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2023年5月29日 (月)

Chansons Yiddish - Tendresses et Rage

ゼアミdeワールド361回目の放送、日曜夜10時にありました。31日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。「ドナ・ドナ」は、水曜以降に。

東欧系ユダヤ音楽の2回目になります。前回が1回目で「ブダペスト ドハーニ街シナゴーグの典礼」でした。このフンガロトン盤を1989年に聞いたことが、ユダヤの音楽を通して民族音楽に回帰するきっかけになりましたが、今日おかけするイディッシュ語の歌の音源は、その後すぐに聞いた懐かしい盤です。その2枚をおかけする前に、イディッシュの歌と言えば一番有名な「ドナ・ドナ」をジョーン・バエズでおかけしたいと思います。ジョーン・バエズはアメリカのベテランSSWで、ドナ・ドナを歌っていますがユダヤ系ではなく、メキシコ系の家系で、彼女の一家はクエーカー教徒だったそうです。

<Joan Baez / Donna Donna 3分15秒>

イディッシュ語と言うのは、東欧のユダヤ人の間で話されていた(いる)ドイツ語に近い言葉で、ドイツ語の一方言と言われる程、音はそっくりですが、語彙はユダヤの宗教語であるヘブライ語や、周囲のポーランドなどのスラヴ系言語の単語も入っています。バルカンの時に出てきたスペイン系ユダヤはヘブライ語でセファルディーでしたが、東欧系ユダヤはアシュケナジームと呼ばれます。
イディッシュ・ソングの「懐かしい2枚」と言うのは、フランスのオコラから89年に出ていたChansons Yiddish - Tendresses et Rage(優しさと怒り)と、ドイツのプレーネから出ていたZupfgeigenhanselのJiddische Liederです。どちらも購入してから30年以上経った盤で、先週のドハーニ街シナゴーグの盤が一部上手くトレースしなかったので、こちらも心配ではありますが、データも取ってあるので大丈夫です。オコラのChansons Yiddishは、2011年頃に再発されていました。この盤も1999年に音楽之友社から出た「ユーロルーツポップサーフィン」にレビューを書きました。ジャケットには戦中のクラクフ・ゲットーの有名な写真が使われていますが、切なく美しく物悲しい歌が多いイディッシュ・ソングのイメージ通りとも言えそうです。

オコラのChansons Yiddishの演奏者ですが、前にルーマニアの時にエネスコのヴァイオリン・ソナタ3番をかけたアミ・フラメールがヴァイオリンを弾いているのがまず注目です。ヘンリック・シェリングやナタン・ミルシタインにも師事した名手が、クラシックではない音楽を演奏するのも聞きものです。イディッシュ語のギター弾き語りはモシェ・ライサー、アコーディオンはジェラール・バローです。バロー以外の二人はユダヤ系で間違いないと思います。モシェ・ライサーはアントワープのシナゴーグの合唱団で幼少期から歌っていたという経歴があり、アミ・フラメールはルイ・マルの映画「さよなら子供たち」にも出ていました。フランスがナチス・ドイツの占領下にあった頃のカトリックの寄宿学校が舞台で、偽名でかくまわれていたユダヤ人の少年が連れ去られてしまうシーンで終わったと思います。
ではこの盤から、ラビが歌う時など、同じようなフレーズが繰り返されるところにハシディック・ソングの影響が見えるようなAz der rebbeと、戦時中のパルティザンの歌Partizanenliedの2曲を続けておかけします。

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Az der rebbe 4分46秒>

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Partizanenlied 3分17秒>

やはり同じようなフレーズを畳みかけるハシディック・ソングの系統に聞こえるLomir Alle !と、イスラエルのクラリネット奏者ギオラ・ファイドマンも演奏していたFraylekhがこの盤のラストに入っていますので、続けておかけします。どちらも旋律は一度耳にすると忘れられない印象を残します。

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Lomir Alle ! 3分47秒>
<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Fraylekh 2分33秒>

では最後にオコラのChansons Yiddishのオープニングに入っているAvremlを時間まで聞きながら今回はお別れです。この曲は他のイディッシュの盤では見かけない曲ですが、このトリオらしい非常に印象的な歌です。今回ツプフガイゲンハンゼルは時間切れでかけられませんでしたので、次回取り上げたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Avreml 5分50秒>

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