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2023年5月 4日 (木)

Szól A Kakas Már

Szól A Kakas Márについては、2007年にブログを始めて以来、何度も書いていると思います。やはり今回はマルタ・セバスチャンで聞きたいと思いますが、ムジカーシュとのライブ映像が見当たらないので、前にも貼ったことがありますが、クレズマー・グループのディ・ナイェ・カペリエとの歌唱を1本目に入れておきます。2本目が番組でかけた音源です。(以下放送原稿を再度。その下は文のみですが去年の記事から)

2曲目の物悲しく凄絶なまでに美しい旋律のSzól A Kakas Márは、この盤の白眉でしょう。英訳ではThe Rooster is crowingですから、「雄鶏は鳴く」となるでしょうか。ハンガリー系ユダヤ人のみならず一般のハンガリー人の間でも有名な旋律で、ハンガリー語の歌詞ですがユダヤの歌らしくヘブライ語の行が挿入されています。言い伝えでは、ある羊飼いが歌っていた旋律をハシディズムの指導者ツァディク(義人)のReib Eizikがいたく気に入って覚えていた旋律だそうで、後には宗教や民族を分け隔てなく寛容に統治した17世紀のトランシルヴァニア公Gabor Bethlenのお気に入りの歌だったという記録もあるそうです。

Sebestyén Márta és a Di Naye Kapelye - Szól a kakas már

Szól a kakas már - Muzsikás együttes, Sebestyén Márta

今週の番組で2曲目にかけた名曲Szol a kakas mar (Rooster is Crowing)については、2010年にZeAmiブログに書いていました。下の方にペーストしておきます。2010年の時点でも沢山動画がありましたが、最近調べたら、ブダペストのドハーニ街シナゴーグでのカントールの独唱もありまして、これは見たことのなかった映像です。初めて見る会堂内です。1989年の映像のようで、カントールの熱唱に聞き惚れ、辛い戦時中を思い出すのか、涙を流す老婦人を何人も見かけます。方々で書いているように、ドハーニ街シナゴーグのカントールと合唱のフンガロトン盤を1989年に聞いて民族音楽に舞い戻ったので、その点でも見過ごせない映像です。Szol a kakas marは、YouTubeで上位に上がっているように、2000年代に入ってからは、Palya Beaの歌唱でも有名になりました。

Sol o Kokosh

ハンガリアン・ジューの名曲Szol a kakas marは、まず何よりMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)の2曲目の、マルタ・セバスチャンの歌唱で有名になったと思います。その悲愴美は筆舌に尽くせないほど印象的で、きーんと冷えたトランシルヴァニアの空気感も運んでくるかのような、更には匂いも感じさせるような曲でした。これぞハンガリー系ユダヤの秘曲と唸らせるものがありました。90年頃来日を果たしたムジカーシュの演奏も非常に素晴らしいものでしたが、この盤の出る前だったようで、このアルバムからは聞いた記憶がありません。ハンニバル盤が出たのは93年と、もう大分経ってしまいましたので、そちらでは最近入り難くなっているのが残念です。ハンガリー現地盤(ムジカーシュ自身のレーベル)は生きていたと思います。
この曲名、和訳すれば「雄鶏が鳴いている」となりますが、そのメロディ・ラインで思い出すのは、ユダヤ宗教歌で最も名高いKol Nidreでしょうか。コル・ニドレ(ドイツ語風に読むとコル・ニドライ)は、典型的なユダヤ旋法の一つ、Ahavo Rabo(「大いなる愛」の意味)旋法の歌。エキゾチックな増二度音程が悲しみを最大限に醸し出しています。いずれもユダヤ民族の運命を歌ったような悲劇的な調子ですが、そんなSzol a kakas marがハンガリーのユダヤ人の間では最も人気があったようです。この透徹した悲しみの歌については、まだ分らないことが多いです。また何か分ったら書いてみたいと思います。そう言えば、往年のシャンソン歌手ダミアが歌った「暗い日曜日」の原曲は、ハンガリーの歌でした。この歌のムードに似たものがあるようにも思います。

更にソル・ア・カカス・マール
29日にアップしたソル・ア・カカス・マールは、チャールダッシュのラッサンの部分から生まれた曲なのでしょうか。その深い憂愁のメロディには、「極北のジューイッシュ・メロディ」の印象を勝手に持っていました。あのムジカーシュの盤以降、いつの間にかクレズマー・シーンでもメジャーになったのか、youtubeはまだまだ見つかります。何とマイケル・アルパートの弾き語りもありました。今日は幾つかまとめて上げておきます。ムジカーシュ&マルタ・セバスチャンとは異なる趣向を色々楽しめます。ルーマニアでドイナと結合したように、ハンガリーの農村ジプシー音楽のスタイルとの見事な融合例として、この曲は上げられるかも知れません。個人的には最も好きなジューイッシュ~ハンガリアン・メロディの一つです。

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