トポルのテヴィエはとにかく最高で、他の人が演じるテヴィエは考えられない程のはまり役だと思います。この71年の映画の当時で36歳、ロンドンの舞台の時は32歳で、この老け役を見事に演じています。(「屋根の上のヴァイオリン弾き」はロングランの演目ですから、日本を含め何人の俳優がテヴィエを演じてるか数えられないくらいで、他の人のも見ないととは思いますが)
トポルのプロフィールを見ると、今年の3月8日に87歳で亡くなっていました。70、80年代は「ハイアム・トポル」と言う表記を見かけましたが、ヘブライ語に忠実に言うなら「ハイーム・トポル」でしょう。ミア・ファローと共演した「フォロー・ミー」も好きな映画でした。追悼の意味も込めて、今週の最後は71年の映画版から、「金持ちなら」(If I Were A Rich Man)を上げておきます。昨日も書きましたが、テヴィエの「金持ちなら」に出て来るカントールの真似の部分は、ヘブライ語の発音と節回しが、やっぱり日本のミュージカルでは再現が難しいと思いましたが、トポルはその点、カントールの経験があるのかと思う程、完璧です。
月曜に書いたように映画全編のYouTubeを見かけたような気がしましたが、再度見てみたら、なくなっていました。あると思ったのは、気のせいだったのかも知れません。来週は67年のオリジナルロンドンキャストの音源をかけますので、当時の映像があれば探してみますが、なければ94年頃のトポルの舞台の映像がフルでありましたので来週上げる予定です。そう言えば、94年前後に彼が来日して舞台を見たことを思い出しました。トポル以外は日本の役者だったかも知れませんが、詳細は忘れてしまいました。(以下放送原稿を再度)
「金持ちなら」と踊りながらテヴィエが歌うIf I Were A Rich Manを時間まで聞きながら今回はお別れです。こういうコミカルな曲の端々にも東欧ユダヤの独特なリズムと節回しが聞き取れますし、シナゴーグの合唱長カントール(ヘブライ語ではハザン)を真似ている部分(3分32秒頃)もあります。
Fiddler on the roof - If I were a rich man (with subtitles)
では最後に曲順が戻りますが、「金持ちなら」と踊りながらテヴィエが歌うIf I Were A Rich Manを時間まで聞きながら今回はお別れです。こういうコミカルな曲の端々にも東欧ユダヤの独特なリズムと節回しが聞き取れますし、シナゴーグの合唱長カントール(ヘブライ語ではハザン)を真似ている部分もあります。次回はトポルの1967年オリジナル・ロンドン・キャストのLP、森繫久彌版のサントラから抜粋したいと思います。
Der Rebbe Elimeylech(ラビ・アリメレフ)は、Un as der Rebbe singtなどと並んで、数あるイディッシュ・ソングの盤ではお馴染みの曲ですが、実は19世紀ポーランドのガリツィア(ポーランド南東部~ウクライナ西部に跨ってあった地方)のハシディック・ソングです。ルッツ・エリアスの音源はARC盤と昨日のRegenbogen Musikverlagの2種類がありましたので、聞き比べてみました。ARCの方はヴァイオリンとクラリネットの伴奏が華やかで、85年頃のクレズマー色が濃厚に感じられます。Regenbogen Musikverlagの方は、録音年が25年近く経過しているでしょうか。伴奏は変わらずMassel Klezmorimですが、歌声が渋くなり、クラリネットやヴァイオリンが控えめな辺りを聞くと演奏者が変わっているのかも知れません。どんどん演奏が速くなるところは、ARCよりハシディック色が増しているようにも思います。もう一つの音源がYouTubeにありますが(同じくハヌキヤがジャケット)、更にストレートにユダヤ教に回帰しているように思いました。
ゼアミdeワールド363回目の放送、日曜夜10時にありました。14日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はLower East SideとDona Donaのみです。
東欧系ユダヤ音楽の4回目になります。2回続けて1989年に聞いたイディッシュ・ソングの「懐かしい2枚」をご紹介しましたが、今回もその後くらいの1990年に聞いたやはり懐かしい一枚です。一枚と言いますか、2枚シリーズですので、その中から抜粋したいと思います。演奏者はルッツ・エリアスとマッセル・クレズモリームMassel Klezmorimと言うドイツのグループで、1986年のハヌカーに催されたハンブルクのユダヤ音楽会のライブ録音です。レーベルはイギリスのARCです。このレーベルは、ワールドリスナーの間でそれ程評価が高くないのかも知れませんが、この頃はこの盤のようないい録音が色々出ていました。80年代末にリリースされた1枚もの2枚は一度廃盤になって、2003年頃に2枚組廉価盤で再発されています。
彼らのレパートリーのユニークな点は、イディッシュ民謡と結婚式などのクレズマー曲などの東欧系ユダヤ音楽だけでなく、スペイン系ユダヤ人(セファルディ)の歌や、ヘブライ語の歌まで入っている事だと思います。東欧系とセファルディだけなら他にも例はありますが、ヘブライ語の歌まで歌っているのは他に記憶がありません。
当時はアメリカのリヴァイヴァル・クレズマーの最盛期だと思いますから、その影響を受けたようなLower East Sideなどの曲も見えます。Lower East Sideと言えば、ニューヨークでユダヤの伝統が今も息づいている地区として有名です。この曲辺りはクレズマーの範疇に入ると思います。まずはその曲と、前々回にジョーン・バエズの歌唱でかけたドナ・ドナのイディッシュ語版の2曲を続けておかけします。
ZupfgeigenhanselのJiddische Lieder(「私が耳にしたこと (`ch hob gehert sogn)」)は、現在CDは入手困難のようです。YouTubeとストリーミングでは全曲聞けますので上げておきます。今回他に番組でかけた曲は、Di Grine Kusine、Lomir Sich Iberbetnと、5曲目のArbetlosemarsch(失業者達の行進)でした。7曲目のDonai, Donai(ドナ・ドナ)が何故かiPhoneで表示されてなくて、番組でかけ忘れてしまいました。(久しくCDではかけてなかったもので)
Di Grine Kusineはオープニングの躍動感あふれる曲ですが、有名なクレズマーヴァイオリニストのエイブ・シュヴァルツ作と言うことは余り知られてないかも知れません。6曲目のLomir Sich Iberbetnはハシディックなノリが強く感じられる曲で色々なグループの演奏をよく聞きます。英訳はLet Us Be Lovers Againと出てきましたが、これはこのままの意味でしょうか。Arbetlosemarsch(失業者達の行進)は、イディッシュ民謡の名曲を数多く残したモルデハイ・ゲビルティグ作の歌です。ゲットー暮らしの劣悪さを歌ったDire-Gelt同様、エレジー的な歌ですが、共に空元気のようなところがイディッシュ・ソングらしさでしょう。
昨日のSchtil, Di Nacht is Ojsgeschterntですが、少女パルティザンの活躍を歌った歌で「静かに、夜には星が散りばめられ」と、故・阪井葉子さんの「戦後ドイツに響くユダヤの歌」に解説と訳がありました。イディッシュ民謡やZupfgeigenhanselがお好きな方には、超お薦めの著書です。と言うか必携の名著です。
番組でもかけましたが、ZupfgeigenhanselのJiddische Liederの中で、特に好きな曲の一つSchtil, Di Nacht is Ojsgeschterntの1984年のライブ映像がありました。この詩も、昨日のSog Nischt Kejnmolと同じHirsch Glikの作と分かりました。意外に他のイディッシュの音源では聞かない曲です。Jiddische Liederの他の曲は、明日全曲入れようと思っていますので、ドイツ民謡を歌っている82年の映像を2本目に入れます。ハシディックなノリが強く感じられるLomir Sich Iberbetnも個別に上げようかと思いましたが、他のグループの演奏も多い曲ですので、外しました。ワンダーフォーゲル活動などで歌われるドイツ民謡の方が彼らのレパートリーの中心ですから、ドイツに回って来たら取り上げる予定ですが、アルバムとしては1枚だけのイディッシュ民謡は相当評価が高かったようで、私のようにイディッシュ専門のグループと思っていた人も日本にはいるのではと思います。
3本目は2022年の映像ですが、もうすっかりお爺ちゃんになっていて、分かってはいたことですが、少々ショックを受けました。
Zupfgeigenhansel - Schtil, di nacht is ojsgeschternt (Live 1984 - Volksbühne Berlin)
Zupfgeigenhansel - Bürgerlied (Live bei "Nacht der Lieder" 1982 - 2/6)
50 Jahre Zupfgeigenhansel: Das große Comeback 2022 (Interview von RegioTV)
この2曲はそっくりに思いますが、いかがでしたでしょうか。
続いて、ZupfgeigenhanselのJiddische Liederから、Di Grine Kusine、Schtil, Di Nacht is Ojsgeschternt、Lomir Sich Iberbetn、Sog Nischt Kejnmolの4曲をピックアップしました。Di Grine Kusineはオープニングの躍動感あふれる曲、その後はしっとりと美しいバラード風なSchtil, Di Nacht is Ojsgeschterntと言う曲で、その次のLomir Sich Iberbetnはハシディックなノリが強く感じられる曲で色々なグループの演奏をよく聞きます。Sog Nischt Kejnmolは、前回かけた「パルティザンの歌」と同様、対独レジスタンスの中で生まれた歌です。では4曲続けます。
<1 Di Grine Kusine 2分38秒>
<4 Schtil, Di Nacht is Ojsgeschternt 3分36秒>
<6 Lomir Sich Iberbetn 3分30秒>
<10 Sog Nischt Kejnmol 2分21秒>
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