エルデーイ~ブコヴィナとジメシュ~モルドヴァ編
ゼアミdeワールド338回目の放送、日曜夜10時にありました。14日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画は、とりあえずラストにかけた「6つのルーマニア民族舞曲」を入れておきます。ヨーゼフ・シゲティのヴァイオリンとバルトーク自身のピアノによる演奏です。
ハンガリー音楽の18回目になります。前回前々回に続きまして、「Listen, My Hungarians: A Survey of Hungarian Folk Music」と言うハンガリー民謡を概観する2枚組からまだ取り上げてなかった音源をおかけします。今回は2枚目のエルデーイ~ブコヴィナとジメシュ~モルドヴァ編です。
まずエルデーイ~ブコヴィナ編ですが、4、14、12、13曲目を選んでみました。トランシルヴァニアはルーマニアの時にも取り上げましたが、今回はハンガリー系住民の音楽です。何度も解説を入れていますが、トランシルヴァニアはハンガリー語ではエルデーイと言います。
4曲目はラースロー・ライタによる1941年録音と言うかなり古い音源で、ダンスハウス以降の現在のハンガリー・トラッドでよく聞かれるスタイルそのもののように聞こえます。セーキ・ラコダルマシュと言うタイトルは「セーク地方の結婚の歌」の意味だと思います。
<4 Marton Zsuki Ferenczi / Szeki lakodalmas (Wedding song) 2分50秒>
14曲目に現在ハンガリー・トラッドでよく聞かれるスタイルの演奏が入っていますので、比較で入れておきます。1974年録音のチャールダーシュのゆったりしたラッサンの部分です。
<14 Zoltan Demeter / Lassu csardasok (Slow Czardashe) 2分59秒>
12曲目は男性の叙情歌ですが、独特な発声と急な音の上昇が日本の民謡か詩吟か何かにとても似て聞こえます。ゾルタン・カーロシュによる1969年のセークでの録音です。
<12 Varga Gyorgy Szabo / Mi zorog, mi zorog a suru erdoben (What's that rattling) 1分54秒>
次の13曲目は、1937年にバルトークが録音した音源で、女性の歌う叙情歌で、トランシルヴァニア中で有名な歌だそうです。
<13 Marton Kata Ambrus / Arra kerem az en jo Istenemet (I ask my Almighty God) 1分44秒>
2枚目後半ジメシュ~モルドヴァ編に移ります。モルドヴァはルーマニア北東部ですが、ハンガリー人の多いジメシュは、トランシルヴァニアとモルドヴァの間の地方です。この地方からは、26、28、29、40曲目を選んでみました。
26曲目はモルドヴァの女性の歌う子守歌ですが、舌を震わせる発声が不思議で耳に残ります。1965年のゾルタン・カーロシュによる録音です。
<26 Balint Anna Puskas / Hejde lilibe (Lullaby) 1分14秒>
28曲目はハンガリー語が属しているウゴル諸語の古いスタイルの女性の結婚の歌で、確かにフィンランドを含むウラル系民族の歌との繋がりが感じられるように思います。モルドヴァでの1954年の録音です。
<28 Antal Lucia Demse / Hegyen, foldon jarogatok vala (I have been roaming the hills …) 1分37秒>
29曲目はジメシュで1960年に録音された女性の嘆き歌で、第二次大戦で亡くなった夫を思い歌われています。50、60年代までは残っていた5音音階の哀歌の伝統だそうです。
<29 Tanko Berta Pora / Jaj, lelkem, lelkem, jo tarsam (Alas, my dearest) 2分49秒>
かなり飛んで40曲目はジメシュの1927年生まれのヴェテラン弾き語りフィドラー、ゼルクラ・ヤーノシュの音源が登場します。兵士の哀歌とジメシュのチャールダーシュを演奏しています。FonoのUj PatriaシリーズやFolkEuropaなどから90年代以降にCDが何枚か出ていますが、この録音は1976年にゾルタン・カーロシュが録ったものですから、まだ一連の盤が出る前です。ジメシュらしく弓で弦を叩いて演奏されるボックス・チェロのガルドンがチャールダーシュの伴奏に出て来ますが、都会のジプシーのチャールダーシュとは似ても似つかない泥臭いスタイルの演奏です。
<40 János Zerkula / Hazunk elott (In front of our house) 3分11秒>
では最後に、ルーマニアの時以来何度かかけていますが、バルトークの作品でおそらく最も有名で人気のある「6つのルーマニア民族舞曲」を時間まで聞きながら今回はお別れです。ヨーゼフ・シゲティのヴァイオリンとバルトーク自身のピアノによる演奏です。曲名に「ルーマニア」と付いていますが、半分以上がトランシルヴァニア各地のハンガリー系の音楽です。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<ベーラ・バルトーク & ヨゼフ・シゲティ / Rumanian Folk Dances 5分21秒>
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