹介します。次回は残りのモルダヴィア編を取り上げます。
盤の解説は先週の繰り返しになりますが、90年代にはLPサイズのケースに入って英仏の豪華解説が付いていました。国内では、この3枚からの抜粋盤がクラウンから出ていました。
ルーマニアの民謡研究の先駆者であるハンガリーのバルトークを受け継いだ、ルーマニアの作曲家で民族音楽学者のコンスタンティン・ブライロイウの貴重な記録で、現在は消滅してしまった伝承歌も多いと言われています。1933~1943年の間に録音されています。
VDE-Galloは、ブライロイウが1944 年にジュネーヴに設立したフィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関=AIMP(Les Archives internationales de musique populaire)が所有する音源を中心にリリースしてきたレーベルですが、最近の新録も登場していました。
ブライロイウは1893生まれ、1958年にスイスのジュネーヴで亡くなっていますので、生没年はバルトークのほぼ10年ずつ後ですから、相当昔の人です。録音は蝋管録音になるでしょうか、各1~3分の曲がほとんどです。
オルテニア編は、6曲のドイナから始まります。ドイナと言えば、フリーリズムの哀歌のイメージが強いため、1,2曲目のバグパイプや笛の演奏は、ドイナの一般的なイメージからは外れるようにも思いました。2曲目の笛と声のダブルトーンの演奏からおかけします。
<2 Doina CA Din Cimpoi 1分30秒>
3曲目からが歌によるドイナに変わります。独特な節回しとヨーデルのような裏声を伴う歌唱も、現在のドイナのイメージからかけ離れているように思います。少しヨーロッパとは思えないような歌唱です。間にヨーデルかアフリカの歌と聞き紛うような短い4曲目を挟んで、同じタイプの男性独唱まで3曲続けます。
<3 Doina Cu Haulit "Ferice, Codre, De Tine 1分52秒>
<4 Semnul Vocal Haulit 17秒>
<5 Doina, De La Val De Casa Mea 1分46秒>
6曲目は女性独唱に戻りますが、この曲は現在の哀歌風のドイナにそっくりに聞こえます。同じドイナでこれほど違うのは、音階の違いが大きいのだろうと思います。この曲はオルテニアのゴルジ地方のドイナの典型で、ゴルジではこのタイプが広まったそうです。マリツァ・グラマの1939年の歌唱です。
<6 Doina, La Fîntîna De Faget 2分4秒>
次の7曲目は当地のタラフ(Taraf de Ion Piper)の器楽伴奏が付いた6曲目の変奏で、歌唱はイオアナ・ピペルのギター弾き語りとあります。
<7 Doina, La Fîntîna De Faget 2 3分28秒>
8曲目は有名な女性歌手マリア・ラタレツの歌唱で、タイトルのCîntec De Jocは「踊り歌」と訳せると思います。速くてリズミカルなバックに対し、長い旋律を悠然と歌う典型的なワラキアのホラです。マリア・ラタレツは、301回目の放送でサニエ・ク・ズルガライをかけた歌手で、1937年の録音です。
<8 Cîntec De Joc 3分34秒>
オルテニアはタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのいるムンテニアの西に位置しますが、9曲目から数曲はタラフ・ドゥ・ハイドゥークスを思い出してしまうような曲が続きますので、3曲続けておかけします。
カルパチア南麓のゴルジ村は、古くからタラフたちが活躍してきた所で、バルトークの仕事を引き継いだコンスタンティン・ブライロウが、まず民謡調査地に選んだ場所です。
ゴルジのホラ、スルバ、ブルウをそれぞれ組曲のように演奏しています。これらの曲を聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<9 Hore Gorjenesti 3分29秒>
<10 Sîrbe 3分11秒>
<11 Brîuletul 3分15秒>
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