マリア・ラタレツのサニエ・ク・ズルガライとCîntec De Joc
ブライロイウ録音のVDEガロ3枚組のオルテニア編で、マリア・ラタレツが再度出てきました。301回目の放送でかけたマリア・ラタレツが歌うサニエ・ク・ズルガライを1本目に入れておきます。レス・ポールなどの音源は301回目の放送原稿のブログをご参照下さい。ゼアミdeワールドのカテゴリーで入れてあります。(以下放送原稿を再度)
前にトニ・イオルダッケの演奏でかけた、コミカルな味わいもあるルーマニアン・ダンスの典型のようなイメージのカルシュルとサニエ・ク・ズルガライですが、特にサニエ・ク・ズルガライ(Sanie cu zurgălăi 鐘のあるそり)は、コマネチの床で聞いてから45年以上ずっと耳に残っていた美しい短調の名旋律でした。ルーマニア民謡と書かれていることもありますが、1936年にルーマニアのユダヤ系作曲家Richard Steinによって名歌手MariaTănaseのために作曲され、ルーマニア語の歌詞はLiviu Deleanuによって書かれた当時の流行り歌と見ていいように思います。MariaTănaseはこの曲を低俗と判断したのか歌わず、1937年にSilvian FlorinとPetre Alexandruによって録音されたそうです。
この曲は、英訳でJohnnie is the boy for meとも呼ばれますが、これはエレキギターのレス・ポールを開発したレス・ポールとメアリー・フォード夫妻の1953年のカヴァーバージョンのタイトルで、歌詞内容はすっかりオリジナルとは変わっていますが、マリア・ラタレツの歌唱を元にしているようです。このレスポール版を聞いたシャンソンの大歌手エディット・ピアフがカヴァーし、80年代にはピアフの録音を聞いたヴァイア・コン・ディオスもカヴァーしています。この歌は、盗作疑惑で作曲者のスタインとレスポールの間で法廷闘争になりましたが、スタインが最終的に勝ったそうです。これが音楽の盗作についての最初の訴訟の1つとされています。
最もよく知られているこの曲のオーソドックスな歌唱は、民謡歌手のMaria Lătărețuの歌唱ですので、まずはその音源からおかけします。
<Maria Lataretu / Sanie Cu Zurgălăi ( 1937 )>
8曲目は有名な女性歌手マリア・ラタレツの歌唱で、タイトルのCîntec De Jocは「踊り歌」と訳せると思います。速くてリズミカルなバックに対し、長い旋律を悠然と歌う典型的なワラキアのホラです。マリア・ラタレツは、301回目の放送でサニエ・ク・ズルガライをかけた歌手で、1937年の録音です。
<8 Cîntec De Joc 3分34秒>
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