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2023年5月

2023年5月31日 (水)

FraylekhとHappy Nigun

イスラエルのクラリネット奏者ギオラ・ファイドマンも演奏していたFraylekhがこのオコラ盤のラストに入っていますと今週の放送原稿に書いていたので、その音源を一本目に、と思っていました。ファイドマンのフライレフで検索しても別の曲ばかりでしたが、ようやく見つけました。そう言えば、そのCDではHappy Nigunになっていました。この盤は90年頃、何故か教文館でしか見なかったように思います。このファイドマンの音源は、1994年6月4日にFM東京のトランスワールド・ミュージックウェイズに、「ユダヤの音楽」と言うタイトルで初めてラジオ番組に出演した時にオープニングにかけた思い出深い音源。2016年にラヂバリで番組を持つ22年前、更に1996年にゼアミを立ち上げる2年前でした。
2本目は今週のオコラのイディッシュ音源のフライレフ。ヴァイオリンはアミ・フラメール、ギター弾き語りはモシェ・ライサー、アコーディオンはジェラール・バローで、出来ればライブ映像を見たかったのですが、この3人の静止画像を見れただけでも嬉しい一本です。

The Happy Nigun - Giora Feidman

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Fraylekh 2分33秒>

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2023年5月29日 (月)

Chansons Yiddish - Tendresses et Rage

ゼアミdeワールド361回目の放送、日曜夜10時にありました。31日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。「ドナ・ドナ」は、水曜以降に。

東欧系ユダヤ音楽の2回目になります。前回が1回目で「ブダペスト ドハーニ街シナゴーグの典礼」でした。このフンガロトン盤を1989年に聞いたことが、ユダヤの音楽を通して民族音楽に回帰するきっかけになりましたが、今日おかけするイディッシュ語の歌の音源は、その後すぐに聞いた懐かしい盤です。その2枚をおかけする前に、イディッシュの歌と言えば一番有名な「ドナ・ドナ」をジョーン・バエズでおかけしたいと思います。ジョーン・バエズはアメリカのベテランSSWで、ドナ・ドナを歌っていますがユダヤ系ではなく、メキシコ系の家系で、彼女の一家はクエーカー教徒だったそうです。

<Joan Baez / Donna Donna 3分15秒>

イディッシュ語と言うのは、東欧のユダヤ人の間で話されていた(いる)ドイツ語に近い言葉で、ドイツ語の一方言と言われる程、音はそっくりですが、語彙はユダヤの宗教語であるヘブライ語や、周囲のポーランドなどのスラヴ系言語の単語も入っています。バルカンの時に出てきたスペイン系ユダヤはヘブライ語でセファルディーでしたが、東欧系ユダヤはアシュケナジームと呼ばれます。
イディッシュ・ソングの「懐かしい2枚」と言うのは、フランスのオコラから89年に出ていたChansons Yiddish - Tendresses et Rage(優しさと怒り)と、ドイツのプレーネから出ていたZupfgeigenhanselのJiddische Liederです。どちらも購入してから30年以上経った盤で、先週のドハーニ街シナゴーグの盤が一部上手くトレースしなかったので、こちらも心配ではありますが、データも取ってあるので大丈夫です。オコラのChansons Yiddishは、2011年頃に再発されていました。この盤も1999年に音楽之友社から出た「ユーロルーツポップサーフィン」にレビューを書きました。ジャケットには戦中のクラクフ・ゲットーの有名な写真が使われていますが、切なく美しく物悲しい歌が多いイディッシュ・ソングのイメージ通りとも言えそうです。

オコラのChansons Yiddishの演奏者ですが、前にルーマニアの時にエネスコのヴァイオリン・ソナタ3番をかけたアミ・フラメールがヴァイオリンを弾いているのがまず注目です。ヘンリック・シェリングやナタン・ミルシタインにも師事した名手が、クラシックではない音楽を演奏するのも聞きものです。イディッシュ語のギター弾き語りはモシェ・ライサー、アコーディオンはジェラール・バローです。バロー以外の二人はユダヤ系で間違いないと思います。モシェ・ライサーはアントワープのシナゴーグの合唱団で幼少期から歌っていたという経歴があり、アミ・フラメールはルイ・マルの映画「さよなら子供たち」にも出ていました。フランスがナチス・ドイツの占領下にあった頃のカトリックの寄宿学校が舞台で、偽名でかくまわれていたユダヤ人の少年が連れ去られてしまうシーンで終わったと思います。
ではこの盤から、ラビが歌う時など、同じようなフレーズが繰り返されるところにハシディック・ソングの影響が見えるようなAz der rebbeと、戦時中のパルティザンの歌Partizanenliedの2曲を続けておかけします。

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Az der rebbe 4分46秒>

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Partizanenlied 3分17秒>

やはり同じようなフレーズを畳みかけるハシディック・ソングの系統に聞こえるLomir Alle !と、イスラエルのクラリネット奏者ギオラ・ファイドマンも演奏していたFraylekhがこの盤のラストに入っていますので、続けておかけします。どちらも旋律は一度耳にすると忘れられない印象を残します。

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Lomir Alle ! 3分47秒>
<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Fraylekh 2分33秒>

では最後にオコラのChansons Yiddishのオープニングに入っているAvremlを時間まで聞きながら今回はお別れです。この曲は他のイディッシュの盤では見かけない曲ですが、このトリオらしい非常に印象的な歌です。今回ツプフガイゲンハンゼルは時間切れでかけられませんでしたので、次回取り上げたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Avreml 5分50秒>

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2023年5月26日 (金)

ブダペストのドハーニ街シナゴーグ

今週の最後にドハーニ街シナゴーグのオフィシャル・サイトの1分の映像と、4Kの高精細で録られた27分ほどの長いビデオを上げておきます。その後の3,4本目は「ドハーニ街シナゴーグの典礼」から、旋律の美しい7曲目のYaaleと、12曲目の安息日シャバトの歌、Veshomruです。ヴショムルー(「そして彼は守られる」のような意味)は、他のカントール音源でもよく耳にするシャバトの歌で、番組に入らなくて残念でした。
2本目を見て、90年代に広尾のシナゴーグに行った時に「セネガグ」と当時のラビが言われて、最初何のことか分からなかったのを思い出しました(笑) これは英語圏での発音で、ヘブライ語ではベイト・クネセットで、意味は単に「集会の家」です。ドハーニ街シナゴーグは、オフィシャルの方の解説にMoorishとある通りムーア様式の建築で、何といっても2本の高い塔が特徴的です。これがムーア様式(つまりイスラム時代の中世スペイン風)と言うことでしょうか。偶像崇拝を徹底的に排するので、人型のデザインが一切見当たらず幾何学模様が中心なのは、イスラムのモスクと共通しています。(以下放送原稿を再度)

ウィキペディアのディスコグラフィーに『ブダペスト・シナゴーグの聖歌』がありましたが、そこに貼られていたリンクが私の店、ゼアミの旧サイトのURLだったので、リンク切れになっていて残念でした。キングレコードの「世界の祈り」シリーズの一枚として出た時の記事でしたが、このシリーズも廃盤になって久しいです。

Dohany Street Synagogue Official Video

Great Synagogue & Cemetery Tour | Dohány St. Budapest

<7 Yaale 2分56秒>

<12 Veshomru 5分48秒>

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2023年5月25日 (木)

コル・ニドライとコール・ニドレイ

チェロの定番曲として有名なマックス・ブルッフのコル・ニドライですが、原曲のコール・ニドレイはユダヤ新年(ローシュ・ハシャナー)の贖罪日(ヨム・キプール)に一回だけ唱えられる畏れ多い秘曲のイメージが強く、加えてブルッフのオペラ・アリアのような後半のアレンジに少々違和感もあって(シナゴーグで歌うカントールの技巧を模していると言うより、コロラトゥーラにさえ近づいているようにも聞こえまして)、楽譜はありますが、さらったことはほとんどないです。ユダヤ人ではないブルッフだから書けた曲なのかなと思います。逆にユダヤ人だったら、おいそれと近づけないはずです。私は90年頃にカザルスのビダルフ盤でコル・ニドライを聞く前に、ドハーニ街の音源で原曲のコール・ニドレイを聞いていたので、稀な例かも知れません(笑) と言う訳で、この曲はユダヤ人演奏家に登場頂きたいと思いまして、ミッシャ・マイスキーの演奏を一本目に上げました。弾きながらどんなことを思うのでしょうか? 2本目がドハーニ街シナゴーグの音源です。(以下放送原稿を再度)

Kol Nidoreiの「ei」の部分がドイツ語の場合、通常「アイ」と発音するので、コル・ニドライと言う発音がよく知られていますが、ヘブライ語本来の発音はコール・ニドレイです。ユダヤ新年(ローシュ・ハシャナー)の贖罪日(ヨム・キプール)の初めに歌われる厳粛な祈祷歌で、ユダヤ旋律らしいエキゾチックな増二度音程が特徴的です。カディッシュ同様、通常はアラム語で唱えられます。コール・ニドレイとは「すべての誓い」のような意味です。

Bruch: Kol Nidrei ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Mischa Maisky ∙ Paavo Järvi

<6 Kol Nidrei 6分31秒>

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2023年5月24日 (水)

カディッシュ

カディッシュは、ヘブライ文字のק(クフ)、ד(ダレド)、ש(シン)の3文字から成る他の言葉と同根で、この3文字があると「聖なる」意味合いが必ず入ってきます。銀座のヘブライ語教室に通ったのは90年代前半ですが、まだこれ位は覚えていました。多くの単語が様々な3つの語根から出来ている点でも、兄弟言語のアラビア語に似ています。
ק(クフ)、ד(ダレド)、ש(シン)の入った他の言葉は、キドゥーシュ、カドーシュ、コーデシュなどで、楽曲名で言えば、葡萄酒を聖別する祈祷歌のキドゥーシュは特に有名で、クルト・ワイルが素晴らしい合唱曲を書いています。アヴォダット・ハコーデシュと言う曲もありましたが、これはエルネスト・ブロッホの合唱曲Sacred Service (Avodat Hakodesh)で、ネットでも色々聞けます。スイスのユダヤ人作曲家ブロッホは、昔は日本で一般に知られているのはヘブライ狂詩曲「シェロモ」だけに近かったと思いますが、最近チェロの曲「祈り」(Prayer)がよく知られるようになってきました。(私も8年前の総合芸能祭で弾きました)
フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが「2つのヘブライの歌」の一曲としてカディッシュに基づく曲を書いていますが、ダリウス・ミヨーも「土曜日の朝の神聖な礼拝」の第4曲としてカディッシュを書いています。ラヴェルは違いますがミヨーはユダヤ人で、他にもユダヤ教の音楽を幾つか書いてます。
ドハーニ街の音源が1本目、そう言えばイエメン系ユダヤ人のオフラ・ハザも歌っていたなという事で2本目、3本目がラヴェル(ヴァイオリンとピアノ版)、4本目はミヨーです。

<5 Kaddish 3分45秒>

Ofra Haza - Kaddish

Maurice Ravel - Kaddish

Milhaud: Service sacré pour le samedi matin / Quatrième partie - Kaddish

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2023年5月22日 (月)

ドハーニ街シナゴーグの典礼

ゼアミdeワールド360回目の放送、日曜夜10時にありました。24日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今回はハンガリー音楽の40回目最終回兼、東欧系ユダヤ音楽の1回目です。カディッシュ、コル・ニドレイから後は水曜以降に。

ハンガリー音楽の40回目になります。予告通りハンガリーの音楽のラストは、「ブダペスト ドハーニ街シナゴーグの典礼」で締めたいと思います。シナゴーグと言うのはユダヤ教の会堂のことです。
このフンガロトン盤を1989年に聞いたことが、ユダヤの音楽を通して民族音楽に回帰するきっかけになったことは、これまでにブログ等で何度も書いてきましたが、盤の紹介分として1999年に音楽之友社から出た「ユーロルーツポップサーフィン」に書いた拙稿を読み上げたいと思います。何度も拙稿を引用してきた「世界の民族音楽ディスクガイド」の3年前に出た本です。このムックでは沢山の専門家がヨーロッパ中のトラッド音楽の盤を紹介していますが、私はユダヤ音楽の記事を全て担当しました。その中から「ドハーニ街シナゴーグの典礼」のレビューを編集したものを読み上げます。

私事になって恐縮だが、1989年の六本木ウェイブ4階のクラシック担当時代に偶然この盤を聞き、カントールの悲愴なバリトンと混声合唱の切実で迫真力のある表現、ゴーと地響きのような音を鳴らすオルガンに鳥肌が立ってしまった。つまりこの盤がユダヤ音楽へ目を向けるきっかけになった訳だが、このヨーロッパ最大のシナゴーグでの典礼録音の壮麗さは今だに特筆に値すると思う。編成はクラシックと同じく歌とオルガンだけなのに雰囲気は余りにも違う。正統派ユダヤ教のように、歌は男性のみ、楽器は角笛ショファルのみ、と言うのとは違って、改革派の教会なので、混声合唱やオルガンも入るが、それでもヨーロッパの音楽文化の底流に流れていた古色溢れるユダヤ音楽の響きは十分に感じられる。カントールのシャーンドル・コヴァーチ氏はハンガリー動乱時にはプラハに滞在していたのか、56年録音のスプラフォン盤カントールの音源に彼の名が見いだされる。(音楽之友社「ユーロルーツポップサーフィン」の拙稿)

それでは最初の3曲を続けておかけします。タイトルの日本語訳は、アルファエンタープライズから国内発売された時の解説を参照しております。1曲目が大祭礼式入祭のオルガン独奏(ガーボル・リスニアイ編曲)、2曲目のウンサネ・タイケフ(ガーボル・リスニアイ編曲)は殉教したマインツ出身のラビ作とされる祈祷文によるカントールの独唱、3曲目は合唱が鮮烈に現れるエメス(サロモン・サルザー作曲)と続きます。エメスのように、最後のTの音のタヴの文字を、TではなくSの音で発音するのは、いかにもアシュケナジーム的です。

<1 Introduction - Organ 5分8秒>

<2 Unesaneh Tokef 1分41秒>

<3 Emes 2分7秒>

4曲目を飛ばして、5曲目のカディッシュと、6曲目のコル・ニドレイは非常に有名なユダヤ教の祈祷歌ですので、続けておかけします。カディッシュは、カドーシュなどと同根で聖なる意味合いを持ちます。フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが「2つのヘブライの歌」の一曲としてカディッシュに基づく曲を書いています。コル・ニドレイは、ドイツの作曲家マックス・ブルッフが作曲したチェロのためのクラシック作品のコル・ニドライの原曲です。Kol Nidoreiの「ei」の部分がドイツ語の場合、通常「アイ」と発音するので、コル・ニドライと言う発音がよく知られていますが、ヘブライ語本来の発音はコル・ニドレイです。ユダヤ新年(ローシュ・ハシャナー)の贖罪日(ヨム・キプール)の初めに歌われる厳粛な祈祷歌で、ユダヤ旋律らしいエキゾチックな増二度音程が特徴的です。カディッシュ同様、通常はアラム語で唱えられます。コル・ニドレイとは「すべての誓い」のような意味です。

<5 Kaddish 3分45秒>
<6 Kol Nidrei 6分31秒>

ドハーニ街シナゴーグのウィキペディアのディスコグラフィーに『ブダペスト・シナゴーグの聖歌』がありましたが、そこに貼られていたリンクが私の店、ゼアミの旧サイトのURLだったので、リンク切れになっていて残念でした。キングレコードの「世界の祈り」シリーズの一枚として出た時の記事でしたが、このシリーズも廃盤になって久しいです。
それでは最後に旋律の美しい7曲目のYaaleと、時間が余れば12曲目の安息日シャバトの歌、Veshomruを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Yaale 2分56秒>
<12 Veshomru 5分48秒>

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2023年5月19日 (金)

チャールダーシュ風ヴェルブンクで締め

ハンガリー・シリーズのラストになります。データを辿るとハンガリーの初回は去年の7月でした。あの頃「チャールダーシュはモンティの曲の固有名詞ではなく、ブラームスのハンガリー舞曲やサラサーテのツィゴイネルワイゼンなどもチャールダーシュです」と言う辺りから始めていました。とっつき安いかなと思いましたし、モンティのあの曲だけがチャールダーシュと思ってる人が余りにも多くて残念なので。ラストは、そのチャールダーシュ風なヴェルブンクを、エルデーイの農村音楽が専門のムジカーシュが演奏している珍しい音源を取り上げます、としてかけましたが、YouTubeを見ると演奏はVarsányi együttesと言う別のグループのようです。ストリーミングは、たまにこういう間違いがあるので要注意です。ポッタ・ゲザのような野趣あふれる演奏や、スロヴァキア国境付近のポリフォニーにルーツの一つがあることを見ると、都会のジプシー音楽系の方が今後は探りどころ豊富なようにも思います。私自身、実はこちらの方が好みでもあります。(以下放送原稿を再度)

では最後にMuzsikás Együttesと言う名義でストリーミングに出てきたMagyarországi Táncház Találkozó 1985. - IV.から、Vasvári vebunk és friss (Gömör)と言う曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。これまでのムジカーシュの音源より前の、1985年のハンガリー本国での音源と思われます。85年ですからLPのみだったのかも知れません。都会のチャールダーシュっぽいヴェルブンクをムジカーシュで聞くことは珍しいので、こちらを選んでみました。他は一般的なハンガリー農村音楽系がほとんどです。

<3 Vasvári vebunk és friss (Gömör) 2分45秒>

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2023年5月18日 (木)

「飛べよ孔雀よ」と、Fújnak a fellegek - Somogy

長く続いたハンガリー・シリーズも、ブログで取り上げるのは後2回になりました。年間放送回数が大体50回ちょっとですから、1年の8割ほどを費やしたことになります。来週はドハーニ街シナゴーグのユダヤ音源ですから、純ハンガリー音楽としては後2回です。いつも後ろ髪を引かれる思いで次に行きますが、ハンガリーは40回続いて自分としては、かなりやり切った感はあります。
Dudoltamも選曲に迷う程、良い曲揃いでした。Fújnak a fellegekを翻訳にかけると、「雲が吹いている」と出てきましたが、余りにも「飛べよ孔雀よ」に似ています。カロタセグの方も、放送ではフェイドアウトでしたので全曲入れておきます。ジャケットとは違う写真が出ています。
「飛べよ孔雀よ」は、ハンガリー西部バラトン湖の南に位置するショモジ県の民謡になるのではと思います。前にサローキ・アーギの歌唱でこの旋律が出てきた時も、曲名がショモジでした。このサローキ・アーギの音源では、曲名が同時に地方名でもあったので、おそらくそうだろうと思います。(以下放送原稿を再度)

もう一枚のDudoltamは、マルタ・セバスチャンとムジカーシュの1987年リリースのアルバムで、1993年に再発されています。彼女のCDの中でも特にシンプルで古典的な演奏が集まった一枚でした。この盤にも「飛べよ孔雀よ」の替え歌のような曲がありまして、その9曲目のFújnak a fellegek - Somogyと、度々これまでに出てきたカロタセグの曲を歌っている5曲目のHajnali nóta - Kalotaszegをおかけします。

<9 Fújnak a fellegek - Somogy 1分29秒>

<5 Hajnali nóta - Kalotaszeg 6分4秒>

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2023年5月17日 (水)

Szerelem, Szerelem他

プリズナー・ソングの原題は、Nem arról hajnallik, amerről hajnallottのようです。翻訳にかけると「何が始まったのかは分からない」と出てきますが、これはどういう意味でしょうか(笑) この盤はRepülj Madár, Repüljもそうでしたが、偶数番目に惹かれる曲が続きました。特にマルタ・セバスチャンのSzerelem, Szerelemでのコブシは必聴です。フレーズの最後で回す節回しは、日本の邦楽の歌唱にそっくりです。(それが何かはすぐに思い出せないのですが) Eddig Vendégは、バルトークの曲が分かったら、またアップします。ムジカーシュは、モーニング・スターも取り上げたかったのですが、現物は手元になく、ストリーミングでも聞けないようですので外しました。(以下放送原稿を再度)

プリズナー・ソングから続いて2,4,8曲目の3曲をおかけします。2曲目のEddig Vendégは、確かバルトークが編曲して作品に使っていた曲です。邦題は「今まではお客さんで」となっています。アグレッシブなビートが印象的な4曲目のHidegen Fújnak a Szelekは、「冷たい風」と言う邦題が付いています。8曲目のSzerelem, Szerelemの邦題は「恋」となっています。マルタ・セバスチャンの素晴らしいコブシ回しを堪能できる独唱です。

<2 Eddig Vendég 3分54秒>

<4 Hidegen Fújnak a Szelek 3分14秒>

<8 Szerelem, Szerelem 4分37秒>

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2023年5月15日 (月)

プリズナー・ソングのRepülj Madár, Repülj

ゼアミdeワールド359回目の放送、日曜夜10時にありました。17日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はRepülj Madár, Repüljのみで、2本目は2018年のライブ映像です。お陰様で今日でゼアミは27周年になります。

ハンガリー音楽の39回目になります。次回で遂に40回になりますので、いよいよハンガリーの音楽も40回目のドハーニ街シナゴーグで最後にしたいと思います。ハンガリートラッドも、まだまだと言いますか、ダンスハウス後にはそれこそ星の数ほどグループが出来ていますが、きりがないのでマルタ・セバスチャンとムジカーシュの音源を持ってラストにしたいと思います。今回は80年代のワールドミュージック・ブームの少し後の91年に出たプリズナー・ソング(Muzsikás: Nem arról hajnallik, amerről hajnallott...)と、それより前の87年に出たDudoltamを中心におかけします。
プリズナー・ソングが出た前年の1990年前後だったと思いますが、確か渋谷のクラブクアトロで来日公演がありまして、聞きに行って来ました。ムジカーシュの活動開始はダンスハウス運動直後の1973年ですので、既に20年近いキャリアがあったと思いますが、西側で手に入るCDは、当時はプリズナー・ソングと、そのすぐ後で同じハンニバルから出たBlues for Transylvaniaだけだったように記憶しています。ベースギターやブズーキが入った若干ポップなアレンジも一部に施されていますが、聞き覚えのある民謡断片が随所に確認できます。初来日公演では生演奏ですので、アレンジの入ってない、生のままのトラッド音楽が展開されていたように思います。少し上体を前に乗り出し気味でヴァイオリンを弾くミハーイ・シポシュが、往年の俳優の大泉滉に似て見えて仕方なかったのも、よく覚えています(笑)

それではプリズナー・ソングから、5音音階のマジャール民謡の象徴のような「飛べよ孔雀よ」をもじったようにも思えるRepülj Madár, Repüljからおかけします。旋律も雰囲気もそっくりな曲です。因みに「飛べよ孔雀よ」の原題はRepülj páva repüljです。2007年にキングレコードから「世界のディーヴァたち」のシリーズの一枚として出た際には、「鳥よ、思いを伝えて」と言う邦題が付いていました。

<6 Repülj Madár, Repülj 3分38秒>

Muzsikás: Repülj madár / Fly Bird

それではプリズナー・ソングから続いて2,4,8曲目の3曲をおかけします。2曲目のEddig Vendégは、確かバルトークが編曲して作品に使っていた曲です。邦題は「今まではお客さんで」となっています。アグレッシブなビートが印象的な4曲目のHidegen Fújnak a Szelekは、「冷たい風」と言う邦題が付いています。8曲目のSzerelem, Szerelemの邦題は「恋」となっています。マルタ・セバスチャンの素晴らしいコブシ回しを堪能できる独唱です。

<2 Eddig Vendég 3分54秒>
<4 Hidegen Fújnak a Szelek 3分14秒>
<8 Szerelem, Szerelem 4分37秒>

もう一枚のDudoltamは、マルタ・セバスチャンとムジカーシュの1987年リリースのアルバムで、1993年に再発されています。彼女のCDの中でも特にシンプルで古典的な演奏が集まった一枚でした。この盤にも「飛べよ孔雀よ」の替え歌のような曲がありまして、その9曲目のFújnak a fellegek - Somogyと、度々これまでに出てきたカロタセグの曲を歌っている5曲目のHajnali nóta - Kalotaszegをおかけします。

<9 Fújnak a fellegek - Somogy 1分29秒>
<5 Hajnali nóta - Kalotaszeg 6分4秒>

では最後にMuzsikás Együttesと言う名義でストリーミングに出てきたMagyarországi Táncház Találkozó 1985. - IV.から、Vasvári vebunk és friss (Gömör)と言う曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。これまでのムジカーシュの音源より前の、1985年のハンガリー本国での音源と思われます。85年ですからLPのみだったのかも知れません。都会のチャールダーシュっぽいヴェルブンクをムジカーシュで聞くことは珍しいので、こちらを選んでみました。他は一般的なハンガリー農村音楽系がほとんどです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<3 Vasvári vebunk és friss (Gömör) 2分45秒>

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2023年5月12日 (金)

44のヴァイオリン二重奏曲のフィナーレ エルデーイの踊り

バルトークの44のヴァイオリン二重奏曲の楽譜を手に入れたのは、1983年頃だったと思います。6つのルーマニア民族舞曲もその頃でした。バルトークのヴァイオリン作品のほとんどは、往年の名手ヨーゼフ・シゲティやユーディ・メニューインに献呈されたので、現代音楽リスナーでなくても意外と注目している人はいるようで、所属していた大学オーケストラのヴァイオリン・パートの同級生からコピーをもらいました。そのボロボロの楽譜はまだ手元にありますが、なかなかお披露目する機会もないまま、40年が経ちました。ヴァイオリン教育の目的で書かれた作品なので、最も難度の高い無伴奏ヴァイオリン・ソナタはもちろん、ラプソディー2曲や6つのルーマニア民族舞曲よりも遥かに取り組みやすい曲です。伴奏に回っているパートが、5度の開放弦の重音を効果的に入れる辺りは、やはり近現代作品の大きな特徴でしょう。

当時から44のヴァイオリン二重奏曲で特に注目した曲は、アルジェリアのビスクラでの音楽体験の影響があると思われるアラブの踊りと、44曲目のフィナーレ、トランシルヴァニア(エルデーイ)の踊りでした。この2曲は最も演奏効果が華やかに映えると思います。どちらも増二度音程のエキゾチックな音の動きが目立ちますが、アルジェリアとトランシルヴァニアでは、相当離れているのに両方にあるのは、ジプシーが媒介したのでしょうか。あるいは、バルトークの蝋管録音のように縦笛フルヤで演奏されるのが元のスタイルとすれば、同種の縦笛が多くみられる南のバルカン方面からの影響かも知れません。バルカンは20世紀初頭まではオスマン帝国領ですから、最大版図の時はアルジェリアまで一つの国でした。同じような旋律の動きが同じ国の中に広まるのは、自然なことのように思います。
1本目はこの曲の生演奏です。前にMargaréta Benkováの多重録画を上げましたが、今回はこちらで。(以下放送原稿を再度)

Bartók: from 44 Duos for Two Violins, Sz. 98 No. 44: Transylvanian Dance - Frautschi & Beilman

15曲目のバルトークの蝋管録音は縦笛フルヤの独奏だと思いますが、16曲目にはこの曲に基づく44. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Erdélyi Tánc]が入っています。やはりアレクサンダー・バラネスク他の演奏です。二つのヴァイオリンの44の二重奏曲のフィナーレを華やかに締め括るトランシルヴァニアの踊りです。2曲続けます。

<15 Ardeleana 38秒>

<16 44. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Erdélyi Tánc] 1分46秒>

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2023年5月11日 (木)

Dunántúli UgrósokとPorondos Víz Martján

残り2日でPorondos Víz Martjánか、Dunántúli Ugrósokか、Erdélyi Táncか、いずれをクローズアップするか迷いましたが、今日は最初の2本にします。
Dunántúli Ugrósokは番組のラストにかけてフェイドアウトになりましたし、7日には全くかかりませんでした。以前ブログで取り上げた、この曲の童謡のようなアプローチの演奏は、覚えておいででしょうか? バルトークのピアノのための即興曲の第4曲目も、その時に入れています。次の21曲目のFriss Csárdásokの部分がメインですが、ムジカーシュのライヴもありましたので、1本目に入れました。Dunántúliとは、ハンガリー西部バラトン湖南北のトランスダヌビアを指します。Ugrósokは、訳がジャンパーと出てきましたが、その真意やいかに(笑) 
Porondosについては、マルタ・セバスチャンの歌唱を聞いていたのは間違いではなかったと今回思い出しましたが、この歌に関しては、やはりフォンティ・ムジカーリ盤の冒頭のファビアン・エヴァの方が素晴らしいと思います。その音源を4本目に入れておきます。(以下放送原稿を再度)

では最後に20曲目のDunántúli Ugrósokを時間まで聞きながら今回はお別れです。いかにもトランシルヴァニア(エルデーイ)のハンガリー音楽らしい5音音階の旋律です。これはバルトークが録音してきたHej, Dunáról Fúj A Szél(ドナウから風が吹いてくる)が原曲です。2分10秒頃にそのものの旋律が登場します。この旋律は、バルトークのピアノのための即興曲の第4曲目に使われています。

Muzsikás – Dunántúli ugrósok és friss csárdás (Akusztik, M2 Petőfi TV)

<20 Dunántúli Ugrósok 3分32秒>

8曲目のポロンドーシュと言う曲は、前にフォンティ・ムジカーリ盤の冒頭のファビアン・エヴァの歌唱でかけたのと同じ曲です。ここではマルタ・セバスチャンが独唱しています。エルデーイのフォークロアな雰囲気が満点の、モルドヴァのハンガリー系少数民族チャンゴーの哀歌(keserves)です。

<8 Porondos Víz Martján 3分13秒>

Moldvai csásngó keserves

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2023年5月10日 (水)

ルーマニア民族舞曲の棒踊りと足踏み踊り

ムジカーシュのバルトーク・アルバムでは、バルトークの蝋管録音と、それを題材とする44のヴァイオリン二重奏曲の組み合わせが中心だと思いますが、一番の注目曲は、やはりルーマニア民族舞曲の1曲目の棒踊りでしょう。私は1977年にこの曲をミシェル・ベロフのピアノで聞いたことから民族音楽の方に目が向いたので、個人的に最も思い入れの強い曲です。当時は一部のリスナーが知っている位だったかと思いますが、46年経って最近では色々なヴァイオリニストが取り上げる曲になりました。1本目はムジカーシュのライヴ映像で(2分40秒頃からが該当箇所)、2本目がバルトーク・アルバムの音源です。ルーマニア民族舞曲、3曲目の足踏み踊りの原曲もありますので、併せて上げておきます。(以下放送原稿を再度)

13曲目は原題がJocul cu bâtăとありまして、このタイトルでピンと来ましたが、これはバルトークの有名なルーマニア民族舞曲の1曲目の棒踊りの原曲に当たるようです。元の演奏はヴェルブンコシュ風、つまりハンガリーの勇壮な舞曲の影響があるロマの二人のヴァイオリニストによる演奏だったそうです。ムジカーシュの演奏がそのロマの演奏をそのまま再現しているのかどうかは不明ですが、バルトークのあの有名な旋律が途中から出てきます。バルトークがこの曲を採集した場所は、Voiniceniと言うムレシュ県の村です。ムレシュ県はクルージュ県の東側になりますから、トランシルヴァニアのど真ん中辺りです。

Muzsikás - Bota and Invertita / Bartók - Romanian Folk Dances with Danubia Orchestra

<13 Botos Tánc (Jocul Cu Bata) 5分16秒>

18曲目Pe Locはルーマニア民族舞曲の3曲目の足踏み踊りの原曲です。エキゾチックな増2度音程が大変印象的な曲です。ここでは原曲におそらくそっくりなスタイルの、牧笛とステップの音で表現しています。

<18 Pe Loc 1分22秒>

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2023年5月 8日 (月)

バルトーク・アルバム

ゼアミdeワールド358回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。7日夜は大雨情報のため、最初の5分余りと終わりの2分ほどが放送されませんでした。最初の解説の部分が全て流れなかったので、何の曲か分からなかったと思います。10日の再放送では問題なく放送されると思います。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画は5,6曲目のみです。

GW中のため、久々に宅録しております。ハンガリー音楽の38回目になります。今回はハンガリートラッド界で最もよく知られているグループ、ムジカーシュ Muzsikásの重要作の一つである「バルトーク・アルバム Bartók Album」を取り上げたいと思います。20世紀ハンガリーの大作曲家ベラ・バルトークの収集した民族音楽と、その曲に基づく彼の作品にムジカーシュが向き合った盤でした。

バルトークがトランシルヴァニアで現地録音した蝋管録音は4曲入っていますが、男性の歌うPejparipám Rézpatkójaと言う民謡と、この旋律を元にバルトーク自身が2本のヴァイオリンのために書いた二重奏曲の28番が5,6曲目に続けて入っていますので、続けておかけします。CDが残念ながら行方不明のため解説は参照できていませんが、ヴァイオリニストの一人はバラネスクSQのAlexander Balanescuです。もう一人がムジカーシュのミハーイ・シポシュかどうか未確認です。

<5 Pejparipám Rézpatkója 1分10秒>

<6 28. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Bánkódás] 2分27秒>

8曲目のポロンドーシュと言う曲は、前にフォンティ・ムジカーリ盤の冒頭のファビアン・エヴァの歌唱でかけたのと同じ曲です。ここではマルタ・セバスチャンが独唱しています。エルデーイのフォークロアの雰囲気が満点のモルドヴァのハンガリー系少数民族チャンゴーの哀歌です。

<8 Porondos Víz Martján 3分13秒>

10、11曲目にはバルトークの蝋管録音によるJocul Bãrbãtescに続いて、この曲を原曲とするバルトークの2本のヴァイオリンのための二重奏曲の32番が入っています。ヴァイオリニストの一人はバラネスクSQのAlexander Balanescuです。続く12曲目のMáramarosi Táncok (feat. Sebestyén Márta)も、同じ旋律による演奏で、マルタ・セバスチャンの独唱に始まり、ムジカーシュの演奏に移ります。

<10 Jocul Bãrbãtesc 35秒>
<11 32. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Máramarosi Tánc] 42秒>
<12 Máramarosi Táncok (feat. Sebestyén Márta) 3分27秒>

13曲目は原題がJocul cu bâtăとありまして、このタイトルでピンと来ましたが、これはバルトークの有名なルーマニア民族舞曲の1曲目の棒踊りの原曲に当たるようです。元の演奏はヴェルブンコシュ風、つまりハンガリーの勇壮な舞曲の影響があるロマの二人のヴァイオリニストによる演奏だったそうです。ムジカーシュの演奏がそのロマの演奏をそのまま再現しているのかどうかは不明ですが、バルトークのあの有名な旋律が途中から出てきます。バルトークがこの曲を採集した場所は、Voiniceniと言うムレシュ県の村です。ムレシュ県はクルージュ県の東側になりますから、トランシルヴァニアのど真ん中辺りです。

<13 Botos Tánc (Jocul Cu Bata) 5分16秒>

15曲目のバルトークの蝋管録音は縦笛フルヤの独奏だと思いますが、16曲目にはこの曲に基づく44. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Erdélyi Tánc]が入っています。やはりアレクサンダー・バラネスク他の演奏です。二つのヴァイオリンの44の二重奏曲のフィナーレを華やかに締め括るトランシルヴァニアの踊りです。2曲続けます。

<15 Ardeleana 38秒>
<16 44. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Erdélyi Tánc] 1分46秒>

18曲目Pe Locはルーマニア民族舞曲の3曲目の足踏み踊りの原曲です。エキゾチックな増2度音程が大変印象的な曲です。ここでは原曲におそらくそっくりなスタイルの、牧笛とステップの音で表現しています。

<18 Pe Loc 1分22秒>

では最後に20曲目のDunántúli Ugrósokを時間まで聞きながら今回はお別れです。いかにもトランシルヴァニア(エルデーイ)のハンガリー音楽らしい5音音階の旋律です。これはバルトークが録音してきたHej, Dunáról Fúj A Szél(ドナウから風が吹いてくる)が原曲です。この旋律は、バルトークのピアノのための即興曲の第4曲目に使われています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<20 Dunántúli Ugrósok 3分32秒>

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2023年5月 5日 (金)

マラマロシュシゲティの踊り、アニ・マアミン

今週の番組でかけた曲も、全てはブログで追えませんが、マラマロシュシゲティの踊りとアニ・マアミンだけは入れておきたいと思います。マラマロシュシゲティの踊りは、ムジカーシュ以外の演奏も聞いてみたいものですが、検索すると、ほとんどがマラマロシュ(マラムレシュ)の踊りで出て来てしまいます。とても魅力的な曲ですが、おそらくムジカーシュ以外では見当たらないように思います。
アニ・マアミンは他のユダヤ教祈祷歌と同様に異なる旋律が多い曲で、今回も初めて聞く旋律が幾つかありました。ムジカーシュの次に、少女中心の合唱の演奏を上げておきます。これも、とてもユダヤ的な旋律です。1978年のTVドラマ「ホロコースト」で、ハティクヴァを少女数人が歌っていたシーンを思い出しました。(以下放送原稿を再度)

「ムジカーシュ/トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」(Muzsikás / Maramoros - The Lost Jewish Music of Transylvania)の3曲目のMáramarosszigeti tánc(マラマロシュシゲティの踊り)は、ゾルタン・シモンの採譜で知られていて、ツィンバロム奏者のアルパド・トニをフィーチャーした、これもトランシルヴァニアとハシディックが入り混じった感じの曲です。Máramarosszigetiの地名は、マラマロシュとシゲティに分離できると思いますが、ヴァイオリニストのヨーゼフ・シゲティを思い出す曲名だと思ったら、この国境の町でシゲティは少年時代を過ごしたそうです。因みにハンガリー語のszigetiは「小島」の意味でした。

<3 Máramarosszigeti tánc 3分36秒>

次は1曲飛びまして、5曲目のアニ・マアミンです。アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤで最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

Ani Maamin

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2023年5月 4日 (木)

Szól A Kakas Már

Szól A Kakas Márについては、2007年にブログを始めて以来、何度も書いていると思います。やはり今回はマルタ・セバスチャンで聞きたいと思いますが、ムジカーシュとのライブ映像が見当たらないので、前にも貼ったことがありますが、クレズマー・グループのディ・ナイェ・カペリエとの歌唱を1本目に入れておきます。2本目が番組でかけた音源です。(以下放送原稿を再度。その下は文のみですが去年の記事から)

2曲目の物悲しく凄絶なまでに美しい旋律のSzól A Kakas Márは、この盤の白眉でしょう。英訳ではThe Rooster is crowingですから、「雄鶏は鳴く」となるでしょうか。ハンガリー系ユダヤ人のみならず一般のハンガリー人の間でも有名な旋律で、ハンガリー語の歌詞ですがユダヤの歌らしくヘブライ語の行が挿入されています。言い伝えでは、ある羊飼いが歌っていた旋律をハシディズムの指導者ツァディク(義人)のReib Eizikがいたく気に入って覚えていた旋律だそうで、後には宗教や民族を分け隔てなく寛容に統治した17世紀のトランシルヴァニア公Gabor Bethlenのお気に入りの歌だったという記録もあるそうです。

Sebestyén Márta és a Di Naye Kapelye - Szól a kakas már

Szól a kakas már - Muzsikás együttes, Sebestyén Márta

今週の番組で2曲目にかけた名曲Szol a kakas mar (Rooster is Crowing)については、2010年にZeAmiブログに書いていました。下の方にペーストしておきます。2010年の時点でも沢山動画がありましたが、最近調べたら、ブダペストのドハーニ街シナゴーグでのカントールの独唱もありまして、これは見たことのなかった映像です。初めて見る会堂内です。1989年の映像のようで、カントールの熱唱に聞き惚れ、辛い戦時中を思い出すのか、涙を流す老婦人を何人も見かけます。方々で書いているように、ドハーニ街シナゴーグのカントールと合唱のフンガロトン盤を1989年に聞いて民族音楽に舞い戻ったので、その点でも見過ごせない映像です。Szol a kakas marは、YouTubeで上位に上がっているように、2000年代に入ってからは、Palya Beaの歌唱でも有名になりました。

Sol o Kokosh

ハンガリアン・ジューの名曲Szol a kakas marは、まず何よりMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)の2曲目の、マルタ・セバスチャンの歌唱で有名になったと思います。その悲愴美は筆舌に尽くせないほど印象的で、きーんと冷えたトランシルヴァニアの空気感も運んでくるかのような、更には匂いも感じさせるような曲でした。これぞハンガリー系ユダヤの秘曲と唸らせるものがありました。90年頃来日を果たしたムジカーシュの演奏も非常に素晴らしいものでしたが、この盤の出る前だったようで、このアルバムからは聞いた記憶がありません。ハンニバル盤が出たのは93年と、もう大分経ってしまいましたので、そちらでは最近入り難くなっているのが残念です。ハンガリー現地盤(ムジカーシュ自身のレーベル)は生きていたと思います。
この曲名、和訳すれば「雄鶏が鳴いている」となりますが、そのメロディ・ラインで思い出すのは、ユダヤ宗教歌で最も名高いKol Nidreでしょうか。コル・ニドレ(ドイツ語風に読むとコル・ニドライ)は、典型的なユダヤ旋法の一つ、Ahavo Rabo(「大いなる愛」の意味)旋法の歌。エキゾチックな増二度音程が悲しみを最大限に醸し出しています。いずれもユダヤ民族の運命を歌ったような悲劇的な調子ですが、そんなSzol a kakas marがハンガリーのユダヤ人の間では最も人気があったようです。この透徹した悲しみの歌については、まだ分らないことが多いです。また何か分ったら書いてみたいと思います。そう言えば、往年のシャンソン歌手ダミアが歌った「暗い日曜日」の原曲は、ハンガリーの歌でした。この歌のムードに似たものがあるようにも思います。

更にソル・ア・カカス・マール
29日にアップしたソル・ア・カカス・マールは、チャールダッシュのラッサンの部分から生まれた曲なのでしょうか。その深い憂愁のメロディには、「極北のジューイッシュ・メロディ」の印象を勝手に持っていました。あのムジカーシュの盤以降、いつの間にかクレズマー・シーンでもメジャーになったのか、youtubeはまだまだ見つかります。何とマイケル・アルパートの弾き語りもありました。今日は幾つかまとめて上げておきます。ムジカーシュ&マルタ・セバスチャンとは異なる趣向を色々楽しめます。ルーマニアでドイナと結合したように、ハンガリーの農村ジプシー音楽のスタイルとの見事な融合例として、この曲は上げられるかも知れません。個人的には最も好きなジューイッシュ~ハンガリアン・メロディの一つです。

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2023年5月 1日 (月)

トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽 再び

ゼアミdeワールド357回目の放送、日曜夜10時にありました。3日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はChasid lakodalmi táncokの映像だけにしておきます。1本目は何度も上げていますが、ムジカーシュとジプシーの老楽士ゲオルゲ・コヴァーチとのセッション、2本目は番組でかけた音源ですが、ハンガリーでの再発盤のジャケットが映像に出ています。

ハンガリー音楽の37回目になります。今回はハンガリートラッド界で最もよく知られているグループ、ムジカーシュの重要作の一つである「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」を再度取り上げますが、内容は去年の4月24日の306回目の放送のルーマニア音楽の18回目に少し手を加えたものになります。

米Hannibalから1993年に出た「ムジカーシュ/トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」(Muzsikás / Maramoros - The Lost Jewish Music of Transylvania)は、ハンガリー・トラッド界の雄、ムジカーシュの代表作の一つで、名歌手マルタ・セバスチャンが歌で参加して華を添えています。ホロコーストでユダヤ人楽士のほとんどが亡くなり、忘れ去られていたトランシルヴァニアのユダヤ人の音楽を、ハンガリーのユダヤ人音楽学者のZoltan Simonとムジカーシュが協力して再現した盤です。戦前にユダヤ人の結婚式で演奏していたジプシーの老フィドラーGheorghe Covaciが記憶していて、取材したムジカーシュによって現代に蘇った曲も収録されています。音楽の印象は、一般的なクレズマーではなく、ムジカーシュが普段演奏するハンガリーのヴィレッジ音楽とも少し違っていて、当時のハンガリーのユダヤ音楽を忠実に再現しているという評価が高い演奏です。基本編成は、リーダーのMihály Siposのヴァイオリンと、伴奏は3弦のヴィオラ奏者が二人、コントラバスが一人です。
タイトルに「トランシルヴァニア」とありますが、本題はマラマロシュと言いまして、ルーマニア北部のマラムレシュ地方のハンガリー語読みですので、トランシルヴァニアでも最北部になります。狭義ではマラムレシュはトランシルヴァニアに入れない場合もあります。

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
Muzsikas: Chasid Dances with Cioata

01 Chaszid lakodalmi táncok Khosid Wedding Dances

2曲目の物悲しく凄絶なまでに美しい旋律のSzól A Kakas Márは、この盤の白眉でしょう。英訳ではThe Rooster is crowingですから、「雄鶏は鳴く」となるでしょうか。ハンガリー系ユダヤ人のみならず一般のハンガリー人の間でも有名な旋律で、ハンガリー語の歌詞ですがユダヤの歌らしくヘブライ語の行が挿入されています。言い伝えでは、ある羊飼いが歌っていた旋律をハシディズムの指導者ツァディク(義人)のReib Eizikがいたく気に入って覚えていた旋律だそうで、後には宗教や民族を分け隔てなく寛容に統治した17世紀のトランシルヴァニア公Gabor Bethlenのお気に入りの歌だったという記録もあるそうです。

<2 Szól A Kakas Már 3分7秒>

3曲目のMáramarosszigeti tánc(マラマロシュシゲティの踊り)は、ゾルタン・シモンの採譜で知られていて、ツィンバロム奏者のアルパド・トニをフィーチャーした、これもトランシルヴァニアとハシディックが入り混じった感じの曲です。Máramarosszigetiの地名は、マラマロシュとシゲティに分離できると思いますが、ヴァイオリニストのヨーゼフ・シゲティを思い出す曲名だと思ったら、この国境の町でシゲティは少年時代を過ごしたそうです。因みにハンガリー語のszigetiは「小島」の意味でした。

<3 Máramarosszigeti tánc 3分36秒>

次は1曲飛びまして、5曲目のアニ・マアミンです。アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤで最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

7曲目はZoltan Simonがマルタ・セバスチャンに見せて歌うように勧めたユダヤ教の安息日(シャバト)の祈りの独唱で、シナゴーグでは男性が唱えるアハヴォ・ラボ旋法の曲を女性に歌わせているのがユニークです。

<7 Szombateste Búcsúztató 3分15秒>

では最後に年末の重要なユダヤ人の祭り、ハヌカーのための13曲目Chanukka gyertyagyújtásを時間まで聞きながら今回はお別れです。ヘブライ語ではHaneros Haleluとなっているこの曲は、ムジカーシュのメンバーがKlezmer Music; Early Yiddish Instrumental Musicと言う1910年のヒストリカル音源を聞いていて知ったそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Chanukka gyertyagyújtás 3分11秒>

11曲目は時間が余れば、と思いましたが、入りませんでした。データだけ上げておきます。
タイトルからすぐにユダヤ・メロディと分る曲が幾つかありますが、11曲目のChosid tancもその一つで、結婚式のダンスのためのハシディック・メロディです。これもGheorghe Covaciが踊り方やその様子をよく覚えていたようです。

<11 Chosid tanc 1分39秒>

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