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2022年6月

2022年6月30日 (木)

サニエ・ク・ズルガライやルメ・ルメも

アナトール・シュテファネットのサンク・プラネット盤は、リリースされた97年に売り切れてから聞いてなかったので、サニエ・ク・ズルガライやルメ・ルメも弾いていたのを知って、今更ですが驚きました。しかし、この人の演奏(独奏)はトラッドの領域を越えて、パガニーニのヴァイオリン独奏曲風なテクニックも混じえ、曲によってはアブストラクトな現代音楽風にまで近づいているようにも聞こえます。明日はライヴ映像を少し追ってみます。(以下放送原稿を再度)

サンク・プラネット盤(Anatol Stefanet / Bratch  仏cinq planetes)もストリーミングにありましたので、2曲おかけします。
前々回にファンファーレ・チョカリアでかけた「はかないこの世」を、元のタイトルのLume, Lumeで演奏していて、2分30秒から、その旋律が出てきます。ロマの無常の人生観を映したと思われるこの詫び寂び感溢れる曲を、おそらくロマではないアナトール・シュテファネットが演奏していて、ロマと非ロマでのレパートリーの共有の例と見て良いでしょうか。
先ほどのTrece Vremeaともイメージの重なる曲です。Trece Vremeaは「過ぎ去った時」と訳せると思いますが、このヴレメアと言う単語はロシア語Время(ヴレーミャ)とほぼ同じで、ルーマニア語にはラテン語だけでなくスラヴ語からの語彙も少なからず入っていることが、この単語からも分かります。

<3 Lume, Lume 5分59秒>

他にはオルテニアやマラムレシュなど、ルーマニアの他の地域の音楽も演奏していますが、大分前にかけましたサニエ・ク・ズルガライがありましたので、こちらを時間まで聞きながら今回はお別れです。この曲をアレンジして卓越した技巧を披露する独奏に仕立てています。
サニエ・ク・ズルガライ(Sanie cu zurgălăi 鐘のあるそり)は、1936年にルーマニアのユダヤ系作曲家Richard Steinによって名歌手MariaTănaseのために作曲された、当時の民謡調の流行り歌と見ていいように思います。70年代のコマネチの床に使われたとして3月に特集しました。

<2 Sanie Cu Zurgalai 6分34秒>

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2022年6月29日 (水)

花嫁の後悔

今日はVDEガロのモルダヴィア編の音源を入れておきます。20曲目De jele la mireasaの英訳はOf the bride`s regretとなっていますので、「花嫁の後悔」としました。最初にオブがあるので「の」が入りますが、その前の歌Cintec:(クンテク)にかかるのではと思います。この曲が大変に印象的でした。このような光景は洋の東西を問わないようです。入っているのは器楽ですが、歌も聞いてみたいものです。Ritual de nuntaは、結婚式の儀式のような意味です。この後の4曲は、寂しさを紛らせ、結婚の喜びに繋げる「Joc=踊り」と見て良いのでしょう。(以下放送原稿を再度)

ファンファーレ・チョカリアにも結婚式の音楽はありましたが、前に予告していましたVDEガロの古い音源にあるのは、かなりカラーの異なる音楽ですので、一緒にはできませんでした。20~24曲目を今回まとめておかけしておきます。
20曲目は花嫁が両親と生まれ育った家に別れを告げる曲「花嫁の後悔」の旋律を、ヴァイオリンとコブザの器楽のみで演奏しています。その後はストリガトゥーリ(おそらく叫び声)も入ったリズミカルなダンスが4曲続きます。

<20 Ritual de nunta. Cintec: "De jele la mireasa" 1分39秒>

<21 Ritual de nunta. Joc: "Jocul zestrei cu strigaturi" 35秒>

<22 Ritual de nunta. Joc: "De trei ori pe dupa masa" 1分38秒>

<23 Ritual de nunta. Joc: "Giocu' di tati" 1分25秒>

<24 Ritual de nunta. Joc: "Jocul cel mare" 3分13秒>

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2022年6月27日 (月)

アナトール・シュテファネットのヴィオラ

ゼアミdeワールド315回目の放送、日曜夜10時にありました。29日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。VDE音源の方はまた後日。

ルーマニアの音楽の27回目になります。まだ手元にルーマニアの音源は7枚ほどはありますが、ルーマニアのシリーズもかなり長くなっていますので、かいつまんで数回にする予定です。
ファンファーレ・チョカリアにも結婚式の音楽はありましたが、前に予告していましたVDEガロの古い音源にあるのは、かなりカラーの異なる音楽ですので、一緒にはできませんでした。20~24曲目を今回まとめておかけしておきます。
20曲目は花嫁が両親と生まれ育った家に別れを告げる曲「花嫁の後悔」の旋律をヴァイオリンとコブザの器楽のみで演奏しています。その後はストリガトゥーリ(おそらく叫び声)も入ったリズミカルなダンスが4曲続きます。

<20 Ritual de nunta. Cintec: "De jele la mireasa" 1分39秒>
<21 Ritual de nunta. Joc: "Jocul zestrei cu strigaturi" 35秒>
<22 Ritual de nunta. Joc: "De trei ori pe dupa masa" 1分38秒>
<23 Ritual de nunta. Joc: "Giocu' di tati" 1分25秒>
<24 Ritual de nunta. Joc: "Jocul cel mare" 3分13秒>

モルダヴィアの音源は他にはヴィオラ奏者のアナトール・シュテファネットのBuda盤、Anatol Stefanet / Moldavie : L'art Du Bratsch (alto) - Vol. 2が手元にあります。現在はモルドヴァ共和国側のラウタルの家系に生まれた彼の音源は、他にブダからもう一枚と97年には仏cinq planetesの「世界の楽器の名手シリーズ」にもありました。モルダヴィアのヴィオラは、ドイツ語圏と同じくブラッチと呼ぶこともあるようです。ヴィオラの低い音でのホラやドイナというのも新鮮で、おそらく子息と思われる3人のメンバーが逆にヴァイオリンで伴奏しています。
速いスルバの1曲目と、モルダヴィアらしい哀愁の旋律が美しい5曲目を続けておかけします。

<1 Sârba De Concert 2分36秒>

<5 Trece Vremea 4分18秒>

先ほど名前の出たサンク・プラネット盤(Anatol Stefanet / Bratch)もストリーミングにありましたので、2曲おかけします。
前々回にファンファーレ・チョカリアでかけた「はかないこの世」を、元のタイトルのLume, Lumeで演奏していて、2分30秒から、その旋律が出てきます。ロマの無常の人生観を映したと思われるこの詫び寂び感溢れる曲を、おそらくロマではないアナトール・シュテファネットが演奏していて、ロマと非ロマでのレパートリーの共有の例と見て良いでしょうか。
先ほどのTrece Vremeaともイメージの重なる曲です。Trece Vremeaは「過ぎ去った時」と訳せると思いますが、このヴレメアと言う単語はロシア語Время(ヴレーミャ)とほぼ同じで、ルーマニア語にはラテン語だけでなくスラヴ語からの語彙も少なからず入っていることが、この単語からも分かります。

<3 Lume, Lume 5分59秒>

他にはオルテニアやマラムレシュなど、ルーマニアの他の地域の音楽も演奏していますが、大分前にかけましたサニエ・ク・ズルガライがありましたので、こちらを時間まで聞きながら今回はお別れです。この曲をアレンジして卓越した技巧を披露する独奏に仕立てています。
サニエ・ク・ズルガライ(Sanie cu zurgălăi 鐘のあるそり)は、1936年にルーマニアのユダヤ系作曲家Richard Steinによって名歌手MariaTănaseのために作曲された、当時の民謡調の流行り歌と見ていいように思います。70年代のコマネチの床に使われたとして3月に特集しました。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 Sanie Cu Zurgalai 6分34秒>

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2022年6月24日 (金)

エスマとファンファーレ・チョカリーア

残るはマケドニアのジプシー・クイーン、エスマ・レジェポヴァと共演したNakelavisheです。放送では結成20周年のベスト盤的なコンピレーションと思われる2016年の「20」と言う盤からかけましたが、この曲の初出は2007年の『クイーンズ&キングス〜ワイルドで行こう』 - Queens and Kingsでした。2006年に亡くなった中心メンバーのイォアン・イヴァンチャ (クラリネット)への追悼盤で、イオンと彼の妻の写真がジャケットになっています。一方エスマが亡くなったのは、2016年。「20」が出た年ですが、彼女への追悼の意も込められていたのでしょうか。エスマがジェレム・ジェレムを歌っている2007年のファンファーレ・チョカリアとの共演映像がありましたので、2本目に貼っておきます。

Nakelavishe

Esma Redžepova, Fanfare Ciocărlia & the band of Time of Gypsies - Madrid 26/11/2007

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2022年6月23日 (木)

ルメ・ルメと小さなつぼみ

ファンファーレ・チョカリアの生演奏はほとんど上げてなかったので、今日は演奏風景がよく分かる一本を入れておきます。曲は"Sirba De La Monastirea"(修道院のホラ)、"Lume, Lume"(ルメ・ルメ=はかないこの世)、"Asfalt Tango"(アスファルト・タンゴ)の順です。ちょうどルメ・ルメは今週取り上げる予定でした。バロ・ビアオで「はかないこの世」と訳が付いているこの曲、CDで歌っていたのはラドゥレスク・ラザールでしたが、同じでしょうか? 
歌詞の一部 「誰かが生まれ、命を祝い、誰かが死んで、塵となる、この世、はかないこの世~」
ロマの無常の人生観を映したと思われる詫び寂び感溢れる名曲で、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスで喩えるなら、やはり「小さなつぼみ(Mugur, mugurel)」でしょう。この名曲を歌える味のある爺ちゃん達は、Marin Manole以外、皆亡くなってしまいました。こういう歌は、若い人が歌っても様にならないと思います。という事で、2曲並べてみます。ここには、まだネアクシュ爺さんがいます。

Fanfare Ciocarlia: NPR Music Tiny Desk Concert

Taraf de Haidouks - Mugur, mugurel

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2022年6月22日 (水)

ラジオ・パシュカニから

ラジオ・パシュカニに入っているチョカリア(ひばり)は、先週かけましたが、再度入れておきます。曲を選んでいて速い3連符が面白いスルバを選びがちなことに気が付きました(笑) スルバはその名の通り「セルビア」が起源ですが、最もルーマニアらしいダンスのように思います。iやaの上に山型のような記号が付くルーマニア文字が表示できない場合、SirbaかSarbaと表記されているので、シルバとかサルバと間違って読まれることも多いようです。ギリシアのハサポセルヴィコスも「セルビア風のハサピコ」という意味で、スルバとハサポセルヴィコスのベーシックは同じだそうです。(以下放送原稿を再度)

98年に出たファンファーレ・チョカリアのファースト・アルバム「ラジオ・パシュカニ」から、3曲選んでみました。現物は手元にないので、詳細は不明です。最初のCiocarlia si Suite(チョカリアと組曲)は、元々ルーマニアの曲ですが、面白いことに95年のユーゴ映画「アンダーグラウンド」のユーゴのブラスバンドの演奏を逆に真似ているように聞こえます。
その後は、ルーマニアらしい曲を2曲、Rusasca de la BuzdugとSirba de la Zece Prajini(ゼチェ・プラジーニのスルバ)です。どちらも東欧一の高速を実感できる演奏です。

<8 Ciocarlia si Suite 4分49秒>

<2 Rusasca de la Buzdug 1分21秒>

<3 Sirba de la Zece Prajini 2分9秒>

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2022年6月20日 (月)

バロ・ビアオ(盛大な結婚式)後半

ゼアミdeワールド314回目の放送、日曜夜10時にありました。22日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。ラジオ・パシュカニは水曜以降に。

ルーマニアの音楽の26回目になります。先週に続いてルーマニア東北部モルダヴィア地方のジプシー・ブラスのグループ、ファンファーレ・チョカリアの2000年リリースの盤「バロ・ビアオ」の後半から始めます。

ファンファーレ・チョカリアは、映画「アンダーグラウンド」で火が付いていたバルカン・ブラス・ブームを更に盛り上げたグループですが、ユーゴのブラス音楽と大きく異なっていたのは、更に上を行く超高速のジプシー音楽で、曲名にもルーマニアの舞踊曲のスルバやホラから、ゆったりとしたフリーリズムのドイナまで登場する点です。

旧ユーゴ諸国やブルガリアなどバルカン半島の他の国に残るブラス・バンドと同様に、モルダヴィアのブラスも、バルカンまで進出して来ていたオスマン・トルコの軍楽隊に由来すると言われています。ファンファーレ・チョカルリアの楽器構成はトランペット、テノールホルン、ドイツ式のバリトン、チューバ(ヘリコン helicon)、クラリネット、サクソフォーン、バスドラム、パーカッションです。

11曲目の「ハイ、ロマレー!」とは、「それゆけジプシー!」の意味で、猛烈なスピードの曲です。

<11 Hai Romale! 1分54秒>

14曲目の「バラシュヤーンカを8回」のバラシュヤーンカとは、モルダヴィア北部に古くから伝わるダンスで、またもや猛スピードの曲です。

<14 Balaseanca De 8 Ore 2分31秒>

マネアはインドの映画音楽も連想させる曲調が多い、祝いの席での重要な音楽で、6曲目と16曲目に入っています。16曲目のManea Tiganilorの方をおかけします。

<16 Manea Tiganilor 3分7秒>

最後を飾る18曲目のバロ・ビアオは、彼らの言葉で「盛大な結婚式」のような意味で、ファンファーレ・チョカリアがパシュカニ村で「アスファルト・タンゴ」を演奏するという設定になっています。

<18 Baro Biao 5分31秒 抜粋>

続いて98年に出たファースト・アルバムの「ラジオ・パシュカニ」から、3曲選んでみました。現物は手元にないので、詳細は不明です。最初のCiocarlia si Suite(チョカリアと組曲)は、元々ルーマニアの曲ですが、面白いことに95年のユーゴ映画「アンダーグラウンド」のユーゴのブラスバンドの演奏を逆に真似ているように聞こえます。
その後は、ルーマニアらしい曲を2曲、Rusasca de la BuzdugとSirba de la Zece Prajini(ゼチェ・プラジーニのスルバ)です。どちらも東欧一の高速を実感できる演奏です。

<8 Ciocarlia si Suite 4分49秒>
<2 Rusasca de la Buzdug 1分21秒>
<3 Sirba de la Zece Prajini 2分9秒>

では最後に2016年の「20」と言う盤から、マケドニアのジプシー・クイーン、エスマ・レジェポヴァと共演したNakelavisheを聞きながら今回はお別れです。テノールホルンを持ったメンバーが一人写っているかっこよくて印象的なジャケットで、結成20周年のベスト盤的なコンピレーションでしょうか。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<24 Nakelavishe (feat. Esma Redzepova) 3分>

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2022年6月17日 (金)

Fanfare Ciocarlia Live In Berlin 2004

週末ですので、長尺の2004年のベルリンでのライブを上げておきます。花形は旋律を奏でるトランペットやクラリネット、サックスだと思いますが、裏打ちで「ンポ、ンポ」と吹いているのがほとんどかも知れない低音楽器の視覚的インパクトは、やはり大きいです。1分頃の映像で確認しますと、左からチューバ(ヘリコン helicon)が二人、ドイツ式のバリトンが一人、テノールホルンが一人でしょうか? 管の内部が複雑な方がバリトンのようです。チューバも西洋クラシックのものとは違って、スーザフォンのように管の中に人が入っています。このように冒頭で「低音の魅力」を披露してくれています。
今週かけた曲ではLume, lume si Horaが残っていて、彼らの重要曲の一つだと思いますが、来週もファンファーレ・チョカリアですので、また来週取り上げたいと思います。2020年のプランクトンのサイトの情報ですが、数年後に引退が計画されていて、最後に25周年のアルバムを作りたい、できれば日本でももう一度、ラスト・ツアーをやりたい、とのことでした。25周年はファーストの出た98年から数えれば2023年になります。

Fanfare Ciocarlia Live In Berlin 2004

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2022年6月16日 (木)

バリトンではなくテノールホルン

今日の動画の曲は19日の放送分に入れた曲で、98年に出たファースト・アルバムの「ラジオ・パシュカニ」の、Ciocarlia si Suite(チョカリアと組曲?)です。ルーマニアの曲ですが、面白いことに95年のユーゴ映画「アンダーグラウンド」のユーゴのブラスバンドの演奏を逆に真似ているように聞こえます。
このファンファーレ・チョカリアの20周年記念盤のジャケットでメンバーが一人構えているのは、ずっとバリトンかと思っていましたが、短めの管の形状から見て、テノールホルンのようです。バリトンやテノールホルンはジプシー・ブラスでは伴奏に回っていることが多いとは思いますが、この楕円形は大変目立ちます。前から憧れの楽器ですが、歯が悪い者としては金管は無理!と吹く前から諦めています(泣笑)
以下はテノールホルンにつていのウィキペディアの解説です。そう言えば、マーラーの交響曲第7番で聞こえていたかと思い出しました。久々にホーレンシュタインの演奏を聞いてみようかと思います。
ドイツや中欧・東欧では、ロータリー・バルブを備えていて、ユーフォニアムよりもやや管の細いB♭管の楽器を「テノールホルン」(Tenorhorn)と呼ぶ。もともとはトランペット型でテノール音域の楽器だったが、次第にトランペット型から、卵形やチューバ型に移行したようである。別掲のドイツの「ドイツ式バリトン」や「カイゼルバリトン」と同じ外観だが、これらに比べてベルの直径は小さく、管の内径は細めである。便宜上、イギリスのバリトン(baritone)と同じ種類の楽器と見なされる場合が多いが、テノールホルンの管はイギリスのバリトンよりももっと太く、その役割はむしろユーフォニアムに近い。マーラーの交響曲第7番「夜の歌」にはテノールホルンのパートがあり、冒頭から荘厳なソロを奏でる。

Ciocârlia Si Suite

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2022年6月15日 (水)

クレズマー似の2曲とオスマン軍楽似の1曲

ファンファーレ・チョカリアのバロ・ビアオで個人的に面白く思うのは、クレズマーにそっくりな曲調の2曲(TiganeascaとPiece de Tarita)や、オスマン軍楽が近く感じられるSirba Fluierateです。特に素朴な笛フルイエルを模したと思われる曲のホーンセクションの音が、オスマン軍楽の音色に似ているというのは面白いです。もちろんオスマン軍楽は、こんなに猛スピードではありませんが(笑) 実演があれば見てみたいものですが、今日は取り合えずCDと同じ音源を上げておきます。(以下放送原稿を再度)

8曲目のチガネアスカは、前半がどこかクレズマー風、テンポの上がる後半はジプシー・スタイルになると言う構成です。

<8 Tiganeasca 1分59秒>

12曲目の「タリツァのメロディ」のタリツァとは、モルダヴィア地方で有名な年老いたサックス奏者のことで、彼に捧げられているとのこと。やはりクレズマーに酷似した曲です。

<12 Piece de Tarita 3分3秒>

15曲目に飛びまして、Sirba Fluierateとは、フルイエル奏者のスルバのような意味でしょうか。解説では「スルバ・ホイッスル」となっています。ホーンセクションの音は、オスマン軍楽に少し似て聞こえます。

<15 Sirba Fluierate 2分30秒>

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2022年6月13日 (月)

ファンファーレ・チョカリアのバロ・ビアオ

ゼアミdeワールド313回目の放送、日曜夜10時にありました。15日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日は1,3,4曲目まで入れました。

ルーマニアの音楽の25回目になります。今回はルーマニア東北部モルダヴィア地方のジプシー・ブラスのグループ、ファンファーレ・チョカリアの2000年リリースの盤「バロ・ビアオ」からご紹介します。何度も来日して大都市圏のファンの間ではお馴染みのグループですが、手元に資料が残っていたのはバロ・ビアオでしたから、この盤から始めます。他の盤もストリーミングでかけることは可能です。一応、今回と次回の2回を予定しています。

このグループの音源は、仏Budaから1996年に出た「ゼチェ・プラジーニ村のブラス・バンド [ルーマニア音楽集成第2集]」で一部の民族音楽リスナーには知られていましたが、その同じ年に現地を訪れたドイツ人プロデューサーHenry Ernstに「再発見」され、バンド名は「ファンファーレ・チョカルリア」と名付けられ、最初の盤「ラジオ・パシュカニ」がドイツのPiranha(ピラニア)から1998年に出ました。クレズマティクスなどの名盤の出ているレーベルです。

映画「アンダーグラウンド」で火が付いていたバルカン・ブラス・ブームを更に盛り上げたグループですが、ユーゴのブラス音楽と大きく異なっていたのは、更に上を行く超高速のジプシー音楽で、曲名にもルーマニアの舞踊曲のスルバやホラから、ドイナまで登場する点です。最初聞いた時は、どうしてこんなに速く吹けるのか、耳を疑いました。

旧ユーゴ諸国やブルガリアなどバルカン半島の他の国に残るブラス・バンドと同様に、モルダヴィアのブラスも、バルカンまで進出して来ていたオスマン・トルコの軍楽隊に由来すると言われています。ファンファーレ・チョカルリアの楽器構成はトランペット、テノールホルン、ドイツ式のバリトン、チューバ(ヘリコン helicon)、クラリネット、サクソフォーン、バスドラム、パーカッションです。

では早速簡単に曲の紹介を入れながら続けます。彼らをヨーロッパに紹介するプロジェクトのマネージメント・オフィス名と同じ、アスファルト・タンゴからこの盤は始まります。

<1 Asfalt Tango 6分13秒>

3曲目は極めて速い8分の6拍子が特徴的なスルバで、裏打ちリズムも正確に刻んでいます。

<3 Sirba De La Lasi 1分41秒>

4曲目は「修道院のホラ」で、比較的ゆっくり目のテンポです。

<4 Hora De La Monastirea 1分48秒>

8曲目のチガネアスカは、前半がどこかクレズマー風、テンポの上がる後半はジプシー・スタイルになると言う構成です。

<8 Tiganeasca 1分59秒>

9曲目はゆったりフリーリズムのドイナとテンポアップする歌(クンテク)から成っています。

<9 Doina Si Cintec 3分23秒>

12曲目の「タリツァのメロディ」のタリツァとは、モルダヴィア地方で有名な年老いたサックス奏者のことで、彼に捧げられているとのこと。やはりクレズマーに酷似した曲です。

<12 Piece de Tarita 3分3秒>

15曲目に飛びまして、Sirba Fluierateとは、フルイエル奏者のスルバのような意味でしょうか。解説では「スルバ・ホイッスル」となっています。ホーンセクションの音は、オスマン軍楽に少し似て聞こえます。

<15 Sirba Fluierate 2分30秒>

13曲目は国内盤に「はかないこの世」と訳がありまして、ラドゥレスク・ラザールが味のある印象的な歌を聞かせています。ゆったりとしたホラです。この曲を聞きながら今回はお別れです。次回は後半の数曲と、彼らの他の盤の同名曲聞き比べもしてみたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Lume, lume si Hora 6分52秒>

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2022年6月10日 (金)

モルダヴィアの新年の音楽 ブハイ、ブチウム、トレンビータ

モルダヴィアの新年の儀礼音楽で鳴っていた謎の低音楽器Buhaiですが、管楽器かと思ったら、膜鳴楽器のFriction drumの類でした。解説のグロッサリーに出ていました。2本目はモルダヴィアのブチウム、3本目は西ウクライナのトレンビータです。どちらも新年の音楽かどうかは不明ですが、華々しい幕開けの感じがあります。以下はウィキペディアのBuhaiの英語解説の翻訳です。
ブハイ(ウクライナではbuhay)は、両端が開いた木製の浴槽またはバケツでできており、動物の皮を上から締め、中央に穴を開けて馬の毛の「牛の尾」を作ります。 これを濡れた手でこすります。 伝統的に新年の儀式のプルグショルル(「小さなすき間」)で使用され、すきを引くときの牛の鳴き声を再現します。(以下放送原稿を再度)

では最後に12、13曲目になりますが、新年の儀礼と、おそらくその場で吹かれると思われるブシウムの独奏を聞きながら今回はお別れです。ブシウムは新年と葬儀のどちらでも吹かれる信号ラッパの一種のようです。新年の曲のバックでは、謎の低音が鳴り続けていますが、これはBuhaiと言う管楽器?のようです。
時間が余りましたら、ウクライナでのブシウムの類似楽器のトレンビータのユネスコ音源までおかけします。trembitaという名前で、ウクライナのHutsuls(フツル人)とポーランドのGorals(グラル人)にも使用されています。

<12 Ritualul de Anul Nou: Buhaiul 2分26秒>

<13 Semnal: "Ca la oi" 1分16秒>

<1 Ukraine: Traditional Music~ Overture: Trembitas With Folk Orchestra 55秒>

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2022年6月 9日 (木)

Buciumとボチェッツ

VDEのモルダヴィア編、残るは今日が葬儀、明日は新年の音楽です。そのどちらのBuciumの曲名にも見えるSemnalと言うルーマニア語は、「信号」の意味のようです。アルプホルンの類は、元は羊の群れを呼び集めたり、山から山へ呼び交わすのに用いた信号ラッパの一種だからでしょう。モルダヴィアの音源では、死と新年の信号(知らせ)に変わっています。動画がありましたので一本目に入れました。モルダヴィアのBuciumの音程の不安定さは、ユダヤのショファルを思い出させます。(以下放送原稿を再度)
Bucium Sound - Traditional Musical Instrument Used By Romanian Pastors
モルダヴィア編でも最も注目の音源は、葬送の音楽とボチェッツだと思います。ブシウムによる葬送音楽から始まります。ブシウム(あるいはブチウム?)は、ルーマニアとモルドバの山岳居住者と羊飼いが使用する一種のアルペンホルンで、この言葉はラテン語のbucinumに由来し、元々はローマ人が使用した「曲がった角」を意味していました。音程の安定しない原始的な笛で、その明るい音色と埋葬の場面は、一見不釣り合いにも思えます。 このブコヴィナのボチェッツは、1曲目と同じダブルトーンの笛が女性独唱のバックで演奏されていて、これはかなり珍しい演奏のスタイルとのことです。笛は音色が少し似ているため、前にかけたセルビア東部のヴラフ人の「吸血鬼を追い払う曲」を思い出してしまいます。では2曲続けます。
<10 Ritual funebru. Semnal: "De mort" 2分6秒> <11 Bocet 3分28秒>

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2022年6月 8日 (水)

モルダヴィアとオルテニアのドイナとボチェッツ

今日は今週の放送でかけたモルダヴィアのドイナと、オルテニア(ルンク)のドイナとボチェッツを並べてみます。モルダヴィアとオルテニアは、ルーマニアの東西の両端と言って良いほど離れています。節の違いは十分に感じられると思います。しかし、この類の歌は現在も残っているのでしょうか。あったとしても「伝統を復元しました」感がありありの歌唱かも知れません。普段の生活の中にこういう「歌」があった頃の記録という事で、やはり大変に貴重です。とりわけボチェッツは沁みる歌唱です。因みに「泣き女(Bocitoare)」は、現在も若干いらっしゃるそうです。加えて、うちのカフェの常連の方から聞いた話では、「泣き女」はアフリカなどにもいるそうです。(以下放送原稿を再度)

モルダヴィア編の4,5曲目は女性独唱のドイナで、これは現在の「フリーリズムの哀歌」のイメージに近いと思います。5曲目の方をおかけします。古典的なブコヴィナのドイナだそうです。ブコヴィナはモルダヴィア北部からウクライナ西部にかけての地方名です。

<5 Doina: "Mindra florae-i noroscu 1分59秒>

モルダヴィア編の前に、ワラキア西部のオルテニア編後半のルンクでの録音から3曲だけおかけしておきます。オルテニア編はゴルジとルンクと言う2つの場所での録音で、前回かけた曲は全てゴルジ側でした。13曲目からのルンクでの後半11曲は、やはり様々なドイナに始まり、踊り歌、結婚式の歌、ボチェッツなどが続きます。ドイナは、現在のドイナとは全く印象が異なり、日本の民謡にも近い旋律に聞こえます。13曲目のドイナと15曲目の「ハイドゥークのドイナ」の2曲を続けます。

<13 Doina , Cine N-Are Nici Un Dor 2分31秒>

<15 Doina De Haiducie 1分34秒>

ルンクでの音源の最後23曲目には、葬儀での哀歌Bocetが入っています。M大のK先生から昔のルーマニアには葬儀に雇われる「泣き女(Bocitoare)」がいたとご教示いただきまして、前々回のトランシルヴァニア編のボチェッツで妙に淡々と歌っているという謎が解けたように思いました。しかし、音の動きが少ない節回しが十分に物悲しさを漂わせ、この歌では亡き兄への思慕を感じさせます。様式化されたシンプルな旋律の妙が聞けます。

<23 Bocet 1分49秒>

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2022年6月 6日 (月)

VDEガロのモルダヴィア編

ゼアミdeワールド312回目の放送、日曜夜10時にありました。8日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はモルダヴィア編の管楽器のドイナ3曲のみにしておきます。オルテニアのルンクは水曜辺りに。時間不足で入らなかったブチウムとウクライナのトレンビータも、今週の終わり辺りに見る予定です。

ルーマニアの音楽の24回目になります。先週先々週に続いてスイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組から、モルダヴィア編を中心にご紹介します。盤の解説は先週先々週の繰り返しになりますが、90年代にはLPサイズのケースに入って英仏の豪華解説が付いていました。国内では、この3枚からの抜粋盤がクラウンから出ていました。
ルーマニアの民謡研究の先駆者であるハンガリーのバルトークを受け継いだ、ルーマニアの作曲家で民族音楽学者のコンスタンティン・ブライロイウの貴重な記録で、現在は消滅してしまった伝承歌も多いと言われています。1933~1943年の間に録音されています。
VDE-Galloは、ブライロイウが1944 年にジュネーヴに設立したフィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関=AIMP(Les Archives internationales de musique populaire)が所有する音源を中心にリリースしてきたレーベルですが、最近の新録も登場していました。
ブライロイウは1893生まれ、1958年にスイスのジュネーヴで亡くなっていますので、生没年はバルトークのほぼ10年ずつ後ですから、相当昔の人です。録音は蝋管録音になるでしょうか、各1~3分の曲がほとんどです。

モルダヴィア編の前に、ワラキア西部のオルテニア編後半のルンクでの録音から3曲だけおかけしておきます。オルテニア編はゴルジとルンクと言う2つの場所での録音で、前回かけた曲は全てゴルジ側でした。13曲目からのルンクでの後半11曲は、やはり様々なドイナに始まり、踊り歌、結婚式の歌、ボチェッツなどが続きます。ドイナは、現在のドイナとは全く印象が異なり、日本の民謡にも近い旋律に聞こえます。13曲目のドイナと15曲目の「ハイドゥークのドイナ」の2曲を続けます。

<13 Doina , Cine N-Are Nici Un Dor 2分31秒>
<15 Doina De Haiducie 1分34秒>

ルンクでの音源の最後23曲目には、葬儀での哀歌Bocetが入っています。M大のK先生から昔のルーマニアには葬儀に雇われる「泣き女(Bocitoare)」がいたとご教示いただきまして、前々回のトランシルヴァニア編のボチェッツで妙に淡々と歌っているという謎が解けたように思いました。しかし、音の動きが少ない節回しが十分に物悲しさを漂わせ、この歌では亡き兄への思慕を感じさせます。様式化されたシンプルな旋律の妙が聞けます。

<23 Bocet 1分49秒>

それではルーマニア東北部のモルダヴィア編に移ります。様々なドイナが8曲、結婚式の歌が5曲、葬送の音楽1曲とボチェッツ1曲、叙事詩的な歌2曲などの28曲が入っています。ドイナはモルダヴィアでも笛と声のダブルトーン演奏や、バグパイプが目立ちます。現在は花形になっているヴァイオリンや金管楽器が入ったのは比較的新しく、それ以前は先にこの地に入って来ていたトルコ系弦楽器のコブザや、更にもっと古い時期からの笛(フルイエル)やバグパイプが多かったとされています。現在はどちらも継承者はほとんどいないのではと思います。その笛とバグパイプのドイナを続けます。3曲目がバグパイプ(チンポーイ)です。

<1 Doina I 1分19秒>

<2 Doina II 2分8秒>

<3 Doina: "Di jele" 1分35秒>

4,5曲目は女性独唱のドイナで、これは現在の「フリーリズムの哀歌」のイメージに近いと思います。5曲目の方をおかけします。古典的なブコヴィナのドイナだそうです。ブコヴィナはモルダヴィア北部からウクライナ西部にかけての地方名です。

<5 Doina: "Mindra florae-i noroscu 1分59秒>

モルダヴィア編でも最も注目の音源は、葬送の音楽とボチェッツだと思います。ブシウムによる葬送音楽から始まります。ブシウムは、ルーマニアとモルドバの山岳居住者と羊飼いが使用する一種のアルペンホルンで、この言葉はラテン語のbucinumに由来し、元々はローマ人が使用した「曲がった角」を意味していました。音程の安定しない原始的な笛で、その明るい音色と埋葬の場面は、一見不釣り合いにも思えます。
このブコヴィナのボチェッツは、1曲目と同じダブルトーンの笛が女性独唱のバックで演奏されていて、これはかなり珍しい演奏のスタイルとのことです。笛は音色が少し似ているため、前にかけたセルビア東部のヴラフ人の「吸血鬼を追い払う曲」を思い出してしまいます。では2曲続けます。

<10 Ritual funebru. Semnal: "De mort" 2分6秒>
<11 Bocet 3分28秒>

地味ではありますが、味わい深く素晴らしい音源の多い3枚組ですので、まだまだかけたい曲はありますが、冗長になりますので、この辺りで一まずこの盤からは終えようと思います。後半の曲は、ファンファーレ・チョカリアなどの参考音源としてかけるかも知れません。

では最後に12、13曲目になりますが、新年の儀礼と、おそらくその場で吹かれると思われるブシウムの独奏を聞きながら今回はお別れです。ブシウムは新年と葬儀のどちらでも吹かれる信号ラッパの一種のようです。新年の曲のバックでは、謎の低音が鳴り続けていますが、これはBuhaiと言う管楽器?のようです。
時間が余りましたら、ウクライナでのブシウムの類似楽器のトレンビータのユネスコ音源までおかけします。trembitaという名前で、ウクライナのHutsuls(フツル人)とポーランドのGorals(グラル人)にも使用されています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<12 Ritualul de Anul Nou: Buhaiul 2分26秒>
<13 Semnal: "Ca la oi" 1分16秒>

<1 Ukraine: Traditional Music~ Overture: Trembitas With Folk Orchestra 55秒>

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2022年6月 3日 (金)

戦前のゴルジのタラフ

今週の放送でかけた音源で、残るはオルテニア編9~11曲目のHore Gorjenesti、Sîrbe、Brîuletulです。曲名を和訳すれば、ゴルジのホラ、スルバ、ブルウで、いずれもルーマニアの代表的な民族舞曲です。番組で解説を入れたように、オルテニアはタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのいるムンテニアの西に位置しますが、いずれもタラフ・ドゥ・ハイドゥークスを思い出してしまうような曲でした。カルパチア南麓のオルテニアのゴルジ村は、古くからタラフたちが活躍してきた所で、バルトークの仕事を引き継いだコンスタンティン・ブライロウが、まず民謡調査地に選んだ場所です。同じVDEから2008年のゴルジでのラウタルたちの新しい録音が登場しています。
演奏者はLPサイズの解説にだけ書いてありますので、以下に転記します。ホラがNelu Busuiocのヴァイオリンと彼のタラフ、スルバはGrigore Murgu(1st Vn), Mihai Lataretu(2nd Vn), Petre Geoagiu(2nd Vn), Gheorghe Magherea(Cb) 、ブルウはCiochina Suchici(1st Vn), Ion Luca Borcan(2nd Vn), Ion Stefu(Cb)です。チェロではなく、コントラバスと言うところが面白いです。そう言えば、シャン・デュ・モンドからは90年代に「トランシルヴァニアの弦楽四重奏」と言う盤がありました。やはりヴィオラは入らない形だったか確認してみますが、何回か先の放送でかけると思います。
タラフ・ドゥ・ハイドゥークスによるこの3つの舞曲の演奏を4~6本目に入れておきましたが、一番有名なホラや、帯踊りのブルウよりも、スルバは8分の6拍子か8分の12拍子と言う特徴がはっきりしているので、分かり易い様に思います。「ウルサリ(熊使い)のホラ」は、代表曲ですが、タラフのシリーズでかけられてなかった曲です。

<9 Hore Gorjenesti 3分29秒>

<10 Sîrbe 3分11秒>

<11 Brîuletul 3分15秒>

Taraf de Haïdouks - Hora ca la ursari

Taraf de Haïdouks - Sirba

Briu

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2022年6月 2日 (木)

ドイナについて

VDE-Galloの「ルーマニアの農村音楽」3枚組のオルテニア編は、ゴルジ村とルンクと言う2つの場所での録音が半分ずつになっています。今週の放送でかけたのは前半のゴルジの方で、ルンクは次週に回そうかとも思いましたが、ルーマニアのシリーズが更に長くなるので、来週のモルダヴィア編の前に特徴的な3曲だけかけました。
ドイナと言うのは、70年代にザンフィルの演奏で聞いて以来「フリーリズムの哀歌」と言うイメージでしたが、「詩的でメランコリックであり、そのためときとしてブルースと対比される。ドイナはゆっくりしたテンポで、自由なリズムで演奏される。同じメロディが異なる歌でリピートされることもある。」とウィキペディアにはありました。ここまでなら、日本で言えば民謡の追分とかが幾分近いでしょうか。追分も日本中にありますし。
しかし、更には 以下もドイナに分類されるようで、クレズマーまで入っているのには驚きましたが、これはクレズマーのレパートリーにドイナも入っているという事だと思います。とにかく、ドイナは哀歌の枠を越えて、もっと広い音楽的概念のようです。

地域別のドイナ
Ca pe luncă - ドナウ川周辺のドイナ。「luncă」とは氾濫原または川岸の森のこと。
De codru - 「codru」は「森」を意味する
Haiduceşti - 「haiduc(ハイドゥク)」は「盗人」「盗賊」を意味する。
Hora lungă - 「長い踊り」を意味するマラムレシュ、トランシルヴァニア地方のドイナ。
Klezmer - ベッサラビア・モルダヴィア地方のユダヤ人によって演奏されてきた。
Oltului - オルト川流域で見られる

その他のドイナ
Ca din tulnic - メロディがトゥルニク(ブチュムBuciumともいう、アルプホルンの一種)を模倣する独特のスタイル
Ciobanul - 羊飼い(チョバン)のドイナ
De dragoste - よくある形式。「dragoste」とは「愛」のことで、通常は愛の歌である。より限定的には、ワラキア南部のドナウ平原地方に特有な種類の歌を指す。
De jale - 柔らかく落ち着いた、悲しげなドイナ。jaleは「悲しみ」の意
De leagăn - 子守唄。「leagăn」とは「揺りかご」の意
De pahar - 飲酒歌。「pahar」とは「グラス」
Foaie verde - 典型的な形式。「緑の葉」を意味する。

今日はオルテニア編の7曲目イオアナ・ピペルのギター弾き語りのDoina, La Fîntîna De Faget 2を探ってみていところでしたが、何も手掛かりがなさそうなので、元の6曲目のマリツァ・グラマによるDoina, La Fîntîna De Fagetを再度上げておきます。この曲は現在の哀歌風のドイナにそっくりに聞こえますが、この曲はオルテニアのゴルジ地方のドイナの典型で、ゴルジではこのタイプが広まったそうです。このタイプがクレズマーにも繋がって行くように思います。3本目は来週の放送には入れなかったルンクのドイナ"Citi pe lume-si petrecura"です。
東欧系ユダヤのクレズマーのドイナと言えば、個人的に真っ先に思い出すのが、リヴァイヴァル・クレズマーの代表的なグループ、ブレイヴ・オールド・ワールドの演奏するバサラビエ(ベッサラビア)と言う曲です。イツァーク・パールマンとのこの映像は、VHSで95年頃ワクワク感一杯で楽しく見ました。これを一本目に入れておきます。

Basarabye

Itzhak Perlman with "Brave Old World" klezmer-band plays classic doyna (Romanian-Jewish style melody) composition "Basarabye" by Moyshe Pinchevski and Bella Gottesman

<6 Doina, La Fîntîna De Faget 2分4秒>

Doina: "Citi pe lume-si petrecura"

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2022年6月 1日 (水)

マリア・ラタレツのサニエ・ク・ズルガライとCîntec De Joc

ブライロイウ録音のVDEガロ3枚組のオルテニア編で、マリア・ラタレツが再度出てきました。301回目の放送でかけたマリア・ラタレツが歌うサニエ・ク・ズルガライを1本目に入れておきます。レス・ポールなどの音源は301回目の放送原稿のブログをご参照下さい。ゼアミdeワールドのカテゴリーで入れてあります。(以下放送原稿を再度)

前にトニ・イオルダッケの演奏でかけた、コミカルな味わいもあるルーマニアン・ダンスの典型のようなイメージのカルシュルとサニエ・ク・ズルガライですが、特にサニエ・ク・ズルガライ(Sanie cu zurgălăi 鐘のあるそり)は、コマネチの床で聞いてから45年以上ずっと耳に残っていた美しい短調の名旋律でした。ルーマニア民謡と書かれていることもありますが、1936年にルーマニアのユダヤ系作曲家Richard Steinによって名歌手MariaTănaseのために作曲され、ルーマニア語の歌詞はLiviu Deleanuによって書かれた当時の流行り歌と見ていいように思います。MariaTănaseはこの曲を低俗と判断したのか歌わず、1937年にSilvian FlorinとPetre Alexandruによって録音されたそうです。
この曲は、英訳でJohnnie is the boy for meとも呼ばれますが、これはエレキギターのレス・ポールを開発したレス・ポールとメアリー・フォード夫妻の1953年のカヴァーバージョンのタイトルで、歌詞内容はすっかりオリジナルとは変わっていますが、マリア・ラタレツの歌唱を元にしているようです。このレスポール版を聞いたシャンソンの大歌手エディット・ピアフがカヴァーし、80年代にはピアフの録音を聞いたヴァイア・コン・ディオスもカヴァーしています。この歌は、盗作疑惑で作曲者のスタインとレスポールの間で法廷闘争になりましたが、スタインが最終的に勝ったそうです。これが音楽の盗作についての最初の訴訟の1つとされています。
最もよく知られているこの曲のオーソドックスな歌唱は、民謡歌手のMaria Lătărețuの歌唱ですので、まずはその音源からおかけします。

<Maria Lataretu / Sanie Cu Zurgălăi ( 1937 )>

8曲目は有名な女性歌手マリア・ラタレツの歌唱で、タイトルのCîntec De Jocは「踊り歌」と訳せると思います。速くてリズミカルなバックに対し、長い旋律を悠然と歌う典型的なワラキアのホラです。マリア・ラタレツは、301回目の放送でサニエ・ク・ズルガライをかけた歌手で、1937年の録音です。

<8 Cîntec De Joc 3分34秒>

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