モルドヴァのチャンゴーの哀歌
ゼアミdeワールド351回目の放送、日曜夜10時にありました。22日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。
ハンガリー音楽の31回目になります。現代ハンガリー・トラッドの8回目になります。これまで2000年代に入ってから人気のあった女性歌手2人の活動を中心に見てきましたが、70年代初頭に始まったダンスハウス運動の初期から中心的な存在だったムジカーシュやテーカ、メータなど先輩格のグループについては後回しになっていました。
前々回サローキ・アーギの歌唱で「2010年のKishugから、昔マルタ・セバスチャンも歌っていた民謡の旋律によるPorondosと言う曲」をかけましたが、この音源がどれだったか判明しましたので、こちらからおかけしたいと思います。歌っていたのはマルタ・セバスチャンではなく、ファビアン・エヴァでした。この歌唱で始まる盤ですが、仏Adda系列のfonti musicaliと言うレーベルから1989年に出たMusiques de Transylvanieと言うコンピレーション盤で、ハンガリー語ではErdelye Nepzene、英語ではTransylvanian Folk Musicでした。当時はハンガリー・トラッドと言えば、アルファエンタープライズの第7回ダンスハウスの編集盤とこの盤位しかなかった頃です。まだCDと言うものが出始めて数年の頃でした。この中にはテーカ、ベラ・ハルモシュ、スヴォラーク・カティ、マルタ・セバスチャンのような重要人物とグループが名を連ねています。
ランプの明かりで刺繍をする女性を男性が見守っていると思しきジャケットが大変印象的で、そこにファビアン・エヴァの独唱が合わさってトランシルヴァニアのフォークロアな雰囲気を表現していたと思います。ほとんどの人が初めて聞いただろう「エルデーイ」と言う言葉も、この歌唱とジャケットで強く印象付けられました。Porondosと言うのは歌いだしの歌詞で、Moldvai csángó keservesとなっている通り、モルドヴァのハンガリー系少数民族チャンゴーの哀歌です。
<Moldvai csángó keserves 2分2秒>
続いて、ムジカーシュとの活動で大変に有名なマルタ・セバスチャンの歌唱をここで入れておきます。チーク地方の歌の独唱です。彼女の名前はハンガリー語に忠実に言えば、シェベシュティエーン・マールタとなります。
<Istenem, túl a vizem 2分41秒>
ダンスハウス運動の仕掛け人ながら、現在は余り知られてないかも知れないベラ・ハルモシュの音源も一曲ありますので、ここでかけておきます。ヴァイオリン(ヘゲドゥー)がベラ・ハルモシュ、ブラッチャはイフユ・チョオリ・シャーンドル、チェロはハヴァシュレティ・パールです。ブラッチャと言うのは縦に構える伴奏ヴィオラだと思います。
<Szeki táncok 8分51秒>
マルタ・セバスチャンに次ぐほど有名な、スロヴァキアのハンガリー系女性民謡歌手スヴォラーク・カティがフルヤの伴奏で歌っている12曲目は、トランシルヴァニア東部のハンガリー系少数民族セーケイ人の民謡です。セーケイ人の起源は諸説あり、アッティラが率いたフン族の子孫というのが広く知られていたりしました。またブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」において、ドラキュラ伯爵はトランシルバニアのセーケイ人とされています。実際は、ドラキュラのモデルとなったヴラド・ツェペシュ公は、トランシルヴァニアの南隣のワラキア公国の君主で、ルーマニア人でありセーケイ人ではなかったようです。
<Ó lstenem, mit csinaljak 4分12秒>
ヘゲドゥーシュは前にヘルツク・アーグネシュの時にかけましたので、テーカの長尺の演奏を入れておきます。テーカとメータはどちらもダンスハウス初期から活動している老舗グループです。この曲を聴きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<Magyarpalatkai táncrend 10分1秒>
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