ドイナについて
VDE-Galloの「ルーマニアの農村音楽」3枚組のオルテニア編は、ゴルジ村とルンクと言う2つの場所での録音が半分ずつになっています。今週の放送でかけたのは前半のゴルジの方で、ルンクは次週に回そうかとも思いましたが、ルーマニアのシリーズが更に長くなるので、来週のモルダヴィア編の前に特徴的な3曲だけかけました。
ドイナと言うのは、70年代にザンフィルの演奏で聞いて以来「フリーリズムの哀歌」と言うイメージでしたが、「詩的でメランコリックであり、そのためときとしてブルースと対比される。ドイナはゆっくりしたテンポで、自由なリズムで演奏される。同じメロディが異なる歌でリピートされることもある。」とウィキペディアにはありました。ここまでなら、日本で言えば民謡の追分とかが幾分近いでしょうか。追分も日本中にありますし。
しかし、更には 以下もドイナに分類されるようで、クレズマーまで入っているのには驚きましたが、これはクレズマーのレパートリーにドイナも入っているという事だと思います。とにかく、ドイナは哀歌の枠を越えて、もっと広い音楽的概念のようです。
地域別のドイナ
Ca pe luncă - ドナウ川周辺のドイナ。「luncă」とは氾濫原または川岸の森のこと。
De codru - 「codru」は「森」を意味する
Haiduceşti - 「haiduc(ハイドゥク)」は「盗人」「盗賊」を意味する。
Hora lungă - 「長い踊り」を意味するマラムレシュ、トランシルヴァニア地方のドイナ。
Klezmer - ベッサラビア・モルダヴィア地方のユダヤ人によって演奏されてきた。
Oltului - オルト川流域で見られる
その他のドイナ
Ca din tulnic - メロディがトゥルニク(ブチュムBuciumともいう、アルプホルンの一種)を模倣する独特のスタイル
Ciobanul - 羊飼い(チョバン)のドイナ
De dragoste - よくある形式。「dragoste」とは「愛」のことで、通常は愛の歌である。より限定的には、ワラキア南部のドナウ平原地方に特有な種類の歌を指す。
De jale - 柔らかく落ち着いた、悲しげなドイナ。jaleは「悲しみ」の意
De leagăn - 子守唄。「leagăn」とは「揺りかご」の意
De pahar - 飲酒歌。「pahar」とは「グラス」
Foaie verde - 典型的な形式。「緑の葉」を意味する。
今日はオルテニア編の7曲目イオアナ・ピペルのギター弾き語りのDoina, La Fîntîna De Faget 2を探ってみていところでしたが、何も手掛かりがなさそうなので、元の6曲目のマリツァ・グラマによるDoina, La Fîntîna De Fagetを再度上げておきます。この曲は現在の哀歌風のドイナにそっくりに聞こえますが、この曲はオルテニアのゴルジ地方のドイナの典型で、ゴルジではこのタイプが広まったそうです。このタイプがクレズマーにも繋がって行くように思います。3本目は来週の放送には入れなかったルンクのドイナ"Citi pe lume-si petrecura"です。
東欧系ユダヤのクレズマーのドイナと言えば、個人的に真っ先に思い出すのが、リヴァイヴァル・クレズマーの代表的なグループ、ブレイヴ・オールド・ワールドの演奏するバサラビエ(ベッサラビア)と言う曲です。イツァーク・パールマンとのこの映像は、VHSで95年頃ワクワク感一杯で楽しく見ました。これを一本目に入れておきます。
Basarabye
Itzhak Perlman with "Brave Old World" klezmer-band plays classic doyna (Romanian-Jewish style melody) composition "Basarabye" by Moyshe Pinchevski and Bella Gottesman
<6 Doina, La Fîntîna De Faget 2分4秒>
Doina: "Citi pe lume-si petrecura"
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