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2022年10月

2022年10月31日 (月)

Csenyeti Ciganyok(チェニイェティ・ツィガーニョク)

ゼアミdeワールド333回目の放送、日曜夜10時にありました。2日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。Csenyeti Ciganyokで検索して出てきた動画は3本でしたが、番組でかけた曲は1曲のみでした。その1本だけ今日は入れておきます。

ハンガリー音楽の14回目になります。今回はハンガリーの農村ジプシーの音楽の2回目です。前回も言いましたが、ハンガリーの都市部に溶け込んだロマに対し、農村地帯で自分達の言語や習慣を守りながら独立して生活する農村ロマの人々の音楽です。ハンガリー人のために演奏するのではなく、ジプシー自身のための音楽ですので、ロマ語(あるいはロマニ語)で歌われます。ロマ語は、ジプシーが移動前にいた地とされるインド北西部の言葉に近い言語です。
前回キングのワールドルーツミュージックライブラリーの「農村ロマの音楽」からおかけしましたが、今回はハンガリーFonoから出ているCsenyeti Ciganyok(英題 Gypsies of Csenyete - Living Music of a Hungarian Village チェニイェテ村のハンガリー農村ジプシーの音楽)と、農村ロマの音楽の現代的な展開を見せているAndo Dromと言うグループの音源を取り上げます。

演奏の特徴としては、楽器はほとんど使わず、独唱と裏打ちリズムの口ベースのような伴奏の歌唱と指鳴らしが中心になっていて、速い踊り歌のケリマスキ・ディリと、ゆったりとした哀歌または叙情歌のメセラキ・ディリが2つの代表的なスタイルです。メセラキ・ディリは、「聞くための歌」と言う意味のHallgato(ハルガトー)またはLokigili、ケリマスキ・ディリはCsardas(チャールダーシュ)とも呼ぶようです。後者はハンガリー東部に特徴的な呼び方かも知れません。前回のキング盤では、無伴奏に近い演奏が多かったのですが、今回のハンガリー東北部のチェニイェテ村の音源ではギターやツィンバロムなどが伴奏に入ることも多くなっています。

前回キング盤でかけた10曲目のケリマスキ・ディリと同じ曲がチェニイェテ村の音源にもありますので、まずはその曲から続けておかけします。クラリネット系の管楽器タロガトーを真似た演奏で、草笛のように聞こえますが、写真のフィルムを代わりに用いているようです。
チェニイェテ村の音源は24曲目ですが、「ジプシーのチャールダーシュ」と表記があります。

<10 舞曲、 1分18秒>
<24 Ettem Babot, Száraz Babot Eleget (I've Eaten Enough Beans, Dried Beans) 1分5秒>

ではチェニイェテ村の音源の最初から2曲続けますが、物悲しいメセラキ・ディリ系の歌だと思います。2曲目の後半は、「ハンガリーのチャールダーシュ」と「ジプシーのチャールダーシュ」となっています。

<1 Engedelmet Kérek (I Beg Your Pardon) 1分50秒>
<2 A. A Temetó Kapujába (At The Cemetery Gate) B. Erre Gyere, Amerre Én (Come With Me) C. Rák Egye Ki A Szép Szemed (Damn Your Beautiful Eyes) 4分26秒>

少し飛んで5,6曲目ももの哀しいメセラキ・ディリ系のハルガトーで、前回言いましたように、エモーショナルなカンテ・フラメンコに少し似て聞こえるようにも思います。

<5 Kerek Ez Az Erdö (This Big Forest) 1分39秒>

<6 Töltsél, Testvér, Töltsél (Pour, Brother, Pour) 2分53秒>

7,8曲目ですが、7曲目はリズミカルに歌われていて、踊り歌ケリマスキ・ディリのように思いましたが、これも「ジプシーのチャールダーシュ」と表記がありました。8曲目がおそらく同じメロディをヴァイオリンのみで独奏していて、この対比をとても面白く聞きました。

<7 Töltsél, Testvér, Töltsél (Pour, Brother, Pour) 1分19秒>
<8 "Oláhos" (A Song About The Oláh [Vlach] Gypsies) 1分9秒>

この盤は全体にメセラキ・ディリ系の無拍の哀歌ハルガトーが多い印象ですが、11曲目には明らかにリズミカルなケリマスキ・ディリ系の歌が入っています。この曲も「ジプシーのチャールダーシュ」と表記があります。ッダバ、ッディビと裏打ちリズムで入る掛け声が特徴的ですが、この地域のジプシーの間ではチャールダーシュと呼んでいるようです。

<11 Jaj, Anyám, A Vakaró (Oh, Mother, The Bread) 1分7秒>

最初に名前を上げたグループ、アンド・ドゥロムについては、独Network MedienからPhari Mamoと言う盤が出ていましたが、残念ながら売り切れで、ストリーミングにもこの盤の音源では見当たりませんでした。シングル盤の音源などがアップルミュージックにありましたので、代わりにこちらをおかけします。ネットワーク盤ではジプシーやクレズマーなどの東欧音楽を演奏するフランスのブラッチのメンバーが参加していた通り、素朴な農村ジプシー音楽にポップな要素を加えて演奏しています。ッダバ、ッディビの裏打ちリズムの掛け声も入っています。
次回はアンド・ドゥロムで他にかけたい曲がありますので、チェニイェテ村の音源の後半と併せて取り上げる予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Ando Drom / Szi Ek Sej (She Is the One) 6分27秒>

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2022年10月28日 (金)

ハンガリー農村ジプシー音楽の昔と今

ハンガリーの農村ジプシー音楽系のグループと言えば、来週の番組でかけるアンド・ドゥロムより前から活動している1978年に結成された重要なグループ、カイ・ヤグ(Kalyi Jag)を忘れるところでした。ダンスハウスにルーツがある彼らのフンガロトン盤が話題になったのは、90年前後だったように思います。いずれも手元に残ってなかったので動画を見てました。最近らしい音源では幅広くオリエンタルな要素を取り入れていましたが、やはり92年のO SUNO辺りを聞くと活動の原点を感じて安心します。今日の1本目はその全曲、2本目はライブ映像です。アンド・ドゥロムは2008年辺りから活動歴が不明で、カイ・ヤグも2010年からは不明でした。
Nagyecsedi Gyöngyszemek Hagyományőrző Együttesと題する3本目は、2019年の映像のようです。これは最近の農村ジプシー音楽系界隈のサンプルとして面白く見れます。伝統保存の目的で組まれたアンサンブルの舞台のようです。ッダバ、ッディビの裏打ち口ベースも健在で(笑)、この本格的なステージを見て嬉しく思いました。

KALYI JAG EGYÜTTES - O SUNO - AZ ÁLOM

Kalyi Jag - Fáni

Nagyecsedi Gyöngyszemek Hagyományőrző Együttes

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2022年10月27日 (木)

Gypsy Csárdásの謎

来週の放送分の話題になりますが、農村ジプシーの音楽では、速い踊り歌のケリマスキ・ディリと、ゆったりとした無拍の哀歌または叙情歌のメセラキ・ディリが2つの代表的なスタイルです。メセラキ・ディリは、「聞くための歌」と言う意味のHallgato(ハルガトー)またはLokigili、ケリマスキ・ディリはCsardas(チャールダーシュ)とも呼ぶようです。ケリマスキ・ディリをチャールダーシュと呼んでいるのには、正直なところ非常に驚きました。今の所東部の音源のみで確認していますので明確ではありませんが、ハンガリー東部で特徴的な呼び方なのかも知れません。チャールダーシュと言えば、周辺民族の色々な音楽が混合した、都会のジプシーが演奏する洗練された音楽と言うイメージからは、かなりかけ離れています。今日の1本目は都会のジプシー音楽との折衷的な感じですが(踊りと音楽は農村ジプシー系で、伴奏は都会のジプシー楽士でしょう)、2本目は泥臭い農村ジプシーの音楽そのものです。打楽器として牛乳缶がよく使われます。

Cigánycsárdás (Gypsy Csárdás)

Öcsödi cigánytánc

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2022年10月26日 (水)

グラズノフとチャイコフスキーのチャールダーシュ

今日は前に予告していた330回目の放送でかけたグラズノフとチャイコフスキーのチャールダーシュの関連動画を入れておきたいと思います。番組とは違う音源ですが。4月のバレエの舞台は、優美かつエキゾチックで、とても惹きつけられました。チャイコの方は知っていましたが、ライモンダは初めて聞いたもので。明日はハンガリー東部のジプシーが歌い踊るチャールダーシュを見る予定ですが、グラズノフやチャイコフスキーが参考にしたブダペストなど都会のジプシー楽団のチャールダーシュとは全く違います。(以下放送原稿を再度)

今年の4月に知人が出るバレエ公演を松山に見に行きましたが、その際に同じくロシアのグラズノフのバレエ音楽「ライモンダ」でもハンガリー風な曲調が気になりまして、ストリーミングで見つけました。第3幕に出てくる「ハンガリーの踊り」をおかけします。
グランド・コーダもおかけしますが、この曲は聞き覚えがありますので、ジプシーの原曲があるように思います。

Raymonda - Grand Pas Classique Hongrois (Alexandrova, Skvortsov)

Marie-Agnès Gillot e José Martinez - Coda do Grand Pas Classique

ロシアの大作曲家チャイコフスキーもバレエ音楽「白鳥の湖」の第3幕第20曲で「ハンガリーの踊り(チャールダーシュ)」と言う曲を書いています。こちらを次におかけします。

Danse Hongroise "Czardas" - Swan Lake Act 3

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2022年10月24日 (月)

農村ロマの音楽

ゼアミdeワールド332回目の放送、日曜夜10時にありました。26日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。このキング盤のタイトルですが、LPの頃は「農村ジプシーの音楽」だったと思います。どちらも手元にあります。やはりこの音源はYouTubeには見当たりませんので、ケリマスキ・ディリで出てきた映像を2本貼っておきます。

Cigány tánc (Gypsy dance)

Purano Khelipe Khater e Vlasika Roma anda Ungro 1975

ハンガリー音楽の13回目になります。予告通り今回はハンガリーの農村ジプシーの音楽、つまり都会に住むジプシーの職業楽士が作った音楽ではない、真のジプシー音楽の音源をご紹介したいと思います。マジャール人の国、ハンガリーの都市部に溶け込んだロマに対し、農村地帯で自分達の言語や習慣を守りながら独立して生活する農村ロマの人々の音楽です。手元にある音源は、キングのワールドルーツミュージックライブラリーの「農村ロマの音楽」と、ハンガリーFonoのCsenyeti Ciganyok(ハンガリーの農村ジプシーの音楽)の2枚ですが、独Network Medienから出ていたAndo Dromのような現代的な展開を見せているグループの音源もあります。次回キング盤以外を取り上げる予定です。

演奏の特徴としては、楽器はほとんど使わず、独唱と裏打ちリズムの口ベースのような伴奏の歌唱と指鳴らしが中心になっていて、速い踊り歌のケリマスキ・ディリと、ゆったりとした叙情歌のメセラキ・ディリが2つの代表的なスタイルです。
この音源は、これまで聞いてきた都会の定住したジプシーの音楽ではなく、正に「流浪の民」のイメージに近いジプシーの歌声を捉えています。ハンガリー人のために演奏するのではなく、ジプシー自身のための音楽ですので、ロマ語(あるいはロマニ語)で歌われます。ロマ語は、ジプシーが移動前にいた地とされるインド北西部の言葉に近い言語です。音楽はチャールダーシュとは全く違っていて、むしろ同じくジプシーの強い影響下に生まれたスペインのフラメンコの方に近い印象も受けます。
まずは世界的な民族音楽学者だった小泉文夫氏が1964年に現地録音した貴重なキングの音源「農村ロマの音楽 Roma Music in Hungarian Villages」から、6曲続けておかけします。2曲目が哀歌的な叙情歌のメセラキ・ディリで、他は踊り歌ケリマスキ・ディリになります。

01 踊り歌、1分24秒
02 抒情歌、4分12秒
04 踊り歌、1分15秒
06 踊り歌、1分3秒
09 踊り歌、1分56秒
10 舞曲、 1分18秒
 

「農村ロマの音楽」の、1,2,4,6,9,10曲目でした。最後の曲はクラリネット系の管楽器タロガトーを真似た演奏で、草笛のように聞こえますが、写真のフィルムを代わりに用いているようです。
続きまして、12曲目の結婚の歌と、13,14,16,17曲目の踊り歌まで5曲続けておかけします。

12 結婚の歌、2分12秒
13 踊り歌、  49秒
14 踊り歌、 1分4秒
16 踊り歌、 1分39秒
17 踊り歌、 1分32秒
 

終わりの方に飛びますが、21,22曲目の踊り歌と、23曲目の食卓の歌、24曲目の叙情歌まで聞きながら今回はお別れです。22曲目はどこか他で聞いた旋律ですので、もし分かりましたら、またゼアミブログで取り上げます。
 

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

21 踊り歌、 1分13秒
22 踊り歌、 1分27秒
23 食卓の歌、 2分23秒
24 抒情歌  1分29秒

 

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2022年10月21日 (金)

ボックス・チェロとマジャール・ノータとの共演

紛らわしい映像もあるようですが、これは間違いなく「神技のジプシー・ヴァイオリン」のラースロー・ベルキだと思われる映像から、彼の妙技をもっと間近で見られる映像を3本選んでみました。
1本目はボックス・チェロの打弦楽器ガルドンとのデュオで、この楽器はトランシルヴァニアやモルダヴィアのハンガリー系のイメージが強いので、かなり意外な組み合わせです。都会のジプシー音楽家の彼が田舎のハンガリー音楽と共演するという、珍しい図ではないかと思います。1975年ですから、「エチェル村の結婚式」の頃だと思います。
2、3本目はマジャール・ノータ(ハンガリーの大衆歌曲)の伴奏です。昔はハンガリー盤LPで聞くハンガリー音楽は、マジャール・ノータがかなり多かったように記憶しています。ハンガリーの演歌のようなジャンルでしょうか。実はラースロー・ベルキは都会のジプシー楽団の音楽でまず連想するレストランでの演奏はほとんどなく、コンサートでの演奏がほとんどだったそうですが、マジャール・ノータはコンサートスタイルの方になるのではと思います。

A budapesti cigányprímás és a felcsiki népzene esete, 1975

Berki László és cigányzenekara

Kovács Apollónia énekel-kísér-Berki László és zenekara-Kongresszusi Központ(cigánybál)

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2022年10月20日 (木)

イフユ・ラースロー・ベルキのロ短調チャールダーシュ

ハンガリー語のIfj(イフユ)は、ジュニアの意味ですが、この映像が若い頃のラースロー・ベルキなのか、彼の息子なのか、どうもはっきり分かりません。そっくりなのは確かです。若い頃だとすれば、70年代前半位(30歳頃)でしょうか。他にIfj.Berki László és Zenekara(ジュニア・ベルキ・ラースローと彼のバンド)名義になっている映像では、プリマーシュ・ヴァイオリンが他の人の名前でした。ここで演奏しているh-moll csárdás(ロ短調のチャールダーシュ)は、何度も上げているチャールダーシュハ短調の変奏でしょうか。ラッサンの部分は違いますが、速いフリスカの部分はほとんど同じの部分があります。2本目は番組でかけたルーマニアの「ひばり」です。この短い映像しか見当たりませんでした。この映像は80年前後位でしょうか。そして、3本目は日本でビクター盤を録音した92年前後の50歳頃でしょうか。

Ifj.Berki László és Zenekara- h-moll csárdás

Berki László

Berki László Szerzeménye-Bagatell

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2022年10月19日 (水)

チャールダでのチャールダーシュ

「神技のジプシー・ヴァイオリン」と「エチェル村の結婚式」の両方でリーダーだったラースロー・ベルキ。ハンガリーではアジア系ルーツの名残りで苗字・名前の順が主流ですから、ベルキ・ラースローとなりますが、どちらで検索しても出てくる映像に、チャールダ(酒場)でのチャールダーシュがありました。何本か見た中ではチャールダの雰囲気も感じられて一番面白かったです。この和気あいあいの感じですから、メンバーとその家族間での宴の映像かも知れません。中央にでんと座って、たまに煙草も吸っているプリマーシュのヴァイオリニストがラースロー・ベルキですが、おそらく晩年の映像ではないかと思います。聴衆も皆歌詞を知っていて、その場の雰囲気で曲と演奏が決まっていっているように見受けられます。即興的に歌に合わせていく演奏は、凄いと言う他ないです。

Berki László és zenekara-mulatás

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2022年10月18日 (火)

ブラームスのピアノ四重奏曲1番 フォーレ四重奏団 他

いつもはブログを書いてない火曜ですが、先週未消化のトピックを上げておきます。まずブラームスのピアノ四重奏曲1番ですが、早朝BSPのクラシック倶楽部でもお馴染みのフォーレ四重奏団で全曲の動画がありました。とても素晴らしい演奏だと思います。このグループ名ですが、フォーレのピアノ四重奏は聞いたことがないので、聞いてみたいものです。フォーレ四重奏団は、マーラーやリヒャルト・シュトラウスなどのCDがある通り、後期ロマン派に強いイメージがあります。ブラームスは後期ロマン派?と言う疑問は残りますが、この曲を管弦楽編曲したシェーンベルクがブラームス陣営から出発したことを考えれば、やはりブラームスは後期寄りかと思います。シェーンベルク初期の浄夜や「ペレアスとメリザンド」などは、後期ロマン派の極致の名曲です。2本目は番組でかけた終楽章のみですが、これも大変な熱演です。ハーゲンSQのクレメンス・ハーゲンがチェロを弾いています。長くなるので、チャイコフスキーとグラズノフのチャールダーシュは後日また上げようかと思います。

Brahms - piano quartet no 1 g-minor op 25 - Fauré Quartett

Johannes Brahms - Piano Quartet No. 1 in G minor, Op. 25 - 4th movement

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2022年10月17日 (月)

神技のジプシー・ヴァイオリン

ゼアミdeワールド331回目の放送、日曜夜10時にありました。19日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。思った通り、ビクターの「神技のジプシー・ヴァイオリン」そのものの動画はなさそうですので、11曲目のオールド・チャールダーシュと同じ曲が入っている「エチェル村の結婚式」から、作者不詳チャールダーシュハ短調だけ今日は入れておきます。これは何度目かの登場です。ひばり等は水曜以降に。

ハンガリー音楽の12回目になります。今回でハンガリーの都会のジプシー音楽を締めたいと思いますが、ラストに相応しい音源「神技のジプシー・ヴァイオリン」について、9月7日のゼアミブログで少し書いていましたので、編集したものを読み上げます。

演奏者名を照合してなくて最近になって知ったことですが、ビクターJVCワールドサウンズ・シリーズの「神技のジプシー・ヴァイオリン」と、フンガロトンの「エチェル村の結婚式」のリーダーは、同じラースロー・ベルキでした。ビクター盤の録音は1992年で、その僅か5年後の1997年に彼は急逝しています。フンガロトンのハンガリー国立民族舞踊団による「エチェル村の結婚式」のLPはリリースが1977年ですから1975年くらいの録音だと思いますが、これまでかけてきました通り、全盛期のもの凄い演奏を記録しています。ビクター盤より、やはり凄いかなと思いました。
「神技のジプシー・ヴァイオリン」の方は、いつでも手に入ると思っていたら、ビクターとキングの民族音楽の両シリーズ共、メーカー在庫限りで、ほとんどが廃盤同然。アマゾンでは2万の高値も付けていました。幸い格安盤がたまたま手に入りまして、ハンガリーのシリーズでこれまでかけて来た曲を何曲も確認しました。チャールダーシュハ短調以外に、ビハリの思い出、私は一文無し、暗い日曜日、ロージャヴェルジのヴェルブンコシュもありました。

まずは1曲目の「ひばり」からおかけしますが、ルーマニアの最も有名な民族曲をハンガリーのジプシー楽団が彼らなりにアレンジして演奏すると言う刺激的な試みです。これはハンガリーの楽団としては異色の選曲だと思います。92年当時は、まだタラフ・ドゥ・ハイドゥークスも初来日前で、この曲は日本ではゲオルゲ・ザンフィルのパンパイプで知られていた位かも知れません。

<1 ひばり 5分52秒>

チャールダーシュハ短調は、このビクター盤ではオールド・チャールダーシュと言うタイトルになっています。「エチェル村の結婚式」のあの曲を17年後の92年に演奏したら、と言うこれも個人的には大注目で、耳を捉えて離さない演奏でした。フンガロトン盤はハンガリーでの録音ですが、このビクター盤では、ブダペストのレストランでよく聞かれたと言う観光客相手の柔らか目のレパートリーではなく、伝統的なジプシーの楽曲を最高の名手率いる楽団が日本でスタジオ録音した意義は大きかったと思います。

<11 オールド・チャールダーシュ 3分21秒>

何回か前の番組で「私は一文無し」の後半の美しく魅力的な長調の部分と紹介した曲は、「私は一文無し」とは別な曲であることが、この盤のラストを飾っている「4つのハンガリーの歌」と言う曲で分かりました。演奏は短調の曲から始まり、その長調の曲は5分前から出て来ます。短いカデンツのラストに、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の終楽章と、バッハの無伴奏ヴァイオリンのパルティータ3番のガヴォットのフレーズが一瞬出てきてドキッとします(笑) その後、旋律に戻りこの盤を締め括っています。

<12 4つのハンガリーの歌 8分55秒>

では最後に「暗い日曜日」から始まる7曲目の「5つのハンガリーの歌」を時間まで聞きながら今回はお別れです。「暗い日曜日」は、「自殺者の出る曲」と言う都市伝説があることで有名で、1936年にフランスのダミアがカヴァーしてから、シャンソンの作品と誤解されることが多かった曲です。ビハリの思い出、私は一文無し、ロージャヴェルジのヴェルブンコシュは、時間の都合で今回は割愛します。次回はハンガリーの農村ジプシーの音楽、つまり都会に住むジプシーの職業楽士が作った音楽ではない、真のジプシーの音楽に移ります。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 5つのハンガリーの歌 8分14秒>

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2022年10月14日 (金)

ナターシャ・グジー / 広きドニエプルに吹き荒ぶ嵐

今週の番組でかけた音源は、チャイコフスキーとグラズノフが残っていますし、最近のブラームスのピアノ四重奏曲1番の動画でも上げたいものがありますが、それは明日か来週の火曜に回して、昨日しこちゅ~ホールで聞いてきたナターシャ・グジーさんのコンサートが大変に素晴らしかったので、今日は動画を一本上げておきます。
このウクライナ民謡「"Реве та стогне Дніпр широкий" Наталія Гудзій  広きドニエプルに吹き荒ぶ嵐」については、前に他の演奏を幾つか番組でかけましたし、ブログにも何度も上げています。ナターシャさんもこの曲を歌っていて、彼女の歌唱でCDにないかずっと探していましたが、昨日会場で聞いたら、やはりこのYouTubeだけのようでした。
実は11/13の文化祭で私たちの今治市民弦楽合奏団でこの曲を弾くことになっておりまして、この半年ほど練習して来ました。楽譜はうたごえ喫茶時代のものを入手しまして、4部合唱をヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロに分けて弾きます。この関鑑子さん訳詞の楽譜では、曲名は「ドニエプルの嵐」になっています。月曜の練習ではチェロ、木曜の練習ではファースト・ヴァイオリンを弾いてきましたが、文化祭はチェロで出ます。民謡なので作者不詳と思っていたら、このビデオの解説に、曲:D.クリザニフスキーと出ていました。

"Реве та стогне Дніпр широкий" Наталія Гудзій  広きドニエプルに吹き荒ぶ嵐 ナターシャ・グジー

”広きドニエプルに吹き荒ぶ嵐”
詩:T.シェフチェンコ 曲:D.クリザニフスキー 訳詞:大胡敏夫 
バンドゥーラアレンジ:ナターシャ・グジー

この詩はタラス・シェフチェンコの詩集「コブザーリ」に収められている。
19世紀末ごろから歌い続けられているのであろうこの歌は、今なおウクライナの人々に愛されていて、第2の国歌とも言うべき存在である。
(大胡敏夫 編 「ウクライナ歌集」より)

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2022年10月12日 (水)

ジネット・ヌヴーのブラームス

ヌヴーのブラームスを初めてLPで聞いたのは、もう40年ほど前で、当時から極め付きの名盤と呼ばれていました。鬼気迫る演奏に驚きました。彼女は30歳の若さで飛行機事故で亡くなり、遺体の腕には愛器のストラディヴァリウスが抱きしめられていたそうです。ヌヴーの死から4年後の1953年には、ジャック・ティボーも飛行機事故で亡くなっています。彼の愛器もストラディヴァリウスでした。20世紀前半の大ヴァイオリニストが二人も続けて亡くなり、当時の聴衆は大きな衝撃を受けたことでしょう。今ではヌヴーは伝説の名ヴァイオリニストとして、様々なコンピレーションが登場し、ブラームスもヴァイオリン協奏曲だけでなく、ヴァイオリン・ソナタ3番などもあって、遅ればせながら愛聴しています。ショーソンの詩曲の音源は昔から知ってますが、こちらも最高です。今日の動画はイッセルシュテット指揮のブラームス / ヴァイオリン協奏曲全曲で、番組でかけた第3楽章は32分位からです。その後にヴァイオリン・ソナタ3番も入っています。
明日はウクライナのバンドゥーラ弾き語りの歌姫ナターシャ・グジーのコンサートに行くため、店をお休みし、ブログアップも出来ないかも知れません。夕方かと思っていたら、チケットをよく見たら昼間のコンサートでした。この機会を逃すと愛媛で聞く機会はないかも知れませんので、店を休むしかなく。m(__)m(以下放送原稿を再度)

ブラームスの代表作の一つ、45歳の年に作曲したヴァイオリン協奏曲でも、終楽章の3楽章でジプシー風の情熱的な音楽を書いています。クラシック作品のフィナーレとして取り入れたのは、おそらくハイドンかブラームスが最初だと思いますが、それ程に若い頃のハンガリー舞曲での心躍る思いが強かったのだろうと思います。飛行機事故のため1949年に30歳の若さで亡くなったジネット・ヌヴーのヴァイオリン、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団の、名演の誉れ高い録音でおかけします。

<ブラームス / ヴァイオリン協奏曲 3楽章 ジネット・ヌヴー他 8分6秒>
Brahms - Violin Concerto + Sonata n°3 / Presentation + New Mastering (Cent. rec. : Ginette Neveu)

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2022年10月10日 (月)

ブラームスのRondo alla Zingarese

ゼアミdeワールド330回目の放送、日曜夜10時にありました。12日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はピアノ四重奏曲第1番 第4楽章のみです。

ハンガリー音楽の11回目になります。今回はジプシーの原曲がある訳ではありませんが、ジプシー音楽の影響が強く出たクラシック作品をいくつかおかけしたいと思います。

5年前にもかけた曲ですが、ブラームスが28歳の年に書いたピアノ四重奏曲第1番のラスト、第4楽章から始めます。ジプシー風のロンドとブラームス自身によって銘打たれたこの情熱的な楽章は、渋い室内楽の中で特に人気のある一曲と言っていいと思います。現代音楽の作曲家シェーンベルクが管弦楽編曲したことでも知られています。ピアノがマルタ・アルゲリッチ、ヴァイオリンがギドン・クレーメル、ヴィオラはユーリ・バシュメト、チェロがミッシャ・マイスキーというオールスター級のメンバーが揃った名盤です。

<4 ブラームス / ピアノ四重奏曲第1番 第4楽章 8分17秒>
Brahms: Piano Quartet No. 1 in G Minor, Op. 25 - IV. Rondo alla Zingarese

ブラームスの代表作の一つ、45歳の年に作曲したヴァイオリン協奏曲でも、終楽章の3楽章でジプシー風の情熱的な音楽を書いています。クラシック作品のフィナーレとして取り入れたのは、おそらくハイドンかブラームスが最初だと思いますが、それ程に若い頃のハンガリー舞曲での心躍る思いが強かったのだろうと思います。飛行機事故のため1949年に30歳の若さで亡くなったジネット・ヌヴーのヴァイオリン、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団の、名演の誉れ高い録音でおかけします。

<ブラームス / ヴァイオリン協奏曲 3楽章 ジネット・ヌヴー他 8分6秒>

ロシアの大作曲家チャイコフスキーもバレエ音楽「白鳥の湖」の第3幕第20曲で「ハンガリーの踊り(チャールダーシュ)」と言う曲を書いています。こちらを次におかけします。

<モスクワ・インターナショナル・シンフォニック・オーケストラ 白鳥の湖~第3幕:No.20 ハンガリーの踊り 3分11秒>
 

今年の4月に知人が出るバレエ公演を松山に見に行きましたが、その際に同じくロシアのグラズノフのバレエ音楽「ライモンダ」でもハンガリー風な曲調が気になりまして、ストリーミングで見つけました。第3幕に出てくる「ハンガリーの踊り」をおかけします。
時間が余りましたら、グランド・コーダもおかけしますが、この曲は聞き覚えがありますので、ジプシーの原曲があるように思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<マリインスキー劇場管弦楽団 & Victor Fedotov RAYMONDA ACT III Grand Pas Hongrois 4分12秒>
<マリインスキー劇場管弦楽団 & Victor Fedotov RAYMONDA ACT III Coda 2分15秒>

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2022年10月 7日 (金)

77歳のイェネー・フバイの至芸

モンティのチャールダーシュがこれ程人気があるので、他のチャールダーシュも、もっと弾かれても良いのではと常々思いますが、ヴァイオリンの難易度から言えば、モンティが「2」とすれば、ツィゴイネルワイゼンは「10」、ブラームスのハンガリー舞曲の1番は編曲にもよりますが「5」、フバイのScenes de la Csardaのシリーズなどは「5」から「8」かそれ以上なのではと、多少の経験者としては推測します。それ位他のチャールダーシュは難しいです。ですので、ツィゴイネルワイゼンをモンティの曲程TVで見かけないのも納得です。モンティの曲はキャッチーで取り組みやすいです。
フバイのScenes de la Csardaは、今回取り上げた3,4,5,8,12番以外に9曲もありますが、ハンガリーのシリーズが更に長くなるので、来週は「エチェル村の結婚式」でも弾いていたラースロー・ベルキのビクターJVC盤「神技のジプシー・ヴァイオリン」を聞いて、ハンガリー・都会のジプシー音楽シリーズを締める予定です。その後は農村ジプシーの音楽、マジャールの民謡、バルトーク作品、現代のハンガリートラッドと進みます。
今日の動画は、1935年のイェネー・フバイ77歳の時のHungarian Fantasyの自作自演映像。これはもう素晴らしいという他ないです。弓の動き、左手のフィンガリングなど完璧の上にも完璧。全盛期はどんなだったのだろうかと思います。(コメントにSimply the Greatest!!! Father of all violinist!!! 76 years old...とありました。76の時かも知れません)

Hubay plays (VIDEO)-1935-

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2022年10月 6日 (木)

Scenes de la Csardaの8番 So They Say

Music & Artsの「Hubay, J.: Violin Music」では冒頭を飾っていますが、1896年に書かれたScenes de la Csardaの「8番」でYouTube検索すると、これまで見てきた5番、4番、3番と比べて、はるかに少ないことが分かりました。14曲の中ではマイナーかも知れませんが、特に後半のフリスカの速い部分は華やかで素晴らしいと思います。
この曲の副題は、英独仏入り混じって"So They Say" in A minor(Tavern Scenes; Csárda Scenes; Csárda-Scenen)("They Say They Don't Give Me"; "À ce qu'ils disent")、冒頭の旋律についてはThe opening melody is that of the Slovak national anthem Nad Tatrou sa blýskaと作品リストに記述がありました。スロヴァキア国歌とは大変興味深いです。ギリシア語起源で英語のTavernとハンガリー語のCsárdaは、全く同義の「酒場、居酒屋」と取っていいようです。2本目には、副題がIt is Sadとあります。これも気になります。
1本目が番組でかけたCharles Castlemanの音源、2本目は当初かけようとしていて外れていたFerenc Szecsődi & Istvan Kassai(フェレンツ・セチョディ Vn、イシュトヴァン・カシャイ Pf)コンビによるイェネー・フバイのヴァイオリン音楽シリーズの1枚です。ハンガリーのフンガロトンから出ています。
素晴らしい演奏を聞かせるCharles Castlemanについて気になっていたので、プロフィールから誰に師事していたかの部分だけ以下に転載します。6歳でアーサー・フィードラーと共演! 日本ではほとんど知られてない素晴らしい演奏家が、アメリカには沢山いるなと今回も思いました。

Charles Castleman (チャールズ・キャッスルマン)。アメリカの男性ヴァイオリニスト。1941年5月22日生まれ。
マサチューセッツ州クインシーに生まれ、4歳のときにオンドリチェクにヴァイオリンを習い始めた。6歳のとき、アーサー・フィードラーとボストン・ポップス・オーケストラのソリストとしてデビュー。9歳のとき、ボストンのジョーダン・ホールとニューヨークのタウン・ホールでソロ・リサイタル・デビュー。1950年から51年のアーロン・リッチモンドのセレブリティ・シリーズで、ミッシャ・エルマン、ヤッシャ・ハイフェッツ、アイザック・スターンと共演した。1959年から63年年にフィラデルフィアのカーティス音楽院でガラミアンに師事し、またギンゴールド、セーリング、オイストラフからも指導を受けた。

<Charles Castleman, Mendi Rohan & Eastman Chamber Orchestra / Scenes de la Csarda No. 8, Op. 60, "Azt mondjak" (So they say) [arr. for violin and orchestra] 9分59秒>

It is Sad (Scenes de la Csárda No. 8, Op.60)

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2022年10月 5日 (水)

ヘイレ・カティ

4番のヘイレ・カティは、Carl Fleschのヒストリカル録音で初めて聞いたように思います。ラッサンの優美な旋律が耳に残っていました。アマゾンで楽譜が容易に見つかったので、もしかしたらScenes de la Csarda(酒場の情景)の中で、5番の「バラトン湖の波の上で」を抜いて一番有名なのかも知れません。Markiyan Melnychenkoの動画を一本目に、カール・フレッシュを二本目、三本目は放送でかけた音源です。余談ですが、カール・フレッシュ(1873-1944)はジネット・ヌヴー、ヨーゼフ・ハシッド、イダ・ヘンデル、ヘンリク・シェリング、イヴリー・ギトリス、シモン・ゴールドベルク、ティボール・ヴァルガなど錚々たる名手達を教えた名教師で名ヴァイオリニスト。ヴァイオリンを弾く人で知らぬ人はいない大御所です。(以下放送原稿を再度)

一番有名な5番の「バラトン湖の波の上で」は、前回フバイ自身の演奏でかけましたので、それ以外の13曲からですが、いずれも5~7分前後以上と結構長くて、この後1曲しかかけられません。2枚目に2番が入っていますが、この曲の冒頭は明らかにツィゴイネルワイゼン中間部の「ジプシーの月」あるいはCsak egy szép lány van a világonの旋律です。後半は一転して非常に難度の高そうな展開になります。
ハンガリーの国民的英雄になっている独立運動の指導者コッシュートをテーマにした7番も気になりますが、楽譜も出版されていて、おそらく「バラトン湖の波の上で」と並んで最もポピュラーな一曲と思われる、明るく朗らかな4番のヘイレ・カティを聞きながら今回はお別れです。

Jeno Hubay - Hejre Kati (Czardas)

Scenes de la Csarda, No. 4, Op. 32, "Hejre Kati" (Hey, Katie)

<Charles Castleman, Mendi Rohan & Eastman Chamber Orchestra / Scenes de la Csarda No. 4, Op. 32, "Hejre Kati" (Hey Katie) 5分58秒>

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2022年10月 3日 (月)

Scenes de la Csarda シゲティの3番

ゼアミdeワールド329回目の放送、日曜夜10時にありました。5日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。シゲティの3番が大変素晴らしいので、今日はこの映像のみ上げておきます。これを見て、バッハの無伴奏ヴァイオリンやバルトークとのベートーヴェンのクロイツェルソナタの謹厳実直なイメージが崩壊しました。もっとシゲティを聞かねばと思いました。2本目が番組でかけたピアノ伴奏版です。

ハンガリー音楽の10回目になります。前回19~20世紀初頭のハンガリーのクラシック音楽のヴァイオリニストのイェネー・フバイの音楽を取り上げまして、ジプシー楽団もよく演奏している「バラトン湖の波の上で」が5曲目に入っている「Scenes de la Csarda(酒場の情景)」から、自作自演の歴史的録音を2曲かけましたが、その後「Hubay, J.: Violin Music」と言うMusic & Artsの2枚組音源がストリーミングに見つかりまして、とても面白い曲が多かったので、今回はこちらからご紹介したいと思います。2005年にリリースされているようですが、CDは現在入手困難なようです。

フランス語のScenes de la Csardaと言うタイトルですが、しばしば『チャールダーシュの情景』と訳されているのを見かけますが、チャールダーシュの最後のsがなく、チャールダ本来の意味は「酒場」あるいは「居酒屋」ですので、「酒場の情景」と取る方が自然だと思います。もちろん音楽的には、ゆったりしたラッサンと急速なフリスカから成る、チャールダーシュ的な作品と見て良いと思います。

フバイは門下生にヨーゼフ・シゲティ、ヨハンナ・マルツィ、後に指揮者になったユージン・オーマンディなど、20世紀の偉大なヴァイオリニストが並び、クラシックの近代ヴァイオリン奏法の開祖ともいえる存在ですが、ルーツはハンガリーのジプシー音楽だったということを証明している曲集だと思います。

14曲目まではあることが、この音源から分かりますが、まずは最初に入っている8曲目をおかけします。冒頭を飾るにふさわしく、とても華やかな曲です。

<Charles Castleman, Mendi Rohan & Eastman Chamber Orchestra / Scenes de la Csarda No. 8, Op. 60, "Azt mondjak" (So they say) [arr. for violin and orchestra] 9分59秒>

3番ではサラサーテのツィゴイネルワイゼンで聞ける奏法やフレーズ、そして中間部にそっくりの旋律も出て来ます。ツィゴイネルワイゼンが1878年、Scène de la csárda No. 3が1882-3年の作曲と言うことですので、フバイはサラサーテの曲を聞いていたのかも知れませんし、フバイのこの曲集は1879年に1番が書かれていますので、最初から影響があったのかも知れません。最後の14番が書かれたのは1920年ですから、何と21歳から62歳まで41年間の長きにわたって書き続けられたことになります。喩えて言えばツィゴイネルワイゼンが14曲あるようなもので、いずれも技術的に高度なため、余り知られてなかったのではと思います。3番は他の曲と同じくオーケストラ伴奏でCharles Castlemanの演奏もありますが、2枚目にフバイの弟子のヨゼフ・シゲティの演奏が入っていますので、こちらでおかけします。

Joseph Szigeti - HUBAY Czardas No. 3

<ヨゼフ・シゲティ & アンドール・フォルデス / Scenes de la Csarda No. 3, Op. 18, "Maros vize folyik csendesen" (Maros is flowing peacefully) 6分48秒>
Scenes de la Csarda, No. 3, Op. 18, "Maros vize"

一番有名な5番の「バラトン湖の波の上で」は、前回フバイ自身の演奏でかけましたので、それ以外の13曲からですが、いずれも5~7分前後以上と結構長くて、この後1曲しかかけられません。2枚目に2番が入っていますが、この曲の冒頭は明らかにツィゴイネルワイゼン中間部の「ジプシーの月」あるいはCsak egy szép lány van a világonの旋律です。後半は一転して非常に難度の高そうな展開になります。
ハンガリーの国民的英雄になっている独立運動の指導者コッシュートをテーマにした7番も気になりますが、楽譜も出版されていて、おそらく「バラトン湖の波の上で」と並んで最もポピュラーな一曲と思われる、明るく朗らかな4番のヘイレ・カティを聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Charles Castleman, Mendi Rohan & Eastman Chamber Orchestra / Scenes de la Csarda No. 4, Op. 32, "Hejre Kati" (Hey Katie) 5分58秒>

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