ジョン・ゾーン・マサダの1枚目アレフ
ゼアミdeワールド373回目の放送、日曜夜10時にありました。23日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。http://www.baribari789.com/なら、どこででもお聞き頂けます。やっぱり個人的に一番鮮烈なのは、一曲目のヤイール。DELIN(デリン)は時間切れでかけられてないので、また後日上げます。
東欧系ユダヤ音楽の13回目になります。今回は灼熱の夏が終わる前に取り上げたい盤をおかけします。音源は、ジョン・ゾーン・マサダの1枚目アレフです。94年にディスクユニオンのDIWレコーズからリリースされました。何度かゼアミブログなどに書きましたが、ゼアミを立ち上げる2年前の94年に六本木ウェイブ4階のストアデイズに勤務していた頃によく来られていて、私が作ったユダヤ音楽コーナーを褒めて頂いたジョン・ゾーン本人から依頼されまして、ライナーノーツを執筆しました。もう30年近く前のことになり、CDも廃盤になって久しいようなので、ライナーノーツを文字起こしして、ゼアミのサイトに上げるつもりでした。初版は編集サイドで発生した要訂正箇所に私が気が付いて指摘したので、2版目が出ていたとしたら、訂正されていたのかも気になります。当時はまだインターネット時代より前で、確かワープロで打ってフロッピーでデータを編集者に渡したように思いますから、文字データも残っていませんでした。
ジョン・ゾーン・マサダの音楽の特徴としてよく言われてきたのは、東欧系ユダヤのクレズマー音楽を、フリージャズのオーネット・コールマン風のスタイルで演奏するというものでしたが、死海の近くにある古代ユダヤ王国最後の砦だったマサダの要塞の名を冠している事、曲のタイトルは東欧のイディッシュ語ではなく、死海文書のヘブライ語の用語や人名から取られていて、曲のタイトルだけでなく音楽自体が、東欧よりもパレスチナの灼熱の砂漠を連想させることから、夏が終わる前に今回取り上げることにしました。東欧系クレズマーの時系列で言えば、往年のウクライナ系のデイヴ・タラスやナフテュール・ブランドヴァインのような名人と、70年代以降のリヴァイヴァル・クレズマーのムーヴメントも取り上げた後にした方が自然なように思いますが、音楽の「熱さ」は今の時期にぴったりなように思います。20世紀最大の考古学的発見と言われた謎めいた死海文書ですから、英訳有とは言え、94年当時に訳出するのは非常に難しかったのをよく覚えています。
ジョン・ゾーン・マサダの1枚目アレフ(John Zorn Masada / Alef)から、最初の3曲を続けておかけします。編成はジョン・ゾーンのアルトサックス、デイヴ・ダグラスのトランペット、グレッグ・コーエンのベース、ジョーイ・バロンのドラムスの4人です。曲名の訳は、1曲目がヤイールで、マサダの反乱を指揮したエリエゼル・ベン・ヤイール、2曲目がベイト・アネトで「苦悩の家」、3曲目がツォフェーで「預言者」です。
<1 Jair 4分55秒>
<2 Bith Aneth 6分25秒>
<3 Tzofeh 5分16秒>
ジョン・ゾーンと言えば、マサダの前はコブラやペインキラー、ネイキッド・シティなどの自身のユニットでの活動が有名でした。近藤等則とも70年代にニューヨークでよく一緒に活動していたようです。お父様が亡くなってから自身のルーツに目覚め、マサダを結成し、ツァディク・レーベルを立ち上げたと本人からも聞きました。ツァディクはヘブライ文字の18番目ですが、東欧系ユダヤで「義人、正しい者」と言われる人を指します。
オーネット・コールマンは、アルトサックスとベース、ドラムのトリオ演奏のLP、At the 'Golden Circle' Stockholmの2枚などを81年頃に集中的に聞いたことがありまして、13年経って余りジャズは聞かなくなっていた94年に、ユダヤとオーネット・コールマンの両者がジョン・ゾーンの音楽で巡り会ったような形になりました。
前にイディッシュ・ソングのディレ・ゲルトとの類似を指摘して、ライナーノーツにも載ったTahahを次におかけします。訳は「混乱した」としていました。
<5 Tahah 5分42秒>
では最後に7曲目のDELIN(デリン)を時間まで聞きながら今回はお別れです。訳は「大きな壺」としていました。次回もう少しマサダの最初の10枚から抜粋したいと思います。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<7 DELIN 1分56秒>
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