サースチャーヴァーシュ週間の最後に、サースチャーヴァーシュ・バンドの生演奏を入れておきます。1本目が2000年、観客が踊りだす2本目はその10年後くらいでしょうか。どちらもCsárdás És Szökőと検索して出てきた映像ですので、一昨日の「セーケイのヴェルブンク」の時に上げた他の踊りの種類で入れると、もっと出てくると思います。彼らの存在を初めて知ったのはHarmonia Mundi系のレーベルQuintanaから92年に出た盤ですが、昨日の指導映像以外で彼らの生演奏を見るのは初めてで、こういう映像を見ると、やはり本物の凄さをひしひしと感じます。Chant du mondeの「トランシルヴァニアの弦楽四重奏」をここで聞き返すと、また違って聞こえるでしょう。
番組の最後にかけたSzászcsávás Band 3のCsárdás És Szökőと、放送には入れられなかったSzászcsávás 6のCsárdás És Szökőも、リンクに上がってくると思いますので、見たい方はリンクを辿ってみて下さい。
ハンガリー音楽の32回目になります。現代ハンガリー・トラッドの9回目になります。今回は現代ハンガリー・トラッドと言うより、ハンガリー人音楽家にエルデーイ音楽を教えた立場になるのではと思われるサースチャーヴァーシュ・バンドの音源から抜粋していきたいと思います。ルーマニア領トランシルヴァニアのハンガリー系の村、サースチャーヴァーシュ村のジプシー楽師たちのバンドで、結婚式やその他のお祝いのミュージシャンとして雇われて演奏しているというグループです。
前にサースチャーヴァーシュ・バンドのメンバーと思しき各パートのリーダーが、ほとんどがハンガリー人ではないかと思われる若手楽師たちと一緒に演奏している映像をブログにアップしたことがありましたが、これを非常に面白く見まして、是非サースチャーヴァーシュ・バンドの音源も取り上げたいと思っていました。Live in Chicagoだけ在庫もありますが、Transylvanian Folk Music他数枚がストリーミングに上がっていますので、その中からピックアップします。
バンドの中心は、prímásがIstván Jámbor、兄の Mátyás Csányi (Mutis)、コントラビオラ奏者がCsangáló (放浪者) と呼ばれる義理の兄弟 Ferenc Mezeiの3人で、彼らは30年以上一緒に演奏しているそうです。楽器の話になりますが、プリマーシュのヴァイオリンは通常の4弦のヴァイオリンですが、脈動するリズムは、わずか3弦のコントラバスと、コントラビオラまたは単にコントラとも呼ばれるまっすぐな駒を備えた3弦のビオラによって供給され、短く幅の広い弓で同時に重音で演奏されます。毎年8月にサースチャーヴァーシュで民族音楽とダンスの国際フェスティバルが開催されているそうですから、例のYouTubeの映像はその時のものかも知れません。
まずはLive in Chicagoから、Székely Verbunk(セーケイのヴェルブンク)をおかけします。セーケイの男性のソロ・ダンスの意味で、ヴェルブンク本来の「募兵の踊り」の意味合いは無さそうです。
<2 Székely Verbunk 2分56秒>
彼らの音源はLive in ChicagoとTransylvanian Folk Music以外にSzászcsávás Band 3, Szászcsávás 6 , Szászcsávási Dalárdaと、単に1990と言うものの合計6点をストリーミングで聞くことが出来ました。Szászcsávási Dalárdaは、おそらくこの村の人々がカトリックか正教の聖歌を歌っていると思われる異色作だと思います。
曲目を見ていくとCsárdás És Szökőと言う曲がほとんど必ず入っていることに気が付きました。「ジプシーの」の意味のCigányが入ることもありますが、後は同じです。csárdásは、ここではテンポの異なるカップルダンスを指すようです。曲名を訳すと「チャールダーシュと逃亡者」となりますが、もちろん「逃亡者」の意味ではなく、csárdás のより高速な変奏になります。芸風の変化を聞けるように思いますので、色々な時期に録音されたこの曲を幾つか並べてみたいと思います。
まずは1990と言う盤から、Cigány Csárdás És Szökő, Pt. 1とCigány Csárdás És Szökő, Pt. 2の2曲を続けます。合わせて19分近くありますので、12分近いパート2は途中までおかけします。6枚の中ではおそらく一番古い時期の録音ではないかと思います。ブログに上げたYouTubeでの躍動感を思い出させる非常にホットな演奏です。
<Cigány Csárdás És Szökő, Pt. 1 6分55秒>
<Cigány Csárdás És Szökő, Pt. 2 11分41秒から8分位>
それではSzászcsávás Band 3とSzászcsávás 6にも入っているCsárdás És Szökőを時間まで聞きながら今回はお別れです。こちらは幾分大人し目にも聞こえます。プリマーシュのヴァイオリンの弾き始めの音型から共通するものがあることに気が付かれるかと思います。
ダンスハウス運動の仕掛け人ながら、現在は余り知られてないかも知れないベラ・ハルモシュの音源が、仏Adda系列のfonti musicaliのErdelye Nepzeneに一曲ありましたので、番組でかけました。ハンガリーのトラッドでは最重要人物の一人ですが、90年代頃にフンガロトン盤Hungarian Folk Music From Transylvaniaを見たくらいで余り知らなかったので、調べてみました。1946年生まれで、2013年に亡くなられていました。67歳とは早いです。来週そのフンガロトン盤を取り上げようかと思っております。
Szeki táncok(セークの踊り)の演奏は、ヴァイオリン(ヘゲドゥー)がベラ・ハルモシュ、ブラッチャはイフユ・チョオリ・シャーンドル、チェロはハヴァシュレティ・パールです。ブラッチャと言うのは縦に構える伴奏ヴィオラだと思います。
<Szeki táncok 8分51秒>
Széki Táncok- Dances from Szék (Hungarian Village Music from Transylvania)
サローキ・アーギがオーソドックスな民謡を取り上げた2017年のFújnak a fellegekですが、日本の追分のように細かい節回しの本格的な民謡歌唱を聞いて、大変にびっくりしたのが1曲目のMagyarszovátiです。14分を越えるこの曲を、ほぼ全て番組でかけられました。歌は全て終わって、後奏を1分ほど残した辺りまで入りました。セーク民謡も全て入ったので、結婚式出席のため解説は簡略にはしましたが、曲がほぼ入って満足です。最も気になるのは、何故あのサローキ・アーギが、ここまでオーソドックスなスタイルで民謡を歌ったのかと言う一点に尽きます。
今週は後2回ブログ枠があります。Magyarszovátiと言う曲名については前に聞き覚えがありますし、セークの方も「エチェル村の結婚式」のコダーイの曲と重複はありませんが、セーク民謡の特徴はどちらにも表れているのだろうと思います。その辺りを探ってみようかと思います。
ハンガリー音楽も30回目になりました。現代ハンガリー・トラッドの7回目になります。今回の収録分が放送されるのは12日ですが、ちょうど11、12日と親戚の結婚式で14年ぶり(正確には星川さんの葬儀でとんぼ返りしたので7年振りでした)に上京するため、いつも番組の準備をしている日曜に時間が取れませんので、1回は音楽中心にして2回分用意しています。12日分として考えたのが、サローキ・アーギがオーソドックスな民謡を取り上げた2017年のFújnak a fellegekです。これほど本格的な追分のように細かい節回しの民謡歌唱を聞けるとは思ってなかったので、正直びっくりした音源です。2曲目のセークと言う曲の展開が素晴らしいので、是非こちらをおかけしておきたいと思います。12分余りありますが、4分過ぎの曲調が変わるあたりが聴きものです。
サローキ・アーギの2017年のFújnak a fellegekについては、来週長尺の最初の2曲をノーカットでかけることにしましたので、今週中のブログアップは省きます。ロックやドラムンベースを大胆に取り入れた2010年のKishugからは、「昔マルタ・セバスチャンも歌っていた民謡の旋律」として4曲目のPorondos(ポロンドーシュ)を今週の番組で取り上げました。
再来週の準備をしていて、この曲をどこで聞いたか判明しました。マルタ・セバスチャンではなく、ファビアン・エヴァと言う女性歌手でした。ファビアン・エヴァの歌唱で始まる盤、仏Adda系列のfonti musicaliと言うレーベルから1989年に出たMusiques de Transylvanie(原語Erdelye Nepzene 英題Transylvanian Folk Music)を再来週取り上げますので、その際に番組でおかけします。トランシルヴァニアのフォークロアの雰囲気を濃厚に感じさせる曲と独唱です。この歌をサローキ・アーギがこんな風に歌っているという事で、注目のトラックです。
もう一曲、5曲目のVörösborは、時間の都合でかけられなかったKishugの中の曲ですが、後半に出てくる細分化した速いビートを、ドラムンベースと呼ぶのでしょうか? こちらの世界は疎いもので(笑) ダブのリズムも入っているように思いますが。旋律はトラッドの要素を強く感じさせるもので、久々に聞き返して、この2曲が特に耳に止まりました。
ハンガリー音楽の29回目になります。現代ハンガリー・トラッドの6回目は、サローキ・アーギ Szalóki Ági特集の3回目です。
オーソドックスな民謡を取り上げた2017年のFújnak a fellegekが大変素晴らしく、こんな本格的な追分のように細かい節回しの民謡歌唱を聞けるとは思ってなかったので、正直びっくりしました。何故ここまで民謡そのものに回帰した盤を出したのか、ここ数年はハンガリー盤の情報がありませんので、よく分からない状況です。Fújnak a fellegekと言うタイトルは「雲が吹いている」と訳せるようです。
2010年のKishugと2017年のFújnak a fellegekの間にÖröme az égnek, ünnepe a földnek (2012)とKörforgás (2014)がありまして、その頃までは入っていましたが、ハンガリー盤は2017年頃以降余り情報を見かけなくなったので、日本で入っている店はほとんどないのではと思います。
次にロックやドラムンベースを大胆に取り入れた2010年のKishugから、昔マルタ・セバスチャンも歌っていた民謡の旋律によるPorondosをおかけします。
今日は4回目の月命日で午後から墓参りのため、ブログもお休みしようかと思いましたが、簡単に入れておきます。Mindig Az a Legszech Percは、1本目のような弦の伴奏の良い感じの演奏もありました。歌詞を荒訳にかけてみると、和訳を上げるのが憚られるような(笑)かなりストレートなラヴソングのようです。しかし、このそこはかとない哀感、私は大層気に入っています。2本目も番組で解説を入れた通り「旋律を聞くだけでも極めて切なく美しい曲」です。
Mindig az a perc a legszebb perc / Blue Canarro Group (BCG-theMusicVaccine) / 2020 New Year's Eve
サローキ・アーギでかけた2曲を、1930年代のカタリン・カラーディの歌唱で探してみました。Mindig Az a Legszech Percの方は、当時の映画に主演し歌っているシーンが出てきました。ハンガリーのマルレーネ・ディートリヒとでも形容できるのではと言う美貌(退廃的な)と存在感です。実際リリー・マルレーンも歌っていました。Egyszer Csak Mindennekは、ストリーミングで聞けるのと同じ音源です。当時はジャズやタンゴが流行っていた頃で、淡谷のり子の歌にも頻出します。(以下放送原稿を再度)
次にこの同じ2曲をカタリン・カラーディが歌った戦前のオリジナル音源が入ったKarady Katalin - Milliok Kedvenc Enekese: Mid Century Hungarian Musicを見つけましたので、2曲続けておかけします。1910年生まれのカタリン・カラーディは戦前のハンガリーで人気を博しスターに上り詰めましたが、ナチス時代にスパイ容疑で逮捕された上に拷問を受けるなど迫害を受け、更に戦後の共産主義時代にも無視された上に迫害を受け、人々から忘れ去られ、50年代以後は亡命生活を送りました。80年代になって、ようやくハンガリー本国で再発見されましたが、この時は既に最晩年になっていたと言う、歌手としては不遇の後半生を送った人です。
よく知られているエピソードとしては、大勢のハンガリー系ユダヤ人を救出した名誉の受賞者であることとか、小惑星 287787 Karády は、ハンガリーの天文学者(Krisztián Sárneczky と Brigitta Sipőcz )によって 2003 年に発見され、彼女を記念して命名されていることがあげられます。
<Mindig Az a Legszech Perc 3分28秒>
Karády Katalin - Mindig az a perc a legszebb perc
<Egyszer Csak Mindennek 3分34秒>
Egyszer csak mindennek vége lett
最近のコメント