ドハーニ街シナゴーグの典礼
ゼアミdeワールド360回目の放送、日曜夜10時にありました。24日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今回はハンガリー音楽の40回目最終回兼、東欧系ユダヤ音楽の1回目です。カディッシュ、コル・ニドレイから後は水曜以降に。
ハンガリー音楽の40回目になります。予告通りハンガリーの音楽のラストは、「ブダペスト ドハーニ街シナゴーグの典礼」で締めたいと思います。シナゴーグと言うのはユダヤ教の会堂のことです。
このフンガロトン盤を1989年に聞いたことが、ユダヤの音楽を通して民族音楽に回帰するきっかけになったことは、これまでにブログ等で何度も書いてきましたが、盤の紹介分として1999年に音楽之友社から出た「ユーロルーツポップサーフィン」に書いた拙稿を読み上げたいと思います。何度も拙稿を引用してきた「世界の民族音楽ディスクガイド」の3年前に出た本です。このムックでは沢山の専門家がヨーロッパ中のトラッド音楽の盤を紹介していますが、私はユダヤ音楽の記事を全て担当しました。その中から「ドハーニ街シナゴーグの典礼」のレビューを編集したものを読み上げます。
私事になって恐縮だが、1989年の六本木ウェイブ4階のクラシック担当時代に偶然この盤を聞き、カントールの悲愴なバリトンと混声合唱の切実で迫真力のある表現、ゴーと地響きのような音を鳴らすオルガンに鳥肌が立ってしまった。つまりこの盤がユダヤ音楽へ目を向けるきっかけになった訳だが、このヨーロッパ最大のシナゴーグでの典礼録音の壮麗さは今だに特筆に値すると思う。編成はクラシックと同じく歌とオルガンだけなのに雰囲気は余りにも違う。正統派ユダヤ教のように、歌は男性のみ、楽器は角笛ショファルのみ、と言うのとは違って、改革派の教会なので、混声合唱やオルガンも入るが、それでもヨーロッパの音楽文化の底流に流れていた古色溢れるユダヤ音楽の響きは十分に感じられる。カントールのシャーンドル・コヴァーチ氏はハンガリー動乱時にはプラハに滞在していたのか、56年録音のスプラフォン盤カントールの音源に彼の名が見いだされる。(音楽之友社「ユーロルーツポップサーフィン」の拙稿)
それでは最初の3曲を続けておかけします。タイトルの日本語訳は、アルファエンタープライズから国内発売された時の解説を参照しております。1曲目が大祭礼式入祭のオルガン独奏(ガーボル・リスニアイ編曲)、2曲目のウンサネ・タイケフ(ガーボル・リスニアイ編曲)は殉教したマインツ出身のラビ作とされる祈祷文によるカントールの独唱、3曲目は合唱が鮮烈に現れるエメス(サロモン・サルザー作曲)と続きます。エメスのように、最後のTの音のタヴの文字を、TではなくSの音で発音するのは、いかにもアシュケナジーム的です。
<1 Introduction - Organ 5分8秒>
<2 Unesaneh Tokef 1分41秒>
<3 Emes 2分7秒>
4曲目を飛ばして、5曲目のカディッシュと、6曲目のコル・ニドレイは非常に有名なユダヤ教の祈祷歌ですので、続けておかけします。カディッシュは、カドーシュなどと同根で聖なる意味合いを持ちます。フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが「2つのヘブライの歌」の一曲としてカディッシュに基づく曲を書いています。コル・ニドレイは、ドイツの作曲家マックス・ブルッフが作曲したチェロのためのクラシック作品のコル・ニドライの原曲です。Kol Nidoreiの「ei」の部分がドイツ語の場合、通常「アイ」と発音するので、コル・ニドライと言う発音がよく知られていますが、ヘブライ語本来の発音はコル・ニドレイです。ユダヤ新年(ローシュ・ハシャナー)の贖罪日(ヨム・キプール)の初めに歌われる厳粛な祈祷歌で、ユダヤ旋律らしいエキゾチックな増二度音程が特徴的です。カディッシュ同様、通常はアラム語で唱えられます。コル・ニドレイとは「すべての誓い」のような意味です。
<5 Kaddish 3分45秒>
<6 Kol Nidrei 6分31秒>
ドハーニ街シナゴーグのウィキペディアのディスコグラフィーに『ブダペスト・シナゴーグの聖歌』がありましたが、そこに貼られていたリンクが私の店、ゼアミの旧サイトのURLだったので、リンク切れになっていて残念でした。キングレコードの「世界の祈り」シリーズの一枚として出た時の記事でしたが、このシリーズも廃盤になって久しいです。
それでは最後に旋律の美しい7曲目のYaaleと、時間が余れば12曲目の安息日シャバトの歌、Veshomruを時間まで聞きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<7 Yaale 2分56秒>
<12 Veshomru 5分48秒>
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