フバイのScenes de la Csarda(酒場の情景)ですが、来週の放送では8,3,4番を取り上げましたが、今週は5番「バラトン湖の波の上で」と12番でしたから、この2曲の他の映像を当たってみました。シャーンドル・デキ・ラカトシュの映像は、1968年と出ているものもありましたが、80年代位でしょうか、こちらのカラーの方を上げておきました。ビハリ・ヤーノシュ直系の子孫と言われるロビー・ラカトシュとの関係は不明ですが、ロビーの叔父のシャーンドル・ラカトシュと並んで、80年代から音源を多く見かけたように思います。先日のジェルジ・ラカトシュについては不明のままですが、現在62歳位のジプシー・ヴァイオリニストがいるので、おそらくは同一人物で、もしかしたらロビー・ラカトシュの兄か親戚に当たるのでしょうか? フンガロトンのGyörgy Lakatos and His Gipsy Band / Souvenir from the Hortobágyを扱ったのは、90年代だったと思います。ハンガリー東部の国立公園で世界遺産にもなった牧草地ホルトバージで覚えていました。
クラシック演奏では、ヨーゼフ・シゲティの5番の音源もありますが、3番で素晴らしい生演奏も入れる予定ですので、5番の方は気になるヴァイオリニストMischa Weisbord (1907-1991) Jewish-Russian violinistの音源で入れておきます。12番"Pici tubiczam" (My Little Pigeon 「私の小鳩」)の方は、今週の番組でかけたイェネー・フバイの自作自演の音源です。おそらく晩年の録音だと思いますが、全くそう思えない素晴らしい演奏です。
Hubay: Scenes de la Csarda No.5 Hullámzó Balaton
Mischa Weisbord : Scènes de la Csárda, "Hullámzó Balaton"
Scenes de la Csarda No. 12, Op. 83, "Pici tubiczam" (My Little Pigeon)
フバイの「バラトン湖の波の上で」の映像を見ていて、クラシック演奏以外で特に感銘を受けたのは今日の1本目です。こう言うジプシー風な装飾技巧こそ命だと思います。映像に出てくるジプシー・フィドラーのヴァイオリン譜は、私も持っていますが、「バラトン湖の波の上で」も旋律そのものが書かれているだけです。それをそのまま弾いても、哀愁味溢れる美しい旋律があるだけですが、そこへポルタメント(音程のすり上げ、すり下げ)や細かい装飾音が付いてこそ、この曲は生きて来ると思います。
この旋律はフバイの書いたオリジナルのメロディか、他のチャールダーシュやハンガリー舞曲と同様に、ジプシーの原曲があるのかが、気になるところです。ブラームスと違ってフバイの場合は、おそらくハンガリー語で当たらない限り資料が見当たらないのではと思います。Scenes de la Csarda(酒場の情景)は、この曲を含め14曲もありますし。329回目の放送でも言っていますが、しばしば『チャールダーシュの情景』と訳されているのを見かけますが、チャールダーシュの最後のsがなく、チャールダ本来の意味は「酒場」あるいは「居酒屋」ですので、「酒場の情景」と取る方が自然だと思います。
ハンガリー西部に位置するバラトン湖ですが、「ハンガリーの海」とも呼ばれる大きな湖で、面積は595 km2ですから琵琶湖(670.4 km²)よりは少し小さいことが今回調べて分かりました。2本目にこの美しい湖の観光映像を入れておきます。
イェネー・フバイと言えば、ブラームスとの関係が深かった19世紀の大ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムから教えを受けたこととか、20世紀前半の大ヴァイオリニスト、ヨゼフ・シゲティや、後に指揮者に転向したユージン・オーマンディにヴァイオリンを教えたこと、チェリストのダヴィッド・ポッパーが室内楽演奏のパートナーだったことなどが有名です。ヴァイオリニストとしてのフバイは、ブラームスやフランコ・ベルギー派ヴァイオリンの巨匠ヴュータンから称賛を受けていました。
このようにクラシック音楽の中心にいながらも、フバイの作品にはハンガリーの民族色を出した曲もありまして、6年ほど前にライコー・ヤング・ジプシー楽団の演奏で、ハンガリーで一番大きなバラトン湖をテーマにした「バラトン湖の波の上で」と言う曲をかけました。この曲もジプシー楽団がよく取り上げる曲で、ラッサンの部分に当る哀愁の名旋律に始まり、後半はフリスカの急速な部分に当たりますから、これもチャールダーシュ的な作品と見て良いと思います。
今回はこの曲をクラシックの演奏とジプシー楽団の演奏の2つを続けておかけします。最初はイェネー・フバイの自作自演でピアノ伴奏はオットー・ヘルツ、2曲目はロビー・ラカトシュの叔父に当たるジェルジ・ラカトシュと彼のジプシー楽団による演奏です。Souvenir from the Hortobágyに入っています。
<イェネー・フバイ & Otto Herz Scènes de la csárda No. 5 "Hullámzó Balaton", Op. 33 (Version for Violin & Piano) 5分41秒>
<György Lakatos and His Gipsy Band / Souvenir from the Hortobágy ~On the waves of lake Balaton 6分12秒>
チャールダーシュは、ハンガリー語で「酒場」という意味のチャールダ csárdaに由来しますが、この言葉は直接にはハンガリー音楽に大きな貢献をしたユダヤ系作曲家ロージャヴェルジ・マールクの作った楽曲の名前から広まったという事ですので、この人の英語のウィキペディアに載っていたフンガロトンの音源Rózsavölgyi: Ballroom Dances (17 dances and dance -sequences)を当たって見ました。チャールダーシュと言う曲名では見当たりませんでしたが、2曲目のStinning Tune, for stringsが他のサイトにはSerkento (Stimulating Csardas)と出ていて、どうやらチャールダーシュに当たるようです。この曲を含むハンガリー的な曲調が感じられるヴェルブンコシュ他4曲を続けておかけします。
<First Hungarian Round Dance - Halljuk! - Hear! Hear! 2分36秒>
<Serkento (Stimulating Csardas) 2分32秒>
<First Hungarian Round Dance - III. Toborzó - Verbunkos 1分15秒>
<Sound of Hope from the East - III. Toborzó - Verbunkos 2分4秒>
では最後に「チャールダーシュの女王」のもう一つの演奏、アンネリーゼ・ローテンベルガー, オリヴェラ・ミリャコヴィチ, ニコライ・ゲッダ, ウィリー・マッテス指揮グラウンケ交響楽団&バイエルン国立歌劇場合唱団の演奏から、最初にかけた曲を再度聞きながら今回はお別れです。先ほどのハンガリー盤程には泥臭くなく、すっきりしたウィーン的な演奏のように思います。時間が余りましたら、ハンガリー盤から他の一曲Csárdáskirálynő - Az asszony összetörをおかけします。
気になるのは、エメリッヒ・カールマンとロージャヴェルジ・マールクは、二人ともユダヤ系の作曲家と言う点です。チャールダーシュにも特徴的なジプシー音楽由来のエキゾチックな増二度音程は東欧系ユダヤの音楽に頻繁に出て来ますので、その関係性をまた探れそうならゼアミブログで取り上げてみたいと思っています。次回はイェネー・フバイとダヴィッド・ポッパーの音楽を取り上げる予定です。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<Die Csárdásfürstin · Operette in 3 Akten (Highlights): Heia, heia, in den Bergen ist mein Heimatland (Sylva & Chor - Boni - Feri, 1.Akt) 3分17秒>
<Csárdáskirálynő - Az asszony összetör 5分11秒>
ツィゴイネルワイゼンのラストの急速なAllegro molto vivaceでは、フランツ・リストの『ハンガリー狂詩曲第13番』から引用されています。この曲は8分33秒ありますが、終わり2分位がその箇所です。超絶技巧で名高く「リストの再来」と呼ばれた、本国ハンガリーの名ピアニスト、ジェルジ・シフラの演奏です。シフラの両親はジプシーの家系で、父親はパリでピアノやツィンバロムを弾いていた音楽家だったそうです。
Liszt - Hungarian Rhapsody No. 13 (Audio+Sheet) [Cziffra]
ツィゴイネルワイゼンは、3部からなっていて、いくつかのハンガリー民謡・大衆音楽の旋律を組み合わせて作曲されています。弱音器を付けて演奏される中間部のもの哀しく美しいメロディは、「ジプシーの月」というタイトルでポピュラー・ソングとしてもヒットしていますが、19世紀ハンガリーの作曲家Elemér Szentirmayの曲の引用(あるいは盗用?)と言う説もあるようです。曲名はCsak egy szép lány van a világonと言う曲で、翻訳にかけると「世界にたった一人の美少女」と出て来ました。この曲をパンフルートとヴァイオリン他の編成で演奏しているVDE-Galloの音源がありますので、次におかけします。
<Patrick Kersalé, Bernard Darmon & Claude Aylestock / Folk Songs of Central Europe for Pan Flute ~Csak egy szép lány van a világon 1分53秒>
ツィゴイネルワイゼンは、3部からなっていて、いくつかのハンガリー民謡・大衆音楽の旋律を組み合わせて作曲されています。弱音器を付けて演奏される中間部のもの哀しく美しいメロディは、「ジプシーの月」というタイトルでポピュラー・ソングとしてもヒットしていますが、19世紀ハンガリーの作曲家Elemér Szentirmayの曲の引用(あるいは盗用?)と言う説もあるようです。曲名はCsak egy szép lány van a világonと言う曲で、翻訳にかけると「世界にたった一人の美少女」と出て来ました。この曲をパンフルートとヴァイオリン他の編成で演奏しているVDE-Galloの音源がありますので、次におかけします。
<Patrick Kersalé, Bernard Darmon & Claude Aylestock / Folk Songs of Central Europe for Pan Flute ~Csak egy szép lány van a világon 1分53秒>
ツィゴイネルワイゼンのラストの急速なAllegro molto vivaceでは、フランツ・リストの『ハンガリー狂詩曲第13番』から引用されています。この曲は8分33秒ありますが、終わり2分位がその箇所です。超絶技巧で名高く「リストの再来」と呼ばれた、本国ハンガリーの名ピアニスト、ジェルジ・シフラの演奏です。シフラの両親はジプシーの家系で、父親はパリでピアノやツィンバロムを弾いていた音楽家だったそうです。
<Hungarian Rhapsody No. 13 in A minor, S. 244 (Remastered 2021) 8分33秒>
「暗い日曜日」の陰鬱なムードを一掃するために、番組でかけたCsardasklänge - Zigeunermusikの明るいチャールダーシュ3曲は爽やかで良い曲ですが、一般に知られているとは言い難いと思います。放送ではかけませんでしたが、この音源も実はモンティのチャールダーシュから始まっています。一般にチャールダーシュと聞くと、モンティの曲のみを思い浮かべる人がほとんどなのは、仕方ないことなのかなと改めて思います。
3曲目だけOriginal ungarische Zigeunerkappel Kalman Lendvayで、他の2曲は前と同じでJanos Szalayの楽団の演奏です。曲名の、Über die Theissが「ティサ川を越えて」、Die Stadt ist voll von Akazienblütenは「街はアカシアの花でいっぱい」、Gelbes Amselnestは「黄色いクロウタドリの巣」と訳せると思います。2曲目などは、オーストリア風な印象が強いように思いました。チャールダーシュとシュランメルなどオーストリア民族音楽の比較考証は、新たな探りどころのように思います。
<Über die Theiss (Tiszan innen dunan tui) 2分40秒>
<Die Stadt ist voll von Akazienblüten (Tele van a varos akacfa viragal) 1分12秒>
Csardasklänge - Zigeunermusikには、Hirtenlied (Bercsenyi dal es csardas)と言う曲の後半に、「エチェル村の結婚式」のチャールダーシュハ短調の旋律が登場します。こちらもJanos Szalay mit seiner Zigeuner-Kapelleの演奏です。
ビクターJVCとフンガロトンの演奏者名を照合してなくて最近になって知ったことですが、ビクターJVCワールドサウンズのシリーズの「神技のジプシー・ヴァイオリン」のラースロー・ベルキの演奏にも、この同じチャールダーシュが入っていました。この盤の録音は1992年で、彼は1997年に急逝しています。フンガロトンの「エチェル村の結婚式」は1975年くらいの録音だと思いますが、こちらもラースロー・ベルキがリーダーで、これまでかけてきました通り、全盛期のもの凄い演奏を記録しています。ビクター盤より、やはり凄いかなと思いました。
「神技のジプシー・ヴァイオリン」は、いつでも手に入ると思っていたら、ビクターとキングの民族音楽の両シリーズ共、メーカー在庫限りで、ほとんどが廃盤同然。アマゾンでは2万の高値を付けていました。幸い格安盤がたまたま手に入りまして、今回かけている曲を何曲も確認しました。2,3回先でこの盤を取り上げる予定です。
今回の放送でかけた私が1977年頃に録ったFM番組の谷本一之さんが担当された「世界の民族音楽」の時間にかかったチャールダーシュもYouTubeがあればと思いますが、こちらは雲をつかむような感じです。上記の作者不詳チャールダーシュハ短調と並んで、典型的なタイプとして記憶していた曲です。1本目に「エチェル村の結婚式」のチャールダーシュハ短調を再度入れておきます。2本目がCsardasklänge - ZigeunermusikのHirtenliedです。
まずは前回の最後にかけて途中までになっていた曲から始めます。ビハリの作ったチャールダーシュ「無一文になって」として前々回かけた曲の後半と同じ曲が、Janos Szalay mit seiner Zigeuner-Kapelleの演奏に、A-Dur-Csardas(イ長調のチャールダーシュ)と言うタイトルで入っていますので、こちらを再度おかけします。この明朗で美しい旋律は、耳について離れない名調子です。
Csardasklänge - Zigeunermusikに戻りまして、Hirtenlied (Bercsenyi dal es csardas)と言う曲の後半は、先ほど出てきた「エチェル村の結婚式」のチャールダーシュハ短調の旋律が登場します。こちらもJanos Szalay mit seiner Zigeuner-Kapelleの演奏です。
「暗い日曜日」の陰鬱なムードを一掃するために、Csardasklänge - Zigeunermusikから、明るいチャールダーシュ3曲を続けます。3曲目だけOriginal ungarische Zigeunerkappel Kalman Lendvayで、他の2曲は前と同じでJanos Szalayの楽団の演奏です。曲名の、Über die Theissが「ティサ川を越えて」、Die Stadt ist voll von Akazienblütenは「街はアカシアの花でいっぱい」、Gelbes Amselnestは「黄色いクロウタドリの巣」と訳せると思います。2曲目などは、オーストリア風な印象が強いように思いました。これらを聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<Über die Theiss (Tiszan innen dunan tui) 2分40秒>
<Die Stadt ist voll von Akazienblüten (Tele van a varos akacfa viragal) 1分12秒>
<Gelbes Amselnest (Sarga Rigo Feszek) 2分55秒>
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