フンガロトンのこの盤Szatmári Bandák(サトゥマール地方のハンガリー民族音楽)は、都市部のジプシー楽団と、農村部の楽団の音楽スタイルの違いを確認できる貴重な音源でした。今もCDで手に入るかどうか不明ですが、YouTubeに上がっていました。ここで演奏されているヴェルブンクは、勇壮な趣のあるヴェルブンクの例として方々で聞く旋律です。後半は緩急のチャールダーシュに変わります。
この盤では、ハンガリー東部サトゥマール地方のヴェルブンコシュやチャールダーシュから、ハンガリーのクレズマー音楽家がかつて演奏していたユダヤ音楽までを、ハンガリー東部のカントリースタイルで演奏しています。サトゥマールはルーマニアとウクライナ西部にもまたがるので、上記のユダヤ音源には、ルーマニア北部マラムレシュで聞いた「Szól A Kakas - The Rooster Is Already Crowing」もあります。かつてユダヤの楽士が演奏していた曲を、ジプシーの楽士が共有していた例の一つです。こちらもいずれかける予定です。
<管弦楽組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 Op.15 - V. Kozjatek (Intermezzo) ネーメ・ヤルヴィ指揮シカゴ交響楽団 5分2秒>
では最後に、ビハリの作ったチャールダーシュ「無一文になって」として前回かけた曲の後半と同じ曲が、Janos Szalay mit seiner Zigeuner-KapelleのCsardasklänge - Zigeunermusikと言う録音にA-Dur-Csardas(イ長調のチャールダーシュ)と言うタイトルで入っていますので、時間まで聞きながら今回はお別れです。この明朗で美しい旋律は、耳について離れない名調子です。ビハリはヴェルブンコシュからチャールダーシュへの過渡期の作曲家なのが、この曲からも見て取れます。次回はこの録音からジプシー楽団の演奏するチャールダーシュ名曲集に移る予定です。
今日は赤いちゃんちゃんこがないので、とりあえず緑のかりゆしを着ました。この時期にちゃんちゃんこは暑いです(笑)
Haydn alla Zingareseから、残るは11曲目の「ガランタ地方の踊りを4つ」です。ガランタと言えば、コダーイのガランタ舞曲をすぐさま思い出しました。それ程馴染みのある曲ではなかったので、今回聞き直してみました。「ブダペスト・フィルハーモニー協会創立80周年を記念して作曲。コダーイはここで、ほとんど忘れられていた古いマジャール人の新兵募集の踊りヴェルブンコシュ(Verbunkos)を復活させた。」と言う曲で、ハーリ・ヤーノシュに続いてヴェルブンコシュが出てきました。そもそもチャールダーシュもヴェルブンコシュの一種で、その中に含まれるとも言われているようです。特筆すべきは、コダーイが幼年時代を過ごしたガランタと言う町は、現在はスロヴァキア南西部に位置していることでしょう。昔はハンガリー領だったこの辺りが都市部のチャールダーシュのスタイルの故郷でもあるようです。ガランタ舞曲の生演奏を1本目、Haydn alla Zingareseの11曲目を2本目に入れました。
Zoltán Kodály: Dances of Galánta. Madaras / Hungarian Radio SO
<11 Galantai Tancok (4 Dances from Galanta) (arr. P. Gulda) 8分1秒>
ハイドンと言えば、交響曲の父、弦楽四重奏曲の父として知られ、私事ですがほぼ40年前の大学オーケストラ在籍時には交響曲104番「ロンドン」のファーストヴァイオリンを弾きましたし、最近も弦楽四重奏で皇帝の2楽章(現在ドイツ国歌になっている皇帝賛歌の旋律による変奏曲)を文化祭やうちの店の催しで弾きました。皇帝はファーストヴァイオリンとチェロを弾きました。どちらもクラシックど真ん中の「THEクラシック」と言う印象ですが、クラシックで弾いた曲では特に楽しかった曲の筆頭になります。ですので、M大学のK先生からHaydn alla Zingareseと言う盤があるよと聞いて、非常に驚いた次第です。時期的にハイドンが影響を受けたのは、チャールダーシュの前身のヴェルブンコシュになると思います。
この盤の1曲目のPiano Trio in G Major, Op. 82 No. 2は、私の番組では外しましたが、CDの副題に "Gypsy"とある通り、終楽章がハンガリー風と言われているようです。確かに速い部分のパッションと、短調の部分での翳りが、ジプシー風とも取れるように思いますが、なかなかブラームスやリストのハンガリー関連曲のようにははっきり分からないので、原曲とジプシー風演奏の比較が出来る「ピアノのためのモデラートとアレグロ」の方を番組では流しました。しかし、この盤の趣旨から言えば、一聴すぐには分からない、いかにもクラシック的な明朗快活な曲中に隠れているジプシー風な味わいを聞き取るべきなのだろうと思います。と言う訳で、今日は1曲目のPiano Trio in G Major, Op. 82 No. 2を上げておきます。
Piano Trio in G Major, Op. 82 No. 2, Hob. XV:25 "Gypsy": Keyboard Trio No. 25 in G Major
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