ヴェルブンコシュ特集 +大人の部室 第1部
ゼアミdeワールド324回目の放送、日曜夜10時にありました。31日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はロビー・ラカトシュの「ビハリの想い出」のみにしておきます。
もう一つお知らせですが、今週と来週のラヂバリの「大人の部室」に出ます。お相手は、俳句チャンネルのすずめさんです。とても楽しい収録でしたが、終わってから言い忘れたことを次々思い出しました(笑) 放送は30日19:45と再放送が1日17:15(答える側)、6日19:45と再放送が8日17:15(聞き手)です。パーソナリティ間の15分のトーク番組です。宜しければ是非お聞き下さい。
ハンガリー音楽の5回目になります。今回は予告していましたヴェルブンコシュ特集にしたいと思います。チャールダーシュの前身に当たるハンガリーの舞曲です。
ヴェルブンコシュは18世紀の終わりから19世紀の中頃にかけ、ハンガリーで展開したダンス音楽の一スタイルで、募兵活動で使われた男性の踊り、ヴェルブンクを基礎とし、語源も募兵を意味するドイツ語のWerbungに由来しています。
ヴェルブンコシュに使われている旋律要素の起源を辿って行くと、ハンガリー民俗器楽の伝統的要素の他、イスラム世界・中近東諸民族・バルカンの要素、スラヴ諸民族の要素、ルーマニアの要素、更にウィーン、イタリアの要素などを見い出せるようです。
音楽的にはいかにも募兵らしい勇壮な曲調から、洗練された優美な音楽まで色々と聞き取れます。まずは優美な方の曲として、前に「エチェル村の結婚式」からかけた「ビハリの想い出」を、ロビー・ラカトシュも演奏していますので、こちらをおかけしますが、その前に先日の解説を再度入れておきます。
「エチェル村の結婚式」の7曲目に入っているのは、自身の楽団を率いて世界的に活躍したジプシーの名ヴァイオリニストで、チャールダッシュの前進の後期ヴェルブンコシュ音楽の代表的作曲家だった19世紀初頭のビハリ・ヤーノシュを偲ぶ「ビハリの想い出」と言う曲です。彼は古い大衆歌曲をヴェルブンコシュの旋律として取り入れた大衆的な作曲家でしたが、ウィーン風なロマンティックな旋律の作曲家でもあったそうです。「ビハリの想い出」の中には彼の作品から5曲が取り上げられています。ラカトシュの演奏には、「エチェル村の結婚式」にはなかった曲も入っています。
<Roby Lakatos Ensemble Medley: Memory of Bihari / Hejre Kati 7分2秒>
勇壮な趣のあるヴェルブンクの例としては、ハンガリー東部サトゥマール地方のヴェルブンコシュやチャールダーシュから、ハンガリーのクレズマー音楽家がかつて演奏していたユダヤ音楽まで取り上げたフンガロトンのSzatmári Bandák(サトゥマール地方のハンガリー民族音楽)が秀逸で2曲目のヴェルブンクをおかけします。
<Hungarian Verbunk, Slow & Quick Csárdáses (Progress) 6分54秒>
もう一曲ヴェルブンクの例として、1988年のハンガリアン・ダンス・ハウス・フェスティヴァル第7回のフンガロトン盤(国内盤はアルファエンタープライズ)から、ヘゲドゥーシュ・アンサンブルの演奏でおかけします。こちらは70年代のダンスハウス以降の傾向で、トランシルヴァニア(エルデーイ)色が強い演奏です。
<Hegedős Maros Menti Verbunk 3分15秒>
クラシック作品にヴェルブンコシュが使われた例としては、コダーイのハーリ・ヤーノシュの間奏曲や、前回の終わりに名前の出たガランタ舞曲が有名です。ハーリ・ヤーノシュは元はオペラですが、管弦楽組曲版の間奏曲は、放送内でかけられますので、今回はこちらをおかけしておきます。勇壮さと優美さとエキゾチックな哀愁が複雑に入り混じる魅力的な曲だと思います。
<管弦楽組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 Op.15 - V. Kozjatek (Intermezzo) ネーメ・ヤルヴィ指揮シカゴ交響楽団 5分2秒>
では最後に、ビハリの作ったチャールダーシュ「無一文になって」として前回かけた曲の後半と同じ曲が、Janos Szalay mit seiner Zigeuner-KapelleのCsardasklänge - Zigeunermusikと言う録音にA-Dur-Csardas(イ長調のチャールダーシュ)と言うタイトルで入っていますので、時間まで聞きながら今回はお別れです。この明朗で美しい旋律は、耳について離れない名調子です。ビハリはヴェルブンコシュからチャールダーシュへの過渡期の作曲家なのが、この曲からも見て取れます。次回はこの録音からジプシー楽団の演奏するチャールダーシュ名曲集に移る予定です。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<5 A-Dur-Csardas 3分4秒>
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