サニエ・ク・ズルガライやルメ・ルメも
アナトール・シュテファネットのサンク・プラネット盤は、リリースされた97年に売り切れてから聞いてなかったので、サニエ・ク・ズルガライやルメ・ルメも弾いていたのを知って、今更ですが驚きました。しかし、この人の演奏(独奏)はトラッドの領域を越えて、パガニーニのヴァイオリン独奏曲風なテクニックも混じえ、曲によってはアブストラクトな現代音楽風にまで近づいているようにも聞こえます。明日はライヴ映像を少し追ってみます。(以下放送原稿を再度)
サンク・プラネット盤(Anatol Stefanet / Bratch 仏cinq planetes)もストリーミングにありましたので、2曲おかけします。
前々回にファンファーレ・チョカリアでかけた「はかないこの世」を、元のタイトルのLume, Lumeで演奏していて、2分30秒から、その旋律が出てきます。ロマの無常の人生観を映したと思われるこの詫び寂び感溢れる曲を、おそらくロマではないアナトール・シュテファネットが演奏していて、ロマと非ロマでのレパートリーの共有の例と見て良いでしょうか。
先ほどのTrece Vremeaともイメージの重なる曲です。Trece Vremeaは「過ぎ去った時」と訳せると思いますが、このヴレメアと言う単語はロシア語Время(ヴレーミャ)とほぼ同じで、ルーマニア語にはラテン語だけでなくスラヴ語からの語彙も少なからず入っていることが、この単語からも分かります。
<3 Lume, Lume 5分59秒>
他にはオルテニアやマラムレシュなど、ルーマニアの他の地域の音楽も演奏していますが、大分前にかけましたサニエ・ク・ズルガライがありましたので、こちらを時間まで聞きながら今回はお別れです。この曲をアレンジして卓越した技巧を披露する独奏に仕立てています。
サニエ・ク・ズルガライ(Sanie cu zurgălăi 鐘のあるそり)は、1936年にルーマニアのユダヤ系作曲家Richard Steinによって名歌手MariaTănaseのために作曲された、当時の民謡調の流行り歌と見ていいように思います。70年代のコマネチの床に使われたとして3月に特集しました。
<2 Sanie Cu Zurgalai 6分34秒>
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